- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041037942
作品紹介・あらすじ
瀬戸内海の小さな島が挑む、映画『007』ロケ誘致活動に女子高生の遥香も加わった。島が少しでも発展すればとの思いからだった。署名運動や“ボンドガール・コンテスト”、記念館設立など、プレハブ小屋の直島町観光協会が主導する活動はすべて手作り。だが、やがて署名数は8万を越え香川県庁も本格的に動き出す。ついには映画会社から前向きな返事が届き島は熱狂するが……。2003年以降、直島を揺るがした知られざる感動の実話。単行本にはなかったロケ誘致運動当時の報道など数多くの画像に加え、著者による序文「まえがきにかえて」も初掲載!追加取材によって明らかになった事実も組み込んだ改訂版!!
感想・レビュー・書評
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今や芸術の島として「瀬戸内国際芸術祭」には欠かせない直島が2003年から「007」のロケ地誘致の為に奔走する島の人々の姿を描いたノンフィクション。
まだベネッセが「福武書店」だった頃、現在のベネッセハウスを建設する頃から話が始まる。
併設したホテルに「007」の小説家が滞在して、直島を舞台に新作を書いていたと言う話から、「直島で撮影を!」と直島の人々、香川の観光協会などが様々な企画を実行していく。まだフィルムコミッションがメジャーではなかった時代での誘致活動は大変なものだったと想像出来るし、直島の人々の頑張りに心を打たれる。
しかし、何年経っても、ロケ地の決定の連絡がもらえない。
そのうち、映画の権利が別の会社に移り、絶望的な結末を迎える。
基本は中学生だった遥香が25歳になるまでの視点で描かれる。大人たちの行き当たりばったりの考えを冷静に傍観している遥香が凄い。
結局ジェームス・ボンドは来なかったし、今もコンビニは1件しかなくて、ベネッセハウスと地中美術館と赤と黄色のかぼちゃのイメージが強くなってしまってしいるけど、古民家を利用した街プロジェクトは現在ではアートを愛する人たちの聖地になっているし、今、憧れの島の一つになった直島は、この「007」の誘致に全てを捧げた人たちの精神が受け継がれている気がする。
非常に興味深い作品だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
松岡圭佑さんの小説は史実や事実に基づいたものが多く、毎回ドタイプ。
今回は、引っ張って引っ張って、どうなる?結果どうなる?
と焦らした結果。。。
現実としては小説のようなことが重なるけれど
小説としてやはりインパクトがイマイチと思ってしまった。
でも、そこを曲げずに書いた松岡さんの人柄も感じた。
現在の直島はとても魅力的な島になっている。
その背景に、島の人たちの苦悩や向上心があることを知ると
ぜひ行ってみたい場所の一つになった。 -
とてもよかった。
地方は存続のために、色々な取り組みをしている。瀬戸内海にある直島は、私自身アートの島として期待し訪問したことがあった。この本ではそれ以前からの話も含めて、007のロケ誘致の取り組みが描かれている。
主人公はその誘致活動に積極的に参加しながら、地元のこと、自身の進路のこと、家族のこと、色んなことを考える。終盤では見事に成長しているなぁと感じられた。
他の人にオススメしたい本であり、アートの島ではなく、素直に、直島を見に再度行きたいと思った。 -
タイトルに惹かれて買ってみた。
私らから少し上の世代にとって、007シリーズはある種共通の思い出として残っている映画ではないかと思う。
殺しのライセンスを与えられたスパイという存在、かっこいい車、意表を突いた小道具、水着の美女、魅力的な悪役…。
今でもBSで時々やっていたりするのをつい見てしまうけど、初期の作品はどれを取っても一級のエンタテインメントだった。
私は少し出遅れて、初めて映画館で観た007シリーズは3代目ボンド、ロジャー・ムーアの「黄金銃を持つ男」で、その頃は初期のものから多少路線がズレてきて、より漫画チックの大仕掛けな電気紙芝居の様相が強くなって来た頃だったけど、それでもお約束も含めて一定の楽しさを与えてくれた。
そんな007シリーズの新作に日本が取り上げられ、香川県の直島もそのひとつの舞台となり、それを機に、島の人々が寂れた島を活性化するために映画のロケを誘致しようと奮闘する、実話を基にした物語。
直島は私には仕事で少し関係した三菱マテリアルがある場所として馴染み深いけれど、一般的には今やベネッセを中心としたアートの島として有名で、だけども、ここに至るまでは三マテも環境破壊の元凶のように扱われ、ベネッセもまた酔狂にしか見えず、直島はコンビニも病院もそのほか何にも無い島でしかなかったということだったよう。
