悪いものが、来ませんように (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 607
レビュー : 87
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041044421

作品紹介・あらすじ

助産院の事務に勤めながら、紗英は自身の不妊と夫の浮気に悩んでいた。誰にも相談できない彼女の唯一の心の拠り所は、子供の頃から最も近しい存在の奈津子だった。そして育児中の奈津子も母や夫と理解し合えず、社会にもなじめず紗英を心の支えにしていた。二人の強い異常なまでの密着が恐ろしい事件を呼ぶ。紗英の夫が他殺体で見つかったのだ。これをきっかけに二人の関係は大きく変わっていく! 一気読みが止まらない、そして驚愕のラスト! 「絶対もう一度読み返したくなる!」「震えるような読後感!」と絶賛された傑作心理サスペンス!(解説:藤田香織)

感想・レビュー・書評

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  • 助産院に勤める紗英は、不妊と夫の浮気に悩んでいた。彼女の唯一の拠り所は、子供の頃から最も近しい存在の奈津子だった。そして育児中の奈津子も、母や夫、社会となじめず、紗英を心の支えにしていた。そんな2人の関係が恐ろしい事件を呼ぶ。紗英の夫が他殺死体として発見されたのだ。「犯人」は逮捕されるが、それをきっかけに2人の運命は大きく変わっていく。最後まで読んだらもう一度読み返したくなる傑作心理サスペンス!

  • 文庫帯に「絶対、ぜったいだまされて、読み返します」と、謳う心理サスペンス。
    主な登場人物は、紗英と奈津子=なっちゃんの二人。そして、彼女たちを取り巻く家族や友人。
    この二人の関係は?と、違和感を抱えながら読み進むうちに、殺人事件も発生。
    その真相も絡めながら、終盤で違和感の正体が解消。
    惹句の通り、思わず該当すると思う数頁を読み直してしまった。
    こういう仕掛けは、他の作品でも見かけたかも・・・

  • あーぁ。またやられた感。
    途中から「??」となり、ちょっと偏愛な物語?となったのに、最後には母親の愛の話だとビックリでした。
    たった一言。「なっちゃん」それだけで、こんなにも人は騙されてしまう。
    これがただのお母さんだったら、普通のお話ですしね。
    個人的になっちゃんが母親とわかったところから、自分に重なることが多く、後半は少しウルッとしました。親子でも分かり合えない部分あるよね…って思ってしまいました。

  • この人たちは一体どういう関係なんだろうと思いつつ読んでました。呼び方が紛らわしいんですよー。
    ものすごい共依存。自分もそうはならないようにしなければ…。あと、こういう関係に近い人たちに心当たりありすぎる。

  • ○不思議な友人関係にゾクゾクする印象を持ちながら、騙された感覚なしにあなたは騙され続けるだろう
    主人公は子育て中の奈津子と、子供はおらず妊活中で夫の浮気を疑う紗英。
    紗英が助産院での仕事を終えた後、必ずと言っていいほど奈津子の家に寄り休んで行く。奈津子は紗英の家の鍵を持ち、いつでも入れるしなんなら食事まで作ることもある。お互いに「紗英」「なっちゃん」と呼び合う仲だ。
    ある日奈津子が紗英の家に行くと、紗英はおらず夫の大志だけがいた。食事を作ろうと家にあがり、大志が麦茶を飲んだとき、急に苦しみだして倒れてしまった。紗英が除草剤を使って殺そうとしたと気づいた奈津子は証拠を隠し、遺体も隠そうと画策する。一方の紗英は、なぜか大志から連絡がこないことで不倫相手の家に行っているのではないかと不審を抱くものの、奈津子と一緒に警察へ駆け込むが・・・

    プロローグでの
    "この子のもとに、幸せばかりが待っていますように。
    悪いものが、来ませんように。"
    という言葉から、タイトルは奈津子の願いだということが読み取れるが、途中から奈津子や紗英の関係者の「証言」が出てきて、きっと奈津子や紗英が何かした・・・まさか人を殺したのでは?しかしその言葉との関係は、と終始ゾクゾクしっぱなしである。
    さらに、奈津子が紗英が除草剤を使って殺人を犯そうとしたことに気づき証拠を隠滅するも、紗英が殺害を犯そうとした体で語っていないことで、読者は答えを見つけられず混乱する。

    徐々に、第五章のあたりから種明かしがされていくが、事実が確定的になるのはエピローグである。ここまでずっと、「えっ?えっ?」と思わされたものがすっと晴れ、そしてもう一度「えっ?えっ?」と戸惑うことになる。
    再読してはじめて、伏線の多さに気づける。我々は作者にまんまと騙され続けるのだ。再読推奨!

