悪いものが、来ませんように (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041044421

作品紹介・あらすじ

助産院の事務に勤めながら、紗英は自身の不妊と夫の浮気に悩んでいた。誰にも相談できない彼女の唯一の心の拠り所は、子供の頃から最も近しい存在の奈津子だった。そして育児中の奈津子も母や夫と理解し合えず、社会にもなじめず紗英を心の支えにしていた。二人の強い異常なまでの密着が恐ろしい事件を呼ぶ。紗英の夫が他殺体で見つかったのだ。これをきっかけに二人の関係は大きく変わっていく! 一気読みが止まらない、そして驚愕のラスト! 「絶対もう一度読み返したくなる!」「震えるような読後感!」と絶賛された傑作心理サスペンス!(解説:藤田香織)

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、『共依存』でしょうか?

    …といきなり聞きなれない言葉で質問をされても困りますよね。この『共依存』という言葉は厚生労働省のWebサイトに以下の通り記されている”自己喪失の病気”なのだそうです。

     “依存症者に必要とされることに存在価値を見いだし、ともに依存を維持している周囲の人間の在り様”

    なんだか小難しい説明が余計混乱を招きそうですが、要は特定の人物との何らかの関係に依存しすぎる状態を指す言葉のようです。これでどことなくわかる気もします。では、冒頭の質問に戻ってあなたは、自分がそんな『共依存』の状態にあると思うでしょうか?

    私たち人間は一人で生きてはいけません。誰かしら他者との関係性の上に日々を生きています。その関係性が『共依存』と言われるような状況にあるのかどうか、それを第三者的に語るのはなかなかにハードルが高いようにも感じます。私たちは自分が普通ではないという認識の上に何かを語ることなどできないからです。

    さてここに、そんな『共依存』という言葉が物語中に登場する作品があります。二人の女性に交互に視点を移動させながら展開していくこの作品。” 「最後まで読んだら、絶対もう一度読み返したくなる」話題作”という謳い文句に、騙されないぞ!と意気込んでしまうこの作品。そしてそれは、『おねえちゃんたちは共依存なんかじゃないんです』と語る証言の言葉に二人の関係性の真実を見る物語です。
    
    『オムツを外して両足を抱え上げたところで、たった今替えたばかりだったことに気づいた』のは、主人公の柏木奈津子(かしわぎ なつこ)。そんな時に電話が鳴り、出ると『あんた、うつぶせ寝なんかさせてないでしょうね』と母が『前置きもなく切り出』します。『うつぶせ寝をさせてると赤ちゃんが死んじゃうんだって』、『原因はわからないんだけど、実はよくあることなんだそう』と話す母に『そんな話、聞きたくなかった…気づいたときにはもう遅いんでしょう?何もできないんでしょう?だったら知らない方がいいのに』と返すも『そうやって神経質になるのも子どもにはよくないんだよ』と言う母は『自前の子育て論を展開し始め』ました。『受話器を耳から離し』『床に置いた』奈津子は、『娘を抱き寄せると』、『この子がいなくなったら、私は生きていけない』と思います。『この子のもとに、幸せばかりが待っていますように。悪いものが、来ませんように』と『繰り返し祈りながら、目を閉じる』奈津子。
    場面は変わり、『いますぐわたしに子どもができれば。そうすればみんなに祝福されながら仕事をやめることができるのに』と『何度も繰り返してきた思考をぼんやりとなぞる』のは主人公の庵原紗英(いはら さえ)。『いま終わりました。次は明日のお昼からです』と送信するメールに『了解』と、『どのメールにも変わらない返信』を夫の大志(だいし)から受け取った紗英は、『家に着くのが九時半』、『ベッドに入るのが十一時』と計算します。そんな中に、柏木奈津子という着信履歴を見た紗英は『またなっちゃんなの。おねえちゃんもう三十でしょ。ほかに遊ぶ友達とかいないの』という『妹の鞠絵の揶揄するような声音』を思いつつも発信ボタンを押します。『梨里ちゃんは?幼稚園?』、『今週は幼稚園はお盆休み。今日は岩瀬のおばあちゃんちに行ってるけど』と会話する先に奈津子の家に向かう話になります。そして、奈津子の家に着いた紗英は風呂場で奈津子に髪を切ってもらいます。『なっちゃんてすごいよね』、『家にあるハサミとブラシだけでこんなにかわいくしてくれるんだもん。わざわざ表参道とかの美容院まで行くなんてバカらしいよ』と仕上がりに満足する紗英は以前、会社の『同僚に無理やり連れて行かれ』た『表参道の美容院』の話をします。『働いているわけじゃないけど』、『美容専門学校を出て、きちんとした技術を』もつ奈津子のことを思う紗英。髪を切ってもらった後、横になった紗英は奈津子から『わからないのは、どうして紗英が大志さんと別れないのかってことなんだよね』といきなり言われます。大志の浮気のことを思う紗英は『基礎体温を測り続け』、『今晩だからね、と念を押した』にも関わらず帰ってこなかった日のことを思い出します。『一度の出来心ではなく、繰り返し逢瀬を重ねてきたことを匂わせる』メールを見つけたものの問い詰められない紗英。『もう別れちゃいなよ』、『私と一緒に梨里を育てれば』と言う奈津子を見て『それも悪くないなとぼんやり思う』紗英。
    奈津子と紗英という一見仲の良い二人の関係性のその先にまさかの真実が明らかになる衝撃の”サスペンス”が描かれていきます。

