- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041042007
作品紹介・あらすじ
火事が続く江戸。江戸城台所人の鮎川惣介の元へ、以前世話になった町火消の勘太郎がやってきた。火事場の乱闘に紛れて幼馴染を殺した犯人を捜してほしいというのだ。惣介が辿り着いた事件の真相とは――。
感想・レビュー・書評
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人並み外れた嗅覚を持つ江戸城台所人・鮎川惣介と、剣の達人で大奥添番・片桐隼人の幼馴染みコンビが様々な事件に挑む〈新包丁人侍事件帖〉シリーズ第三作。旧シリーズから数えれば第十作になる。
前作は江戸が大雨に襲われた話だったが、今回は一転火事、それも付け火の話。
度々付け火による火事に江戸が襲われる中、火消し同士の大喧嘩まで起きて職人の男が死んだ。喧嘩とは無縁の男の死を不審に思う幼馴染みの町火消から頼まれて、事件の真相を探ることになった惣介と隼人。
だが事は火付けだけでなく贋金作りにも絡んでいて…。
第一話と第二話は一連の話。
付け火の犯人を追う中で、様々な怪しい人物に出会う。人目を避ける者というと中肉中背の目立たない容姿であったりいかにも闇を抱えていそうな人物だったりすることが多いが、今回怪しまれるのは腹が出た中年男=惣介みたいなほんわかキャラクターなのだ。
慌てる惣介だが勿論惣介は付け火犯ではない。
そこに贋金作りが絡んでくるのだが、幕府が貨幣の改鋳を繰り返していることが背景にある。つまり幕府はかなり財政難に陥っているということ。そのせいか、将軍・家斉のやつれかたも酷く惣介たち台所人も心配する。
一方で雪之丞が予想以上に権威に守られていることも分かる。振り回される惣介がお気の毒だが、美味しいものを食べさせてもらっているから良いのか。
そしてそんな惣介に心配される大鷹源吾もまた気の毒。彼の気持ちや覚悟はともかく、惣介も今までとは違う気持ちで見守っている。
第三話は惣介の長男・小一郎の話。小生意気で口ばかり達者だが独り立ちはまだ遠い小一郎が、友と自身のプライドのために大喧嘩。私は年齢的に惣介視点で読んでしまい、小一郎の未熟ゆえの傲慢さに一緒になって叱りたくなったが、逆に友を助けたり守ろうとするところは褒めてあげたいとも思う。小一郎と友の又三郎が、惣介と隼人のように長く友でいて欲しいと思う。そして惣介や隼人のように子どもたちと一緒に奔走してくれる大人って良いなと思う。
これで一連のシリーズ作品は再読含めて全て読んだ。
※作品名一覧(全てレビュー登録あり)
〈包丁人侍事件帖〉
①将軍の料理番
②大奥と料理番
③料理番子守り唄
④月夜の料理番
⑤料理番 春の絆
⑥くらやみ坂の料理番
⑦料理番 名残りの雪
〈新包丁人侍事件帖〉
①料理番に夏疾風
②料理番 忘れ草
③飛んで火に入る料理番
④料理番 旅立ちの季節詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸城の御膳所で将軍の食事を作る料理人・鮎川惣介の物語。
この時代の江戸は火事が多かったと聞く。
文政七年如月、立て続けに5件の火事が起きた。
付け火の疑いもある。
そして、以前の事件で知り合いになった火消しの勘太郎に、友人の不審死について調べてほしいと惣介に依頼がくる。
それにと並行して、江戸幕府上層部では、贋金造りの捜査も進んでいた。
火事に関して、多分それ以外にも、江戸幕府がさまざまに危機管理対策を考え、政治を行ってきたのだなと思う。
しかし、その影で、都合の悪い事件はもみ消しにされたりして・・・
ま、現代と同じかな。
いかにも良い人過ぎる人は胡散臭いかなと疑う。
お人好しの惣介は気付かないが、読者には分かるように書いたのだろう。
ふみと伝吉も、堂々たる鮎川ファミリーとなった。
しばらく、長女・鈴菜の恋愛沙汰に翻弄されていた惣介だが、今度は長男・小一郎の起こした事件に悩まされる。
中二病真っ盛りのお年頃。
躾に関しては、その家それぞれのやり方があるだろうし、御家人と旗本の家では「嫡男」の立場の重さも違うかもしれない。
惣介が、次第に大鷹源吾と協力する(?)ようになることに「進展」を感じる。
そして、今回は出番の少なかった末沢主水・・・どうなるのだろう。