ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法

制作 : トラヴィス・ソーチック  桑田 健  生島 淳 
  • KADOKAWA/角川書店
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041041024

作品紹介・あらすじ

“常識”という難敵に“数学”という武器で挑んだ男たちの物語。
「ほかのチームから見向きもされなかったベテラン選手、多額の契約金で入団したドラフト指名選手、古い教えを受けたコーチ、数学の天才から成る寄せ集めのチームが、個々の能力を合計したよりも大きな力を発揮して、ここまで到達したのだ。彼らは新しい意見、新しい考え方、共同作業を受け入れなければならなかった。それが2013年の彼らの物語であり、彼らの成果だった。」(本文より)

感想・レビュー・書評

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  • MLBに限らず野球をより深く楽しみたい人にも、それ以外のスポーツにデータ分析を活用したいと考えている人、あるいはビジネスの現場で集められたデータが信頼されず、なかなか価値あるものに変えられないと感じている人に広く読まれるべき一冊。

    複雑なデータや数字をロッカールームにいる選手たちの間に浸透させ、グラウンドで新しい戦術を試してもらうのは、思った以上の難題である。
    無理強いすれば、反発やチーム内の不和を生むばかりで、結果につながらない。
    データ分析官と選手や監督との間に良好な関係を築くため、パイレーツは裏方である彼らを試合前のミーティングに参加させ、クラブハウスにも自由に出入りさせた。
    選手へのアドバイスも具体的で、データを視覚化した分かりやすい説明を心がけさせた。
    複雑な数学的概念を簡単なたとえを用いて伝えるというのは才能の部類に属するが、こうした異なる才能の間に敬意と理解が生まれなければ、チームに優位を与えることはなかった。

    データによる客観的な考えと直観に基づく主観的な意見をいかに融合させるか。
    ビッグデータとは、可能な限りあらゆる断片的なデータを集め、複雑な数学的な公式から、有用な独自の指標を得ることだが、パイレーツはこの強固なコミュニケーションのおかげで、選手やコーチがグランド上での観察をデータや指標の洗練化に役立てることができた。
    もちろんどれだけ革新的な戦術でも、野球の世界はまねあいの歴史なので、すぐに陳腐化してしまうが、このコミュニケーションがあれば普段に戦術の見直しを行ない、迅速に実践できるはずだ。

    著者は『マネー・ボール』で紹介された出塁率に着目した指標などは、野球カードの裏からも集められるデータでもう古いと言う。
    いまは、新たな投球追跡技術(PITCHf/x)や、グランド上のあらゆる選手の動きを記録する技術(スタットキャスト)など、これまで隠されていたデータを徹底的に利用し尽すステージに入っている。
    極端な守備シフト、ゴロを打たせる投球、ボールをストライクに変える捕球術など、その後どのチームでも採用されたパイレーツの新戦術は、もとを質せばFAで有望な選手を獲得できるだけの資金がなかったために、生まれた。
    しかし、成功に対して大金を注ぎ込むより、これからの伸びシロに対して金を払う方が、よほど賢明な投資ではないだろうか?

  • 2013年のピッツバーグパイレーツを舞台にしたノンフィクション。
    「マネーボール」を彷彿とさせるテーマではあるが、20年前の「マネーボール」はもはや遺物らしく、本書は数学とビッグデータを駆使した、野球界の新たな潮流をチームの波乱とともに描写する。
    データをどのようにチームに取り入れるのか。人間臭い話と思わす引き込まれる組織論が相まった、素晴らしい一冊だった。

  • ゴロになった打球がヒットになるかどうかは投手には責任がない、だから守備シフトと守備力が重要。捕手のミットワークでストライクになる率が違い年間勝ち星で二桁の差が出ているなど、マネーゲームからなお進化し続けるデータ野球の進化。
    そして脳味噌まで筋肉の野球選手にデータ分析結果を理解してもらうための、データ分析担当者のコミュニケーション能力の重要性。
    データ分析の入門書として最適。

  • 「マネーボール」の真打ちであり、現在進行形の物語。
    日本は何周遅れ?

  • 万年弱小球団のパイレーツがビッグデータの活用を機に躍進を遂げるサクセスストーリー。
    具体的には打球方向データに基づいた大胆な内野守備シフト導入、詳細な全球投球データに基づいたピッチングフレーミングという捕球能力指標の発見など。

    ビッグデータの時代と言われて久しいが、データはあくまでもそれ自体には価値がなく、ストーリーを語れる状態にまで分析、解釈し、それを分かりやすく伝えられて初めて価値が生まれる。
    本書で語られている実例はまさにこのあるべきプロセスを踏まれている。
    それまで誰も価値を見いださなかった指標を発見し、それを実際にフィールドで闘う監督や選手に伝えることができたパイレーツ。

    日本の野球界はもちろんのこと、まだまだ言葉だけのビッグデータになっている日本のビジネスシーンでも参考にすべき名著。

  • 二十年間連続で負け越しが続いたピッツバーグ・パイレーツ。この本の舞台となった2013年のパイレーツは,
    レギュラーシーズンの連続負け越し記録を止め、ポストシーズンへの進出を果たす。本の中に書かれたそのときの地元の盛り上がりは、1985年に阪神タイガースが21年ぶりにリーグ優勝し、初の日本一に輝いたときの大阪の乗りにも近いのかもしれない(いや、負けている気はしないが)。