    “最後まで読んだらもう一度読み返したくなる傑作心理サスペンス!”という謳い文句に思わず騙されないぞ!と身構えてしまうこの作品。私は女性作家さんの小説を読むと決めて、今までに750冊以上の作品を読んできました。作家さんとその作品についてはランダムに選んでいるつもりなのですが、何故か”サスペンス”というジャンルはほとんど読んでこなかったことに気づきます。もっと満遍なく読まなければと気持ちを新たにもします。

    さて、そんなこの作品には、こんな内容紹介が記されています。

     “助産院に勤める紗英は、不妊と夫の浮気に悩んでいた。彼女の唯一の拠り所は、子供の頃から最も近しい存在の奈津子だった。そして育児中の奈津子も、母や夫、社会となじめず、紗英を心の支えにしていた。そんな2人の関係が恐ろしい事件を呼ぶ。紗英の夫が他殺死体として発見されたのだ。「犯人」は逮捕されるが、それをきっかけに2人の運命は大きく変わっていく”。

    殺人事件が起こって、仲の良かった二人の関係性が崩れていくという物語展開。それのどこが”最後まで読んだらもう一度読み返したくなる”ものなのか、これはとても気になります。一方で、今までにこのような形容をした作品を私も何冊か読んできたことを思い出しました。私の場合、乾くるみさん「イニシエーション・ラブ」、「セカンド・ラブ」でしょうか。作家さんの巧妙な仕掛けにすっかり騙され、呆気に取られる結末には、どこで騙されてしまったのだろうと、すぐにでも読み返したくなる思いが沸々と湧き上がりました。ということで、こんな風に煽られた上で作家さんの想定通りに持っていかれてはたまりません。騙されてたまるか!という強い意気込みをもって、細かい部分にも気を使いながら読んでいかねばと、まずは決意を新たにしました(笑)。

    一方で、”最後まで読んだらもう一度読み返したくなる”というタイプの作品はレビューの難しさがあると思います。少しでも余計なことを書くと一気にネタバレ!してしまう危険と隣り合わせだからです。これは、私、さてさてのレビュワーとしての信用問題にも関わります。ということで、ネタバレにも十分注意しながらレビューをしていきたいと思います。ネタバレを避ける意味でも、まずはこの作品の表現の上手さについて見ていきたいと思います。”サスペンス”という言葉は、”ある状況に対して不安や緊張を抱いた不安定な心理、またそのような心理状態が続く様を描いた作品”を指すとされています。そうです。”サスペンス”というのは単にその物語展開だけではなく、文章表現にも人の心を不安定にさせる表現が欠かせません。まずは、私がそんな表現が登場する場面を要約してご紹介してみたいと思います。

    “ヴン、と蚊が飛ぶ音がしたので左腕を見たら蚊に刺されていた。叩きそびれた蚊が飛んでいってしまった”

