オカルト 現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ (角川文庫)

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  • 本 ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041041079

作品紹介・あらすじ

「オレは結局スプーン曲げちゃうよ。本音は曲げたくないけど、みんなの期待がわかるから」
“超能力者”はふてくされたように言った。

「わからないから研究したい」
科学者たちは当然のように答えた。

「僕たちはイロモノですから」
“エスパー”は即答した。

職業=超能力者。ブームは消えても、彼らは消えてはいない。
超常現象、その議論は「信じる・信じない」という水掛け論に終始していた。
不毛な立場を超え、ドキュメンタリー監督がエスパー、超心理学者、陰陽師、メンタリスト等に直撃!! 

数年ごとに起きるオカルト・スピリチュアルブーム。繰り返される真偽論争。何年経っても進歩なきように見える世界。
だが、ほぼフェイクだと思いながらも、人は目をそらさずに来た。
否定しつつも、多くの人が惹かれ続ける不可思議な現象。
その解明に挑んだ類書なきルポ。
多くの作家を魅了した、オカルト探索の名作が、ついに文庫化!!

感想・レビュー・書評

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  • オカルトと称されるモノも、量子力学や物理法則を駆使する事で真実のカタチが見えてくる可能性があるかもしれない。しかし、それら全てのカタチが100%判明した世の中は味気ない気がしてならない。

    『多くを見せ過ぎると、見せてない事になる。』ドキュメンタリー映画メットガラに出演した巨匠ウォンカーワァイの言葉である。追求すれば、するほどに、オカルトは真の姿を見せようとしないのか?

    森達也も本書でオカルトを追求しているが、その境地に辿り着こうとしてないのか?または出来なかったのか?オカルト好きとしては興味深い内容だった。

  • ノンフィクション作家・森達也が超能力の謎に挑んだ『職業欄はエスパー』(単行本時のタイトルは『スプーン』)は、たいそう面白い作品だった。

    本書は、その『職業欄はエスパー』の続編。
    続編が出ていたとは知らなかった。先日読んだ澤村伊智の小説『予言の島』の巻末に、参考文献の一冊として挙げられていたので知ったのだ。

    『職業欄はエスパー』は、タイトルどおり超能力に的を絞った作品で、3人の「超能力者」(清田益章・秋山眞人・堤裕司)が主人公となった。

    それに対して、本書はタイトルが示すとおりオカルト全般を扱っており、正編よりも総花的な内容になっている。
    正編の主人公3人も再登場するし、超能力もテーマの一つとして俎上に載るが、それ以外に心霊現象や臨死体験、UFOなどが各回のテーマとなる。

    森達也のスタンスは、正編・続編とも変わらない。オカルトを肯定するでも否定するでもなく、その狭間のグレイゾーンを見つめつづけるスタンスなのである。

    それはオカルトに限らず、ノンフィクション作家としての森の基本スタイルでもある。
    善悪二元論によりかかる思考停止を排し、一方の側に立つのではなく、どちらの側(本書の場合はオカルト否定派と肯定派)に対してもニュートラルな姿勢で臨もうとするのだ。

    また、森のノンフィクションは、取材過程のトラブルや自らの迷いなどのネガティブな要素も、すべて赤裸々に描きこんでしまうところに大きな特徴がある。本書もしかり。その赤裸々さこそが面白さにつながっている。

    オカルト否定派・肯定派のどちらが読んでも面白い本だが、内容が総花的になった分だけ『職業欄はエスパー』より全体の印象が薄いことは否めない。なので、星一つ減点。

  • 数年ごとに起きるオカルト、スピリチュアルブーム。繰り返される真偽論争。TVドキュメンタリー『職業欄はエスパー』を製作し、単行本を出した森達也氏による『続編』といったものであると僕は解釈をしております。




