はなとゆめ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 1213
感想 : 93
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041041147

作品紹介・あらすじ

8歳の清少納言は、帝の后である17歳の中宮定子様に仕え始めた。宮中の雰囲気になじめずにいたが、定子様に導かれ、才能を開花させる。しかし藤原道長と定子様の政争に巻き込まれ……。魂ゆさぶる清少納言の生涯!

感想・レビュー・書評

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  • 中宮と清小納言の関係と枕草子誕生までの話。清少納言は気が強そうな才女というイメージだったけど、最初の頃緊張してたなんて意外。添い遂げるような純粋さで仕えたいと思う人がいるなんてすごいなあ。

  • 平安時代に生きた清少納言の物語です。
    なぜ、「枕草子」を書こうと思ったのかが描かれています。
    永井路子さんの「この世をば」で、藤原道長の物語を読んでおり、人間関係やしきたりなどの予備知識があったためすんなり読めました。
    歴史小説ですが、文体は読みやすかったです。

  • 枕草子の裏方本のような作品。清少納言がどんな気持ち、どんな経緯で枕を書いていたかがリアルに描かれている。
    時代が違いすぎることもあって共感しにくいところも多々あるが、主君の定子をひたすら褒めて愛する感じは現代の「推し」活さながら。批判もあったようだが、逆境に負けず真っ直ぐに推しを信じ抜く人生は楽しそうで眩しく思えた。

  •  発売当初に買っていたもののなんとなく腰が重く、そういえば大河の前に読んでおくか、と思いつつ奥付を見たら発行年月日が十年前で茫然としました。そんなことある?いや、よくあることか……。買ってすぐ読まないと本棚の奥に行ってしまっていけませんね。

     さて、なぜ腰が重かったかというと、何度読んでも気分じゃないなぁと思ってしまってしまったからでして、個人的にうぶちん(ファフナーの頃からのファンなので未だに冲方先生のことをうぶちんと呼んでしまうんですがもうそんな風に呼ぶファンはいませんか?)お得意のスロースタートストーリーなんですよね。序盤で冗長な日常描写を盛りに盛って読み手のストレス値が溜まってきたところで突如として自分の現在位置がジェットコースターの頂上であったことに気付かせるタイプの作者……というのは買う前から解っていたんですが、耐えきれずに何度も脱落してごめん!すごく面白かったです!!解ってたよ!解ってたんだけども!!!でも!!枕草子が好きじゃなくて!!!

     枕草子より源氏物語、中宮定子より彰子、清少納言より紫式部!と思って生きてきたのは単に随筆が苦手なのと紫の上が好きだったからなんですが大学受験勉強でちまちま読まされていたので……こう、読んでると……知っていることが多くて……?? これ、枕草子のバックストーリーというより枕草子を時系列順に並べて隙間を穴埋めしているやつですね?! 同人誌でよく見るやつを一般文芸でもやるんだ!?と結構びっくりしながら読んでいたんですが……まぁ歴史物って大体そういうものか……残る文献の一節を手掛かりに500ページの大物語を描くのが歴史小説ですもんね。とはいえ……、いや、ちょっと気になって読後に枕草子を読んだのですが、冒頭小石川の時点でほぼ原典そのまま現代語訳なんですよね。なのでこれはどちらかというと〝清少納言の生涯を描く歴史小説〟というよりは〝冲方丁先生が大胆に再解釈し直した平安世界、新説・枕草子、ここに堂々開陳〟みたいな趣きを感じました、私は。
     というわけで、二章までは落ち着かない気持ちでした。これって小説って言っていいのかなぁと思って。