    そんなパイレーツ躍進の裏側にあった秘密をピッツバーグ・トリビューン・レビュー紙の番記者が追ったのが本書である。そこにあった秘密とは、データを元にしたデータを活用した極端な守備シフト・ストライクを取りやすい捕球をするキャッチャー・ゴロを打たせやすいツーシームの多用、といった金がかからないが他球団が気が付いていない有効な手法による現代式データ野球の徹底であった。他球団が気付いていないデータをチーム作りに活用して資金の少なさを克服した事例としては『マネー・ボール』に描かれたオークランド・アスレチックが有名だが、その2000年代初めの頃とは、得られるデータの質と量が桁違いになっている。技術の発展により、さらなる軍拡競争が進んでいたことがよくわかる。

    一方、データが重視される中でも、解析結果を選手や監督に受け入れてもらうための視覚化ツールの工夫や、チームのまとめ役となる人物、ここではキャッチャーのマーティン、の存在の重要さにも言及している。このあたりの描き方は人への取材をベースとする記者らしい人情味があふれていい味が出ている。

    データが大量に入手できるようになり、その重要性が広く認識されるにしたがい、他球団を出し抜くことは当然ながらどんどんと難しくなっている。パイレーツが多用した守備シフトも、カウント別やランナーの有無によって調整されるように進化しているらしい。もしかしたら、多くのデータ解析結果はいまや統計的に有意な差異はわずかかもしれない。それでもデータの中には宝が眠っているかもしれず、分析官は常にそれを探しているのである。「データサイエンティストが最もセクシーな職業」だと言われたことがあるが、少しだけそういうこともあるのかもなと感じることができる。野球好きにはぜひ読んでほしい本。



    二十年連続の負け越しを止めてポストシーズンに進んだ2013年以降、2015年まで3年連続でポストシーズに進出中。この本を読んだ2016年夏、114試合を終えた時点でナショナルリーグ中地区3位だが勝ちが先行していて今年もワイルドカードの可能性はまだまだ十分。カブスが強い中地区だけれど、応援したくなった。

    数年前からアピールによってビデオ審議がなされ、審判の判定が覆ることも多くなってきた。アウト・セーフやストライク・ボールの判定は機械がやるようになる日も近いのではと思う。ホームゲームが有利なのはデータによると球審の判定が観客に押されて影響を受けているからであるらしい。言ってみれば、それは不公平である。アメリカ人の思考回路からはそれは是正すべきことであると判断されるような気がする。案外、十年も経たないうちに意外と抵抗なく機械の目の審判が受け入れられる日が来るような気がする。

  • 二十年負け越しというアメリカ4大スポーツワースト記録を更新中のピッツバーグパイレーツが背水の陣をひいいて(オーナーは金を出さないが)、データに取り組み、ピッチフレーミング、投球法、守備シフトを組み合わせ最も予算の少ないチームながら、ついにポストシーズンに行く話。データは、Pitchfxなど新しいデータをもとに、今までにない観点から割安な選手を探し出す。投手、打者、カウントなどの組み合わせでどの方向に打球が行きやすいかを考えシフトを引く、またゴロを打たせて守備シフトをより生かすためツーシームファスとボールの比率を上げ、それをうまく投げられる投手を持ってくる。
    また重要なのは、実際にやる選手、監督、コーチにそのデータの有用性を納得させやらせることであり、このために分析官を同行させ、ビジュアルの資料を作らせ、マイナーで実験し、初期に結果を出すことで説得力を出している。

  • パイレーツという20年連続負け越し球団が、セイバーメトリクス(野球における統計的手法)を取り入れて劇的に強くなった話。

    具体的には、『マネーボール』が主に攻撃面でのセイバーメトリクスだったのに対し、これはさらに進化して守備・投球面でのセイバーメトリクスという感じ。

    ・投球ごとに守備シフトを変える。
    ・ピッチフレーミング(捕手が際どいコースをストライクにするための捕球技)の優れた捕手を起用する。
    ・守備シフトを生かすためにツーシーム・ファストボールなどのゴロ系を打たせる球を投手に多投させる。

    『マネーボール』ほどわかりやすくないものの、逆に言えばそれだけセイバーメトリクスが進化してるということの証左かと。

  • 面白かった。野球の話は面白いね。
    社会人になって、野球からは遠ざかる一方なので、隔世の感があるね。

  • 名著、原著が英語のインタビュー記事であんま読みやすくはないですが、野球×統計に愛のある人なら楽しめること請負です。本書をもとにマネーボール2を作ってほしい。

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プロフィール

オハイオ州コンコード生まれ。子供の頃からインディアンズ、キャバリアーズ、ブラウンズの試合を観戦するスポーツファン。オハイオ州立大学卒業。現在は『ピッツバーグ・トリビューン・レビュー』紙でメジャーリーグとピッツバーグ・パイレーツを担当している。AP通信スポーツエディター賞をはじめ、数多くの賞を受賞しているほか、ESPN、Grantland.com、MLBネットワークなどでも活動中。

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