- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041036372
作品紹介・あらすじ
失踪した公安警察官を追って、鑓水、修司、相馬の三人が辿り着いたのは瀬戸内海の離島だった。山頂に高射砲台跡の残る因習の島。そこでは、渋谷で老人が絶命した瞬間から、誰もが思いもよらないかたちで大きな歯車が回り始めていた。誰が敵で誰が味方なのか。あの日、この島で何が起こったのか。穏やかな島の営みの裏に隠された巧妙なトリックを暴いた時、あまりに痛ましい真実の扉が開かれる。
―君は君で、僕は僕で、最善を尽くさなければならない。
すべての思いを引き受け、鑓水たちは力を尽くして巨大な敵に立ち向かう。「犯罪者」「幻夏」(日本推理作家協会賞候補作)に続く待望の1800枚巨編!
感想・レビュー・書評
-
失踪した公安警察官山波の捜索のため、鑓水、修司、相馬は瀬戸内海の離島曳舟島にたどり着く…。山波とスクランブル交差点で絶命した正光が接点を持っていたことが判明し、正光が戦時下を一緒に過ごした「白狐」を訪ねてのことだった…。島に暮らす正光と同年代の老人達、彼らは苦しくも悲しく凄惨な戦時中の記憶を抱えていた…。山波の目的は?「白狐」は誰か?その裏にある事件の真相は??
上巻を読み終え、すぐに下巻も読まなきゃっ!いや、読みたいと、一心不乱に読み続けました!!読み切ったあとの、満足感、半端ないです。戦時中の描写に関しては読んでて辛くなりほど、忠実にかつ詳細に描かれています。情報操作って、今も戦時下も恐ろしいです…。正光と「白狐」との間の友情…友情とひと言で言ってしまっていいのか迷いますが、最期まで2人の目指すところは一緒だったんだと思うと、何とも言えない読後感を得られます!読み切っちゃった…続編、熱烈期待します(^^)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
老人と山波の繋がりを追ううちに、たどり着いた曳舟島。
島の老人達から改めて知る、戦争での酷い出来事。
家族の前でもうかつな事は何も話せない時代。
戦後数十年経った今も、政治の圧力により握り潰される事実。
どうなってしまうのかハラハラしっぱなしで読み進める。
どんな窮地に陥っても、間一髪助かってきた三人だったが鑓水が捕まった時は終わったと思った。
修司、相馬、今回は鑓水の過去がわかり、益々作品のファンに。
映画化しないかな~。 -
久々の上下巻、期限内に読み切るかなと不安だったけど、全くの杞憂だった。登場人物が多くて混乱する場面はあったにせよ夢中で読んでしまった。とにかく面白い。一級のミステリー。
この作品は面白いだけじゃなくて完全に社会派ミステリー。
根底には作者の強い危機感が流れている。
ここ数年、秘密保護法や共謀罪の成立をめぐってメディアで大きく取り上げられたりデモが繰り返し行われた。
正直、私は実害を感じることもなく対岸の火事のような思いで、きちんと目を向けることもなかった。
むしろ、なぜメディアは大騒ぎしているんだろうと。
この本を読んで完全に考えが変わった。なるほど、そういうことだったのかと。
小さな火のうちに消しておかないと取り返しのつかないことになる。太平洋戦争の時に日本で何が起こっていたのか。自由にものが言えない結果どうなってしまったのか。
他のレビューでも書かれているとおり、いささか戦時下の描写が長すぎる気もする。しかしこのくらい詳細に描かないと伝わらないのかもしれない。
作中にもあるように、戦争体験をしてきた人はみな高齢になっていて、直接話を聞く機会も格段に減っている。
だからこそ今のうちに書いておかなければならないのだろう。
その他の描写は全くだれることもなく手に汗握る展開の連続。それぞれのキャラクタの人間味あふれる個性が緻密に計算しつくされたプロットに相まって、どんどん引き込まれていった。
最後の最後の手紙がこれまた泣かせるんだな・・・。
この小説に心わしづかみですよ(笑)
太田愛さんて初読みだったけど、なるほど脚本家なのねー。
納得です。もちろん小説家としても一流ですね。
東野圭吾なんかより断然面白いんじゃないの?
この作品、シリーズものらしいので他のも全部読みますよ。
あの主人公たちにまた会いたい!
できることなら映像かも是非!
でもどうしてこんな面白いのに本屋大賞ノミネートされてないの?不思議ー。-
LUNAさん
こんにちは。お返事遅くなりました。
なんと、前作2作の方が面白いとは!
これは読まねばなりません(*^^*)
...LUNAさん
こんにちは。お返事遅くなりました。
なんと、前作2作の方が面白いとは!
