悪いものが、来ませんように (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.37
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本棚登録 : 2424
レビュー : 263
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041044421

作品紹介・あらすじ

助産院の事務に勤めながら、紗英は自身の不妊と夫の浮気に悩んでいた。誰にも相談できない彼女の唯一の心の拠り所は、子供の頃から最も近しい存在の奈津子だった。そして育児中の奈津子も母や夫と理解し合えず、社会にもなじめず紗英を心の支えにしていた。二人の強い異常なまでの密着が恐ろしい事件を呼ぶ。紗英の夫が他殺体で見つかったのだ。これをきっかけに二人の関係は大きく変わっていく! 一気読みが止まらない、そして驚愕のラスト! 「絶対もう一度読み返したくなる!」「震えるような読後感!」と絶賛された傑作心理サスペンス!(解説:藤田香織)

感想・レビュー・書評

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  • どうしてもこの手の作品は湊かなえと比べてしまう。
    あまりネガティブなことは書きたくないけれど。
    母娘ものをテーマにした作品というのは結構溢れていて、「毒親」という言葉の浸透とともに、増えていっているような気さえする。そして、「自分の親もまさに毒親だったのかもしれない」「自分の関わりこそ毒親なのではないか」と気付いた読者が増えたことで、女性作家がテーマとしてあげやすくなったのではないかという気がしている。時には、出産後の作家さんがそうした作品を描いていると、その作家さんがまさに今直面しているのではないかと、そんな気持ちにさせられる。そうなるともう、ノンフィクションのような気迫もあったりする。個人的にはエッセイや漫画よりも、そっちの方が刺さる。
    ノンフィクションといえば、今回解説を担当した藤田香織さんを、完全にノンフィクション作家の河合香織さんと勘違いしたりもして、「あのセックスボランティアの人ね!これは内容もさぞかし深いテーマなんだろう!楽しみ!」なんて思いながら読んでいったら違う方でした。これは勝手にわたしが騙されてる感じで。どうでもいいですね。

    読み進めていくうちに、仕掛けに気付いてしまうと、ラストはもう、よくいろんな作品で見る母娘ものと変わらなくて。そこでやはり、湊かなえ作品にはかなわないなあ、なんて思ってしまう自分がいた。
    支配している側もされている側も、それに気づかないということ。娘への愛情、と変換された支配と略奪。これが根付いてしまうと、いざ母親がいなくなった時に娘は生きてゆけない。娘が生まれた時の喜び、歩いた時、言葉を話した時の喜びは、他の何にもかえがたい。母親は、いつまでお世話をする母親として存在するのか。「自立」なんて生まれた時はまだまだ先のお話で、母親であるということが仕事であるのだから、母親は母親として一生懸命仕事をしただけだ。それなのになぜ、お互い依存するような関係性を生んでしまうのか。

    母親が毒親で、それに対して「嫌だった」という感情を持っていれば、奈津子のように自分がされてきたのと違う養育を娘に対してしようとする母親もいる。けれどそれは、文中にもあるように、まだまだ支配下にあるのとおんなじで。

    わたしだって、せっかく母親から分離してこれからが人生楽しくなるところだ!と思い始めたところで、どこかで母親とは違う生き方を、と思っている自分がいる。同じだって別にいいんだろうけど、それでは嫌で。ずーっと公務員として組織に所属して生きることこそが素晴らしいし、そう生きてほしい、その考え方を押し付けられ、わたしも生活を考えればそれがベストなのはわかっているけれど、組織に所属して働くということがなんとなく合わなくて、転職を繰り返してしまう。そんな中最近しっくりきたフリーランスという生き方。これこそが自分の生き方かもしれない、これで本当に、母から心理的にも自立できるかもしれないとポジティブに思っていたのだけれど、やはりそれは、まだまだ母親の支配下にあって、だからこそその真逆の道で生きようとするわたしの信念は、結局親から植え付けられたものなんじゃないのかな、とか思えてくる。この本を読んでさらにそんな風に思ってしまって。

    他の作品にもこういう母娘ものってあるし、とか強がって、ちょっと★を少なめにしているけれど、きっと自分の弱いところを突かれて、それが悔しいんだろうな。解説にもあるけれど、もっともっと伸びしろを感じる作家さん。何年か先に、えぐみのある作品とか描いてくれそうな。そんなエネルギーを感じた。

    • やまさん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
  • 本作品で3作目の芦沢央作品。
    共依存といえる2人の女性の物語。
    私にとってはミステリーではなくヒューマンドラマだった。

    見事に騙されつつ、共感したり違和感を感じたり、はたまた我が事のように考えさせられたりと、あらゆる感情を揺さぶられ読了。

    著者の作品は表題名に惹かれる。
    『許されようとは思いません 』もまた然り。

    そして、無性に湊かなえ作品が読みたくなっている今宵の私。
     

  • 「悪いものが、来ませんように」 芹沢央(著)

