つめたい転校生 (角川文庫)

著者 : 北山猛邦
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年3月25日発売)
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  • レビュー :12
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041041055

作品紹介

何もかも理想通りで、身悶えするほどキュートな彼。あるとき彼が殺し屋なんじゃないかと不安になり……(「かわいい狙撃手」)。ある冬の日、クラスメイトが見守る倉庫から、転校生が忽然と消えた。彼女は幽霊?(「つめたい転校生」)。さみしい少年時代に出会ったたったひとりの友達は、人を殺す妖怪?(「いとしいくねくね」)など、人と人でないものとの切ない恋をめぐる、驚きのトリックが冴えるミステリー短編集。解説・千街晶之。(「人外境ロマンス」を改題して文庫化いたしました)

つめたい転校生 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 人と、人ではない者との恋愛を描いた短編集。
    どれも素敵なお話です。
    北山猛邦さんの作品は、短編の方が好きかも。

  • 人ではない存在と人間との切ない交流。

  • ミステリ。恋愛。短編集。
    どの作品もミステリ的な仕掛けや謎解きはあるが、ミステリとしては特殊な設定。
    解説にあるように、まずは一作読んで雰囲気を掴むといいかも。
    「いとしいくねくね」がベスト。苦い結末が良い!
    最終話「ちいさいピアニスト」のトリックは分かってしまった。それでも、「かわいい狙撃手」で始まり、「ちいさいピアニスト」で終わる構成は、作品として上手くまとまっていると思う。
    著者の作品のなかでも、とても好きな一冊。良作。

  • 当作は六つの短編で構成されていて、共通するのは「人ではないものとの交流」です。
    元のタイトルは「人外境ロマンス」だそうです。

    ◆かわいい狙撃手
    主人公は、大学のエレベータで一目惚れをする。
    ハーフのような顔立ちの美形で、大きな手提げケースを持っていた。

    彼は屋上に向かったので、主人公は気になって後を追う。
    彼はフェンスの向こう側に腰掛けて、望遠鏡を覗いていた。
    それから、ケースを開けて、中から棒状の物を取り出す。

    彼が気配を察したのかこちらを見たので、主人公は身を隠した後、逃げてしまった。
    目撃したものを友達に教えるが、真剣に取り合ってくれない。
    「怪しい」とは思うが、主人公は彼を見つけるとケーキ屋に誘った。

    彼は「キュウ」と名乗り、持っているケースにはヴィオラが入っていると教えてくれた。
    キュウが席を外した時、主人公がケースの中を覗くと、ヴィオラではなくて武器のようなものが入っていた。
    どうやら、ボウガンらしいが……。

    キュウの正体はキューピッドで、彼が金の矢を射ると、刺さった人間は直後に見た相手に恋をするようです。
    彼の仕業で主人公の友達は教授と両想いになり、小さな女のコは若い警察官に恋をしてしまいます。

    キュウがキューピッドというヒントは、序盤から散りばめられていましたね。
    「きっと彼は神様の隣に描かれているの違いない」ですからね。
    マヨネーズが好きなのはキューピーだから?

    他の話に比べると、能天気なノリだと思います。
    主人公は怖いもの知らずですね。
    キュウが殺し屋だったならば、確実に消されていたわ。

    ◆つめたい転校生
    表題作。
    隣のクラスに来た転校生は、声を掛けてくる男子達につれない態度を取っていた。
    主人公は、転校生に対して既視感を覚える。

    主人公は十歳の頃、長い休みになると山の別荘で過ごしていた。
    冬に山荘へ来た時、主人公は一人きり川で釣りをしていると、向こう岸に女のコが立っていた。
    はじめは声を掛けても女のコは黙ったままだったので立ち去っていたが、次の日も同じ格好で立っていたので、つい話し掛けてしまう。