  • 久しぶりのジャケ買いならぬ、タイトル買い。
    初めての作者、まあ、そこそこ楽しめればと読み始めたらとても面白かった。騙されました。

  • 序盤からぞわぞわする語り口。
    紗英と奈津子という2人の女性の視点で物語は進み、間に彼女らを知る人たちのインタビューが挿入される構成となっているが、読み進めるうちに違和感を覚える。
    例えば、本人の視点では学校でクラスに馴染めなかったと語っているのにクラスメイトの証言では好きで一人でいる一匹狼と見られていたり、人に言われたことにいちいち傷ついたり悩んだりしているのに他人からは天然で人にどう見られるか気にしていない人と評価されていたり。
    誰かが意図的に嘘をついているわけではないのに、人物像が定まらないのだ。
    その違和感は終盤で明かされる真相につながる。
    家庭で、職場で、母親として、子供として、「こう見られたい」「こうありたい」という人物像と実際の自分との乖離。それは現実世界ではよくあること。そんな乖離と苦悩を描き切ったのが本作である。
    トリックでも犯人探しでもなく動機にすべてが集約された心理サスペンス。
    「あなたは悪くない」「私は悪くない」そう言い続けて心の安寧を保ってきた2人にとって正しさとは何か。この2人はもしかしたら自分だったかもしれないと思わせるリアルな心理描写が必見です。

  • 母性という言葉が、頭の中を巡る。
    様々な形の母性がある。どこかざらついた哀しみがたまらなかった。
    一方で、彼女たちの生きづらさは、どこからうまれるのか。
    自分で崩していくことをどこかでできたのではないか。

    共依存からくるずっしりとした重さとが、しんどかった。
    母と娘の関係は、程よい距離感が必要なのだと思う。

  • タイトルが印象的で予備知識なく手に取った一冊。
    読み進めていくうちに感じる違和感。
    中盤に差し掛かってもその違和感は消えず。

    最後の最後でようやく理解しました。
    まるで友達のような…って言うアレですね。
    完璧やられました。

  •  不妊や夫の浮気に悩む紗英。育児や家族との関係に悩む奈津子。お互いがお互いを心の拠り所としていた二人。しかし、紗英の夫の失踪が二人の運命を変えていく。

     子供を持つ同性への妬みや嫉み、家族とうまくいかない現状、前半はそうした感情が、欝々と描かれます。二人の関係性など、感情移入しきれないところもあり、正直読むのはなかなかしんどかったのですが、筆力はかなりのもの! 

     自分の読むペースが上がってきたのが、中盤の人の家を覗き見るシーンや、死体の隠ぺいのシーン。このあたりの描写が心理的に追い込まれていく緊迫感や緊張感があり、読み応えがありました。

     そして、そこから描かれる不安や後悔の感情の描き方もまたうまい! 芦沢さんの女性の黒い部分の心理描写は、湊かなえさんや、辻村深月さんを彷彿とさせるものがある気がします。

     女性たちの生活が描かれる章に加え、二人の関係者が、各章のはじめに証言していくという、いかにもミステリらしい構成。証言が今一つしっくりとこないところや、ちょっとぼかしてるなあ、という表現もあって、ミステリ好きからすると「これはなにかあるな」という感じを受けると思います。現に自分も「こうくるのかなあ」などと考えながら読み進めていました。

     で、その考えの一部は当たっていたのですが、ある一つの部分で思い切りひっかけられてしまいました…。ここでこうくるとは思わなかったなあ。

     で、さらにすごいのが、その大きな仕掛けが、証言の噛み合わないところ、登場人物の共感しきれなかったところ、そういった部分の意味を反転させ、ストーリーとして一本の軸に収めてしまうところ。本当に非常によく練られています!

     デビューから間もない時期の作品ながら、この完成度の高さ。そして先にも書きましたが、筆力や作風も湊かなえさんや辻村深月さんを思わせるものがあり、近作でこのミスにランクインするなど、勢いも十分! 次の女流ミステリ界のトップに来るのは芦沢さんかもしれない、と少し思いました。

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著者プロフィール

1984年生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。著作に『今だけのあの子』『悪いものが来ませんように』『いつかの人質』『雨利終活写真館』『獏の耳たぶ』、最新作に『バック・ステージ』がある。

「2018年 『いつかの人質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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