    なんのことはない日常の一コマですね。これを、芦沢さんは”サスペンス”調で、こんな風に表現されています。

     『ヴン、という低い羽音が耳元で聞こえ、反射的にのけぞった。周囲を見回し、微かな違和感にふと視線を左腕に落とす。白と黒が縞になった脚が見え、咄嗟に右手を振り上げた。けれど叩きつける寸前で思いとどまる。血を吸い終えた蚊が腕から離れた。よろめきながら飛んでいくその軌道を、奈津子は息を詰めたまま目で追う』。

    どうでしょうか。凄いですよね。蚊に刺されるという、たったそれだけの場面が、何が起こるのだろう!と、なんだか読者にとてつもない不安感を呼び起こすような場面に描かれています。では、もう一箇所見てみましょう。まずは、またもや文才のない私の要約です。

     “納屋の外に茂る椿の葉の裏に、何かの虫が作った白っぽい膜が見えた。気持ち悪かった”

    これを、芦沢さんは”サスペンス”調で、こんな風に表現されます。

     『納屋の外へと顔を向けた途端、視界の端で何かが蠢いた。反射的に目を見開き、濃く茂った椿の葉の塊を凝視する。低く、不自然にたわんだ数枚の葉の裏に、びっしりと張った白い膜が見えた。蜘蛛の巣を何重にも重ね合わせたような白い膨らみに、その下で蠢き続ける無数の小さな毛虫の毒々しい色までもが裏返すまでもなく見えた気がして、肘から二の腕にかけての皮膚が一斉に粟立った』。

    これも凄いです。私の要約は、小学生の夏休みの観察日記のようですが、そんな一見単純な光景を芦沢さんは、”サスペンス”に仕立てられます。『肘から二の腕にかけての皮膚が一斉に粟立った』という箇所が、読者に激しい拒絶反応を生みもするこの表現。上記した通り、私は”サスペンス”作品には縁遠い読書をしてきたこともあってこういった一つひとつの表現がとても新鮮に感じられます。”サスペンス”もいいなあ、こういった表現が登場するたびにときめきながらの読書を楽しみました。

    そんなこの作品は、〈プロローグ〉と〈エピローグ〉に挟まれた六つの章から構成されています。主人公は、柏木奈津子と庵原紗英の二人です。六つの章は全く同じ形式によって構成されています。

     ① 庵原紗英視点で彼女の日常を描く物語

     ②【○○○○の証言】という小見出しから始まる、事件についてインタビューされた人の語り

     ③ 柏木奈津子視点で彼女の日常を描く物語

     ④【○○○○の証言】という小見出しから始まる、事件についてインタビューされた人の語り

    六つの章は全てこの四つのパートから展開する同じ構成になっているため、慣れてくるとスラスラと非常に読みやすい物語が展開していきます。【○○○○の証言】に登場する人物は紗英や奈津子の身内の他、友人、同僚など多彩です。そもそも二人 × 六つの章 = 十二人もの人物の証言によって、内容紹介に記された”紗英の夫が他殺死体として発見されたのだ”という事実を前にして、紗英と奈津子というそれぞれの人物がどのような人物だということをそれぞれの立場で語っていくのです。これがなかなかに面白い効果を演出してくれます。少しだけ見て見ましょう。

     ・【山本祐司の証言】
      → 『え、録音するんですか?…これ、俺が話したって書かれるんですか?…たしかに、紗英ちゃんとはつき合っていたことはありますよ…』

     ・【宮野靖子の証言】
      → 『へえ、恵比寿から。わざわざ私に話を聞くために?…奈津子ちゃん。もちろん覚えていますよ。利発そうな子でね…』

     ・【坂井鞠絵の証言】
      → 『なっちゃんのことは…正直昔は苦手だったんです…これ、記事にする前にちゃんとチェックさせてもらえるんですよね?…』

    紗英視点の物語、奈津子視点の物語は、事件が起こる前から時系列に沿って描かれています。紗英と奈津子の日常の関係性を見せる第一章では、紗英が奈津子に自宅風呂場にてカットをしてもらう様子が描かれるなどとても仲睦まじい二人の様子が描かれていきます。その一方で、