これは読まねばなりません(*^^*)
おすすめの順に読んでみたいと思います。
私、東野圭吾は「白夜行」を超えるものがどうしても見つけられず、最近は全然読んでません(;'∀')
ファンの多い宮部みゆきもどうも苦手で、ミステリーの大家とはどうも相性が悪いようです・・・。
LUNAさんの本棚、ミステリーたくさんありますね♪
参考にさせていただきます。2018/04/10
-
-
感想は上巻に。
ダ・ヴィンチ2017.4月号「天上の葦」インタビュー(部分)
https://ddnavi.com/news/355618/
執筆には時間がかかったというが、政権政党から公平中立報道の要望書が出されたり、その当時政府によるメディア統制のような空気があり、これは今書かねば、と思ったということだ。
太田愛公式HP
https://www.ai-ota.jp/
太田愛ブログ
https://ameblo.jp/gralphan3/
ブログ2017.3.2にインタビューを受けたとの記事
https://ameblo.jp/gralphan3/entry-12249755517.html
「ブック・バン」文庫版の解説・町山智浩氏が公開されている
https://www.bookbang.jp/review/article/607063
法学者・水島朝穂氏HP(早稲田大学)2017.6.12
介入と忖度・・水島朝穂氏と太田愛さんの対談
(「世界」2017.6月号)
防空法と疎開の記述について水島氏の著作から多大なる示唆を受けた、と太田氏が記しているので対談が実現。
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2017/0612.html
2017.2.18初版 2018.5.20再版 図書館 -
公安の執拗な追跡を逃れ、今行われようとしている陰謀を暴こうと、3人組は協力者の助けを借りながら、縦横無尽の活躍をする。
もはや絶体絶命だと思わせながらも、彼らはそんな危機を再三にわたって乗り越える。読者は、その活躍に爽快感を感じながら読み進むことができる。著者の筆の冴えは、作品ごとにグレードアップするようだ。
しかし、この作品は、そんなハラハラドキドキの面白さばかりではない。
この書は、著者が脚本家として、テレビあるいは報道の現場でそのアンテナに引っかかったある兆しを、小説の形式で書き下ろした、現代への警告の書として読むこともできるのではないだろうか。(むしろ、著者の意図はこちらか)
「ひとつの国が危険な方向に舵を切る時、その兆しが端的に現れるのが報道です。報道が口を噤み始めた時はもう危ないのです」
「しかし、いいですか、常に小さな火から始まるのです。そして闘えるのは、火が小さなうちだけなのです。・・・大火となればもはやなす術はない。もう誰にも、どうすることもできないのです」
戦時下、大本営の報道に携わった元軍人が、後悔の念に駆られながら慙愧の思い出語りかける。
そして我々の時代に目を向けた時、戦時下に類似した行為が、今どこかで進められていないだろうか。
小説が時には、時代を先行してそれを暗示する。 -
「犯罪者」が修司の物語ならば、「幻夏」は相馬の物語。そして、この「天上の葦」は鑓水の物語。
渋谷のスクランブル交差点で、老人が空を指さして、亡くなった。その時、老人が見ていたものが何だったのか?鑓水は因縁の相手から、依頼を受ける。
一方、公安の刑事の動向を探っていた相馬だったが、鑓水の追っていた件と繋がり、いつしか公安から追われるようになり、老人と繋がりのあった「白狐」と言う人物を探しに、ある島にたどり着く…
島での話がかなり長く、少し飽きてしまったが、老人たちが重い口を開いた時、それまでの描写の意味が理解出来た。
奇しくも、この作品を読んでいたのが、お盆中で戦争について、深く考えていた時期で、太平洋戦争を語り継ぐ大事さ、戦争を「やめよう」と言えなかった時代背景の答えの一端が作品の中に見えた気がした。戦後72年経って、兵役経験者が90歳を超える時代。やっと口に出来る人の気持ちも伝わり、思わず涙が溢れた。
サスペンスとしての魅力は前2作には劣るが、違う意味で、作者の力量を感じた一冊。 -
ものすごく面白かった。
私の「お気に入り小説ベスト3」は長い間変化がなかったが、今日2位が変わった。
いきなりの初登場2位!
戦争、報道、公安警察
最後に参考文献にたくさんの書籍名が並んであって
この本を書くにあたって作者はものすごく準備したんだな!とそれだけで胸が熱くなった。
名前も知らないブロガーさんにこちらの本がおすすめされてあって読んだが
本当に感謝したい。おすすめしてくれてありがとう。
しっかし公安ってどの本でも悪じゃのう。
なんしか面白かった! -
毎朝通る道ですれ違う保育園児達のお散歩。
「こんにちは」と言ってくれるあどけない声…そんなことを思い出して無性に涙が止まらなかった。それはどんなことをしても護らなければいけないことなんだ。そんな覚悟を持った人達のお話。
様々に張り巡らされた伏線が回収されていくさまには毎回驚かされるが今回も見事としか言いようがなかった。その伏線一つ一つに込められた人の思いや背景がとても深く切ない。
[まるで空気が薄くなるように自由がなくなっていったあの時代]無関心でいてはいけないんだよね。
読みながら思い出したことがある。
祖父が戦時中にお風呂場で「日本は負けた方がいい」と話したことが漏れ警察に捕まったこと…実家が資産家だったからお金を払って釈放してもらったこと…私が祖母に聞いた戦争の話でこれが一番心に残っている。そんな時代が本当にあった。そしてそんな時代を醸成させてはいけないのだ。 -
後半から物語のスピードが一気に増しページを捲る指にも力が入る。
戦時中の出来事と報道に関する出来事をこんな形で繋ぎ逢わせるなんて想像がつかなかった。
鑓水、相馬、修司に加え島の老人たちの結束には感嘆した。
太田愛の作品はだから好き