アトミック・ボックス (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 82
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037157

作品紹介・あらすじ

人生でひとつ間違いをしたという言葉を遺し、父は死んだ。直後、美汐の前に現れた郵便局員は、警視庁を名乗った。30年にわたる監視。父はかつて、国産原子爆弾製造に携わったのだ。国益を損なう機密資料を託された美汐は、父親殺人の容疑で指名手配されてしまう。張り巡らされた国家権力の監視網、命懸けの逃亡劇。隠蔽された国家プロジェクトの核心には、核爆弾を巡る国家間の思惑があった。社会派サスペンスの傑作!

感想・レビュー・書評

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  • ‪国産の原子爆弾の製造に関わった父の死後、父に託された秘密を明かすために娘は逃亡を続ける。サスペンスの体裁を取りつつ、瀬戸内海の島々を舞台に繰り広げられる逃亡劇に引き込まれる。3.11以降の原発の在り方を考えさせられる。‬

  • 買ってからだいぶ寝かせてたけど、読み始めたら止まらなかった!面白い〜
    聞き慣れなかったり、難しい単語がいっぱいだし、実際この逃避行はどうかな?と思ったりもしたけど、途中で飽きる事なかった
    色々考えさせられる
    タイトルが、もっとこう、違う感じなんだけど、なんだろう。

  • 池澤さんの小説は出たらすぐ読むとかではないんだけど、ときどきすごく読みたくなる。独特の感じ、エンターテイメントであってもどこかエッセイみたいだったり、学術的だったり哲学的だったり、社会学的だったりする感じが好きで。
    これは、死んだ父親が昔、日本が独自に原爆をつくる計画にかかわっていたということがわかって、その証拠をめぐって警察に追われることになった女性社会学者が主人公で、エンターテイメントミステリ風なんだけど、核兵器に関する歴史や物理学的な知識、戦後の日本の外交やら警察組織についてなどもわかるという。
    登場人物が議論をたたかわせるようなシーンもあって、それはエンターテイメントとしては余計というか、テンポがさがって読みにくくさせることかもしれないけれども、いろいろ考えさせられるのでわたしは好き。
    それと、池澤さんの小説というか文体なのか、ユーモアがあって、どこかチャーミングだと思う。

  • 池澤夏樹『アトミック・ボックス』角川文庫。

    『キトラ・ボックス』を読み、シリーズの前作に当たる本作も読んでみようと手に取った。『キトラ・ボックス』が歴史ミステリーであるならば、本作は極めて稀なメッセージ性の強い冒険小説である。両者は宮本美汐、行田安治藤波三次郎が登場人物としてかぶるだけで、全く独立した作品である。

    どうやら池澤夏樹という作家を誤解していたようだ。以前からメッセージ性の高い作品を創る作家だと思っていたが、このような素晴らしい冒険小説を創る作家だとは思ってはいなかった。かなり気持ちを抑制した文章の中で描かれる冒険小説としてのエンターテイメント、強いメッセージ。本作が伝えるメッセージは人間が制御不可能な技術を扱うことの恐ろしさ、愚かさだと思う。そして、驚愕の展開、清々しい結末。見事だ。

    瀬戸内海の漁師として死んでいった父親の秘密。宮本美汐は父親から託された国益を左右する機密に触れ、国家権力に追われる身となる。

    しほもかなひぬ…

  • メイドインジャパンの原子爆弾!! 国と国との間の思惑に心が冷える。そこには個人は存在しない。数としての存在、物のようなイメージしかなくなってしまう。

    津波に流される家や車のニュース映像を見て怖いと思ったけれど、全体として感じていただけだった。ネットで、田んぼにうつ伏せに沈みかかっている動かない人を見た時、初めて個人個人に思いが至った気がする。油断してはいけない、見えない個人をいつも捉えていたい。

  • 原爆開発チーム解散後、その証跡を隠し持って、瀬戸内海の島で漁師として暮らす。
    何も考えずに原爆開発に関わった後、かつて母の腹の中で原爆で被爆していることを知る。
    チェルノブイリの事故を知り、福島の原発事故を目の当たりにする。
    そして、癌を患い、死を前にして、娘にほんのわずかでも死期を早めること頼み、原爆開発の証跡のコピーを預ける。
    自分のしたことを後悔し、原爆開発からかけ離れた、自然の中で生活することを選ぶ。しかしながら、自分たちのしたことを公表する決断まではつかない。
    自分だけの範囲でなら、自分を律して償うことはできるが、他者を巻き込む大きな決断はなかなかできなかった。ほんとに普通の人。
    そして、こんな普通の人が大きな事件に巻き込まれる。自分の横に危機があることを想像させられる。

    しかし、この本の女性陣は強い。娘の美汐も、母も、美汐を助ける友人たちも。その強さが主題の暗さを払拭する。

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プロフィール

一九四五年、北海道帯広市生まれ。旅と移住が多く、ギリシアには七五年から三年間滞在。小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。

「2018年 『のりものづくし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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