     『この子がいなくなったら、私は生きていけない』、『この子のもとに、幸せばかりが待っていますように』

    そんな風に娘を大切に育てている奈津子と、

     『なぜそれほどまでに子どもがほしいのか自分でもわからなくなる』

    『月一回しかない排卵日』を大切に思い、『子どもがほしい』という日々を過ごす紗英という子どもの有無という点で異なる二人の考え方の違いも描かれていきます。そんな物語の冒頭、〈第一章〉で、奈津子はこんなひと言を紗英に投げかけます。

     『わからないのは、どうして紗英が大志さんと別れないのかってことなんだよね』

    『夫の携帯を盗み見て』大志に愛人がいることを奈津子に報告してきた紗英。奈津子はそんな紗英が大志と別れる話をしないことを漠然と不思議がります。物語はそんな二人のその後が描かれていきます。まさかの犯行現場の緊迫した場面と、それが明らかになるまでの展開、物語は緊張感に満ち溢れる中に展開していきますが、一方で上記した通り、各章には【○○○○の証言】と記される通り、そんな秘匿したはずの犯行がやがては明らかになることが匂わされてもいきます。また、【○○○○の証言】の中で紗英視点の物語、奈津子視点の物語では見えなかった二人を第三者的に見る視点の登場によって、二人がどういう人間であるかが、章を経れば経るほどにどんどんくっきりと浮かび上がってきます。犯行が白日の元に晒されたことによってその関係が変質していく紗英と奈津子。物語は〈第五章〉に至り大きく動き出します。そして、〈解説〉の藤田香織さんがおっしゃる”騙される快感”が読者を襲います。なるほど、そういうことだったのかという物語の真実は、ポロリポロリと匂わされながら読者に頭の整理を要求します。人間の勝手な決めつけ、思い込みというものが真実を見えなくしてしまう、そんなことを改めて突きつける物語展開の先に、まさかそうだったのか…と驚く他ない結末、巧妙に隠された真実の姿を見る結末がそこには待っていました。

     『おねえちゃんたちは共依存なんかじゃないんです』。

    そんな風に証言される奈津子と紗英という二人の女性に交互に視点を切り替えながら展開するこの作品。そこには、”騙される快感”に浸らせてくれる物語がありました。”サスペンス”らしい文章表現に魅せられるこの作品。騙されないぞ!と息巻いても騙されてしまう現実に芦田さんの緻密な物語設計を感じるこの作品。

    次こそは騙されないぞ!と思う一方で、”騙される快感”から抜け出せなくなるようにも感じた、そんな作品でした。

  • あいやー、完全にやられた。手の上で転がっていた事すら気付かなかった。
    ーーーーーーーーーーーーー
    不妊と夫の浮気に悩む紗英。
    社会や家族 母と理解出来ずほぼワンオペで育児をこなす奈津子。そして互いが互いを心の支えとする「共依存」

    時系列の組み方が素晴らしい。
    紗英の旦那が殺された事を初め、その犯人も読者が理解した状態で、関係者の証言により内容を固めていく。時折組み込まれる「どうしてそうなった」の紗英と奈津子の現在進行形のパートで証言の答え合わせをしていくも、「何かがおかしい」そんな違和感を感じ、ページを戻す。だが何がおかしいのかわからない。うーん、モンモンする。

    結局、終章となり衝撃的な一撃が振り下ろされた時には、今まで自分が辿ってきた数々の証言を1から振り返り組み直す作業に翻弄され、全てがあるべき所に嵌ってようやく一息。
    「なるほど...」からの大きく息を吸い、
    「ぬぁぁあ!にぃぃい!!」と、ソファからお尻がずり落ちた。因みにこの「ぬぁぁにぃぃ」は連撃だ。作品を読んでいる方はニヤニヤしてください。

    この手のトリックは初めての経験でもなければ絶対に推理不可という訳ではないのやもしれない。しかし、彼女の作品は同じ土俵に立っていない私でさえも人物に感情移入してしまう。その人の目線で物語を追ってしまうのだ。もう推理どころではなく眉間に皺を寄せるのに全集中だった。

    今までの彼女の作品では、そのまま充実な読書をするだけでミステリとして楽しむ事はなかなか出来ずにいた。しかし今作、この芦沢央の緻密で繊細な人物の心情描写が巧みに「アレ」を隠蔽しているのだ。故にラストの衝撃を顔面で受け止めることとなった。完全なるハナヂブーをいただき、もう鼻から血を流しながらニヤニヤしてる変態野郎です。
    ご馳走様です。
    ーーーーーーーーーーー

    でもこれ、昔の作品なんだなぁ。
    もっと早く出逢いたかった...

