望み

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.92
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041039885

作品紹介・あらすじ

あの子は殺人犯なのか。それとも被害者なのか。揺れ動く父と母の思い――。

東京のベッドタウンに住み、建築デザインの仕事をしている石川一登(かずと)と校正者の妻・貴代美(きよみ)。二人は、高一の息子・規士(ただし)と中三の娘・雅(みやび)と共に、家族四人平和に暮らしていた。規士が高校生になって初めての夏休み。友人も増え、無断外泊も度々するようになったが、二人は特別な注意を払っていなかった。そんな夏休みが明けた9月のある週末。規士が2日経っても家に帰ってこず、連絡すら途絶えてしまった。心配していた矢先、息子の友人が複数人に殺害されたニュースを見て、二人は胸騒ぎを覚える。行方不明は三人。そのうち犯人だと見られる逃走中の少年は二人。息子は犯人なのか、それとも……。
息子の無実を望む一登と、犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。相反する父と母の望みが交錯する――。心に深く突き刺さる衝撃の心理サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • ナイフ
    サッカー
    無事と無実
    馬鹿野郎

    自分の息子が殺人事件の加害者なのか?
    そんな状況に追い込まれた父と母の激しく揺れる心理が緻密に描かれ、不安や動揺の波に飲み込まれるようでした。
    朝からボロ泣きです。
    図書館本

  • 魂が揺さぶられる一冊でした。
    著者の作品はすべて読んでいますが、
    その中でも、特に忘れられない作品になりました。

    高校一年生の少年が殺された。
    被害者は息子の同級生だった。

    現場から逃げる少年たちが目撃され、
    時を同じくして、行方がわからなくなった息子。

    犯人かもしれない…
    もう生きていないかもしれない…
    生きていたほうがいいのか、それとも…

    生きている。それは加害者であること?
    被害者であることは死を意味する?
    生きていてほしいと願うことは、信じているということなのか?

    望みなき望みの中で、翻弄される家族。
    父・母・妹それぞれの想い。 
    「僕は信じます。あいつはそういうやつじゃないから」
    純粋に息子を信じてくれる友達の存在がせつない。

    苦しかった…
    この家族に感情移入しすぎて、結末がわかるまで、ほぼ300ページ、
    たった数日間のできごとが、気が遠くなるくらい長かった。

    読了後、本を閉じ、目に飛び込んできた二文字。
    これほど堪え難く、哀しい『望み』を私は知らない。

  • 初読みの作家さんだと思っていたが、最初に奥付を見たら、『検察側の罪人』の作者だった。
    なので私が読む、著者の2作目。

    【大いにネタバレ】


    本書では父・母・妹のそれぞれに考え方を分担させていたが、自分だったら自分ひとりの中でいくつもの希望的観測で揺れ動いたことだろう。
    我が子を信じたいし生きてて欲しいし被害者側にももちろん絶対なりたくないが、凶悪犯罪者の家族となる未来は、この母親のようには私は受け入れられない。

    この母親は、息子が身柄を確保された時に弁当を差し入れようと考えるが、山かどこかで遭難して行方不明になっている息子が生きて発見されることを願っているのとはわけが違うのだから、加害者としてでも生きて確保されて欲しいと望むのなら、今のうちから弁護士を手配することを夫と相談したら?
    この状況で娘に犬の散歩に行けと言うし、息子からナイフを取り上げたことを後悔したり、逆にナイフを持って行っていたと知り安堵したりするしで、私には理解できない。

    父親は父親で、自宅と同じ敷地内にオフィスを構えているこの状況で、アシスタントの梅本に何日も何も言っていないのも無責任だし、いくら息子も被害者に違いないという信念のもとであっても、被害者の葬儀に行き、テコでも動かない態度は「常識をわきまえろ」とぶん殴られても仕方ない振る舞いだと思う。

    ただ、こうして読み進めて行きクライマックスに差しかかった段で急に、自分が突拍子もない、物語としては破綻している、自分にばかり都合の良い第3の結末を望んだことに、自分で驚いた。

