エムブリヲ奇譚 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 251
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037164

作品紹介・あらすじ

旅本作家・和泉蝋庵の荷物持ちである耳彦は、ある日不思議な”青白いもの”を拾う。それは人間の胎児であるエムブリヲと呼ばれるもので…。迷い迷った道の先、辿りつくのは極楽の温泉かはたまたこの世の地獄かーー

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第2作『私のサイクロプス』を先に読んでしまったので、本作(第1作)に遡って読んだ。基本的には耳彦と和泉蠟庵の道中記で、第2作のメインメンバーである輪が一話のみ登場する。

    人情味、ユーモア、ホラーのバランスが素晴らしい。
    弱者に対して、ほのかな、あたたかい情愛が積み重なっていく過程を描くのがうまいと思う。
    耳彦と和泉蠟庵の掛け合いも息がぴったりで、クスッと笑える。
    人の交わりの温もりを描く一方で、肉親を犠牲にしてでも生き伸びようとする人の本能も炙り出す。美しさと醜さが同居して、双方を引き立てている。
    「正しい文章」というのとは少し異なり、時々ねじれを感じるが、繊細な感情を汲み取って、はっとするような表現を生み出している。

    <好きな話>
    輪が主役の「ラピスラズリ幻想」が白眉で、あまりに切ない彼女の決心に号泣してしまった。
    「「さあ、行こう」と少年が言った」では、少年時代の和泉蠟庵が登場する。家族に虐待される女を救う蠟庵少年は、まさに天使か救世主のよう。黄金に輝くススキの野の風景が、いつまでも頭から離れない。第2作ではいまいち影が薄い彼だが、この一篇を読んで大好きになってしまった。

    <苦手な話>
    「地獄」は、縦穴の閉塞感や腐臭があまりにもリアルで、夢に出そうで怖かった。結末がまさにタイトルどおりで、再読はしたくない。
    「〆」は好きな話だが、家も食材もあらゆるものが人間の顔に見える地獄は、想像しただけで気が狂いそうだ。

    本作が素晴らしかった分、第2作があれ程つまらなく感じたのが不思議だ。かと言って、もう一度第2作を読もうとも思わない。第3作の刊行に期待したい。

  • 主人公の和泉蠟庵の設定が、方向音痴、わりと空気読(ま)めない、体力は鬼、しかしながら小柄、最終的に禿を気にし始めた時点でもう脳内配役が確定いたしました(……。)
    そして長髪とか全くありがたい設定であるけしからん。
    耳彦は山田孝之さんが似合いそう。
    濱田岳も合いそうだけれど蠟庵とバランス取れなさそうで笑
    とはいっても実写じゃなくアニメ向きの話ではある。
    ライトといえばライトか。

    「ラピスラズリ幻想」話の構成が好き。
    しかし、繰り返すことはどちらかというと呪いに近いものも感じる。
    それが故の結末なのだろうと思う。
    何かを満たせば何かが満たされない。苦しい。

    「〆」はなんとも言えず後味が悪い。
    弱肉強食というか、諸行無常というか。
    このあとの櫛〜じゃないけど羅生門的な切なさがある。
    その世界で普通(と思われる)ことと、自分の中での普通とがブレたときに人はどう行動するのか。

    「地獄」は全く違った意味で無力。
    人も鬼もあまり変わらないのかもしれない。
    「〆」の中でかたくなに守り何かを喪ったというのに、その信念は「地獄」の中ではいとも簡単に崩れさる。
    しかし描写がなかなかである。
    怖いというよりは気持ち悪いの方が近い。

    「櫛を拾ってはならぬ」が一番いい感じにゾワゾワした。
    怪談とはこういう物だ!というワクワク感もあり。
    長い髪の毛はなんでかわからないけど怖いものの一つ。
    髪の毛は抜けた途端に唯の髪の毛になってしまって、怖く感じる。

    「「さぁ、行こう」と少年が言った」
    これも設定がいい。「ラピスラズリ幻想」に通じる何か。
    希望と切なさが交じる。
    和泉蠟庵のまだわからない部分がわかる話の一つでもある。蠟庵少年がいい。

    他にも何編かあるけれど、特にこれらが好きだった。
    続編も読みたいけど文庫化はまだ先の様なので気長に待ちたい。

  • 迷い癖のあるトラベルライター和泉螻庵を取り巻く、輪廻転生や神隠しといった不可解要素を折り込んだ怪談短編集。江戸時代小説風ながら年代や場所ははっきりしない。悪くはないが、ちーと淡々としすぎてて、好みテイストではなかったので、1、2話と最後のみ。怪異か文学かどちらかにもっと振って欲しかった。芥川龍之介の短編をちーと思い出した。

  • 奇妙で不気味で後味の悪さがあるが、読むのをやめられない。

  • 怖いのは本当に駄目なんです。でも読んでしまうのは、妖しい怖さには、どうしようもない美しさが潜んでいるせいかもしれない。主な語り手である耳彦の駄目っぷりが良い。人間の弱さや愚かさも見せつけられる一方で、憎めなく思える。駄目な人を書かせたら、右に出る人はいないよなぁと思う。連作短編集で、どれもそれぞれ衝撃的だった。

  •  読んでいて、すごく気持ちの悪い描写があり、トラウマになりそうです。

     それなのに読んだ後は、せつなくて優しい、そんな印象しか残りません。不思議な作品です。

  • 2017/9/24
    なぜこの本を読もうと思ったのかな?
    ちょっと覚えてないけどはじめましての人。
    かわいがってた鶏食べちゃうのは勘弁して~
    私もたいがい方向音痴だけど蠟庵先生ほどじゃないわ。
    幻想的なお話。
    ややホラー。

  • 切なさが感じられる怪談。乙一の作品ならば「ZOO」かな?読了後しんみりとさせられる一冊でした。

  • 迷い癖のある旅本執筆者、和泉蠟庵と荷物持ちとして旅に同行する耳彦が出会う奇譚の連作短篇集。
    蠟庵先生のつかみどころのない性格と、耳彦が思った以上にクズ野郎(なのにどこか憎めず)で可笑しみのあるコンビ。

    「ラピスラズリ幻想」は人の一生の感動が凝縮されているような。不思議な感動。

    耳彦は全編において、とにかく、わりと、クズ。
    でも哀れな目に遭う率も高いから、ドンマイ。

  • どの話も誰も救われず後味が悪くて心が疲れる

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著者プロフィール

怪談専門誌『幽』で鮮烈デビュー。著著に『死者のための音楽』『エムブリヲ奇譚』がある。趣味はたき火。

「2018年 『私の頭が正常であったなら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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