さわらびの譜 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041036495

作品紹介・あらすじ

「わが想いは一筋の矢の如し、届け――!」

扇野藩重臣有川家の長女・伊也は、藩随一の弓上手、樋口清四郎と渡り合うほどの腕前。競い合ううち清四郎に惹かれていく伊也だったが、妹の初音に清四郎との縁談が持ち込まれる。伊也とのあらぬ噂により、藩主の不興を買った清四郎の汚名をそそぐため、伊也は清四郎と弓勝負で立ち合ううことに――。有川家に身を寄せる謎の武士の正体とは。姉妹の揺れる想いの行方は。くすぶる藩の派閥抗争が彼女らを巻き込む。
高潔な志が清々しい感動を呼ぶ、時代長編!

≪熱き信念が胸を打つ、扇野藩シリーズ≫

感想・レビュー・書評

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  • 女性ながら父から才能を認められ弓術の後継者として研鑽する伊也は、真っ直ぐな武士道精神と共にまさに才色兼備に成長しているものの、時代ものの定番である藩の権力争いに巻き込まれ、愛する人への想いより武士道を優先しようとする。
    伊也の真っ直ぐさと妹 初音の健気さとは対照的に、藩の重鎮達の人に対するリスペクトのかけらもない醜さが際立ちます。清四郎の完全無欠なスーパーヒーローぶりはもう少し欠点があってもいいのになと思った反面、前半ひ敵味方の区別がつきにくい磯貝八十郎の描き方が絶妙な塩梅でした。
    まさに葉室作品という読後感です。

  • 読み進むにつれて、葉室麟の世界に引きづられて行く
    解説島内景二:狭き門とは、葉室にとって武士道そのものである。さわらびの譜は、日置流雪荷派の弓術の奥儀と重ね合わせるようにして、葉室流文学道の神髄が語られている

  • 扇野藩シリーズ第1作目。

  • 冒頭からの「弓矢での立会い」についての疑問から、中盤まで少し引いて読んでいたけれど、段々と引き込まれていくのは著者の力量か。
    終盤は見事だった。
    著者の作品のなかには、主人公の鮮烈な生き様に脇役の悪者が改心していく様が描かれているものも見受けられるが、本作もそのひとつ。

  • 著者には、『散り椿』『はだれ雪』『青嵐の坂』等、扇野藩を舞台とした小説が何作かあり(それぞれに直接的な関連性はないが)、この小説もその一遍。
    藩重臣の有川家の長女伊也が主人公。
    弓を介し、藩随一の弓の名手樋口清四郎に思いを寄せるが、彼は妹の初音の婚約者となる。有川家に寄寓する謎の武士も介在し、恋愛小説の様相もある。
    しかし、著者は扇野藩の派閥抗争も絡め、武の心の有り様を問う時代小説となっている。
    「武の心とは、ひとを想い、相手のために危うい目にあおうとも悔いぬ心持ちをいう」と。
    題名に絡めた和歌「石ばしる垂水の上のさわらびの萌えいづる春になりにけるかも」が、要所で謳いあげられる。和歌に合った小説を紡ぎ出すのか、小説に合った和歌を選び出すのか、どちらにしても著者の和歌に対する造詣の深さを改めて思う。

  • ラストがよい

  • 面白かった!
    漫画ライクな純愛+勧善懲悪ストーリ
    鉄板です。後半は熱くなります。こういうの弱いんです(笑)

    ストーリとしては、
    扇野藩重臣の有川家の長女の伊也は日置流の弓術の名手で、同じ藩の大和流の弓の名手の清四郎との純愛物語です。
    伊也と清四郎は競い合ううちに、伊也は清四郎に惹かれていきます。しかし、清四郎には伊也の妹の初音と縁談が。
    どうなるこの三角関係っていう感じ。
    伊也と清四郎のあらぬ噂で清四郎は藩主から不興を買ってしまいます。
    結果、伊也と清四郎が弓で立ち会うことに..
    弓で撃ち合うってどういうこと?(笑)

    一方で、有川家に居候としてきた左近と伊也の父親の将左衛門は藩政を立て直すために奮闘。
    しかし、派閥抗争となり、巻き込まれれていく伊也。
    藩主含めて、悪役がこれでもかと伊也と清四郎、左近、将左衛門に圧力をかけてきます。

    さまざまな騒動が起きますが、最後、すべては伊也による千射祈願に託されます。一矢も外さず千射祈願が成し遂げられるのか?
    介添えの清四郎と二人で挑む千射祈願。
    その結果は?
    といった展開です。

    もちろん、勧善懲悪、予定調和の鉄板ストーリなのですが、千射祈願のシーンは、涙がこぼれます。

    もののふとしての矜持、その志が漫画のようなストーリ展開でわかりやすく、心を揺さぶります。

    ということで、とってもお勧め

  • 最後までハラハラした物語でした。
    その後、姉妹はそれぞれどんな風に過ごしているのか、みてみたいなぁと思いました!

  • 「淡白なんだけど不思議な魅力の本」
    葉室麟氏の作品群、一言でいうとわたしはこう思っている。

    直木賞受賞作の『蜩の記』から初めて読み始めて11作品、
    以来ずっと感じているところだ。

    はっきり言って、淡々とした文章運び、メリハリが薄いストーリーのよう。
    いくらライトノベル全盛と言っても、江戸時代をこういう風に描くのはどーかなあ。
    歴史的時代背景に現代風な心根を持って書きすぎてるような。

    じゃあ、なぜ読み継ぐのか、というと
    友人がこのこの作家を好きで貸してくれるからなんて、
    しまりのないことである。

    でもこの作品は、めずらしく後半一気に読めた。
    いわゆるアメリカ映画の結末を望むようにね。

  •  本書を読み終えて、時代小説の王道は、巧みな戦略家や諜報そして剣術の達人が多く戦となれば織田信長の時代から、刀剣、槍、鉄砲等が武器の主流となることが多い様に思う。そんな中で、葉室氏が弓術を通して主役となる女人の心を描くのは珍しく、造詣を深め心震える物語を読むことが出来たことは僕自身の心の糧となった。
     本来の弓術は、魔を祓い、敵を退けるために射るものと書いており、よって殺傷能力は低い。
     さて、扇野藩(架空の藩)当主有川将左衛門は日置流雪荷派の伝承者。子は、伊也と初音の娘二人男子はいない。将左衛門は、伊也に伝承すると決めた。何故なら、他の流派を稽古したものに伝えれば、作法に乱れが生じるというもの。
     伊也は気性も男勝りで、弓の稽古の際は髪を若衆髷のように後ろで引き結び、男装をする念の入れようである。
     そして世間では、伊也のことを「弓矢小町」と囁かれるほどである。
     扇野藩ではー千射祈願と称して、千本を射通そうとする藩士は毎年多くいた。伊也もその中の一人である。候補者を選ぶため、百射の御前試合が行われるようになり、大和流名手の樋口清四郎と伊也との対決が注目されることとなるが、清四郎との間にあらぬ噂が立ってしまい窮地に立たされることとなったとこらから物語は始まるのです。長っ!
     本書の読みどころは、何といっても、本番の千射祈願に臨むことが出来た弓士の心根ではなかろうか。
    渾身の力を込めて、引き絞った弦を放して矢を射た。『わが想いは一筋の矢の如し、届けー』と叫び頽れ落ちた。
     高潔な志が清々しい感動を呼んだ。
     実におもしろい。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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