    霊安所にある遺体は息子ではない。
    横に並べられている息子の衣服を着せられていた、警察もマスコミもネットも把握していなかったもう1人の人物なのだ。(←もうこの時点で私は、自分の息子でさえなければホッとするという悪人になっているようだ)
    でも息子は、捕まった犯人でもない!
    加害者達によってどこかで監禁されていて、衰弱しきっているけれど無事に発見される。
    (加害者は2人、殺されている人数も2人、という情報はこの段で完全に無視し、5人目を勝手に作り上げたという、ミステリーでは有ってはならない展開)

    彼ら(父親と母親)と共に霊安所(のシーン)に入った瞬間、そういう妄想、逃避をしてしまったのだ。
    これが読書の中の出来事で良かった。

    事件・事故・病気・災害の当事者になったら、読書なんてしていられない。
    読書できるという平凡な日常に感謝。

    本書を読んで考えたこと。
    本書のように、今の日本ではマスコミの突撃取材やネットによるデマや誹謗中傷、家族や家(建物そのもの)への攻撃が発生するようなことが、欧米ではなんとなく無さそうな感じがするのだが、その辺、どうなんだろうか?

  • 小説を読んで落涙したのは、いつ以来だろうか・・・
    同じような少年犯罪を扱った作品に、薬丸岳著『Aではない君に』がある。
    『A』が、犯罪を犯した少年の父親の苦悩を描いているのに対し、本作は、加害者なのか被害者なのかわからない立場の両親の懊悩に焦点を当てている。
    加害者でもいい生きていてほしいと望む母親に対し、父親は息子の無実を信じ、また世間との兼ね合いから被害者であってほしいと望む。
    事件を巡って、娘を含めた家族へのバッシング、無責任なうわさが拡散するSNS、取引先の豹変等々。そして事件は終幕へ・・・
    作者の筆力に絡めとられたまま、読み終えた。
    中高生を持つ世代の読後感は、自分の子供に限ってこんなことはないという安堵感か、それともこんなこともあり得るかもとの不安感か。
    読者に、家族のありようを問いかける感動作。

  • 子を持つ親として、これ程切ない「望み」があるのだろうか。加害者なのか被害者なのか、分からない状況での数日間は、家族にとっては永遠にも感じることだろう。

  • 石川一登は建築デザインの仕事をしている。
    妻、貴代美は自宅で校正の仕事を。
    長男の規士(ただし)は高校生。
    妹の雅は中学生。
    ごく平凡な4人の家族。

    外泊をするようになった規士を気にかけていた一登と貴代美。
    そんな矢先、事件は起きる。
    石川家の近所で高校生が遺体で発見される。
    その場から立ち去った2人の若者。
    規士は外泊をしたまま帰らない。

    警察から規士が事件に関わっているようだと知らされた一登と貴代美。
    規士は加害者か?、それとも被害者か?
    自分たちは加害者家族か?、被害者家族か?

    事件の全容がわかるまで、真実がわかるまで、家族が望むものは…
    息子の無実?
    被害者であってくれること?
    加害者であっても生きていてくれること?

    重いテーマでした。

    ネット社会の今、否が応でも触れてしまう情報がある。
    その正確さは二の次で、人々の興味を引くものはあっという間に拡散される。
    そして、拡散された情報が、まことしやかにささやかれ始め、いつのまにやら真実のように語られる。

    私自身、情報に振り回されない!という自信がない…
    恐ろしい…

  • 東京のベットタウンに住み、建築デザインの仕事をしている石川一登と校正者の妻・喜代美。
    二人には高一の息子・規士と中三の娘・雅とともに平和に暮らしていた。
    規士が高校生になって初めての夏休み。友人も増え、無断外泊も度々するようになった。
    そんな夏休み明けた9月のある週末。規士が2日経っても家に帰ってこず、
    連絡すら途絶えてしまった。
    心配していた矢先、息子の友人が複数人に殺害されたニュースを見て、
    二人は胸騒ぎを覚える…。

