牛姫の嫁入り

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 262
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041041154

作品紹介・あらすじ

孤高の女忍びの任務ミッションは、純朴で太ったお姫様のダイエット!?
『のぼうの城』『超高速!参勤交代』の城戸賞を受賞した、
新感覚・時代劇エンターテインメント、開幕!!


江戸時代中期。忍者派遣業を営む三日月村で育った美貌の女忍び・コウは、旗本・加納家に派遣される。コウの任務は、十万石の大名である藤代家の娘・重姫を誘拐してくること。かつて伝説の美少女と噂された重姫は藤代家当主の溺愛により、ここ10年、人前に姿を見せずにいた。しかし、三日月の夜に屋敷へと忍び込んだコウが見つけ出したのは、引きこもって丸々と太った重姫の、変わり果てた姿だった――。

感想・レビュー・書評

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  • 藤代家の末娘をさらい、我が嫡男に会わせよ。
    誘拐見合いのため、派遣忍びのコウと守市は、重姫の部屋へ忍び込むが……。

    ハートウォーミングな時代小説。

    牛のような肥満体に、心の読めない顔。
    体だけではなく、心の動きも鈍いと思われた重姫の、真の心。

    三日月村で役立たずと思われている守市の、コウだけが見抜いている資質。

    放蕩息子だった黒光の、人の本質を見る目。

    明らかになっていくそれぞれの人柄が、魅力的。

    牢屋番の助六、重姫のお守り役・佐久など、脇役も含め、いい人ばかりで、あたたか。

    コミカルなやり取りの中に、じーんとくる物語。

    第32回木戸賞入選作を、加筆・修正したもの。

  • 女忍者が請け負ったのは、お姫様の誘拐、じゃなくて、ダイエット?
    わかりやすく、ほっこりするお話です。

    女忍びのコウは、旗本の加納家に、大名である藤代家の姫を誘拐してくるように依頼される。
    伝説の美少女という重姫は、父親に溺愛され、この10年もの間、人前に姿を見せていなかったので、強引にさらってきて息子と見合いさせようというのだ。
    相棒の守市と屋敷へ忍び込んだコウが見つけたのは、まるまると牛のように太ったお姫様。
    きびきびと有能でしかも美貌なコウも、これではお手上げ?

    今度はひと月で美しくするように、というミッションに変わる。
    おっとりと大人しい重姫は、ほとんど何もせず食べているだけだったのだ。その理由とは。
    頭をひねったコウの指導のもと、身体を動かすために、生まれて初めて洗濯や掃除、買い物に挑戦する。
    重姫の気立ての良さがだんだん見えてきて、読む方も気持ちがいいです。
    そして、さわやかなハッピーエンド。
    この心地よさが貴重な作品ですね。

  • 大山淳子ワールドの時代劇版。
    終始ほっこりと進んでいって、最後は意表を突いた一言が投げられて終わる。この、え?この後どうなる?と思わせて終わるのが余韻を産み出しているんだけど、これが大山さんは上手いんだよね。わからなくてイライラするのでもなく、気持ち良く余韻に浸れる。

  • 派遣忍びの里・三日月村のコウと守市は、
    藤代家のまぼろしの姫・重姫を誘拐し、加納家の跡取り息子と見合いさせるという命を受けた。
    重姫は、10年あまり誰もその姿を見たことがない伝説の美しい姫君。
    ところが、二人が見た重姫の姿は、まるで牛のようにまるまるとして───


    人質にされた守市を助けるため、コウが考え出したのは、
    「食べたければ、自分で獲る」というダイエット作戦。
    その格闘の日々がとても面白い。

    やっとつかまえたチャボを、お腹はぺこぺこなのに
    「友を食べるわけにはゆかぬ」と我慢する姫。
    自分の欲しいものではなく、おみやげのかんざしを真っ先にえらぶ姫。
    そんな姫が、太ってしまった理由がせつなくて…

    そして「私はお洗濯とお掃除ができまする」と答えた姫がとてもいじらしい。

    こういうお話はすごく好き。
    心がぽかぽかして、ふんわりとやわらかなものに包まれるような気分です。
    この清らかな心を持った重姫が、幸せになりますように。

    久しぶりに『猫弁』が読みたくなりました。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      忍びの国を読んだ事もあって、やっぱり忍者もの好きだわ。
      これは忍者ものってわけではなさそうだけど、お話がと...
      こんばんは(^-^)/

      忍びの国を読んだ事もあって、やっぱり忍者もの好きだわ。
      これは忍者ものってわけではなさそうだけど、お話がとてもほんわかして読みたくなったよ〜♪
      大山さんはずっと読みたいと思っていた作家さん。
      この作品から読んでみようかしら。
      最近ちょっとグロいのを読んでしまい、ほんわか元気が出る作品を読みたいんだ。

      調子はどう?無理しないでね。
      旦那さまは相変わらず痒みで体が赤いわ(+_+)
      2017/08/28
    • 杜のうさこさん
      けいちゃ~ん、コメントくれてたんだね~
      お返事遅くなってしまって、ごめんね~。
      しばらくPCから離れていて、気付かなくてごめんなさい。
      ...
      けいちゃ~ん、コメントくれてたんだね~
      お返事遅くなってしまって、ごめんね~。
      しばらくPCから離れていて、気付かなくてごめんなさい。

      これ、私の感想の書き方がまずかったね。
      この本、一応忍者ものなのだ。あはは。
      それも”派遣忍者”。
      江戸時代に派遣忍者というものがあったのか知らないけど、面白かったよ♪

      おぉ、めずらしくグロ読んでしまったのね?
      それはそれは(>_<)
      けいちゃん、大山淳子さんの本読んだことなかったっけ?
      読み終えたあと、心がぽかぽかする感じの作品が多くて、すごく好き。
      けいちゃんもきっと好みだと思うよ。
      ぜひ読んでみて!


