キトラ・ボックス

著者 : 池澤夏樹
  • KADOKAWA (2017年3月25日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037256

作品紹介

奈良天川村-トルファン-瀬戸内海大三島。それぞれの土地で見つかった禽獣葡萄鏡が同じ鋳型で造られたと推理した藤波三次郎は、国立民族学博物館研究員の可敦(カトゥン)の協力を求める。新疆ウイグル自治区から赴任した彼女は、天川村の神社の銅剣に象嵌された北斗が、キトラ古墳天文図と同じであると見抜いた。なぜウイグルと西日本に同じ鏡があるのか。剣はキトラ古墳からなんらかの形で持ち出されたものなのか。謎を追って、大三島の大山祇神社を訪れた二人は、何者かの襲撃を受ける。窮地を救った三次郎だったが、可敦は警察に電話をしないでくれと懇願する。悪漢は、新疆ウイグル自治区分離独立運動に関わる兄を巡り、北京が送り込んだ刺客ではないか。三次郎は昔の恋人である美汐を通じ、元公安警部補・行田に協力を求め、可敦に遺跡発掘現場へ身を隠すよう提案するが――。

キトラ・ボックスの感想・レビュー・書評

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  • 池澤夏樹『キトラ・ボックス』角川書店。

    何の予備知識も無く、先行作の『アトミック・ボックス』も未読でありながらも、本作は非常に興味深く、面白く、千年以上の長き時間と空間のスケールを感じたミステリーだった。

    奈良天川村とトルファン、瀬戸内海大三島で見付かった鏡に端を発したキトラ古墳の謎と、ウイグル自治区から赴任した可敦を巡る北京の陰謀とが見事に融合したストーリーに、古代へのロマンとアジア情勢に対する危惧をも感じた。

    池澤夏樹の作品は何作か読んでいるが、このようなミステリー作品を書く作家というイメージは全く無かった。本作を読んで、池澤夏樹に対する新たな魅力を発見した。これを機に先行作の『アトミック・ボックス』も読んでみようと思う。

  • こんな面白い本だと思わなかった。考古学のロマンと中国の侵略の問題と、考えさせられる本だった。また、日本の古代史を復習したいと思った。

  • 考古学・歴史学・文化人類学といった手法でリアルに過ぎたことを描き出す。民族間の軋轢というテーマをこういうエンタメにしてくれる池澤さん。国よりも友を、母を思う。己を豊かに、己の集団を豊かに、世界を豊かに。真の個の確立って、そういうことなんだろうな。

  • 池澤夏樹「キトラボックス」読んだ、おもしろかった https://www.kadokawa.co.jp/product/321508000093/ … 古墳と中国圧政を絡めた謎解きだけど、ありがちな絵空事譚ではないのが池澤夏樹らしい。実際の研究や発見をなぞったのかと途中で何度か記憶を確認したほど。「アトミックボックス」に関連してるから古墳を敢えてボックスね

  • 一気に最後まで読みました。いや〜面白かった!

    太古のロマン、ミステリー、そしてちょっとだけ社会派の極上エンターテイメント。
    池澤さんの小説はいつも、登場人物が魅力的。それぞれの分野のプロで、個性的だけど自己主張し過ぎず、絶妙なバランスで難題に挑む。そこが清々しくて、憧れる。
    こんなチームの一員になりたい。

  • 古代と現代が錯綜しながら進む物語はどこか砂漠の香りがした。

    唐時代の文物・人の行き来を思うと、なんと現代のせせこましく狭量なことか…。
    この辺りの歴史世界をもう少しさまよってみたくなった。

  • おもしろかった。
    読み進めるとどうやら前作があったようなことがわかってくるが、前作は読まなくても十分楽しめる。

    キトラ古墳の秘密に興味があって読んだけど物語として楽しめた。

    2017.11.11

  • 一気呵成に読んだ。最後は不覚にも涙した。これは見事なエンタメである。

    「こんな結果になって驚いていることと思う。また私と君の仲だから悲しんでくれていると思う。これは定まったことではなく、私が選んだ道だ。この国で長寿の果てに身罷るはずもなかったのだが、他ならぬ今というのは私が決めた。人には死ぬのにふさわしい時というものがあって、私の場合はそれが今だった」(147p)