    2013 8 (株)KADOKAWA 単行本
    H28 8/25 文庫初版
    H30 4/5 15版発行

    R2 3/14 読了

    1月に開催された第5回読書部で
    部長のぼくが独断でプレゼン大賞に選んだのが
    図書館司書の方がおススメされたこの作品でした。

    いやぁ…まんまとやられました。
    もちろんトリックにも感心しましたが

    登場人物の心理描写が見事で
    トリック以前に物語にしっかり引き込まれてしまいました。

    母親と娘の持つ血の繋がりの強さ。
    母娘しか持ち得ない愛憎。

    どんな出来事にも物語はあるんだよなぁ。

    そしてこんな出会いがあるから
    読書部は楽しいのです。

  • タイトルに心惹かれて手に取って、傑作心理サスペンスと謳うあらすじと、パラパラめくった感じが好みだったので購入。通勤の行き帰りで読了。
    なにを言ったらネタバレにならないのか分からないのでうまく書けないけど、ぜひ最後まで読んで欲しい。

  • 騙されたっちゃあ騙されたけど、今ひとつ爽快感が。

  • 文庫帯に「絶対、ぜったいだまされて、読み返します」と、謳う心理サスペンス。
    主な登場人物は、紗英と奈津子=なっちゃんの二人。そして、彼女たちを取り巻く家族や友人。
    この二人の関係は?と、違和感を抱えながら読み進むうちに、殺人事件も発生。
    その真相も絡めながら、終盤で違和感の正体が解消。
    惹句の通り、思わず該当すると思う数頁を読み直してしまった。
    こういう仕掛けは、他の作品でも見かけたかも・・・

  • 評判通り不思議な違和感はあったし、再読すれば更に楽しめるんだろうなとは思うけど、再読する気には何故かなれない。

  • 前半はただただ息苦しい、説明がない登場人物も多く読みにくい印象だったが、後半の騙された感が読了後ひしひしと感じられる作品だった。

  • 本屋大賞にノミネート作品があったので
    手始めにこの作品を手に取りました。

    帯に衝撃のラスト25ページ、
    絶対にだまされて読み返します!と書かれていたので
    ラストになるまでドキドキしながら読めました。
    女友達なのに妙に友達以上に仲の良い所があったので、
    普通の友達の関係ではなく、何か裏がありそうだと思いながら読んでいました。

    それぞれの視点から奈津子と紗英の事が語られて、
    互いに母親との確執、葛藤があり、
    そして過去のいじめ、ネグレクトなども盛り込まれていていたので
    同情する気持ちも少しありました。
    そしてついにラストになり紗英のあるひと言で大どんでん返しで、
    作者の思い通りに嵌ってしまいやられてしまいました。

    「母」になりきれない母親と、
    母親から卒業できない「娘」一卵性母親というのが
    この作品ではモチーフにもなっています。
    母親からは卒業しているけれど、母親にはなったことがないので
    この心理になるには難しいですが、母親というのはどんな時でも
    偉大であると同時に常に子供を心配をしているというのが伺えます。
    その行き過ぎた行為がこんなことになってしまうかと思うと
    母親というのも難しい立場なのかとも思いました。
    母と娘という観点によく着目して読んでみると、
    この作品のタイトルの意味がよく分かる気がしました。

    どこか湊かなえさんと似ている展開で、
    イヤミス感もあったりしますが読みやすかったので、
    これをきっかけに他の作品も読んでみたいと思いました。

  • 芦沢央さんの名作の呼び声が高い巧緻なミステリ長編第2作です。実は恥ずかしながら私は最近になって漸く著者が女性なのだと知りました。そう言えば歌手の一青窈さんも名の読みが「よう」でしたね。本書は不吉な題名からホラー小説かなと思っていましたが全く違っていて、その巧妙な仕掛けと驚愕のどんでん返しに唸らされましたね。私は特に第2章の紗英と鞠絵と奈津子と梨里がファミレスで会するシーンが巧いと思いましたし、やはり「なっちゃん」「紗英」という互いの呼び名が全てでしたよね。私は読後に湊かなえさんの短編集を思い出しましたね。

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著者プロフィール

芦沢央(あしざわ よう)
1984年生まれの作家。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。『罪の余白』は2015年に映画化された。その他代表作に、2016年版「週刊文春ミステリーベスト10」第7位、「このミステリーがすごい!」2017年版第5位、第38回吉川英治文学新人賞候補『許されようとは思いません』、そして第32回山本周五郎賞候補および本屋大賞ノミネート作となった『火のないところに煙は』など。2019年8月28日、『カインは言わなかった』を刊行。

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