    それから主人公と女のコは、川を隔てた状態で話すようになった。
    川を渡るには橋を越える必要があるが、数百メートル下流にあったからだ。

    ある日、女のコは一瞬で主人公の元に来ることが出来た。
    主人公は目を瞑っていたので、トリックが分からない。

    次の日に会う約束をしたが、それは果たせなかった。
    女のコが住んでいたと思われる山荘が燃えてしまい、亡くなったと思われるからだ。

    主人公は、転校生と山で会った女のコは似ていると思う。
    もし同一人物ならば、この再会に何の意味があるのか。

    「転校生の正体は雪女だろう」ということは、早い段階で分かります。
    この話の謎は、密室から転校生が消えたことです。

    転校生は毎日、あまり使われていない木造の倉庫に入っていました。
    彼女を良く思っていないクラスメイトの男子二人が倉庫を監視します。

    倉庫は南側に窓、西側に引き戸、東側に換気窓があります。
    一人は窓を見て、もう一人は離れた位置から倉庫を携帯電話で撮影していました。

    転校生は引き戸から入った後、中から姿を消します。
    窓や換気窓には鍵が掛かっていたし、換気窓以外の出入り口は監視されていました。

    転校生は唯一、見張られていない換気窓から脱出していました。
    換気窓はあらかじめ割られてあって、そこに窓と同じサイズの氷を嵌めたようです。
    瞬時に水を凍らせる力のある雪女だからこそ出来るトリックです。

    転校生の正体に気付いた主人公は、急いで駅に向かいます。
    彼女に会えましたが、体が限界だったので山に帰るそうです。

    「今度は自分が会いに行く番だ」と主人公が思ったところで話が終わります。
    このお話は、作品紹介通り切ない内容でした。

    ◆うるさい双子
    弓子は夏休みになると、東北の旅館で泊まり込みのアルバイトをはじめる。
    睡蓮荘に勤める際、「離れ」には近付かないこと、何か見聞きしても誰にも言わないことを約束させられた。
    主な仕事は清掃で、弓子の世話役をシオネという青年がしていた。

    弓子には幼馴染の彼氏がいたが、癌で亡くなってしまう。
    弓子はしばらくの間、感情を失い、消えてしまうことを願っていた。
    表向きには平気な振りが出来るようになってきたが、過去に失われた心を取り戻そうとする目的で、今回のアルバイトを決めていた。

    弓子は、久し振りに彼の夢を見る。
    これまでは、彼のところに駆け寄ろうとしても近付けず、顔も見られないまま消えてしまっていた。
    しかし、今回は足元が水浸しで周囲の壁はヒビが酷くなっているのに、彼は振り返ってくれた上、微笑んでくれたのだ。
    弓子は苦しさを味わい「死」を感じて目覚めたが、それでも彼と会えたので「また夢を見たい」と思う。

    弓子は、悪夢を見続けていた。
    日に日に、夢の世界は荒廃が進んでいるが、少しずつ彼との距離が近くなっていた。
    弓子を心配する仲居が「枕返しの仕業ではないか」と言うが、「別に構わない」と思う。

    睡蓮荘には枕返しが住み着いていて、寝ている人の枕をずらすことで普通の夢を悪夢に変えるそうです。
    女将さんが「枕返しのことを口外して欲しくない」と思ったのは、お客さんの評判を気にしたからでした。

    シオネにはハルという双子の兄がいて、二人の正体は枕返しです。
    睡蓮荘で下働きをするシオネとは違って、ハルは離れにいます。

    これまで、シオネは気に入らないアルバイトに悪夢を見せて追い出していたようです。
    弓子のことは気に入っていて、悪夢を見せていた理由は「彼に会いたい」という願いを叶えたかったからでした。

    とはいえ、このままでは弓子が危ないので、ハルが弓子の夢に入って助けに行きます。
    弓子は彼に最後の挨拶をした後、ハルと一緒に帰ろうとします。
    夢の世界が崩落し、ピンチになったところでシオネも助けに来てくれました。

    救いのある結末で良かったです。
    枕返しの双子は、少女マンガのキャラクターとして登場しても受け入れられそうですね。
    テンプレ的ヤンチャな弟にブレーキ役の兄ですから。
    この後、弓子は双子と三角関係になるのかしら。

    ◆いとしいくねくね
    主人公の周りでは、常に誰かが亡くなっていた。
    新連載の枠を競うコンペで勝者になった新人漫画家、会社勤めをしていた時に残業を押し付けてきた上司、大学の推薦枠を争っていたクラスメイト。
    これらの死の原因に、主人公は心当たりがあった。

    主人公は幼い頃に兄を亡くしていたが、それは「くねくね」を見たせいだった。
    「くねくね」は祖父の家があった地域にいる妖怪で、姿を見た者は死んでしまうらしい。
    主人公も「くねくね」を見ていたが、遠くからだったので死ななくて済んだ。