     小説でした。
     三章から小説が始まりました。主人公清少納言が自らを最強にする武器「引用」に目覚めてラップバトルで宮中を騒がせる‪――‬あぁ、これそういう話だったんだ〜! と三章でやっと話が動き始めてほっとしました。
     二章までは枕草子の純度(雰囲気的にも)が高すぎてそもそも苦手意識のある私にはなかなか厳しかったんですが、三章のラップバトルで一気に天つ世の名声をモノにした清少納言が面白くて、そこからはまた冒頭のようにウジウジしだしても、まぁフォロワー増えると何もないとこから突然炎上するよね……、病むのわかる、現代ツイッターはネット上だけど平安時代は毎日顔合わせる同僚達とのガチバトルだからインターネット学級会じゃなくて政敵との争いだしマジで病む前に物忌みカード引くよね……と同情できます。というか平安時代の文学読んでるとすぐに病んで里下がりするよな、とは昔から思っていたのですが、ある意味メンタルケアに関しては現代より遥かに寛容って事だなぁ。病むのも憑くのも全部鬱だもんね。

     華やかなる宮中ラップバトルで彩った第三章から打って変わって第四章は呪詛飛び交うSNSでの派閥大戦争でした。
     清少納言は自分がアルファツイッタラーだからこそ同格の貴族と相互フォロワーになっており、彼らにRT支援させることで自宅に引き篭もりながらも自陣営の窮地を後方支援する!みたいなことがひたすら書いてあるんですけど、人間て千年経っても(本当にちょうど千年だった)同じことしてるんだなぁと思って面白かった。というか、現代日本より平安日本の方が確実にツイッター適性が高いです。SNSの中で文字主体、短文属性なので平安はツイッター最適化文化ですね。今より全然上手に、かつ軽やかに使える人が多いと思うし、タイムスリップして彼らにスマホ持たせたらガラパゴス化してめちゃくちゃ面白い文化になりそう。想像するのが楽しい。

     ところで、枕草子は苦手な私ですが、ものすごく好きな一節がありまして、『自分でも忘れていたような何気ない話を定子様が覚えていて下さって、ふとした時に「あの時あなたはこう言ってたでしょう」と仰って与えて下さったのには感動した。与えて下さったことはもとより、本人ですら忘れていた事なのに、高貴な身分のお方が一介の女房を気に掛けて下さっていたというその優しさ、お心遣いに私は打ち震えたのだ』みたいなのがあるんだよなぁと(自分で訳した古文の問題文を感動のあまり盛って覚えてる自覚があるので真実がよくわからない)思っていたら満を持して第四章で出てきて、あー!!ここで!!ここでもらうのか!!それは感動しちゃうね……、と一気に清少納言に好意を抱きました。こちらの本から引用するとネタバレになってしまうので、枕草子第259段、と覚書しておきます。

     基本的に主人公が己の天命に開眼したり主人との絆の為に生きる話が好きなので普段から歴史小説を読んでいるのですが、(第三章から)バッチリこのベースだったので大変楽しく読めました。女性同士だと最近はすぐ連帯やら何やら言われますけど性別はともかく人間と人間なので、二人の間にあるのは尊敬と情熱だけというシンプルな味付けが好きです。うぶちんのそういうリアルの真ん中、一番美味しいところだけを切り取っていけるところ、ずっと好きだな。今まで武士の世界でしか描かれなかった強固な主従の絆、女性でやろうと思えば確かに舞台は宮中だ! 江戸より平安の方がうぶちん好みだよね、わかる!(いや、わかんないけど、でも……いわゆる大奥物はもう色がついてる感あるし……)


     特に終わりが良かったです。枕草子に対して何の思い入れもない人でも「あ、これはすごく良い終わり方だ!」と直感できる王道ど真ん中のラスト。ここで堂々〝終〟とできるのもまたプロの技なんだよなぁ。最後の2行で自分がとある人物の大河浪漫を丸ごと呑めたような錯覚に陥らせる。大いなる読後感をもたらす、技術。流石です!

