209号室には知らない子供がいる

著者 :
  • KADOKAWA
3.24
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本棚登録 : 445
感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041043424

作品紹介・あらすじ

リバーサイドに建つ瀟洒なマンション。
209号室には、少年「あおい」が住んでいる……。

やりがいのある仕事を辞め、専業主婦となった菜穂。
夫は家のことは何一つせず、気が向けば子供の遊び相手になる程度。
「これじゃまるで大きな子供ね」といらだちが募っていたある日、
209号室に住む「葵」という名の美少年が現れる。
葵は息子の遊び相手を務め、ありがたく思う菜穂だったが、次第に夫までもが子供のような奇妙な振る舞いを始め……。
自分の力でマイホームを購入し、理想的な年下夫も手に入れた亜沙子。
妻と死別した、憧れの上司と結婚した千晶。
妹に彼氏を寝取られ、慰謝料をもらって新たな人生を踏み出した和葉……。
一見「ちゃんとして」見える女たちは、しずかに歪み、壊れていく。
……209号室の少年、葵によって。
そして、209号室のオーナー、羽美の周りでも奇怪な出来事が起き始め……。
これは呪いか、人災か。女の業が交差する、ホラーミステリ決定版。

感想・レビュー・書評

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  • ★3.5

    高級マンション「サンクール」で起こった怪異を描いた5編の連作短編集。

    ・コドモの王国
    ・スープが冷める
    ・父帰る
    ・あまくてにがい
    ・忌み箱

    ・子育て真っ最中の専業主婦の菜穂・まるで子供の旦那と躾けの価値観で苦慮している。
    ・自分の力でマイホームを購入し、理想的な年下夫と結婚したキャリア女性・亜沙子
     しかし、義母はいつまでも少女な人で…。
    ・妻と死別したばかりの憧れの上司と再婚した千晶。だがなさぬ仲の息子と合わない…。
    ・自分勝手な妹に婚約者を盗られ、慰謝料をもらって新たな人生を踏み出した和葉。
    ・209号室のオーナーで、離婚して一人で暮らしている羽美。

    彼女達の前に209号室に暮らしているという「葵」と名乗る男の子が現れる。
    葵は見るからに美しい男の子で小学一年生くらい。
    彼が現れてから葵は彼女達の周囲の人達を虜にしていく。
    一見ちゃんとして見える女性たちは、静かに歪み壊れていく…。
    軋む日常…壊れていく日常…。
    やがて209号室のオーナーの羽美の元にも魔の手が迫り…。
    「葵」とは何者なのか?
    209号室にはどんな謂れがあるのか?
    調べ始めた羽美に明らかになって行く真実…。

    櫛木さんにしては普通のホラーだったかなぁ。
    普通と言っても十分に怖かった。
    最初は何がどうなっているのかわからず頭の中が?マークだらけ
    四章で話がどんどん進むにつれてページを捲る手が止まらなくなった。
    土地の瑕疵…小野不由美さんの残穢を思い出させられました。
    何処に土地の瑕疵があるのかわかんない…すぐそばにあるのではと
    とっても怖かった。
    209号室は、誰しもの近くにあるんじゃないかって思った。

  • 怖そうでいろいろ期待しながら読みすすめたものの、途中飽きてしまい、でも最後はちょっと面白いと思えた。

  • 面白い!
    あっという間に最終話の前まで読めてしまった。
    それが最終話で全て覆された感。
    最初の話と最後の話では全く印象が違ってしまう。
    徐々に不思議系、ホラー系に話がいってるな・・・と思ったけど、最後はまるで現実離れした話になってしまって「ここにおとしこむか・・・」という気がした。
    最初があまりに良かっただけに残念だと思う。

    「サンクレール」という高級マンションの住人たちの話。
    彼らに共通しているのはサンクレールの住人という事と、「葵」という男の子と関わる事になること。

    最初の女性は3歳の子供の子育てに奮闘している女性。
    ある日、子供が同じマンションの葵という男の子と友達になり、その子はそれから彼女の家に入りびたりになる。
    葵は彼女の家で食事もするようになり、負担に感じる彼女はそれを夫に訴えるも、子供のような夫は子供たち2人と童心にかえって遊ぶばかり。
    子供を3人も抱えるような気持ちになった彼女はイライラして彼らを叱りつけるようになる。

    2話目の主人公の女性は姑と二人暮らしのキャリアウーマン。
    彼女の夫は海外に単身赴任している。
    姑はまるで少女のような女性で、ある日、ショッピングモールで葵という迷子の男の子を連れて帰ってしまう。
    そして、そのままずるずると家にその子供を置いておくことに。
    だが、何故か子供の行方不明の記事やニュースが出ない。
    そんな折、単身赴任の夫が帰国する事になってー。

    3話目の主人公の女性は歳がだいぶ離れた男性と結婚した女性。
    彼には彼女とあまり歳の違わない高校生の息子がいる。
    その息子がある日、葵という男の子を家につれてくる。

