- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041037294
作品紹介・あらすじ
古来、傷みや成長を食べる「蟲(むし)」を体内に宿す不老不死の一族があった。その一族は地図にのらない里で、長い間、人目をはばかって暮らしていた。里の岬には、八百比丘尼とも言われる”シラ”という一族の祖を祀っていた。その末裔のなかでも強大な力を得た御先【みさき】は、どんな傷も病も治す能力を持ち、150年以上生きているとは思えぬ10代のままのような美しさで、ふたなりの身体を持ち、性別はもはや定かでない存在として畏れられてきた。今では、時の権力者の施術を生業として暮らしている御先だったが、付き人だった玄孫【やしゃご】の雅親【まさちか】をつき離し、一族の里を離れ、夜の店で働いていた傍系の四【よん】と行動をともにするようになり、ある”事件”に巻き込まれることになり……。主人公たちの過去と今が交錯し、時代を超えて現れる愛しい人……。不老不死の一族の末裔が現代の都会に紛れ込む――妖しくも美しく、そして哀しい現代奇譚。 泉鏡花文学賞受賞作家が挑む新境地。カバー挿画は、中村明日美子さんが担当。
感想・レビュー・書評
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蟲宿しの一族の始祖と、現代に生きる末裔たちの物語。
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不思議な蟲を宿したことで不老不死となり、病や傷を治す力をもったシラ。
不運の時を経た彼女だったが、やがてそんなシラをそのまま受け入れてくれる熊という男に出会う。
つかの間の、愛しい時間を生きるシラと熊。
しかし、そんな日々は突然、終わりを告げた。
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第1話にあたる「シラ」という短編は、蟲宿し一族の始祖・シラのお話です。
その後の短編5本は、シラの末裔たちの物語であり、強大な蟲宿しの力をもった御先(みさき)という人物を中心に書かれています。
不老不死と病やケガを治す力は、蟲を宿した者だけに与えられる力であり、一族だからといって蟲が宿るとは限りません。
また蟲宿しの力を得た者の“身体”には、通常のヒトとはちがう部分があらわれます。
最初に「シラ」を読んだときには、「これは漫画“妖しのセレス”(渡瀬悠宇・著)みたいな話になるのかな??」と思いましたが、始祖の話と現代の話には、ほとんどつながりがありませんでした。
(ちなみに「シラ」と“妖しのセレス”は、話の雰囲気的には似ていると感じました。)
現代の闇ひそむ不思議な力と、表の世界で生きる人々とが交わったときに生まれる物語が好きな方には、“ハマル”物語でしょう。
ただ、1冊で終わるには惜しい物語設定だと思いました。
不老不死であり蟲宿しの御先からみえる視界を、もっと見たいですし、御先たちのまわりにいる人物とのやりとりを、もっと掘り下げた物語を読んでみたいです。
マンガ化にも向きそうなお話なので、今後どうかならないかな??と、ちょっぴり期待です。
また、今回の単行本表紙絵には何故か描かれなかった主要人物・雅親(まさちか)のビジュアルも、見てみたいです。
そのあたりの期待もこめて、今回は☆3つとしました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世界観は好みなのだが、第一話のシラと第二話以降のミサキでは、物語の中に流れる濃艶な空気の重さが違っていて、どちらが好みかと言えば断然シラのほうだ。排他的でありながら共にある存在を渇望する、孤独感と捨てきれない小さな小さな希望……シラにもミサキにも共通するのにミサキのほうがずいぶんライトに見えるのは、周りの人物像のせいか。1冊の厚みは減ってでも、できればシラの流れで最後まで読みたかった。
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不老不死ってしんどいな。大切な人達がどんどん歳を重ねいなくなっていく。
無いとは言い切れない不思議な話。 -
大好物の「不老不死」もの。
不老不死の不思議な血を引く一族。
ひとり強大な力を身に付けたミサキ。
この手の話にありがちな、死にたいけど死ねない自分の宿命。
丁度良い具合いに物語に軽さというか、面白味を出してくれるのが「ヨン」の存在。
どんどんミサキが可愛く思えた♪
長く長く続く残さなくてはならない一族の血。
身体に宿る蟲の力。
重くもなく軽すぎる訳でもなく
好きな話だったので面白かったです。 -
最初の章「シラ」の時代背景も現代への流れも好き。というか八百比丘尼の話が好きだからとてもいい!凄惨な運命の話がゴロゴロ出てくるけど四がいい感じに軽妙で良い中和剤になっている。四も大概大変な人生だけど。
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"蟲宿しの一族"は何もかも諦めていて、でも、心のどこかで誰かに愛されることを望み、自分に足りないものを埋めてくれるものを必死で求めている。
千早茜さんの作品はまだ二作目だが、この人の書く物語は哀しさと愛おしさがない交ぜになっていて、本当に美しいと思う。
ライトで読みやすいが、個人的にはもう少し重厚感のある文章の方がもっと世界観に浸れたかな、と思う。 -
一族の者以外は誰も知ることのない海辺の里には、「蟲」を使い病や怪我を治す力を持つ者たちが存在していた。その一族の長である「御先」はやがて一つの選択を行う…
不死長命の日本的な物語といえば人魚伝説が頭にあるのですが、なぜだか不老不死、というテーマには哀切さがただよい、この作品の雰囲気にも物悲しさと絶望に近い虚無感を感じました。
人の形をしていながら人ならざるものとして、人の世界で生きる。人よりも永久に。遥かに遠い水平線を眺めつづけて生きながらえるような…、ゆるゆるとした絶望に浸されているような生だな、と感じたのでした。
「四」とのやりとりは軽妙で、だからただしんどくなるお話ではありませんが、少女のエピソードや御先自身の過去などの印象が強くて、やはり物悲しさを全体的に感じたお話に思いました。 -
うーん。
『魚神』の方が好きかなー。
千早茜の作風が好きで、ハードカバーで買った作品も多いのだけど、今作は一番ライトでよくある設定なのが残念。テーマに迷ってる?
初めに書かれた「シラ」が一番きれいに仕上がっている。
不死の人間は、やっぱりかぐや姫化しちゃうんかねぇー。
そんな彼女?を愛おしい目で見つめる雅親くんがもう可愛すぎる。
つまりは書き下ろしに雅親くん目線の「躑躅」があって、満たされたのでした。 -
カバーイラストを手がけた中村明日美子と本作がマッチしていて、アニメのように頭中で映像が流れてきた。