    • NORAxxさん
      akodamさん、こんばんは^ ^

      あぁ...いつかコメントしようと思っていたのに先を越されてしまいました初代変態マンでございます。

      右...
      akodamさん、こんばんは^ ^

      あぁ...いつかコメントしようと思っていたのに先を越されてしまいました初代変態マンでございます。

      右足の脛は...痛かろうです...笑
      その後ニヤニヤしながら子鹿のようにプルプルするアレですよね、わかります...
      あれ、無断で変態度を上げてしまいましたすいません!笑

      初めましてがこんなノリで申し訳ございません...
      私もakodamさんのレビュー毎回楽しみに拝読させていただいております。
      これからもどうぞ、よろしくお願い致します^ ^
      2021/07/05
    • akodamさん
      こんばんは。ご返事いただき光栄です。

      NORAさんのレビューにはいつも熱量を感じます。

      時に喜び、怒り、哀しみ、そしていつも読書を楽しん...
      こんばんは。ご返事いただき光栄です。

      NORAさんのレビューにはいつも熱量を感じます。

      時に喜び、怒り、哀しみ、そしていつも読書を楽しんでいらっしゃるのが伝わってきます。
      そう、正しく変態です…(誉めております)

      こちらこそ、よろしくお願いいたします^ ^
      2021/07/05
    • NORAxxさん
      akodamさん、こんばんは^ ^

      文学的な才が無いのでせめて喜怒哀楽を表現出来たらと思っております。そう言っていただけて「変☆態」......
      akodamさん、こんばんは^ ^

      文学的な才が無いのでせめて喜怒哀楽を表現出来たらと思っております。そう言っていただけて「変☆態」...間違えました、「喜」でございます。

      ふふふ、お互い良き読書ライフを送りましょう꙳★*゚
      2021/07/05
  • まんまと、やられました笑

    読み終えて、振り返った時に、

    何気ない会話の意味や、
    描写、距離感など全てがしっくりくるという
    しっかりと計算された話だったなと思った。

    また著者は、緩急の付け方が上手いですね。
    話の展開の中でスピードをコントロールして
    それも作品を更に高めたと思います。

    • moboyokohamaさん
      まさにやられましたよね。
      まさにやられましたよね。
      2023/07/07
  • 芦沢央 2連チャン
    叙述トリックとわかっていてもまんまと騙される

    序盤の人物紹介から唐突に殺人事件があったことが語られ、何とも言えない違和感を持ちつつ… 愛ですかね?

    主観とインタビュー形式の章構成から真相が顕になる。
    口語調が多く、文体が私には合わなかった。
    なぜか?を考えると、会話のようで会話になってない文体に捉えてしまい終始頭に入りづらい感触を覚えた。
    同構成に湊かなえがあるが、こちらはすんなり頭に入る。

    皆様レビューにもあり通り
    口語文体って、平易でとっつきやすいように見えるが
    好き嫌いが出やすいのだろうか?
    うーん作家って凄い

  • 本作品で3作目の芦沢央作品。
    共依存といえる2人の女性の物語。
    私にとってはミステリーではなくヒューマンドラマだった。

    見事に騙されつつ、共感したり違和感を感じたり、はたまた我が事のように考えさせられたりと、あらゆる感情を揺さぶられ読了。

    著者の作品は表題名に惹かれる。
    『許されようとは思いません 』もまた然り。

    そして、無性に湊かなえ作品が読みたくなっている今宵の私。
     

  • 終始好きなストーリー展開ではなかった。自分が過去に読んだ物でいうと湊かなえさんの『母性』や秋吉理香子さんの作品のようでイヤミス系?なのか。

    読み始めたから増していく気持ち悪さや違和感は人間関係の真実が明かされてもなくなる事はなく、後半は帳尻合わせのように感動の方へシフトチェンジ。大どんでん返しに重きを置いているから感動までは至らないし、ページが足りずに駆け足で終わった印象でした。

