はだかんぼうたち (角川文庫)

  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041037973

作品紹介・あらすじ

桃は35歳の歯科医。入籍間近と思われていた恋人と別れ9歳下の鯖崎と付き合い始めた。だが鯖崎は桃の親友の主婦・響子にも興味をしめす。一方、ネットで知り合った60歳の男と同棲していた響子の母・和枝が急死。亡き母の同棲相手への対応を巡り響子は夫と衝突する。そんな響子に鯖崎が接近し始め、桃は別れた恋人と再び会ってしまう……。年齢も境遇も異なる男女たちを通して恋愛、孤独、結婚の赤裸々な姿が浮かび上がる。

感想・レビュー・書評

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  • 歯科医の桃は9歳下の鯖崎と付き合いだすが、彼は桃の親友の子だくさん主婦の響子に惹かれだす。彼は異性に関しては自由人なのだ。

    江國作品には珍しく、桃の元カレとその妹、姉、両親、親友響子の家族、母親とその同居人のボーイフレンド、アパートの住人などなど、多くの登場人物が次々と登場する。

    目まぐるしく視点が入れ替わるが、どの登場人物にもそれぞれの色がついているのはさすが、としか言いようがない。ちょっとした動作、選ぶもの、気に入るもの、をこちらに示されることによってその人の人となりが頭に入ってくる。

    もう1つの江國作品にしては珍しいことは、子だくさん主婦、というところ。あと子供が全員性格が可愛くない。亡くなった母親・和枝の同居人でBFの山口も面白かった。

    私にとっては、冒険心を以て選ぶ作家さんではなく、安心安定の港のような江國さん、大好き。もう駄目だ、というときに手に取るために、わざと数作品は積読にしている。

  • 江國香織さん独特の空気感がこの小説にも流れていました。
    感情表現は少なめで、気づいたら登場人物の心情や関係が変化していっています。
    それに品を感じました。
    不倫をここまで上品にかけるのはすごい。下品に感じさせないのはもはや巧みな技でしょう。

    穏やかすぎて映画化とかもしするようならば面白くはないだろうなという感じ。それくらい小説との相性が抜群ということです。

    友達と、旦那と、子どもと、両親と、元妻と、新妻と、亡き母と、、
    大切なひとたちとのさまざまな交じり合いを存分に感じる作品でした。

  • 消え入りそうな繊細なレースの装丁と
    誰かに選ばれなければいけない そんなことを考えず生きたいと願うあなたへ というフレーズにびびっときてしまった
    江國さんの本ははじめて。
    めくってみたら本来のカバーはキューピーちゃんなのもなんだか可笑しくて、読み終わった後に見ると登場人物たちの心を想って愛おしい。

    出てくる人たちはみんな少し不完全で歪で、人間みがある。不器用で、なんだかうまくいかない。

    時系列にはのっとっているけど、コロコロと変わる視点に追いついていくのが最初は難しくて、でもどんどんとひきこまれる。解説を読んでなるほど!となったので、是非再読したい。

    誰かに選ばれなければいけないという気持ちがなくなったか?と言われたらそんなことはないけど、
    心の動き、フレーズがなんだか綺麗で心地よくて、他のお話も読んでみたくなった。




  • 話の展開には引き込まれるのだけれど、もう少し焦点を絞って欲しかった。
    ちょっと残念。

  • 鯖崎がどうも気に入らない。桃をたぶらかしているのに既婚者の響子にも熱を上げているところが卑怯だと思う。桃の気持ちにも気づいているのに、わざと真剣にならず遊んでいるのは桃の時間を無駄にしている。
    由紀の考えは古すぎて嫌になるが、この親あってこその子供だと思った。桃も陽も由紀によく似ていると思った。

  • 出来事が淡々と書かれている。登場人物の関係が見えてくるのがおもしろかった。描写が素敵です。串とか空のコップとか、出てくる物全部に人の心が表れているようだった。誰とも全部はうまくいかなくて寂しい。
    桃は、まず名前がかわいい。華奢な美人で頭も良く、私からしたらとても羨ましい女の子だったので、鯖崎が響子に興味を持ったときには鯖崎見る目あるじゃん!と思ってしまった。でも桃のことは好きです。
    鯖崎は実際いたらこんなヤツ嫌いだと思いながらも大好きになるだろうなと思った。
    最後の方、由紀に鯖崎を『彼』と紹介しているところがリアルだった。ママにわかるように当てはめるしかないんだよね。
    あとは未来ちゃんが辛かった。お姉ちゃんを強要しないでほしい。響子にキツくなるのもわかるよ。
    読後はなんだかぼーっとするような余韻があった。その後2時間お昼寝した。

  • 生きていようと死んでいようと、人が他者に期待できるのは、結局のところ「部分」なのだろう

  • 人と人とのつながりとか、心情の揺れ動きとか、柔らかくて温かなストーリーだった。
    人間関係の全てに名前を付ける必要なんてない。
    言われてみるとハッとする言葉だった。
    男女の関係が必ずしも恋人である必要はないし、友情の延長に肉体関係があってもいい。
    お互いがそれで納得しているなら、他人にどう思われようとそれは関係ない。
    当たり前なようでいて、周りの目を気にするがゆえに忘れがちなことだと思う。

  • 次々出てくる登場人物を覚えきれなそうで、紙を用意しようかと思った頃から、どんどん読み進められるようになった。

    感情移入する人はいないけれど、江國さんが描くと、そんな人もいるよ とすんなり受け入れられるから不思議。

  • なんでもはっきりさせたがる人が周りに多い中で、言語化しなくてもいい関係ってあるよね、と主人公の視点に共感。
    ラスト50ページくらいはどう収束させてくれるの、、、とやきもき。続きを想像してしまうラストがこの作品の醍醐味なのか。いや、続きが読みたい、、、
    江國作品は生活を丹精に描いてくれる。この作品も随所に切り取られた生活が美しい。
    読み終わると感性が塞ぎがちな日々の生活が彩り豊かなものに変わってくる、、、ことを期待して新刊を手にしてしまうのだ。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに・かおり):1964年東京生まれ。1992年『きらきらひかる』で紫式部文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、07年『がらくた』で島清恋愛文学賞、10年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文学賞、12年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、15年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞など数々の文学賞を受賞。他の小説作品に『つめたいよるに』『神様のボート』『東京タワー』『抱擁、あるいはライスには塩を』『彼女たちの場合は』『去年の雪』『ひとりでカラカサさしてゆく』『シェニール織とか黄肉のメロンとか』『川のある街』など多数。『絵本を抱えて部屋のすみへ』『いくつもの週末』『雨はコーラをのめない』『旅ドロップ』などのエッセイ集や詩集・童話・翻訳など多彩なジャンルで活躍。 

「2024年 『読んでばっか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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