- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041038994
作品紹介・あらすじ
いまいちやる気のない従業員で売り上げが落ちこむ中堅ホテル・フィデルホテル。
支配人の永野は悩みながらも改善策を打ち出せないでいた。
そんなある日、大学で社会心理学を教えていた変人教授が社長職に就くことに。
彼が打ち出した案は「従業員総選挙」。
落選すれば解雇もやむなしという崖っぷちの投票制度。
ざわつく従業員を尻目に、さらに管理職の投票も行われた。
混乱しつつもなんとか新体制が整い、徐々にそれぞれが新たなやりがいを見いだしていき……。
『県庁の星』の著者が描く、感動のエンタメ小説。
感想・レビュー・書評
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なんとなく図書館でタイトルが面白そうで借りてきたの。
あっちこっちの党の代表選挙?やってたしね。
社員が社員同士で立候補して総選挙やって、落選すればクビだし、他の職場で当選すれば辞令がおりて部署も変わる。
意にそぐわない移動もあるんだけど、周りの人がこの人にはこれが向いているんじゃないかって投票するから、これが案外良かったりなんかしたりして。
その部の上司まで選挙で選んじゃうしね。
なかなかそう上手いことできる職場ばかりじゃないのは分かるけど、こんなことができたら面白い取り組みだよなぁって。
自分じゃ自分のことわかっているようで分かってなかったりもするしね。
クビになったら立ち直れないかもしれないけど、こんな取り組みがあったら一度くらい参加してみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「選挙をしよう」
設定がかなり面白いと思い手に取った作品。
かなり頻繁に視点が変わり色々な人が交互に描かれていました。しかしそれが読みながら誰の話なのかがイマイチ分からないことが多いように感じました。 -
フィデルホテルの新社長が、経営難のホテルをたて直すためにとった策とは、なんと従業員による総選挙!物語にはとにかくたくさんの人物が登場するが、それぞれのキャラクターが個性的なので混乱はなかった。従業員にはみな自負があり、希望して就いた職種だからこそ、選挙までのアピールと空気読みに全力を傾ける。しかし結果は各人にとって意外なものだった。自分のことをよく理解しているのは案外他人なのかもしれない。思いこみを捨てて周囲の意見を聞いてみるのも、自分自身の打開策になるのかも。後半、登場人物たちが新たな環境で悪戦苦闘する様子に、フィデルホテルの明るい未来が見えた気がした。
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道楽学者が理論上のなんとやらでテキトーなこと言い出したよ〜と思いながら読み始めたのに、最後はビバ・フィデラホテル!と拍手喝采してしまった。
支配人のあらゆる心配わかるわかるーって感じだったのに、予想を裏切られて私も支配人も接客業の悪いところを見すぎていたわね…という気持ち。 -
人の心が変化していく様に胸がギュッとなりました。仕事ってそんなに捨てたもんじゃないなと思いました。そして、社長さんがとても可愛いらしく、支配人とのコンビ感がとても微笑ましかったです。
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身売りか商売替えの段階まできている創業45年のフィデルホテル。ホテル再建に投資ファンドの柴田が社長に任命したのは、28年間社会心理学の研究をしていた大学教授の元山。フィデルホテル一筋の支配人永野は、社長のスタッフ全員の部署を総選挙で決めるという斬新すぎるアイデアに驚きつつ実行する。仲間が仲間をリストラするという事態が結果、思わぬ方向に。適材適所というのは、本人よりも周りからの評価でぴったりと合ったりするのかも。ホテルの経営回復を実験の場ととらえていた元山も自分の与えられた部署の仕事を淡々とこなしていたスタッフも少しずつ自分のホテルという気持ちが芽生え、よりよくする為にと考えるようになる。常連客の今井に顔付きがしっかりしてきたと支配人永野は、言われる。スタッフたちの気づきが成長につながってきている。今後のフィデルホテルが楽しみだなぁーと思わせてくれる。
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初めて読む作家さんでした。
話の展開が早いってのが一番の感想。
急に1週間経っちゃったり、話が終わったと思ったら次の人の話だったり。
私にはついていけなかったかな。 -
突拍子もない話だけど、
働く醍醐味ってこういうことか。
意外と自分には自分に何が合ってるか分からない。
変化に落ち込むことはあっても、
そこでどう適応するかで人生は変わる。 -
心理学者の元山さんがフィデルホテルの社長となり、経営が傾いているホテルを改革するお話。と言っても、社長が張り切って指示をするわけではなく、スタッフ自ら動くようになるためにどうしたら良いかを考え、アイデアを投げかけている。
「柔軟さと強靭さを併せもつ組織になるような仕組みを作ること」が役目と考えている社長。その考えに共感できた。柔軟で素直なことは、強さだと思う。トップ自身が柔軟でうるさく言わない人だと、下の社員が自分で工夫し行動しやすいこともわかった。
ちょっとマニュアルから外れても、目の前のゲストにとっての一番を考えて行動する。私もそうありたい。一人一人のゲストにきちんと向き合うことが仕事の楽しさで、結果はついてくるもの。 -
ホテルの経営再建をテーマにしたヒューマンドラマ。
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設定がおもしろい。
業績不振からの脱却を託された元山靖彦は大学教授。ホテル業界はおろかビジネスとは無縁の世界にいた学究です。
専攻は心理学で、理論を実践で試すために社長職を引き受けた―― とのっけからぶっ飛んだ内容になっています。
社内改革の方法もぶっ飛んでいます。
従業員同士で評価させ、現在の所属部署がふさわしいかを選挙で決める。結果はリストラにも使う。
当然、支配人の永野はじめ従業員一同は戸惑い不審がり不満の声を上げる。
しかし元山は、そんなことなど一向に気にせず改革を推し進めるうちに……。
何と言っても核となるテーマがよかったと思います。
まず適材適所。これは共同社会で生きる人間にとっては永遠のテーマと言えるでしょう。
そもそも少ない管理職が多くの部下の適性を的確に把握するのは無理があると思います。だからこの総選挙制はある意味、理に適っていると言えるでしょう。大勢の見る目の方がブレが少ないからです。( 悪意がなければ )
だからこそ、新部署で自分の適性に気づいた従業員たちが仕事にやり甲斐を見いだせたのです。これは自然の流れでしょう。( 性悪はリストラされたが )
次に、自ら考えて動ける力を身に着けさせること。活気があり業績好調な職場にはそれができる人材が多いのは周知の事実です。
その力を養う上で肝要なことが2つあります。1つ目は、自分にとってやり甲斐のある好きな仕事に従事できていること。2つ目は、そんな自分をちゃんと見てくれている人がいる(と感じられる)こと。それにつきるでしょう。
新社長の心理学理論の実践は、見事に狙い通り的中しました。
最前線に立つ従業員ばかりか、支配人の永野までも大きく成長し、自ら的確な判断で元山を補佐できるようになりました。( 元山の適性を見抜くまでになってもいました。)
成長した従業員たちが身に着けたおもてなしマインドは、まるで故石ノ森章太郎氏のマンガ『 HOTEL 』でお馴染み「プラトンマインド」のよう。そりゃ業績は回復するはずですよね。
意表を突くような展開でまったく退屈させない、しかもサバサバしたよい作品だったと思います。