四億円当てた勇者ロトと俺は友達になってる (角川スニーカー文庫)

著者 : 新木伸
制作 : 佐嶋 真実 
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年2月27日発売)
3.71
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  • レビュー :3
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041041796

作品紹介

『ねー。とれぼー』
いつものオンラインゲーム中、相棒が俺に尋ねた。
『なんだ? ろと』
『ぼくねー。四億円当たっちゃったー。島買ったほうがいいかなー?』
『ちょっと待て』

トレボーのゲーム仲間ろとが、ロトくじで四億円当選!? さらに、オッサンだと思っていたろとは、ヒキニートの残念系美少女で……。
四億円当てた少女とその管理役として永久就職した青年の、ポンコツ倹約スローライフ!
※本作は某RPGとは関係ない日常小説です!

四億円当てた勇者ロトと俺は友達になってる (角川スニーカー文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 非現実的すぎ

  • 読書家の友人らと、最近のライトノベルを1つ読んでみようということになり、 Amazon で適当に探したところこの印象的な書名が目に留まり、通読。

    MMORPG 内で懇意しているプレイヤが実は美少女であり、しかも彼女はロトくじで4億円を当てたという。彼女はまさに社会不適合者であり、主人公はその面倒を見ることを決断。4億円でなんとか残りの人生を生きていこうとする2人の生活を面白おかしく描く……という内容。

    率直に言って一般の読書家が好むような内容であるとは思いがたいが、現代のライトノベルの主な読者がライトノベルに求める嗜好がこの本を通じて垣間見える点は興味深い。以下に少し挙げてみたい。

    1. 等身大の主人公

    ライトノベルの主人公といえば、昔は中等教育を受けている最中の学生か、あるいは空想世界における何らかの能力者というところであるが、本作の主人公は社会的弱者といってよい。何らかの仕事は得ているもののあまり高等なものではないようで、電話1本ですぐに退職できる類のものである。主人公は高等教育を受けていない可能性もある。また、社会に関する知識も特に豊富とはいえない。日常生活、特に料理に関する描写や、日本の年中行事におけるやりとりなどから、庇護の対象である少女だけでなく、主人公もいささか社会常識を欠いていることがわかる。これらの主人公の性格は、おそらく、現代のライトノベル読者が主人公に対して容易に感情移入することを許すものなのだろう。

    2. MMORPG

    昨今のライトノベルでは MMORPG が少なからず内容にかかわってくるようだ。現実と違う秩序を、比較的容易に現実に移入するにあたって便利な装置なのだろう。特に、 MMORPG は異質な人物との出会いを実現すること、加えて、ゲーム中での上下関係を現実に移入することで主人公の自尊心や生活を満たすために利用されている。

    3. 才能ある存在を庇護すること

    ここで描かれる生活が実現された端緒は少女が4億円を当てたことにある。加えて、少女はある分野において、数学であることが示唆されているが、非凡な才能を持つことが示される。一方で少女は完全な社会不適合者であり、それを庇護することに主人公の存在の意義がある。飼い主や執事などといった言葉でそれは強調されるが、主人公は少女の庇護者であることに自分の意義を見出している。

    4. 質素な生活

    本作が描くのは質素な日常生活である。冒険活劇などはない。4億円を当てて、ゲームで少々の精神的な満足を得て、働かずに、質素な生活を過ごす、という状況は、読者にとって少なからず魅力的なものであるようだ。

    5. 現実社会の強者

    一方で、主人公達の協力者として、やや性格が破綻した美女と、落ち着いた中年男性が現れる。前者の美女は百貨店の美容部員、後者の男性は起業家、話を追う限りではプライベート・エクイティ・ファンドの代表であるようだ。前者はその美貌で、後者はその知力、財力という点で主人公より社会的に強い立場にある。一方で、彼らはいずれも主人公と少女とともに MMORPG を協力してプレイしている中であり、主人公はそのパーティにおいてリーダーという立場である。ゲーム内での立場が現実に浸透し、少女を含む彼らに対し主人公は現実においては指導力を発揮できる立場にあり、また美女と中年男性の庇護を求めることを主人公はできる。こういった状況は主人公、すなわち読者には、自尊心を満たすこともでき、また現実の生活における助けを得ることもでき、はなはだ都合がよいものであろう。

    まとめると、このテキストは、上のような設定を通じて読者に満足感を与える商品、という印象を持った。マーケッティングに基づいてこういった設定を設計しているということでもしあれば、著者の能力はなかなか優れているように思われた。これらの設定から垣間見える、対象となる読者群の性質を考えると暗澹たる気持ちになることも確かだが……。

    今後の展開が気になる……ということは特にないのだが、もしこの後、主人公の庇護する少女が世界の命運を握る存在であり、主人公が彼女のために世界を敵に回して奮闘するような、『イリヤの空、 UFO の夏』のような成長物語に文体の変換も含めて転換したらさぞ面白いだろうと思うが、ちょっとそうはならないだろうな。

    蛇足だが、ロトとゾーマ、トレボーとワードナといった名前の由来を多くの読者は知っているのだろうか?前者はともかく、後者はもはや古典の域であろう。

  • 日常まったりスローライフコメディの大手(?)、新木伸さんの“なろう”投稿作品。同著者の他作品同様、のんびり気軽に読める優しい世界(たまに毒素あり)の作品でした。ろとの庇護欲を掻き立てられる感は異常。それぞれのキャラクターのバックグラウンドがいろいろ気になる作品です。次もあるかな。出て欲しい。

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