    これは筆者の制作したドキュメンタリー『職業欄はエスパー』の書籍化されたものの続編で、単行本化される際に、大幅な変更が加えられた後に出版されたのだそうです。

    僕はかつて『職業欄はエスパー』の映像版も書籍版も両方に目を通していたのですが、内容をあまり思い出せずに、彼がここでたどった軌跡を追っておりました。

    ここで描かれているのは数年ごとに起きるオカルト、スピリチュアルブーム。繰り返される真偽論争。何年経っても一歩も進まないように 見える世界。

    そういう『オカルト』の世界を筆者と担当編集者の コンビが取材したものをまとめたものになっております。

    僕個人に限っていうと、幼少期にオカルト関係の本を 少し読んだり、テレビで『スプーン曲げ』の人間が送った念波を 受信したのかどうか知りませんが、大の大人が力を入れないと曲がらない大き目のスプーンが、何の苦もなく曲がったりなど。

    そんなことがあったなと思い出しましたが、現在はオカルトというものをあまり信じておりません。

    ですので、ここに出てくるイタコの話ですとか、ダウジングの話に関しては正直のところ、「ほんまかいな?」と半ば半信半疑で読んでおりました。

    それよりもむしろ、ここに出てくる『超能力者』たちの人間くさい部分のほうが、僕にはなんと言うのか…。とても印象に残っておりました。

    これに関してはお時間がある方にのみ、お勧めをいたしたいと思っております。

    ※追記
    本書は2016年6月18日、KADOKAWA/角川書店より『オカルト 現れるモノ、隠れるモノ、見たいモノ (角川文庫)』として文庫化されました。

  • オカルト的な現象は確かに存在すると思いつつ、それでも信じきれない・なんだかよく分からないと思ってしまう感じめちゃくちゃ分かるなあ。
    霊的な存在や超能力の存在が科学的に証明されたとしても、この掴みどころのなさは消えない気がする。そこからもう一歩進んで技術的に自由にコントロール出来るようになった時にようやく確かにあるものとして実感出来るんだと思う

  • オカルトについて、賛成でも反対でもないニュートラルな視線から改めて見つめ直した森氏のルポルタージュ。
    世の中なんでもかんでも黒か白かみたいな現代において、森氏のニュートラルな視線は冷静かつ論理的で読んでいて安心します。

    山羊羊効果についての考察も面白いし、日本心霊科学協会などの団体のリーダーに直接インタビューする場面はなかなか知的スリルを味わえます。
    てゆうかそんな公益財団法人があるなんて!
    他にも森氏本人が体験した説明のつかない事象など…

    子供の頃超常現象にハマっていろんな本読んだ身としてはこの本でまた考えをアップデートできて読んでる間ワクワクしてとても楽しかったです。

  • 森達也氏の著作は何冊か読んでいるがどれも面白い。

    どんなテーマにおいても客観性、もしくは否定的な問いかけを常に持ち続ける姿勢に共感と信頼を覚える。

    そして今回の本のテーマは「オカルト」

    私自身は超能力、霊、UFO、等々については信じているわけでも信じていないわけでもない。

    ただ、どんな現象も可能性はあると思っている。

    この本ではまさに自分自身の疑問をそのまま本にしてくれたようで読んでいてとても興奮しました。

    以前に読んだ「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」もうそうだったがこの本でも最終的に明確な答えにたどり着くわけではない。

    でも、読み終わった時に何らかの真理に少しだけ触れたような…気がする。

    面白くて一気に読んでしまいました。

  • いつものこの人通り、対象の周りをグルグル回って答えは出ない。でもだからこそオカルトという素材はピッタリハマる。最後の方に登場するメンタリストは、著者の一方のメインテーマでもあるメディアとの関係で捉えても面白そうだと思うけど、どうなんだろ?

  • 森達也の視点はいつも刺激的であり、ラディカルである。

    「なんだかよくわからない」と、あえて白黒はっきりつけずに、わからないことを受け止めることの大切さ。

    世界は、わからないことに満ちている。だから面白い。

  • ゴーストライター騒動で日本中の注目を集めた佐村河内守をとらえたドキュメンタリー映画「FAKE」が素晴らしく面白かった。至上のエンタメ作品として楽しんだ。改めて森達也が気になり「オカルト」を読んだ。
    本書はいわゆる超常現象に密着したルポタージュ作品で、恐山のイタコ、スプーン曲げ少年、陰陽師、UFO観測会、臨死体験者、霊能力者など、「いかがわしい人々」のインタビューと、彼や彼女達との関わりの中で森達也自身が体験する「不思議な出来事」のレポートで構成されている。取材中に起こる心霊体験などは読んでいて思わずゾッとする。森達也が書くと、「本当に起こったんだな」と思う。
    とはいえトンデモ本の類ではなく、森達也氏の半信半疑な絶妙の視点で淡々と「起こったこと」だけが綴られており、「オカルト」に対する確信的な否定も肯定もしない。信じる・信じない、存在する・存在しないを明示することが著者の主題ではなく、どちらかというと「一つの視点」の提示だ。安易に結論を出すことへの警鐘とも解釈できる。

