代償 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.69
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本棚登録 : 1079
レビュー : 146
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041039922

作品紹介・あらすじ

不幸な境遇のため、遠縁の達也と暮らすことになった少年・圭輔。新たな友人・寿人に安らぎを得たものの、魔の手は容赦なく圭輔を追いつめた。長じて弁護士となった圭輔に、収監された達也から弁護依頼が舞い込み。

感想・レビュー・書評

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  • あまりにも過酷すぎる主人公の思春期の受難劇を描いた第一部は、読み進むのをためらいたくなる。
    しかし、彼の運命はどうなるのか読み進みたいし、彼の行動諸共もどかしい思いを引きずりながら、頁を捲らざるを得なかった。
    嫌ミスとも思える第一部に対し第二部は、思春期の関係を断ち切れずに、悪魔的犯罪者と主人公が法廷で争うリーガルミステリーとなっている。
    決着はどうつけるのか、題名通りどういう代償を与えられるのか、息を持つかせぬサスペンス溢れる展開に、読書の醍醐味を味わう。
    これまでも、小説その他でいろいろな犯人・悪人が登場しているが、これほど悪魔的な存在が描かれているのは稀有ではないか。
    「まったく人を顧みない、全く反省しない根っからの悪を書いてみたい」という、著者の思いは、見事に果たされている。

  • 伊岡瞬『代償』角川文庫。

    評判を耳にし、読んでみた。しかも、初読みの作家。面白い。これまで読んでいなかったことが悔しいくらいの面白さだった。

    第一部に描かれた多感な時期に主人公の圭輔を襲った悲劇。圭輔が行動を共にする達也への疑念。そして第二部に描かれる達也の悪魔のような本性と弁護士となった圭輔の正義のための闘い…

    善と悪の対決。不謹慎ながら、悪が徹底的に悪として描かれれば、描かれるほど物語の面白さは増すようだ。気付けば、まるで自分が悪に魅入られてしまったのではないかと錯覚するほど、物語の中にどっぷり浸かっていた。

    平凡な家庭に育った小学生の圭輔は突然、両親を失い、遠縁の達也と暮らすことになる。達也の継母の道子に身ぐるみを剥がされ、悲惨な人生を歩む圭輔は、長じて弁護士となる。ある日、弁護士となった圭輔に強盗殺人容疑で逮捕された達也から弁護を依頼される…

  • ここまで悍ましい犯罪者を描いた作品も珍しいのではないかと思う。
    主人公の置かれた立場があまりにつらすぎて、毎日少しずつしか読み進められず、気が滅入り何度も挫折しかけた。この辛すぎる状況を作った犯罪者に、絶対「代償」を払わせてやれるのだと固く信じて、何とか1部を読み終える。
    少年期は唐突に終わり、やっと復讐できるのかと2部を読み進めるも、なかなかその機会が訪れないばかりか、反対に窮地に陥れられる主人公。まさか、こんな極悪人が野放しになってしまうのか。胸を抉られるような辛い展開だったが、作者の良心を信じ、最後まで読んでどうにか救われた。不本意ながら、面白かった、と言わざるを得ない。全く心は晴れなかったが。

  • 99.9%の有罪率を誇る日本の刑事裁判。
    その裁判を自分の思う方向へと誘導し、操り、そして翻弄する。
    達也という人間の在り方を考えたとき、こんな人間に生きていく価値はあるのだろうか?と寿人と同じように感じ、そう感じてしまう自分に愕然とする。
    幸せだった圭輔の家族に突然訪れる不幸な出来事。
    その予兆は少し前から現れていたのに、まだ小学生だった圭輔にはどうすることも出来なかった。
    生まれながらにして悪人はいないという性善説は、残念ながら達也には当てはまらない。
    自分の手は汚さず、周囲を操り、常に自分の望み・・・他人の幸せは許せない、他人を不幸にしたい・・・を、淡々と叶えていく。
    たったひとり生き残った圭輔には、子どもだからという配慮のもと、すべての事実が知らされることはなかった。
    大人になってから聞かされた当時の事実に、衝撃を受けた圭輔の心情を思うと胸が痛くなる。
    終盤に向けての展開には、ただただ驚かされた。
    隠されていた真実、用意周到に張り巡らされた達也の思惑。
    過去に光があてられたとき、ようやく見えてくる汚され傷つけられ、虐げられた人たちの辛い思いが浮かびあがってくる。
    まっすぎに、自分の中に後ろ暗いものを抱えずに生きていけたら幸せだ。
    けれど、100%真っ白な人間なんているのだろうか。
    圭輔のどこか優柔不断で臆病な性格は、達也たち親子によって心に深く刺しこまれた楔によって形成されたものだ。
    けっして爽快感が残る物語ではない。
    辛く、苦しく、やりきれない痛みが、心にじわりと傷をつけていく物語だ。
    それでも、読んでよかったと思わせてくれた物語だった。

