キトラ・ボックス

著者 :
  • KADOKAWA
3.68
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本棚登録 : 217
レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037256

作品紹介・あらすじ

奈良天川村-トルファン-瀬戸内海大三島。それぞれの土地で見つかった禽獣葡萄鏡が同じ鋳型で造られたと推理した藤波三次郎は、国立民族学博物館研究員の可敦(カトゥン)の協力を求める。新疆ウイグル自治区から赴任した彼女は、天川村の神社の銅剣に象嵌された北斗が、キトラ古墳天文図と同じであると見抜いた。なぜウイグルと西日本に同じ鏡があるのか。剣はキトラ古墳からなんらかの形で持ち出されたものなのか。謎を追って、大三島の大山祇神社を訪れた二人は、何者かの襲撃を受ける。窮地を救った三次郎だったが、可敦は警察に電話をしないでくれと懇願する。悪漢は、新疆ウイグル自治区分離独立運動に関わる兄を巡り、北京が送り込んだ刺客ではないか。三次郎は昔の恋人である美汐を通じ、元公安警部補・行田に協力を求め、可敦に遺跡発掘現場へ身を隠すよう提案するが――。

感想・レビュー・書評

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  • 考古学・歴史学・文化人類学といった手法でリアルに過ぎたことを描き出す。民族間の軋轢というテーマをこういうエンタメにしてくれる池澤さん。国よりも友を、母を思う。己を豊かに、己の集団を豊かに、世界を豊かに。真の個の確立って、そういうことなんだろうな。

    • ことぶきジローさん
      『アトミック・ボックス』はお薦めですよ。
      『アトミック・ボックス』はお薦めですよ。
      2017/06/09
  • 池澤夏樹『キトラ・ボックス』角川書店。

    何の予備知識も無く、先行作の『アトミック・ボックス』も未読でありながらも、本作は非常に興味深く、面白く、千年以上の長き時間と空間のスケールを感じたミステリーだった。

    奈良天川村とトルファン、瀬戸内海大三島で見付かった鏡に端を発したキトラ古墳の謎と、ウイグル自治区から赴任した可敦を巡る北京の陰謀とが見事に融合したストーリーに、古代へのロマンとアジア情勢に対する危惧をも感じた。

    池澤夏樹の作品は何作か読んでいるが、このようなミステリー作品を書く作家というイメージは全く無かった。本作を読んで、池澤夏樹に対する新たな魅力を発見した。これを機に先行作の『アトミック・ボックス』も読んでみようと思う。

    • chineseplumさん
      池澤さん、いいですよね!この世とあの世を自由に行き来する感じが好きです。私もアトミック・ボックス、読んでみます。
      池澤さん、いいですよね!この世とあの世を自由に行き来する感じが好きです。私もアトミック・ボックス、読んでみます。
      2017/06/09
  • 一気呵成に読んだ。最後は不覚にも涙した。これは見事なエンタメである。

    「こんな結果になって驚いていることと思う。また私と君の仲だから悲しんでくれていると思う。これは定まったことではなく、私が選んだ道だ。この国で長寿の果てに身罷るはずもなかったのだが、他ならぬ今というのは私が決めた。人には死ぬのにふさわしい時というものがあって、私の場合はそれが今だった」(147p)

    この世界には、これが見つかれば考古学的大発見、歴史が一瞬にして変わるというものが幾つかある。例えば雄略天皇の実在が確定された稲荷山古墳の鉄剣もそれに類似したものだった。しかし何よりも欲しいのは邪馬台国時代の封泥。それによって、8割ぐらいの割合で邪馬台国の場所を確定できる。

    もちろんそんなありきたりな物語を池澤夏樹は作らない。ここで出て来たのは、キトラ古墳の被葬者を特定し、なおかつ当時の最大事件である壬申の乱の新解釈を呼び起こし、なおかつ当時の人々の想いさえも再現する超一級の遺物であった。

    因みにここで出てくる遺物や遺跡が、あまりにも真に迫っていたので、日月神社の存在、そこから見つかった鏡と銅剣、トルファン出土の禽獣葡萄鏡と大三島の大山祇神社の禽獣葡萄鏡が同じ鋳型だったこと、岡山県美作市の鍛冶屋逧古墳の存在、それらは検索してみたら見事な「ウソ=創作」だった。

    前回の「アトミック・ボックス」の登場人物が出てくるとは知っていたが、まさかこんなにもゾロゾロ出てくるとは予想していなかった。嬉しい誤算であり、それだけでもワクワクしながら読んだ。

    ストーリーはきっちりエンタメ・考古学サスペンスの部類に入るのだが、前回と同様に幾つかの瑕疵があるのを指摘せざるを得ない。中国政府やウィグル独立運動当事者は、ここに描かれているほど甘くはない、と私は思う。しかし、そんなものは私には決定的な瑕疵ではない。

    ここにあるのは、あり得たかもしれない歴史の中の「友愛」である。それは信じることができる。それだけでも嬉しい。

    2017年10月、日本の歴史の曲り角になる選挙が終わった翌日に読了。

  • こんな面白い本だと思わなかった。考古学のロマンと中国の侵略の問題と、考えさせられる本だった。また、日本の古代史を復習したいと思った。

  • なんてこった。面白かった。

  • アトミック・ボックスの姉妹編的な作品でした。
    姉妹編ですが、単独でも楽しめる作品でした。でも内容の満足度は、アトミック・ボックスが大きかったです。
    過去が直接描かれたことで、謎の答えが読者には早くからわかってしまったこと。新疆ウイグル自治区の問題を取り上げながらも、問題への切り込みの鋭さが欠けていたこと。この2つが、残念でした。

  • どことどういう風に繋がるのかと
    ・・・納得
    面白かったです

  • 池澤夏樹「キトラボックス」読んだ、おもしろかった https://www.kadokawa.co.jp/product/321508000093/ … 古墳と中国圧政を絡めた謎解きだけど、ありがちな絵空事譚ではないのが池澤夏樹らしい。実際の研究や発見をなぞったのかと途中で何度か記憶を確認したほど。「アトミックボックス」に関連してるから古墳を敢えてボックスね

  • 一気に最後まで読みました。いや〜面白かった!

    太古のロマン、ミステリー、そしてちょっとだけ社会派の極上エンターテイメント。
    池澤さんの小説はいつも、登場人物が魅力的。それぞれの分野のプロで、個性的だけど自己主張し過ぎず、絶妙なバランスで難題に挑む。そこが清々しくて、憧れる。
    こんなチームの一員になりたい。

  • 古代と現代が錯綜しながら進む物語はどこか砂漠の香りがした。

    唐時代の文物・人の行き来を思うと、なんと現代のせせこましく狭量なことか…。
    この辺りの歴史世界をもう少しさまよってみたくなった。

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著者プロフィール

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年、北海道帯広市生まれ。1964年に埼玉大学理工学部物理学科に入学し、1968年中退。
小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。旅と移住が多い。
2018年9月から、日本経済新聞にて連載小説「ワカタケル」を連載。

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