注文の多い料理店 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1233
感想 : 85
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041040010

作品紹介・あらすじ

二人の紳士が訪れた山奥の料理店「山猫軒」。扉を開けると、「当軒は注文の多い料理店です」の注意書きが。岩手県花巻の畑や森、その神秘のなかで育まれた九つの物語からなる童話集を、当時の挿絵付きで。

感想・レビュー・書評

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  • 賢治さん祭り2作目はこちら。
    これも賢治さんフリークの教授からお勧めされたもの。9つの短編童話集ですが、この順番で掲載された角川文庫版で読んで欲しいとの事でしたので、表紙も可愛いですし購入。

    賢治さんはご自分の作品を『イーハトーブ(賢治さんの気分次第でイーハトブだったりイーハトーヴだったりするらしい)童話』と命名されているらしく、岩手県の事だそうです。
    彼の物語は『鏡の国のアリス』等の昔から人気の架空世界と繋がっている設定なのだとか。

    それを言い切ってしまう賢治さん、ぱねぇ…。(死語でしょうか)

    私が小学生の折に、担任が今思えば賢治さんファンだったようで、これでもかと言う程に国語の授業で読まされたにも関わらず、あまり覚えていなかったので新鮮な気持ちで読めました。

    賢治さんは『心象スケッチ』という造語を使ってご自分の詩集や童話を表現されています。
    自然の中に一人立ちながら、自然から受け止めたこと、感じたことをそのとおり書いた(という設定らしい)作品、という意味らしいですが読んでいて納得しました。

    どのお話を読んでも、都会に居る筈なのにまるで大自然の中にいるかのような錯覚を覚えます。

    特に『狼森と笊森、盗森』はその最もたるもので、地質学者である賢治さんが、30万年強の時を経て出来た山々の様子を描いたお話。
    その山に住む岩の視点からお話が語られるので、開拓にやってきた農民が手にしている鋤や鍬などの道具を『武器』と表現するなど、いかに自然と一体化して書かれたかが伺えます。

    お気に入りは『どんぐりと山猫』と『烏の北斗七星』『月夜のでんしんばしら』
    アウターゾーン、逢魔が時を思わせる時間に山猫から下手くそなハガキが来るというワクワク感。
    鉄砲を怖がってる辺り、『注文の多い料理店』の山猫さんの親戚なのかな?

    読み終えて、序文に書かれていた「(この物語の幾つかが)おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません」を思い出しました。

    なった、なったよ賢治さん…。なんだか大自然、ひいては宇宙と一体になって銀河を走っている気分だよ…(銀河鉄道の夜は入ってないんですが)

    都会の喧騒でお疲れの方、是非このイーハトーブで心身共に浄化され、自然と一体になっていた頃の私たちを思い出しましょう。
    (名探偵のいけにえを読んでいるせいか宗教風味に…)

  • 人間は自然の一部なのだということをシュールに伝えてくれる、独創的な本。
    宮沢賢治みずからの解説を読んで (そんなのあったんだ…)、「注文の多い料理店」の見方が変わった。つい人間目線で読みすぎていた。
    「序」が、文字どおり透きとおった美しさ。額にいれて飾っておきたい。

  • 読書録「注文の多い料理店」3

    著者 宮沢賢治
    出版 角川文庫

    p42より引用
    “ それはだいぶの山奥でした。案内してき
    た専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、
    どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
     それに、あんまり山が物凄いので、その白
    熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起
    こして、しばらく吠って、そえから泡を吐い
    て死んでしまいました。”

    目次より抜粋引用
    “どんぐりと山猫
     狼森と笊森、盗森
     注文の多い料理店
     烏の北斗七星
     水仙月の四日”

     若くして亡くなった、日本を代表する近代
    作家による童話集。
     表題作の他童話9作、実弟による解説、著者
    の年譜などが、当時の挿絵等と共に書かれて
    います。

     上記の引用は、表題作中の一節。
    人より先に犬が参ってしまうとは、よほどの
    ことなのではないでしょうか。最後まで読む
    となるほどと思ってしまいます。
     挿絵等は当時の物を可能なかぎり復元して
    あるそうで、味わいを感じます。横書きタイ
    トルの読む方向も現在とは逆で、時の流れが
    表れています。
     童話であるので、ファンタジーでありなが
    ら、考えさせられるところも多い作品集。若
    い年代のうちに読む方が、響くところが多い
    のではないでしょうか。

    ーーーーー

  • 「序」がステキすぎる。この世で最も美しい序文だと思う。この透き通った物語がキラキラしくて大切に思う。この序を根底に置いて全編読むと、賢治が語りかけてくるように思う。

  • 9篇の童話集

    「注文の多い料理店」
    抜群に分かりやすく面白かった
    発想がすごいな

    ちょっと解釈が難しい話もあった

    「鹿踊りのはじまり」
    「山男の四月」
    も好きだな

  • 宮沢賢治を読むと素直な気持ちになる。
    童話とはそういうものなのか。
    どんぐりと山猫、注文の多い料理店、月夜のでんしんばしら…みんな人間よりも動物や植物や自然やものが主人公。人間がどんなにいばっても自然の方がえらかったりする。解説その背景がわかった。
    すべての生き物はカルパ(?)の昔から流転に流転を重ねてきたから、みな親子兄弟であるという法華経の考え。魂の輪廻転生のことだろうか。

    (序)で「わたしのおはなしは林や野原や鉄道線路やらで、虹や月明かりからもらってきたものです」とか「なんのことだかわたしもわけがわからないのです」とか、確かに読んでて何のことか訳の分からない事が沢山ある。要は彼に来たお告げのようなものなんだろう。感受性の強い人に来るGiftだ。

    死にざまもすごい。理想的な死に方だ。

    物語も良かったけど、プロローグとエピローグがとても役に立った。理解が深まった。めずらしい。
    雨ニモマケズ…も宮沢賢治だ。
    こんど詩集を読んでみよう。

  • 久しぶりに手に取った宮沢賢治。
    日本語の暖かさ、美しさ、情景とそこに潜む怪しげな不思議な何か。
    話の美しさに心がときめいて、こんなだったかしらとワクワクした。
    小さい頃から何度も何度も読んでいるけれど、よむたびに、私という読み手の年齢が変わると印象も、気がつくところも変わって行く。
    そういえば星の王子様も、年齢とともにちがうところに心を動かされる。
    美しい賢治の話に、読み進むのがもったいなくなった。
    また、読みたい。

  • 読みやすい
    小学生の童話作品である。
    面白く、長くなく、表現も優しい。

  • 自然の囁き、自然や動物との対話
    比喩も美しく、可愛らしく、素敵
    「序」
    わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにくきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
    「鹿踊りのはじまり」
    すすきはみんな火のようにゆれて光りました

  • 生涯の短さ、出品数の少なさ、話の短さ、それでもこれだけ後世に残像をまざまざと残してくれてることに感謝したくなった。出会えて良かった一冊。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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