  • 初読みの作家さん。内容的に面白いと言うのは不謹慎かもしれないけれど面白かった!
    辛くて苦しくて全く逃げ道がない、自分が圭輔だったらどうやって命を保っていただろう…と思う幼少期。
    表面的にはやっと人並みの人生を手に入れ命を繋いでいるところへ二度と関わりたくない彼らからの接触、再会の青年期。
    こんな呪われた人生があるのだろうか…

    読んでいて苦しいのに辛いのにそれと同じくらい、絶対に達也が泣いて詫びなければ…こんな人間が世の中に平然と生きていて良いはずがない…と苦々しい思いでページをめくり続けました。
    著者の執筆動機にある『全く人を顧みない全く反省しない根っからの悪を書いてみたい』もうまさにその術中にはめられました!
    いろんなミステリーの中で悪にも人間らしさが伺える部分てあったんですよ!こんな悪一色の悪って…どんなに汚い言葉で罵ろうと足りないと思うような悪って…
    また圭輔が対象的な人間だけに達也の悪が際立つ!
    こういう人はどうしたら人間らしい心を取り戻すことが出来るんだろう?
    生まれた時から悪ではなかったはずなんです。
    生活環境は勿論大きいでしょうが何が達也をここまでにしてしまったんでしょう?

    唯一、牛島夫妻、寿人が救いだった。
    彼らが居たから圭輔は生きて来れた。
    人って人によって殺される…でも人によって生かされてる!
    見えるところで…見えないところで支えてくれている人がいる!だから生きていける!
    『人として…』を考えさせられました。

  • 面白くて一気に読んだ。冒頭を読み進めながら、「俺はこの話が勧善懲悪的に終わらなかったら作者を死ぬほど恨むだろうな」と思った。鮮やかなまでの悪とどう立ち向かうのか、これ以上不幸が起きないで欲しい、とラストまでスリリングに読んだ。ラストはページが足りないんじゃないか?と不安になったけど、直接対決を経て、もう少しスカッとするかと期待してたんだけどな、と言うくらい綺麗に終わった。もっとバタバタやどんでん返しがあるかと最後まで油断できなかったし、その筆力は素晴らしい。終わってみれば本当に、猿蟹合戦に匹敵するようなド勧善懲悪的な物語だった。しかし久々に見るくらいな気持ちいい悪役だった。

    • chie0305さん
      私もキョウヘイさんと同じ感想。絶対「代償」支払わせて!と思いながら読みました。ホントいうとラストは物足りなかったです。でも、キョウヘイさんの...
      私もキョウヘイさんと同じ感想。絶対「代償」支払わせて!と思いながら読みました。ホントいうとラストは物足りなかったです。でも、キョウヘイさんのレビューは楽しくて爆笑しながら読みました。
      2018/05/21
  • この作品も一気読みさせる内容だった。

    ラストまで緊張感が続いて、これどうなる?どうなるんだ?とページを捲る手が止まらなくなった。
    と同時に、ものすごく胸糞悪くなる感情も湧くので、昨今 流行の"イヤミス”的な立ち位置にあるんだろう。

    この作者の本は初めて読んだのだが、よくもここまで悪人の中の悪人を書き出したなあ、と。
    読んでもらえれば分かると思うのだが、本当にここに出てくる道子、達也の親子は心底腐ってる、色々な意味で。

    主人公、圭輔もこの親子によって大切なものを随分失って運命を狂わされたのだが、唯一の救いは友人の寿人と牛島夫妻の存在ではないだろうか。
    最後の最後、汚名と数々の非道のツケを正面切って返した部分には拍手を送りたい。
    そして、圭輔の今後の人生が幸せと安穏の日々であることを願わずにいられなかった。

  • ほんと 一気読みと 達也が怖い。ベストミステリーです。お勧めします。

  • レビューで評価の高かった本書を古本屋で見つけ手に取る。
    中盤まで複雑な家庭環境に育ってきた達也と、ごく一般的な中流家庭で不自由なく育った圭輔を中心に進む。
    中盤にかけ読むに堪えない達也の言動・キャラクタ設定と、達也を取り巻く人間関係。後半はそれに対し圭輔・寿人チームがその裏側を暴いていく。なかなかにすっきりしない結末ではあるが、世の中には達也のような人間が比較的身近に実在するのだろうと思えてくる。

  • 以前から気になってた作品。
    ツタヤ行ったらドラマ化されてる!
    ということで、先にドラマで拝見。

    ゾクゾクしたので、本にも手を出してみた。
    やっぱり悪人は最後まで悪やねー。

    ドラマと本では若干設定も違ったけど、
    どちらも疾走感溢れてた。
    リーガルミステリー?に近いやんね。
    圭輔バーサス達也。残酷。
    一気読み。

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プロフィール

伊岡 瞬(いおか しゅん)
1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞しデビュー。著書に『145gの孤独』『教室に雨はふらない』『代償』『ひとりぼっちのあいつ』等がある。
2010年「ミスファイア」で第63回日本推理作家協会賞(短編部門)候補、2011年『明日の雨は。』で第64回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補、2014年『代償』で第5回山田風太郎賞候補、2018年『痣』で第20回大藪春彦賞候補。

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