    翌年も、主人公は祖父の元に預けられた。
    祖父からは「『くねくね』に気を付けるように」としつこく言われたが、主人公は寧ろ確かめようとする。

    はじめは白い帯状のものだったが、翌日、「くねくね」を見掛けた石橋に行くと白いワンピースの少女がいた。
    少女は灰色掛かっていたが、怯えた様子をして泣いているので「怖い」と思わなかった。

    何度か「くねくね」と会っては、油揚げを食べさせたり文字を教えたりして過ごす。
    しかし、村の人間が「くねくね」を見たことで死んでしまった。

    祖父は主人公が「くねくね」に取りつかれたと知って、山を祓う間、主人公を土蔵に隔離する。
    土蔵に「くねくね」が来て、扉を開けてくれた。

    主人公は土蔵を出た後、自分の家まで歩いて帰ろうとするが、「くねくね」は村から出られないらしい。
    二人は再会の約束をして別れた。

    「くねくね」は、主人公の為に邪魔な人間を死なせていたのだろう。
    これ以上、「くねくね」に誤ったことをさせないようにする為、主人公は祖父が住んでいた村に行きます。

    「くねくね」と会って、これまで助けてくれたお礼と気付けなかったことへのお詫び、それと別れを告げます。
    「くねくね」は泣きながら、主人公に背中を向けて去っていきました。

    薄々予感はしていましたが、主人公の奥さんが「くねくね」だったようです。
    「人間になりたかった」と書いた彼女は人間のように装っていたのに、妖怪としての残酷な力を使ってしまったのね。
    当作の中では、一番後味の悪い話でした。

    ◆はかない薔薇
    警部である車井は、大学教授殺人事件の捜査をしていた。
    「目撃者が現れた」と聞いたが、それは人間ではなくてバラだった。

    車井はバラの棘が手に刺さった時、一瞬、殺人現場の光景を見る。
    それは、現場写真で見たものと異なる部分があった。
    車井はパラについて、詳しい話を聞こうとする。

    バラを持ってきた白衣の男は、「生体電位の反応によってバラからのサインが読み取れる」と説明する。
    しかし、試しに質問をすれば信憑性に欠けるものだった。

    ここで、車井は「イジワル」という声を聞く。
    幻聴かと思ったが、また謎の声が聞こえたので、車井はバラを預かることにした。

    バラは声を出す度に、一枚花びらを落とすようだ。
    その様を見て、車井は胸が痛くなった。

    堅物の警部と乙女心満載なバラの切ない物語ですが、ちゃんとしたミステリでした。
    殺された教授は、現場にあったプランターで撲殺されたようでした。

    バラの証言によって、バラが植えてあったプランターは元々、外に置いてあったこと、犯行があった後に現場に持ち込まれたことが分ります。
    そんな訳で、バラは犯行を目撃していないので、犯人を言い当てることは出来ませんでした。

    何故、プランターをわざわざ中に持ち込んだのか。
    答えは、凶器になったプランターを特定されては困るから。

    現場には大きな金庫があって、その中に大学で研究用に栽培されていた大麻を育てているプランターがあったようです。
    つまり、金庫の鍵を持っていた助手が犯人ということでした。
    確かに、大麻は「カネになるもの」ですね。

    この後、犯人がバラの鉢を車井から掴んで投げ付けてきます。
    バラは茎が折れて、花が散ってしまいましたが、車井が添え木をして枯らすことから守りました。

    バラに語り掛ける車井警部に切な萌えしました。
    自宅と仕事場に連れてきて可愛がっていますよ。
    きっと、また花を咲かせて話し掛けてくれるよ☆

    アンブリッジのコケティッシュな感じが良かったです。
    わざわざ貴重な一枚を落としてまで「オマエジャナイ、ナマエアル」と主張していますからね。

    当作の中では一番好きな話かもしれません。

    ◆ちいさいピアニスト
    森の中に古い洋館があって、これまで人の住む気配はなかったが、最近になって一階のある窓が内側から分厚く封鎖されていた。
    夜になって主人公が洋館に近付くと、ピアノの音が聞こえた。
    流れてくるメロディに主人公は聞き覚えがあったので、怖さを感じながらもしばらく聞いていた。