     来年大河見ながら読み直すことになりそうだなぁと思いつつ調べていたら、なんと、中宮彰子の物語が刊行されているんですね!?こっちの方が好きそう。笑 次はそれを読みます。

  • 枕草子の内容と、それを書くに至った背景が小説としてわかりやすく描かれている。

    『枕草子のたくらみ』『平安人の心で源氏物語を読む』や御堂関白記の訳などとあわせて読むと楽しい。

    伊周、隆家兄弟が、花山院の袖を射る事件(長徳の変)とそのすぐ後の清少納言の動きとその理由や、その後の則光や斉信との関係。
    また、その後の清少納言の孤立の具体的な理由。
    定子の「言はで思ふぞ」の手紙の決意。
    権力掌握のため必死な道長の策謀と、時勢をみる貴族たちの動き、定子の覚悟とその女房たちの自負と誇り、決意。

    特に後半、政治色が強くなるほど哀しくて激しい。

    …………伊周と、その弟の隆家、雅な教養はあったんだろうけど…ぼんぼんすぎるっていうか、ちょっとアホ


  • 「千年の黙 異本源氏物語」という紫式部視点での物語を読んだことがあるが、これは清少納言(中宮定子)視点なので、読み比べをしている感じが面白かった。

  • この本の読後、枕草子を読むと、清少納言の中宮定子への敬意と深い愛情が伝わってくる。学生時代に読んだ感じとは全く別物だった。

  • 前から気になっていたけど、来年の大河もあるし友人も読んでいたので。
    清少納言が語り部の、生い立ちから定子様に出会って別れるまでの話。一乗の法とか香炉峰の雪とか知っている言葉の意味を初めて知った。俺は愛の話が大好き。

  • 2024大河への助走①
    前に読んだんだろうけど覚えていないので再読

    清少納言のクソデカ感情にやられた。「春はあけぼの」で気持ちがぐちゃっとなった。とっくに既知の一節なのにな。
    道長陣営視点のも読まないとフラットな感情で光る君へ観られないな…。

  • この作品は清少納言のひとり語りという形で進みます。
      最初の夫である橘則光との別れから始まります。

      則光の母親が花山天皇の乳母だったために、将来を期待されていたがたった二年で出家するとは思わなかったことでしょう。
      彼女は長男を連れて父の清原元輔の元へ戻った彼女。けれども、父である元輔は七十九歳で肥後守になり、彼女とはそれが永遠の別れとなります。仕官をした則光の元へ長男も行ってしまい……。
      二十八歳になった時に清少納言は宮中へ、しかも中宮定子に仕えることになります。定子の年齢は十七歳。
      若く美しいその華に清少納言はその生涯と一冊の書物を捧げることになるのです。

      身分、美しくないわが身への引け目。そうしたことから、宮中は決して清少納言にとって居心地が良い場所ではなく、それを変えてくれたのが、だれでもない最も尊い女性である中宮。

      ふさわしくありたいという気持ちが彼女を変えていく。それでも、宮中に恐れを感じる彼女に定子は上質な紙を与えるのです、いつか彼女が描く『枕』のために。

      そして、定子の父である藤原道隆の死後、道長と伊周との政局争いに巻き込まれて、定子は髪を切り、清少納言は口さがない人々のうわさ話に疲れ果てて、定子の元から離れてしまい、そこで様々な思い出を書き綴り始まるのです。それはかつて定子が『枕』と呼んだもの、のちの世に『枕草紙』として歴史に残る書物になるのです。

      道長と定子との政治的な争いは続き、結果として道長が勝利を収めたかのようにも思えるのですが、その後、定子をモデルにした『源氏物語』を書いていた紫式部を宮中に招いたり、彼女が彰子の漢文を教授したりということを考えると、あくまでも彰子は定子のコピーでしかなかったと思われて、切ないですね。

      宮中で多くの人が続きを待ち望んだ『源氏物語』
      定子が読み、苦しい生活の中で笑みを浮かべたと言われる『枕草子』

      どちらにも価値があり、どちらの妃も辛い日々を送っていたと読み終えたときに思っていました。

      この作品では淡々と、静かに語られていく日々が愛おしいと思わせてくれるものでした。だからこそ、歴史に翻弄された一人の女性の生涯が胸を打つのでしょう。
     

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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