    この世界には、これが見つかれば考古学的大発見、歴史が一瞬にして変わるというものが幾つかある。例えば雄略天皇の実在が確定された稲荷山古墳の鉄剣もそれに類似したものだった。しかし何よりも欲しいのは邪馬台国時代の封泥。それによって、8割ぐらいの割合で邪馬台国の場所を確定できる。

    もちろんそんなありきたりな物語を池澤夏樹は作らない。ここで出て来たのは、キトラ古墳の被葬者を特定し、なおかつ当時の最大事件である壬申の乱の新解釈を呼び起こし、なおかつ当時の人々の想いさえも再現する超一級の遺物であった。

    因みにここで出てくる遺物や遺跡が、あまりにも真に迫っていたので、日月神社の存在、そこから見つかった鏡と銅剣、トルファン出土の禽獣葡萄鏡と大三島の大山祇神社の禽獣葡萄鏡が同じ鋳型だったこと、岡山県美作市の鍛冶屋逧古墳の存在、それらは検索してみたら見事な「ウソ=創作」だった。

    前回の「アトミック・ボックス」の登場人物が出てくるとは知っていたが、まさかこんなにもゾロゾロ出てくるとは予想していなかった。嬉しい誤算であり、それだけでもワクワクしながら読んだ。

    ストーリーはきっちりエンタメ・考古学サスペンスの部類に入るのだが、前回と同様に幾つかの瑕疵があるのを指摘せざるを得ない。中国政府やウィグル独立運動当事者は、ここに描かれているほど甘くはない、と私は思う。しかし、そんなものは私には決定的な瑕疵ではない。

    ここにあるのは、あり得たかもしれない歴史の中の「友愛」である。それは信じることができる。それだけでも嬉しい。

    2017年10月、日本の歴史の曲り角になる選挙が終わった翌日に読了。

  • 主人公の西域の女性の学者がとても魅力的。また日本の古代史の謎と現代の大陸の西域問題をうまくからめて、キトラの主の特定に結びつけたのも良い。少しおとなしい小説で、真の悪人も出てこないのが隠やか過ぎるかもしれないが、その隠やかさこそが魅力なのかも。

  • 何気なく書店で池澤夏樹の最新作をチェックしたところ、ちょうど先月、僕が見に行ったキトラ古墳に関するミステリーを書いていたので、その場で購入して一気に読んだ。おもしろかった。

    久し振りに、僕の好きな池澤夏樹が帰ってきたという感じがする。

    『スティル・ライフ』のときのような、成層圏からの眺めで作品が書かれているために、すべてが軽やかで、まるで星々の運行のリズムにゆったりと身を浸しているような、そんな気持ちで読み進めていくことができた。

    物語の最後のどんでん返しも、宇宙的な観点のなかに位置付けられているために、相対化され、偶然の、愛すべき地上の一事に過ぎないように感じられる。

    そう、遠いところから物語を書いているこの感じが、池澤夏樹の小説の真骨頂なのだ。

    ***

    思うに、たぶん今回は題材が良かった。

    宇宙的な視点から物を見るということは、あらゆる世界観、あらゆるミームを相対化し、それらすべてに親しむことだ。今回の作品は古代と現代の時間的な隔たりを飛び越える試みであったから、池澤の視点を高く保つことができた。それが、彼の良さを引き出すことにつながった。だから、この作品で池澤は、現代の社会に、古代人の呪術を自然な形で持ち込むという荒唐無稽を、さらっとやってのけることができたのである。

    前作の『アトミック・ボックス』では、個人と国家という、些か陳腐な対立を持ち出してしまったために、その表現が地上的な作品に留まってしまい、いまいち物足りないと感じたのも、まったく同じ理由で説明できる。あそこで池澤が描いたのは、せいぜい一世代分の時間的スケールでしかなかったから。

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