娘役

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 178
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041038840

作品紹介・あらすじ

宝塚の娘役と、ひそかに彼女を見守り続ける宝塚ファンのヤクザの組長。決して交わるはずのない二人の人生が一瞬、静かに交差する――。
宝塚歌劇団雪組の若手娘役・野火ほたるは新人公演でヒロインに抜擢され、一期上の憧れの先輩・薔薇木涼とコンビを組むことになる。ほたるの娘役としての成長とバラキとのコンビ愛。そんな彼女をひそかに遠くから見守り続ける孤独なヤクザ・片桐との、それぞれの十年をドラマティックに描く。『男役』に続く、好評の宝塚シリーズ第二弾。

感想・レビュー・書評

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  • 前作の『男役』は、宝塚大劇場に永遠に存在し続けるファントムさんの、
    切なくもひたすら美しいファンタジーでした。
    今回もてっきり宝塚の『娘役』さんのお話かと思っていたら、
    いきなり、ヤクザのヒットマン登場!
    宝塚とヤクザ、最初は違和感たっぷりでしたが、とても良かったです。
    (ただ一箇所、どうしても受け入れられない部分が…。)

    義理人情に厚く、昔気質の任侠道を貫く天下の大親分・オニケン。(通称・ムッシュ)
    オニケン暗殺の密命を受け、尾行する鉄砲玉・片桐。
    この二人の師弟関係がとても好き。
    反社会勢力ではあっても、五十年来、宝塚をこっそり愛し続けたムッシュが率いる
    組のモットーは「品格・行儀・謙虚」
    (本当は「清く・正しく・美しく」にしたかったらしい。笑)
    ムッシュとの出会いがきっかけでヅカファンになった片桐。
    その片桐が憧れ続けた娘役・野火ほたる。(通称・のび太)
    このタカラジェンヌの話もとても良かったんですが、
    ヤクザ達の印象が強すぎてしまって…。

    あぁ、でも、どうして花の道なんだろう…。
    のび太のトップ娘役のお披露目公演、
    その晴れ舞台の初日に花の道でなんて、あまりに惨い。
    片桐はカタギになったはずなのに…。
    「神聖な宝塚大劇場を、極道の血で穢したらあかん」
    かつて、オニケンだってそう言っていたのに。
    のび太の晴れ姿、一目観させてあげたかった。
    あぁ、せつない。

    でもこれからは、誰憚ることなく観劇できるんですね。ムッシュと一緒に。

  • 中山可穂さんの宝塚作品2冊目です。
    面白かったです。こちらも熱量がすごかったです。
    前作の「男役」は宝塚のジェンヌさんの中でのお話でしたが、今回は娘役のジェンヌさんのストーリーとヅカファンのヤクザのストーリーとあって、ヅカファンの気持ちに入り込んで読めました。
    のっけからヤクザ描写で何が始まるんだ…と思いましたが、ムッシュとギリさんのヅカファン心理が、宝塚の舞台は一度しか観ていないわたしでも、こんな感じなんだろうな、と思わされました。
    宝塚歌劇団の描写も好きでした。
    「娘役とは宝塚以外の世界にはいない、一から十まで作り込まれた、男役のためだけに存在する幻の女なのだ」。
    そして、花組を退団する二番手さんの台詞「男役は黙って黒燕尾、クサく、匂い立つようにクサく、黒燕尾のテールに至るまで流れるようにキザるべしと先輩方に叩き込まれて幾星霜、私はもはや花組でしか生きていけない体になりました。」などで、宝塚は組によってカラーが違うんだなと改めて思いました。
    娘役のほたると、ギリさんの一度きりの会話がなんだかとても切なかったです。
    ラストはなんとなく…でしたがやっぱり悲しかったです。

    近々、月組のバウホール公演のライビュを観に行くので、ますます楽しみになりました。

  • ヤクザの片桐は敵組の組長であるムッシュを殺そうと尾行していた、ある日珍しく一人行動をしていたムッシュの行き先はなんと宝塚大劇場。その公演中に初舞台生野火ほたるのパンプスが飛んできて、それを受け止めた瞬間から片桐の人生は変わり始める...。

    ギャグとして楽しみました。ガタイのいい片桐が毎回良席で観劇してると生徒の間で話題になっちゃうとか、他の組員に知られないように歌劇を隠し部屋にしまってるとか、寿司屋でほたると組長さんに遭遇して差し入れをすることになったとき、”組員のみなさまへ!”と言っちゃうところとか、想像して笑えました。宝塚の内部事情的なところは完全にファンタジーなんだけど、嘘くさくなく結構リアルぽくうまく描かれていて感心しました。もっと素人のドリーム小説的なものを想像して、ハードルをめっちゃ下げて臨んだので、意外と話として成り立っていて一気に読めちゃいました。ラスト、花の道での殺人騒動(!)の末、ほたるのお披露目姿を見ることなく死んでいく切ない終わり方も良かったです。

  • 宝塚の娘役の清く正しく美しくの日々と、ひょんなことから宝塚の世界にどっぷりハマってしまったヤクザのある意味、成長の物語。まるで少女漫画のような展開だが、少しも口説くない。むしろ、愛着を覚えてしまうほどだった。この作者の作品は、文章の隅々まで独特の美意識が散りばめられているイメージが強いが、今回も、冒頭の男役が娘役を抱えて回るリフトのシーンの描写は一切の迷いもない華やかさに満ちていてすごく良かった。また、前作の「男役」は割とあっさり終わってしまった印象があったが、今回の作品は終わりまで丁寧に作り込まれていて楽しめた。

