妖奇庵夜話 グッドナイトベイビー (角川ホラー文庫)

著者 :
制作 : 中村 明日美子 
  • KADOKAWA/角川書店
3.95
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本棚登録 : 268
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041040362

作品紹介・あらすじ

人間と、妖怪のDNAを受け継ぐ妖人が共存する世界。妖人茶道家の洗足伊織は、家令で《管狐》の夷と、《小豆洗い》の美少年マメと慎ましく暮らしている。しかし、伊織に執着する《鬼》の青目にマメが襲われたことから、伊織は青目に対する危機感を強めていた。そんなある日、伊織のもとに、「妻子が妖人差別を受けている」と訴える《貘》属性の男・闇沼がやってくる。伊織は闇沼を救うため、洗足家の庭でホームパーティーを開くことにするが・・・・・・。天使のような美少年・マメの驚きの過去も明らかに。大人気妖人探偵小説第5弾。

感想・レビュー・書評

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  • 煌めく夜空を映す凪いだ海。その海底には、人間が辿り着くことの出来ない漆黒の闇が広がっている。
    綺麗な薔薇には棘があり、刺すほどの強い日差しの元では濃い影がくっきりと浮かぶ。
    慈しまれる者がいれば憎しまなければ生きていけない者もいる。幸せの反対は不幸せと人は言う。
    それらは、1つだったものがある時を境にして別れてしまったのか。それとも元から相容れないものだったのか……
    もし、再びそれらが出会ったとき。どちらかが呑み込まれるのか、それとも混じり合うことが出来るのか。

    今回の物語は、そんな黒と白。呑み込む色と呑み込まれる色のお話でした。
    人は黒と白にはっきりと分けることは出来ません。その2つが混じり合ってグレーとなって生きています。どんな純白な心でも、針の穴ほどの黒い部分は必ずあるのだから。その黒いものが穴からじわじわと広がっていくのか。それともその黒さを愛おしみながら繕っていくか。

    マメとトウはお互いのことをとても大切に想っているから、青目と手を組むことに対して、そして助けに来た伊織のために、2人は躊躇わずある行動を取ります。その時点できっとお互いの心が溶け出しはじめていたんだと思います。
    トウの鍵を掛けて心の奥底に沈めていた記憶。一番忘れたくなくて、きっと一番幸せな記憶。その記憶の鍵がカチリと外れたとき、マメがもう一度誕生した瞬間となったのでしょう。

    伊織と青目は混じり合うのか、それともどちらかが、どちらかを呑み込んでしまうのか、背を向けたまま離れていくのか。じりじりと近づいてくる2人の結末を知るのが怖いのに、それでいてもう後戻りは出来ないところに来ていることに気づいてしまいました。

    そしてそして、ウロさんに情報を提供したのは誰なのー?!

  • グッドナイトベイビーという副題から薄々展開に勘づいてしまい泣いてしまった。

    でもこの作者は『最悪の事態』で終わらせてくれないから嬉しい。例えば死ぬまで行かないにしても、トウが完全消失というオチも有り得そうだが、最後はグレーになった。なんという円満解決。
    最初はあんなに悪い恐ろしい存在だったトウが、読んでいる側にとっても消し去り難い存在になった。だからこそ消えてはいけなかった。
    伊織がトウを憎めなかったのも(愛しく思っていたのも)、マメ=自分、トウ=青目と重ねていたからかもしれない。そう考えると、伊織も青目を殺すことができないのでは。
    一体どう決着をつけるのだろうか。

    どうでもいいけれど、地味に夷さんが人工呼吸をしていましたね……ふふふ……


    しかし毎回作者の文章の構成に本当に満足してしまう。
    最後の一文まで、綺麗。

  • 妖奇庵のマスコット的存在、マメが今回の主役でした。
    マメをはじめ、夷、脇坂等、伊織を取り巻く人々とのお茶の間風景が毎回楽しみなんですが、今回は胸がとても痛くなる出来事が…

    きっかけは柳沼一家が受けている差別のことを伊織に相談しにやって来たところから。
    その前後にも伏線があって、あちこちにはっとさせられるものが。
    黒いページと白いページと、そしてもうひとつのページに隠された意味も深いです。
    人は孤独と寂しさに追い込まれる生き物なのかも…
    グッドナイトベイビーというサブタイトルに、じーんときました。

    全体的には偏見によるいじめや差別が大テーマとなっていたのですごく重い印象でした。最後の最後まで、マメが心配だったし、青目がどう出てくるのかと気が気ではなかったです。
    でも、伊織のブレない判断力、洞察力にはさすがだと感心することばかりです。きっとどこかに弱さも隠し持ってるだろうに、確固たる意志を持って事を解決する姿はとても凛々しいです。