      いつも体調を気遣ってくれて、本当にありがとう<(_ _)>
      少し前に検査行ってきたの。(あれは何度やってもつらい)
      寛解期終了で、お薬が増えてしまった…。
      完治はないとわかっていても、また再燃かと思うと凹むわ。
      ご主人もつらそうだね…
      それをそばで見ているけいちゃんもつらいね…
      やっぱりあの方は絶対特別なお薬飲んでるよね!
      2017/09/05
  • 最初は何だか最後まで読める気がしませんでしたが、だんだん面白くなり途中からは一気に読めました!
    落ち込んだときにまた読むと元気が出て頑張ろうと思える本かなと思います。

  • タイトルと表紙からはコミカルな印象しかなかったのですが、読んでみると素直に楽しめて心温まる、ええ話でした。

    “派遣忍び”のコウと守市は、旗本・加納家から十万石の大名である藤代家の娘・重姫を誘拐し、加納家の嫡男と見合いをさせるという依頼を受けます。
    いざ藤代家に忍び込むと美少女のはずだった重姫は、牛のように激太りしていて・・。
    結果誘拐は失敗し、成り行きで「1ヶ月で姫を美しくする」という約束をしたコウ。さながら鬼コーチばりに重姫を指導していきます。
    最初は、食べているばかりで感情も見せなかった重姫ですが、実は清らかな心の持ち主だという事が徐々にわかってきて、いつの間にか全力で重姫を応援し、彼女の幸せを願いながら読んでいました。本当に素敵な娘なんですよ、この姫様は!
    一方、本来なら冷徹であるべきコウの心の揺れもご注目です。
    そして、ラストの重姫の幸せそうな姿に、美しさとは何かということを教えてもらった気がします。

  • ほっこり

  • やはり大山淳子さん好きだなぁ。

  • タイトルと表紙で面白珍道中かと思ったら良い方に裏切られた!

    冷徹な女忍がまんまるお姫様の傷付いた心を励ましクソ父上の鼻を明かすのは爽快だったし、姫様の仕舞い込んだ優しい気持ちを徐々に取り戻す様は読んでて嬉しくなった。

    見た目の美しさだけを価値とし姫様が痩せたと見るやのクソ発想は、当時としては大いに有りそうだけど現代ではそりゃ悪役になりますよ。
    見た目がどうの痩せだ太いだの女はどうのとかは最近も嫌と言う程見かけるけど、美しくなる為に痩せるのでなく自分をしっかり生きる為に学んで動いた結果が健康的な身体で沈んでいた元々の心を取り戻した姿こそが『美しい』のだと。直接父上を説教することはしなかったけど、このコウのやり方は凄く好きだった。

    そもそもの暴食の理由も切ないし、痩せていくことが死に繋がる恐怖から来る無自覚な甘やかしとか、結構ハードな背景だけど悲痛に感じさせ過ぎない文章が読みやすかった。砂糖の甘さに涙する理由が余りにも気の毒で、全く悪気は無いけど罪悪感抱えてしまうよなと悲しくなった。

    終盤と思ったところで拉致られた時はちょっと肝が冷えたけど割とアッサリ解放してもらえてさすが上流階級は分別があるな(手段はアレだが)。珊瑚の簪が最後に効いたのはめちゃ良かったな。気持ちの良いハッピーエンドだった。

  • 初めて読む作者 大山淳子氏の小説。

    時代小説も、ユニークな物語。
    伝説の美少女と噂された重姫。
    父親が、喜ぶと思い、一杯食べたら、良いと思い、ひたすらに、食べまくった。
    女忍びのコウと守市は、加納家の息子黒光の結婚相手として、是非とも一緒にして、お家存続に、買われる。

    さてさて、初めのうちは、なんとも言い難い程、お笑いの物語りかと、思っていたのだが、、、、

    女性の美しさは、外面だけでなく、心の優しい人、そして、恋する乙女の美しさ。

    1ヵ月で、重姫を綺麗にするという約束をさせられた忍びのコウは、身体を動かす事だけでなく、色んな事に、自分自身が判断することを重姫に教える。

    しかし、重姫も、コウに無い、あきらめるという、選択を持っているのが、、、姫の定めのように、重々しい。

    重姫の女中、佐久への重姫の心優しさの鼈甲の簪も、、、心憎い。

    単なる面白さだけかと思って読んでみたのだが、「真の美」というものをユニークな感じで、表していると思った作品である。

    そして、お家の為の犠牲になるのでなく、めでたしめでたしで、終わった事で、笑顔で、本を閉じた。

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著者プロフィール

東京都出身。2006年、『三日月夜話』で城戸賞入選。2008年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。2011年、『猫弁~死体の身代金~』にて第三回TBS・講談社ドラマ原作大賞を受賞しデビュー、TBSでドラマ化もされた。著書に『赤い靴』、『通夜女』などがあり、「猫弁」「あずかりやさん」など発行部数が数十万部を超える人気シリーズを持つ。

「2022年 『犬小屋アットホーム!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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