    中々読み進まなかったのも盛り上がりどころが分からなかった上に、その前に読んでいた太田愛さん作品との差がありすぎました。

  • 不妊と夫の浮気に悩む女性の悲哀が胸に突き刺さる! 鬼怖サスペンスミステリー #悪いものが来ませんように

    結婚後、家庭や社会生活がうまくいかない妻は、母や姉妹に悩みを話していた。苦悩の日常を過ごすなか、夫が死体となって発見されてしまい…

    色々な立場での女性の苦しみが伝わってきますね。物事がうまくいかない人は、おそらくは原因があるのでしょうが、ほんの少しの機運が変わってたら幸せになれるきっかけがあったでしょうに。
    まぁ男どもがクソなんですよね、誠意ある男はどこにいるんだと…

    作者はほんとに女性の心情描写がお上手で、感情移入が半端ありません。文章も優しく丁寧ですね、作者の作品への情愛が伝わってきます。

    ミステリー要素も素晴らしく、どうも途中で何度か違和感を感じましたが、そういうことですか。そしてタイトルが秀逸ですね、序盤プロローグで読んで感じたタイトルと、終盤で感じるタイトルではまるで違ってきます。

    イヤミスのプロが書き綴った高品質なミステリー、おすすめです!

  • 文章が読みやすく文量は多くないのであっという間に読み終わった。
    内容は…『すごくおもしろかった!お薦めです!』とはならないかなぁ……
    奈津子と紗英、女の子にありがちなべったり依存しあった友達同士の話なのかと思って読んでいたら、唐突に奈津子が紗英の自宅の覗きを始め、殺人、死体遺棄と急展開。おいおい…いくら仲良し唯一無二の友達とは言え、行動が極端ではないか?と思っていたら、終盤奈津子と紗英の関係が明らかになり…あぁそういうことね、という感じ。
    読み始める前にブクログのレビューで多くの方々が『騙された!』と仰っていたけれど、私も見事に騙されました。
    なんとなく伊岡瞬さんの『不審者』と重なるところがありますが、『不審者』ほどの衝撃もやられた感もなく、あぁ…と淡々と納得してしまった。
    奈津子の正体がわかってからは、母親の子を思う気持ちの強さに頷けたところもあった。
    母親になりきれなかった女たち…
    母親って親子って、とてもありふれた関係だけど難しいものなんだな。

  • 途中、違和感が拭えず自分なりに推測、探りを入れ本当の関係を知り、そしてファミレスの場面へ戻って読み進めた。そのほうが自然だった、頭の中のキャストを変更しなくてはいけなかった。読む手が止まらない感。
    周囲や社会に今一つ馴染めない二人の女性が依存し合っている。痛い。こういう友達のような・・、現代では多いと思う(それが悪いというのではなく)。ここまで濃密な関係(奈津子の生育歴からのトラウマもあり)、場合によっては自立を妨げ、大きく歪んでしまったのではないか。二人が抱いてきたコンプレックスそれらが、ラストで解放される場面で救いがあった。
    女性特有の心理に迫ったミステリー。特に窮地に立った奈津子の心理描写、情景描写に息を呑む思い。自分と大切な人を守るための言い訳とか。追い込まれ、覚悟を決め、尚、愛する者を守る描かれ方が凄い。奈津子のやりすぎ感もここまでくれば驚異的(理解できない部分もあるが)。しかし、ここまで心の拠り所としている二人なのに、肝心な悩みを打ち明け(察してあげられ)られなかった。そこが悲しい。
    最後、紗英にわずかな光が見えたような。
    続きがあるとしたら、紗英はどうするだろう。

  • 女同士の色々…お産とか、仕事とか…
    男の私には、分からん面もあるけど、色々あるんやろな?って思ってたら殺人!旦那が殺される!
    旦那もなぁ…ちょっとひどいな…
    まぁ、ミステリーやから当然やけど(^_^;)
    えらく、必要以上に、この2人の関係は、凄いというか何というか…密着感が…
    けど何か違和感が…
    後半になって来て、えっ!そういう事か!って騙されてる…ええ感じに^^;

    「母」になりきれない母親と、母親から卒業できない「娘」− 一卵性母娘って重いテーマ…

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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