    洋館にいたのは、青白い顔をした青年だった。
    好みの顔だったので、主人公は何度も洋館へ足を運ぶようになる。

    主人公は、町に買い出しをした後はゲームセンターに足を運んでいた。
    そこで青年と出会い、以降、ゲームセンターで顔を合わせると話すようになる。

    青年とは夜しか会ったことがなくて、洋館でピアノを弾いているか、ゲームセンターで女のコと話していた。
    八重歯がチャームポイントで、こっそり洋館に忍び込んだ時、大きな箱の中で寝ている姿を見てしまった。

    主人公は青年に、記憶をなくしていることを教えていた。
    手掛かりと思われるのは、ずっと首につけていたお守りである。

    お守りを青年に見せると、みるみる青ざめてしまった。
    「確かめたいことがある」と言って、青年は主人公を洋館に連れて行くが……。

    「青年は吸血鬼?」と思わせておいて、実は普通の人間でした。
    内側から窓を塞いでいたのは、ピアノの音が漏れないようにする為です。
    青年は音楽大学を目指していて、「洋館にピアノがある」という話を聞いて不法侵入していました。

    箱で寝ていたのは、洋館に来た時にどうしても眠くなったからだそうです。
    不法侵入がバレないように、念の為、箱の蓋を閉じていたとのこと。

    青年は十年前、子猫を飼っていましたが、夜逃げ同然で家を出ていました。
    仕方ないことですが、子猫を連れて行くゆとりがなかったので、泣く泣く置いて行ったようです。
    今も、青年はお金がない様子ですが。

    青年は子猫に、フォルテと名付けていました。
    主人公が「歪んだ十字架」と思っていたお守りの形は、フォルテの記号を象ったものでした。
    聞き覚えのあるメロディは、ピアノの先生が青年の為に作ってくれた曲だったそうです。

    主人公の正体はフォルテで、猫又になったのかしら。
    猫耳で、お尻に二股に分かれた尻尾があるらしいので。

    フォルテと一緒に住んでいたママは、母親ではなくて仲間の猫又でした。
    フォルテは「ケモミミ系の化け物」と思っていましたが、猫だったのね。

    猫だから魚を捕まえる仕事をしているし、狩りが好きだからクレーンゲームが好きなのかな。
    「毛が逆立つ」という表現は比喩ではなくて、本当に逆立っていたんでしょうね。
    ママがオーダーしたのがミルクだったのも納得ですし、「好奇心は猫を殺す」という言葉は凄い皮肉ですね。

    青年は「フォルテを見捨てない」と誓ってくれましたが、恋人として見てくれるのかしら。
    ママの教訓が深過ぎます。

    何故、吸血鬼がピアノを弾いているのに「ちいさいピアニスト」というタイトルかと思っていたら、フォルテのことを差していたのね。

  • タイトルに反して心温まる短編集。ぜひ読んでほしいと思ったから。

    *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます。
    http://opac2017.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/BB50110111

  • 短編集。
    『私たちが星座を〜』よりは救いのある話が多いかも。「可愛い狙撃手」と「いとしいくねくね」が好き。

  • ミステリーというより、ファンタジーというか、かわいいホラーというか……。とりあえず先入観を持たずに読んだ方がミステリー的に楽しめるかも。この作者さんの本は『私たちが星座を盗んだ理由』一冊しか読んだことがなかったのだけど、やっぱこういうファンタジー的なのが似合うな~。と思った。個人的に好きな話は『はかない薔薇』。人外は人の形から外れてる方がグッとくる。

  • タイプでいうと、「私たちが星座を盗んだ理由」と雰囲気が似通っている短編集。
    恋愛ものであり、青春ものであり、ファンタジックっでもあって、そやけどしっかりとミステリー。

    裏表紙のあらすじすら読まずに、一話目から順番に読んでいくことをオススメします。
    一話一話の面白さや衝撃もさることながら、続けて読んでこそ現れる、味わえる面白さや衝撃も堪えられません。

  • 全作品がラブストーリーではあるものの、胸焼けするような甘さや薄っぺらい恋愛などではなかったので、まあまあ読みやすかった。

    個人的には「いとしいクネクネ」が一番好き

  • 人外×ヒトの、結びつくお話。
    ほとんどが可愛らしいお話で、ゆったりと楽しめた。
    くねくねと薔薇が好き。

    1話目の恋に突っ走るというか、なんか、好きだから仕方ない!ていう感じの女の子だけは好きになれなかったなー。

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