妖奇庵夜話 グッドナイトベイビー (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041040362

作品紹介・あらすじ

人間と、妖怪のDNAを受け継ぐ妖人が共存する世界。妖人茶道家の洗足伊織は、家令で《管狐》の夷と、《小豆洗い》の美少年マメと慎ましく暮らしている。しかし、伊織に執着する《鬼》の青目にマメが襲われたことから、伊織は青目に対する危機感を強めていた。そんなある日、伊織のもとに、「妻子が妖人差別を受けている」と訴える《貘》属性の男・闇沼がやってくる。伊織は闇沼を救うため、洗足家の庭でホームパーティーを開くことにするが・・・・・・。天使のような美少年・マメの驚きの過去も明らかに。大人気妖人探偵小説第5弾。

感想・レビュー・書評

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  • 『妖奇庵夜話』シリーズ5作目。
    今回はマメ。マメの生い立ち、隠された秘密にスポットがあたっていて、マメの過酷な生い立ちも相まって結構シリアスな展開だった。
    人の心って黒、白というふうにきれいに二分割できるものではなくて、白よりのグレー、黒よりのグレー、というように善と悪の間を揺らぎながら周りに順応したり自分の心を守って生きているのが常だと思う。
    片方でしか生きられなかったとしたらもう、分割するしかないんだね。
    そんなことも、いろんなことを考えさせられる話でした。

  • 妖奇庵夜話シリーズ・第5作。
    カタカナの副題に違和感。
    しかし読み終わると、本編と副題が寸分の狂いもなく、しっかりと噛み合っていることに呆然とするのだった…

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    「ウサギはさみしくて死ぬことはない。けれど人は、孤独を死の原因とする。」(21ページ)

    妖人の遺伝子をもつというだけで、ママ友からいじめを受け始めたとある一家が、妖奇庵を訪れた。
    その相談を受けた伊織は、いじめ首謀者に思いがけない言葉を放つ。

    それとほぼ時をおなじくして、様子がおかしくなったマメ。
    甲藤によってもたらされたマメの変化に、伊織はある懸念を抱く…

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    表紙絵はマメと伊織。
    でもマメの雰囲気、ちょっとなんだか色っぽすぎるな??という印象でしたが、これにはちゃんと“理由”があるんです。

    本作ではマメの重大な秘密が、わりとあっさりと中盤で明かされてしまってびっくりしました。
    たしかに展開を読んでいれば、自然とわかる秘密ではあるものの、「こんな中盤ではっきり言い切っちゃって、この先大丈夫…??」なんておもっちゃったのですが、その先を読んでみて「そんなこと一瞬でもおもっちゃってすいませんでしたー!!」となりました。
    いやもう、構成が完璧すぎて美しすぎて…マイリマシタ!!

    この巻は間違いなく、妖奇庵夜話の折返し地点です。
    (まだこの先読んでないのに断言しちゃうという(笑))
    マメの過去が、主人公・伊織と、“敵”である青目の過去とも重なり…
    伊織と青目にも、こんな頃があったんだ…とおもうからこそ、なぜ今のような関係性になってしまったのかという疑問もより強くなりました。
    しかもその上でさらに、青目の苦悩、警視庁妖人対策本部の鱗田への違和感も残していて…
    この先このモヤモヤは、どうやってなくなっていくのでしょうか…

    マメへの嫉妬、青目の嫉妬、脇坂の嫉妬…
    個々の「嫉妬」が生み出す、暴力性の部分をしっかりとえがいた本作。
    だからこそ、「なにが正義なのか。なにが正しいのか。」(302ページ)という問いかけが、とても重く、かなしみに満ちているのでした…

  • グッドナイトベイビーという副題から薄々展開に勘づいてしまい泣いてしまった。

    でもこの作者は『最悪の事態』で終わらせてくれないから嬉しい。例えば死ぬまで行かないにしても、トウが完全消失というオチも有り得そうだが、最後はグレーになった。なんという円満解決。
    最初はあんなに悪い恐ろしい存在だったトウが、読んでいる側にとっても消し去り難い存在になった。だからこそ消えてはいけなかった。
    伊織がトウを憎めなかったのも(愛しく思っていたのも)、マメ=自分、トウ=青目と重ねていたからかもしれない。そう考えると、伊織も青目を殺すことができないのでは。
    一体どう決着をつけるのだろうか。

    どうでもいいけれど、地味に夷さんが人工呼吸をしていましたね……ふふふ……


    しかし毎回作者の文章の構成に本当に満足してしまう。
    最後の一文まで、綺麗。

  • 妖奇庵のマスコット的存在、マメが今回の主役でした。
    マメをはじめ、夷、脇坂等、伊織を取り巻く人々とのお茶の間風景が毎回楽しみなんですが、今回は胸がとても痛くなる出来事が…