    4話目の主人公は妹に人生において、あらゆるものを横取りされてきた女性。
    婚約者まで奪われた彼女の心の慰めはチョコレート。
    彼女の生活は葵という男の子に関わる事により破綻していく。

    5話目の主人公はマンションのオーナーの女性。
    離婚してこのマンションの一室に住む彼女の話から「葵」の正体が分かる。

    最終話で全て台無しになった感があるけど、そのひとつひとつの話に描かれている女性たちの心理描写は素晴らしい。
    子育てにイラつく女性や子供っぽい姑にイライラさせられる女性、妹や家族に確執を抱える女性・・・そんな様子が見事に描かれている。
    1話目、2話目を読んで思ったのは、これって、「葵」という子供を通して、子供っぽい大人とそれに振り回される大人というものを描いているのかな・・・という事。
    だけど、徐々にそういうものから離れた現実離れした話になったのが残念。
    だけど、この作者の文章力はどんどん洗練されていってるな・・・と感じた。

  • あるマンションに住む何組かの家族が崩壊を迎える。
    そこには常にある少年の姿が見え隠れしていて…

    連作短編になっていてそれぞれの章だけでも独立したお話として読める。
    オカルトやホラーの要素も含まれているが、自分としては現実世界にありそうな話・サスペンスとして読んだ。

    これはこの作品に限った事ではないが、どちらかというと男性が主人公の小説を手に取る事が多くて
    主人公の行動や心の動きに親近感や理解を感じるからなのだが、この作品の主人公達は全員女性。
    自分が男でなければ、もっと深く理解し共感し刺さる読書が出来たのかもしれないと残念な気持ちになる程、登場人物たちの心理が綿密に描かれていて、作り物の下の土台はしっかりしている印象を持った。

  • ホラー…というより、土着の民俗学ミックス不条理求母物語。続きが気になるという意味では面白いのだが、怖さ控えめ。むしろ女性の受ける不条理さに腹立たしささえ感じる。こういうテイストは明確な説明はせずぼかした方がより不可解な心持ちになるので、最終章がおしい。

  • 7年前の櫛木さんの作品。装丁にはなんとも表現しがたい子供が。タイトル的にこの子が209号室にいるんだろう。と、ページを捲る。

    まぁなかなかゾワゾワするホラーテイスト。今流行の瑕疵物件的な。第1話、ベランダのシーンにはヒンヤリ。第2話の不気味な義母にムムムッ。第3話は前妻の仏壇にドキリ。第4話はチョコレートが美味しそうだけど…。第5話で全ての謎が解けて、全話が繋がるのだった。そして最後の1行には顔を歪ませる。

    でもやっぱ第1話が1番ゾクッとしたかな。やっぱ櫛木さんのホラーはきっちり良い仕事をしてくれているなと。

  • 以前読んだ「チェインドッグ」が中々面白かったので本作も手に取りましたがイヤミスにホラー&ミステリーがミックスされていて怖いながらも最後まで面白く読めました。

    表紙に描かれた209号室に住んでいる「葵 あおい」が中心となって物語が進みます。

    一見「ちゃんとして」見える女性達が葵によって少しづつ歪み壊れて行きます。

    その他、チョコレート依存症の女性や嫁姑の話など どこにでもいそうに見える普通の人々が葵の出現で変化して行く様にゾッとしました。

    乾いた雰囲気の心理的ホラーが好きな方にオススメの1冊。

  • ホラーは好きなので軽い気持ちで読みはじめたら1話と2話だけ読んでとても心が折れてつらくなりました。これは無理だとあきらめて、とばして5話を読んだらきぶんの悪さにくわえてとても怖い思いをしましたww

  • (図書館本)お勧め度:☆5個(満点10個)。普通のマンションに住む普通の家族の怖ろしい出来事を描いたホラー風な作品。マンション「サンクレール」の住人「波佐野羽美」の家族の怨念が209号室に現れる「葵」という少年によって引き起こされる事件の数々が5つの話に凝縮され、最後にそれぞそれ住民の過去をえぐり出すという展開。それぞれの話も最後にぞぞーっどする話の連続で、後から震えがくる感じだ。グロくは無いが、それ故、なおさら恐ろしさを感じる。ラストで全ての話が繋がり伏線も終結するけれど、最後の語りも恐ろしい限りである

  • 櫛木さんはじめて読みました。文章は読みやすく会話もわざとらしいような大袈裟さがなく良かったと思います。
    紹介文に「ミステリ・嫌ミス」となっていたので、人為的な災い・悪意が降りかかる系として読んでいたのですが、途中から「おや?」っという雰囲気になってきて、読み進めていくと徐々にホラーテイストが混ざってきて最終的には昔々の怨念が…な結末で。生身の人間同士の関わり合いでのドロドロした悪意と憎悪による悲劇を期待していた私にしてみたら結構肩透かし食らった感じのラストでしたが、「ミステリ・ホラー」と認識して読むのなら楽しめる作品だと思います。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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