    少年犯罪を扱った著書ですが、本書は犯罪に関わった少年の家族に
    焦点が当てられています。
    現場から逃げた少年は2人。行方不明になっている少年は3人。
    この矛盾から、夫婦の辛くて長い時間が始まって行きます。
    行方不明になっている規士は、加害者で友人をリンチ殺害したのか…?。
    被害者でもう亡くなっているのか…?
    どちらにしても、親としてはこれ程辛い事はありません。
    生きていれば加害者である事を被害者であれば死んでいる事を意味します。
    この可能性、望みなき望みの間で父と母の心は翻弄それ続けていく。
    夫婦の気持ちのすれ違い。揺れ動く心。移りゆく気持ちが丁寧に描かれていた。
    丁寧過ぎてちょっと長くてなかなか話が進まない…じれったくも思いましたが、
    なのに先が気になって仕方がない!
    酷いマスコミの取材攻勢。家にされる嫌がらせ。
    離れていく仕事仲間に親戚。
    面白おかしく書き立てるネット住民。
    読んでいて苦しかった。
    最後には祈る様な気持ちで読んでいました。涙が零れました。

    とてもとても重いテーマでした。とっても読み応えのある素晴らしい作品でした。

    • けいたんさん
      こんにちは(^-^)/

      この作品読んでいる人多いですよね。
      私も気になっていますがまだまだ読めそうにないです。
      早く読んでしのさ...
      こんにちは(^-^)/

      この作品読んでいる人多いですよね。
      私も気になっていますがまだまだ読めそうにないです。
      早く読んでしのさんと語り合いたいです♪
      しのさん☆4つなのでとても楽しみです◟(๑•͈ᴗ•͈)◞
      2016/12/04
    • しのさん
      こんにちは(*'▽')
      コメントありがととうございます(#^^#)

      犯罪に関わった少年家族に焦点を当てた作品で、とっても重いテーマで...
      こんにちは(*'▽')
      コメントありがととうございます(#^^#)

      犯罪に関わった少年家族に焦点を当てた作品で、とっても重いテーマでした。
      とても読み応えのある素晴らしい作品でした(*^-^*)
      うん、早く読めると良いですね。
      お話出来るのとっても楽しみです(*´ω`*)
      2016/12/05
  • 数年前に映画を観た作品。
    原作と差異が少なかったのだと、改めてわかった。
    加害者か被害者か。
    揺れ動く家族の気持ちがリアルで、一緒に辛くなってしまった。

  • ああ、予想と逆の展開だった。色々思い悩んでいたことが突然ブツッ、と断ち切られた感じ。逃亡者が二人で行方不明が三人。自分の息子は加害者なのか被害者なのか…どちらも絶対嫌だと思いながらも、やっぱり…生きてて欲しかった…。
    被害者側、加害者側どちらの気持ちも味わった気分。どちらになっても地獄なのに、世間の好奇の目にさらされて二度殺された気持ちになる。読んでてつらかった。

    • ひとしさん
      望み読んだんですね!
      辛いですよね
      望み読んだんですね!
      辛いですよね
      2017/06/01
  • 久しぶりの雫井さん。テーマは重い。…うーん考えさせられます。でも結論は出ない。

    終盤で一つの結論が出たとき思わず涙してしまいました。や、こういう作品で涙が出るとは思わなかった。しかしたとえフィクションであっても人の生き死にというのは大変重いものなのだということを今更改めて感じましたね。

    立場で真逆になる世間の扱い。
    以前「加害者家族」というルポを読んだことを思い出しました。確かに被害者家族の悲しみと怒りの深さ、喪失感や虚無感などと比較すべくもないのですが、加害者家族という存在は自らは無罪であるにもかかわらず世間からは抹殺され、決して目立たず大きな声も世間に向けて出さずただ生きるためだけに生きることを余儀なくされる、場合によってはそれさえも許されなくなるという苛烈さを、その一冊で知ったのでした。そのことを思い出しました。

    主人公一家の「救い」はあまりにむごい。
    いや本当の意味では救われていないのだと思いますが、事件が起きてしまったらもう、どうだったらよかったのかというのは意味をなさないものなのかもしれません。
    読後タイトルを見返すと一段と重みを感じます。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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