    きっかけは柳沼一家が受けている差別のことを伊織に相談しにやって来たところから。
    その前後にも伏線があって、あちこちにはっとさせられるものが。
    黒いページと白いページと、そしてもうひとつのページに隠された意味も深いです。
    人は孤独と寂しさに追い込まれる生き物なのかも…
    グッドナイトベイビーというサブタイトルに、じーんときました。

    全体的には偏見によるいじめや差別が大テーマとなっていたのですごく重い印象でした。最後の最後まで、マメが心配だったし、青目がどう出てくるのかと気が気ではなかったです。
    でも、伊織のブレない判断力、洞察力にはさすがだと感心することばかりです。きっとどこかに弱さも隠し持ってるだろうに、確固たる意志を持って事を解決する姿はとても凛々しいです。

    そしてそんな伊織に影響され、ビシバシ鍛えられ、脇坂や甲藤らがどんどん精神的に成長してるのも楽しいところです。馬鹿復元力とか、脳味噌初期化とか…ww爆笑。
    そうやって揉まれて脇坂も甲藤もイイ男になってきていて、今後も楽しみです。
    次回はまた青目がまたどんな方法で伊織を苦しめようとするのか、気を引こうとするのか、心配です。

    初回限定の中村明日美子センセのコミックペーパー、話が乖離してるおかげでメイド姿を思い切り愛でることができましたw
    かわいい!

  • シリーズ第5弾。グイグイ引き込まれて今回も面白かった。『差別する側』『差別される側』例え無意識だとしても自分は差別をしてはいないかと考えてしまった巻です。後半にいくにつれ大好きなマメくんが辛く大変な状況に… 彼らが選んだ答えが切なくて悲しくて、涙しながら読みました。でも2人とも大丈夫なんですよね! しかし先生達の先の先を読み蜘蛛の糸のように罠を張り巡らせ、翻弄させる青目には恐怖しか感じられません。早く続きが読みたい!

  • マメの話でもあるが、また伊織と青目の過去にも通じていた。
    トゥの存在がなければ、マメは伊織とも出会うことが出来なかったはず。マメを守ってきたトゥも含めた展開が良かった。

    甲藤が前回の活躍が認められ、登場人物紹介に載るようになってた(笑)

  • 読み終えて、今回のタイトルを改めて思い出すと目頭が熱くなった。

    今回、話の中で何度も同じ情景とフレーズが繰り返される。その場面はなんだか自分が夢を見ているような、酩酊しているかのような心地にもさせられた。
    まるでループものの映画を見ているような感覚に陥る。

    そんな中でも、マメの強い感情が噴き出す出来事があったり、妖人に対しての謂れの無い差別があったり、心を揺さぶらることも多かった。

    マメ(トウ)の行為は許されるものでは無いけれど、辛い現実・施設から逃げたことでウロさんに出会えたことが幸運・更正のきっかけになっていて、ウロさんがこんなに作品の鍵になっていたとは衝撃的だった。
    あまり頼りない人なのかな、と勝手に思っていたが、今回、ウロさんの株が爆上がりした。

    また脇坂のマメへの許し方がある意味男らしく、Y対2人の洗足家への愛が感じられる。

    青目はマメと同じように、伊織の家に受け入れられたのに、こんなにも道が違ってしまったのだろう。
    マメ(トウ)と青目の性質はとても似ていたのに、、、。と少し悲しくもなる終わり方だった

  • 今回はマメの過去のお話。
    何故二人があんなにマメに優しいのか。
    マメはどうして純真無垢なままなのか。
    イロイロ分かるお話。

  • シリーズ五作目。今回はマメの話。
    いつもと違うマメの様子に、気が付き始める洗足たち。そんな中、マメがいなくなり……。マメの暗い過去が明かされる。

    やはり、人は辛い目に遭うと、純粋無垢なままではいられないのか。苦しみから逃れるために、そして自分自身の心を守るために。

  • よかった〜今回の話しよかった(;ω;)

    物語の切り替わり?の間にある真っ黒なページがだんだん薄くグレーになっていくんだけど…
    真っ黒だったマメ(トウ)がラストには真っ白じゃなくて…ちょっとオーって感動(°▽°)

    カイが初めて家に来た時の話…泣ける(>_<)

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著者プロフィール

東京都出身。おもにライトノベルにて活躍する気鋭。代表作は「カブキブ!」シリーズ、「魚住くん」シリーズ(角川文庫)、「妖き庵夜話」シリーズ(角川ホラー文庫)、「宮廷神官物語」シリーズ(角川書店ビーンズ文庫)など。榎田尤利名義でも著書多数。

「2023年 『妖奇庵夜話 千の波 万の波』 で使われていた紹介文から引用しています。」

榎田ユウリの作品

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