日本が舞台になった作品には1967年の「007は二度死ぬ」があり、浜美枝がずっとビキニ姿で動き回るクライマックスは今見るとセクハラそのものと思えるけれども、それは置いといて、当時の007のヒット振りからして日本でのロケがどれほど盛り上がったかは想像に難くない。
その夢よ再びと、最初は県から押し付けられた態ながら、いつの間にやら我がこととして動き出す島の人々。往時の輝きを知る世代としては入れ込む気持ちが良く分かり、その時代への名の懐かしさも相俟って興味深く読める。
活動の最後は切ない結果に終わるけど、それもまた、ジェームズ・ボンドと言えばダニエル・クレイグのこととなり大人のための見世物から正統なハードボイルドになったシリーズに取り残された世代には、作品に相応しいペーソスに感じられた。 -
なんという話だろう。
直島に007の映画を誘致しようだなんて、読んだ最初は「無理でしょ」と思い読み進めていくうちに、直島の写真の人たちのひたむきさに「実現するかも」と「ジェームズボンドはこない」と、わかっているのに期待してしまった。実話ということで随分とキツイ状況にもなり、役所の非情さも浮き彫りになる現実だったけど良い本だった。
007映画が見たくなる -
映画が好きで書店に平積みしてあって、面白そうだなーと思って衝動買いした本。楽しく読めました。直島はアートだけじゃなかった。小さい島ながらエネルギー、推進力の高さ!
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これ人名以外は実話なのな。なかなか面白かったなー詐欺師出てきたり元から実現できない話だったりと実話ならではのしょぼい展開がリアルだった。しかしうまいこと小説にするもんだからテンポよく楽しく読めた。これが実話って事は同じ断りが書かれてたヒトラーの試写室も実話なんだなって後から思ってそこそこ驚いた。
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実話を基にしたという作品。
香川県の直島を舞台に、映画誘致活動を通して主人公・遥香と、島の人々の変化や成長が描かれています。
目標は、「007」の映画ロケを誘致し、島を経済的に豊かにすること。
10代の遥香は、ただただ都会的なかっこよさに憧れ、映画のロケが実現すれば自身の住む島もカッコイイものになるのでは、という子供らしい純粋な気持ちから誘致活動に参加する。
島の大人たちはそれぞれの事情から病院すらない直島を、暮らしやすい島にしたいという思いから経済的発展を祈って誘致活動を行う。
初めは手探り状態だった誘致活動が必死の署名活動等を通し、徐々に規模が大きくなり、ついにはマスコミも直島に押しかけ、映画ロケの誘致は、決まったも同然かのようなところにまで達するが―。
誘致活動が大きく前進した瞬間は、さすが実話を基にしているだけあり、読み手の私も鳥肌が立ちました。
また、誘致活動を続けながら様々な経験を通して大人になっていく遥香も大変魅力的に描かれており、爽やかな青春小説としても楽しめる作品です。
東京生まれ・東京育ちの両親のもとに生まれ、関東の田舎町で育てられた私には地元愛というものが、全くありません。
かと言って東京が故郷かというと、そういう感情もありません。
ですので、個人的にはこの作品に登場する、直島の人々の故郷への想いが大変印象に残ると同時に、羨ましいと感じました。
映画のロケは実現しなかったけれど、遥香島の人々が起こした、小さいけれど素晴らしい奇跡には目頭が熱くなりました。
2015年11冊目。 -
007が好きという理由だけで目に止まったこの本。
2004年前後、当時流行ったもの(電車でGO!、倖田來未、AKB48オーディション…)が散りばめられていて、そんな時代よねぇ、と懐かしく淡い気持ちになった。007ファンとしても、ピアースブロスナンからダニエルクレイグに代替わりした件やシリーズの映画名がちょこちょこ出てくるあたりも心をくすぐられる。
島の人たちの温かさ、素直さ、おおらかさを感じながら、要所要所でクスッと笑える要素もあり、読んでいてほのぼの、ちょっぴりハラハラ。最後は爽やかな気持ちで読み終えた。
直島がアートの島と言われるようになった経緯を知ることにもなって、素直に「読んでよかった」と思える。
ダニエルクレイグ直筆サイン入りポスターを見に、007記念館、行ってみたいなぁ。 -
個人の勇気と善意が直島を救う。
田舎感たっぷり時間はゆっくり流れ
島の人は素直な性格。
言えに言えないウソも人の夢を潰したくない、
自分も一緒に夢を見たい気持ちから。
ただ、行政は違う。言いだしっぺで、
失敗したら、どうしようと人を想う前に
自分のことを考える。
日本人の善意に甘え何もせずに利を得るのは
何者か……