  • 読み進めると結末は何となく想像がついてしまうのですが、それでも良い物語でした。

  • 宝塚の娘役のほたるとラインダンスで飛んで来た靴をきっかけに彼女のファンになった片桐のほぼ交錯しない物語に徹底した夢があって良い。男役達、娘役達のひたむきな日々と華やぎに引き込まれ、ファンとして見守る片桐やムッシュのヤクザな日常とは裏腹な無垢さも良かった。夢に生きられないヤクザの結末が悲しかった。

  •  この人の小説は、『白い薔薇の淵まで』と『感情教育』の2冊を読んだことがある。いずれも素晴らしかった。

     この最新作は、過去に読んだ2作の緊密な文体に比べると、肩の力を抜いて書いている印象だ。
     ただ、そのリラックスした感じは悪くないし、すこぶる読みやすい。

     ヒロインは、宝塚歌劇の娘役。そしてヒーローは、なんと“ヅカファンのヤクザ”というぶっ飛んだ設定である。
     その娘役・野火ほたると、彼女のファンになったヤクザ・片桐蛍太の、10年間に及ぶ物語。
     ほたるを中心とした宝塚の舞台裏と、片桐を中心としたヤクザの世界が、並行して描かれる。

     小林まことの『ホワッツマイケル』には、無類の猫好きであるヤクザの組長が、そのことを組員たちに知られまいとする様子が笑いを生むシリーズがあった。
     この小説にも、ヤクザが場違いなヅカファンの世界に入り込むことから生まれる“ギャップの笑い”が、随所にある。 

     その一方、映画『冬の華』を彷彿とさせる哀切さもある。
     あの映画で、高倉健演ずるヤクザは、自分が殺してしまったヤクザの娘(池上季実子)を、「あしながおじさん」と化して陰からそっと見守りつづける。
     同様に、片桐はヤクザとしての分を守り、女優としてのほたるをただ見守るだけで、それ以上近づこうとはしない。

     物語の中で2人が直接言葉を交わすのは、偶然からのたった一度だけ。2人は手さえ握ることなく、ほたるは最後まで片桐がヤクザだとは知らないままだ。ストイックでプラトニックなラブストーリーである。

     難を言えば、宝塚のパートにはリアリティがあるものの、ヤクザ同士の会話のやりとりなどにやや不自然さがある。作者がヤクザの世界のことを「にわか勉強」してそれ風に書いている感じで、いま一つ雰囲気が出ていないのだ(「そういうお前だって、宝塚の世界もヤクザの世界もよく知らないだろ」とツッコまれるかもしれないが、知らなくても、作者の知識レベルは行間から伝わるものなのだ)。

     とはいえ、それは全体からみれば小瑕で、なかなか面白い小説だった。

     宝塚の世界だけで通用する符牒が飛びかう会話を読んでいるだけで、門外漢の私には、そこはかとなくおかしい。
     たとえば――。

    「私は花男ひとすじ十五年、ウインクや投げキッスや腰振りに磨きをかけ、ひたすらエレガントにキザることに精魂傾けてきた人間です。(中略)男役は黙って黒燕尾、クサく、匂い立つようにクサく、黒燕尾のテールに至るまで流れるようにキザるべしと先輩方に叩き込まれて幾星霜、私はもはや花組でしか生きていけない体になりました」

     著者の宝塚シリーズ第一弾『男役』も読んでみよう。

  • 男役がより宝塚の内面を書いたなら、娘役は宝塚を支える外側を書いた話。

    なににおいても、エピソードやら芝居やらがこの話をモチーフにしてるのでは?とかもろもろ考えちゃうのは仕方ない。

    でも、今回はギリというヤクザもんが絡んできて
    まったく違ったファンタジー感激しい話に。
    こんなんあるわけない!と思いつつ、それでもなんだか一心にファンを続けるその思いに酷く心打たれる。

    そして最後は泣いてしまう。
    劇画のようなあるわけないやん!な訳だけど
    でも泣けるんです。

  • 宝塚の世界はわからないけれど、ヤクザの世界はもっとわからない。でも、こんな世界があるのかも、と思わせてくれる。それぞれの感情が鮮やかに伝わってきました。


    ラストは切なく、しかし美しく。
    映像が脳裏に浮かびあがりました。

  • 純粋に面白く読んだ。宝塚メインではなく任侠の話も多かったからかえって良かったのかも。「男役」読んだくらいで宝塚の事は無知だけど観てみたいなと思わされた。一生のうちに1度位見たいものです。
    最後やはりそうかという感じだったので、しょうがないんでしょうが…。また宝塚もの、書いていただきたいです。が、本来の中山さんのスタイルの本も読みたいなぁ。

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著者プロフィール

1960年愛知県生まれ。早稲田大学教育学部英語英文科卒。93年『猫背の王子』でデビュー。95年『天使の骨』で第6回朝日新人文学賞受賞。2001年『白い薔薇の淵まで』で第14回山本周五郎賞を受賞。

「2019年 『ゼロ・アワー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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