    オウム真理教、放送禁止歌、佐村河内守、そして「オカルト」、メディアによってイメージが固定化されやすい対象こそ、森達也のドキュメンタリー作家としての一貫性は伝わりやすい。善悪、白黒の二項対立ではなく中間地点のグレーゾーンに豊かさがあると。
    「中立的視点」とも解釈されがちだが、著者はそれも否定する。完全な中立はありえない。必ずどこかで作者の主観に傾倒する。
    いかにもテレビ向きでないが、昨今のメディアリンチへのカウンターとして再考されるべき作家ではなかろうか。

  • <目次>
    開演   「でもオレは結局曲げちゃうよ」”超能力者”はふてくされたように言った
    第1幕  「よく来てくれた。そしてよく呼んでくれた】恐山のイタコは語り始めた
    第2幕  「現状は、誠実な能力者には不幸でしょう」オカルト・ハンターの返信はすぐに来た
    第3幕  「僕たちはイロモノですから」”エスパー”は即答した
    第4幕  「いつも半信半疑です」心霊研究者は微笑みながらつぶやいた
    第5幕  「わからない」超心理学の権威はそう繰り返した
    第6幕  「批判されて仕方がないなあ」ジャーナリストは口から漏らした
    第7幕  「当てて何の役に立つんだろう」スピリチュアル・ワーカーは躊躇なく言った
    第8幕  「毎日、四時四〇分に開くんです」店主はてらいがなかった
    第9幕  「解釈はしません。とにかく聞くことです」怪異蒐集家は楽しそうに語った
    第⒑幕  「これで取材になりますか」雑誌編集長は問い質した
    第⒒幕  「僕はこの力で政治家をつぶした」自称”永田町の陰陽師”は嘯いた
    第⒓幕  「匿名の情報は取り合いません」UFO観測会の代表は断言した
    第⒔幕  「今日はダウジングの実験です」人類学者は口火を切った
    第⒕幕  「今日の実験は理想的な環境でした」ダウザーはきっぱりと言った
    第⒖幕  「あるかないかではないんです」超心理学者は首をかしげてから応じた
    第⒗幕  「夢の可能性はあります」臨死体験者は認めながら話し出した
    第⒘幕  「わからないから研究したい」科学者たちは当然のように答えた
    第⒙幕  「僕らは超能力者じゃありませんから」メンタリストはあっさりと言い放った
    終幕   パラダイムは決して固着しない。だからこそ、見つめ続けたい

    <内容>
    超能力・幽霊・予知・ダウジング・UFO・エスパー・イタコなど、”オカルト”とされる様々な事象や人々を取材して回ったノンフィクション。種本は2012年。けっこうな量があるが、意外と淡々と読める。著者の立ち位置が傍観者的なので、是非を語ることもなく、失敗があっても、本当に不思議なことでも著者の観たままに綴られているのが特徴。また科学者たちにも取材をしていて(大槻教授のように全否定ではない)、彼らのスタンスもよくわかる。そういう点で巷の”怪しい”本ではない。これは読んで損はないと思う。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや) 広島県呉市生まれ。映画監督。作家。テレビ番組制作会社を経て独立。1998年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i―新聞記者ドキュメント―』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(ちくま文庫)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)、『集団に流されず個人として活きるには』(ちくまプリマー選書)、『歯車にならないためのレッスン』(青土社)、『COVID‐19』(論創社)など多数。編著に『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会』シリーズ(論創社)など。
2023年9月1日、関東大震災の5日後に千葉県の福田村で起きた行商団9人の虐殺事件をテーマにした映画『福田村事件』が公開。

「2024年 『ガザ虐殺を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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