    そしてそんな伊織に影響され、ビシバシ鍛えられ、脇坂や甲藤らがどんどん精神的に成長してるのも楽しいところです。馬鹿復元力とか、脳味噌初期化とか…ww爆笑。
    そうやって揉まれて脇坂も甲藤もイイ男になってきていて、今後も楽しみです。
    次回はまた青目がまたどんな方法で伊織を苦しめようとするのか、気を引こうとするのか、心配です。

    初回限定の中村明日美子センセのコミックペーパー、話が乖離してるおかげでメイド姿を思い切り愛でることができましたw
    かわいい!

  • シリーズ第5弾。グイグイ引き込まれて今回も面白かった。『差別する側』『差別される側』例え無意識だとしても自分は差別をしてはいないかと考えてしまった巻です。後半にいくにつれ大好きなマメくんが辛く大変な状況に… 彼らが選んだ答えが切なくて悲しくて、涙しながら読みました。でも2人とも大丈夫なんですよね! しかし先生達の先の先を読み蜘蛛の糸のように罠を張り巡らせ、翻弄させる青目には恐怖しか感じられません。早く続きが読みたい!

  • マメにもこんな“話”があったとは。
    いい歳してこのシリーズ止められません。

  •  登場人物ほとんどはワケアリなのだが、単純に子供(じゃないけど)だと思っていた彼が…。
     
     実は、っていうあたりは、定番といえば定番だし、そのあともステレオだといえばステレオなのだけど、なんなんだろうな。ワケアリが、肩よせあってひっそりとがんばっていたのに、それを土足で踏み荒らすというか、用意周到に大雨で地盤を緩めておいてそれから重機もってきてぐちゃぐちゃにした、感じに怒った。

     あら、すっかり妖琦庵サイドに入れあげているわね、と我ながらびっくり。
     
     だからこそ、満を持してのマメくんの話だったか…。
     やられた。

     妖人の話は、ようするに<差別>と<区別>の問題になっていくのだろうな。
     そもそも、他者を自分は違う。
     それだけでいいのにね。そこに自分が入るカテゴリーを作り、他者を入れるカテゴリーを作るから、面倒になる。

     秩序は必要だけど、並べなければならないそれは、本当の意味では間違っているのだろう。

  • 秘されてきたマメの過去と、アウトロー”だった”甲藤くんだから取れるアプローチ。
    そして加害者が被害者になる恐怖と絶望

  • いつもニコニコ笑顔のマメの悲惨な過去
    生まれてしまった2つ目の人格
    トウはマメしか愛されていないと思っていたけれど伊織さんはちゃんとトウも愛していたんだね
    話の間の真っ黒のページが少しずつ明るくなっていくのがまたなんとも言えない

    青目さんもなんだか思惑がぐちゃぐちゃになっていて伊織さんをどうしたいのか分からなくなっているのが切ない

    小説を読む前に読んでしまったショートコミックの意味がやっとわかった

  • 読むのがもったいなくて積んだままにしてた本。
    今回も面白かったといえば面白かったけど、個人的にはイマイチでした。
    いつもニコニコな子には悲惨な過去が!!別人格が!!ってなんだかなぁ・・・。

    今回も青目は元気だなぁ。甲藤がレギュラー昇格?でよかった。

  • マメにこんな辛い過去と秘密があったとは・・・。そんなマメにつけこむ青目だけど、彼の黒さは、もうどうしょうもないのかなぁ。洗足を守るための暴力でもあった青目と自分を守るためにトウという存在を生み出したマメ、一人は暴走し続け、一人は救われて。同じように妖琦庵にやってきた二人なのにな・・・。対比的に書かれているからこそ、青目もどうにかならないのかと思ってしまう。トウのように・・・。洗足と青目の関係が明らかになってくるにつれ、いずれ来るだろう彼らの決着がどうなるのかも気になる。

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著者プロフィール

榎田ユウリ(えだ ゆうり)
東京都出身の小説家。 一般小説を書く時は「榎田ユウリ」名義、BL小説を書く時は「榎田尤利」名義と使い分けている。
2000年『夏の塩』でデビュー。榎田尤利名義では「魚住くん」シリーズ、「交渉人」シリーズが代表作。
榎田ユウリ名義では、2007年から始まる「宮廷神官物語」シリーズ、「カブキブ!」シリーズ、「妖琦庵夜話 」シリーズ、「死神」シリーズなどが代表作となる。

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