ミステリークロック

著者 :
  • KADOKAWA
3.07
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本棚登録 : 987
感想 : 143
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  • Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041044506

作品紹介・あらすじ

様々な種類の時計が時を刻む晩餐会。主催者の女流作家の怪死は、「完璧な事故」で終わるはずだった。そう、居あわせた榎本径が、異議をとなえなければ……。表題作ほか、斜め上を行くトリックに彩られた4つの事件。

感想・レビュー・書評

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  • 防犯コンサルタント(裏稼業は泥棒)の榎本径と刑事事件弁護士の青砥純子コンビが様々な密室事件に挑むシリーズ作品第四作。
    貴志さんの作品で唯一読んでいるシリーズだが、この作品だけ読み漏らしているのに気付いて今さらだが読んでみた。

    密室トリックは様々ある。犯行後何らかの仕掛けにより現場を密室にする方法、密室ではない現場を犯行発覚後に密室だったように偽装する方法、密室内にいる被害者を外部から何らかの方法で殺害する方法、被害者自身が殺人に見せかけて密室内で自殺する方法…等々、ちょっと挙げただけでも切りがない。
    もっと言えば密室の設定にも様々なバリエーションがある。鍵が掛かっている等の物理的理由で入れない状況の密室から、部屋自体は密室ではないが雪に足跡がないなど人が近付いた形跡がない状況的密室、衆人環視やカメラによる監視状況という意味での密室などなど。
    今回収録されている四編は先に挙げたパターンもあれば違うパターンもある。

    第一話「ゆるやかな自殺」はヤクザの事務所が舞台。犯人視点で描かれているが、その犯行方法は描かれていない。
    トリックについてはそんなことで?と懐疑的になるが、これが堪らなく好きな人なら気持ちは分かるかも知れない。

    第二話「鏡の国の殺人」は美術館で迷路を配置した企画展の準備中に起きた殺人。
    アリスの世界との矛盾点からの謎解きは面白い出発点だが最終的には…。

    第三話は表題作の中編。山荘で起きた殺人事件。やたら時刻が出て来てその時刻がわざわざ太字で強調されているので時刻のトリックであろうことは予想出来る。
    綾辻行人さんの『時計館の殺人』ほどではないが、なかなかの仕掛けだった。面倒くさがりな私には無理な犯罪。

    第四話「コロッサスの鉤爪」は潜水調査中に洋上で起きた事件。カメラと音声記録と人の目と、様々な要素で見守られた現場でどうやって殺害出来たのか。
    榎本の範囲外かと思えば意外にも熱心にやっていた。

    相変わらずポンコツな純子と呆れる径の図。よくこれで人の弁護を出来るなと逆に感心する。
    肝心のトリックについては二話以降、作家さんにはすまないが付いていけなかった。純子のことを笑えない。表題作の題名でもある『ミステリークロック』に至っては画像を検索しても良く理解出来なかった。これは個人の理解力不足なので作家さんのせいではない。

    全体を通して思うのは、現代の技術では大抵のことは出来てしまうということ。逆に言えば不可能と思われることも金と時間を惜しまなければ出来るので面白味はなくなる。
    最終的には『そりゃ最先端テクノロジーならなんでも出来るよね』という冷めた感想になってしまったのが残念。

  • 鍵の解除屋の榎本と弁護士の青砥とのコンビによる密室推理シリーズ。様々な状況の密室で起こった殺人事件に挑む。

    相変わらずの二人のやり取りのゆるさが、先日読んだ同じ貴志さんの作品と比べても、ホッとする。とはいえ、トリックについては、「鏡の国の殺人」「ミステリークロック」辺りは、自分レベルだと、状況整理が追いつかず、理解できたか、ちょっと怪しい。

    「ミステリークロック」では被害者がミステリー作家であることもあり、セルフパロディ的なところもあったり、榎本もいろいろポロリとしゃべったところにつっこまれたりと、相変わらずの気楽な感じがある。その反面、犯人の心理描写については、怖く感じさせられるところもあり、その辺はまた気楽な雰囲気とは異なり、よかった。

  • 中編集。最初の「ゆるやかな殺人」は他の本にも収録されていたようで既読だった。タイトルにもなっている「ミステリークロック」はトリックが細かすぎて小説で表現するのには無理があるのでは?映像だったらよくわかって面白かったかも。というわけで、最後の「コロッサスの鉤爪」が一番良かった。

  • 防犯探偵シリーズ第4弾。中・短あわせて4編。
    なんといっても表題作が一番力入っていて楽しかった。一番高い時計はどれ……?

    ■ゆるやかな自殺
    映像化済。893事務所での発砲事件。青砥はお休み。トリックは面白いけどもう少しヒントがほしいところ

    ■鏡の国の殺人
    映像化済。美術館での殺人。このトリックは映像でないと理解できなかった

    ■ミステリークロック
    正直この長さでまったく苦がなく読めたのはシリーズ初だった。サスペンスフルで手が止まらず。トリックは手が込んでるしおじいちゃんは面白いし青砥はシリーズ最凶の本性を見せるし何より動機説明を放棄した潔さに好感を持った

    ■コロッサスの鉤爪
    二人のコントは絶好調。未知ガジェットが出てきて頭抱えた。最後に犯人目線でいろいろ説明して終わるのは苦手

  • 4話入った短編集。

    表題にもなっているミステリークロックは、仕掛けが複雑でついていけませんでした。

    4話目のコロッサスの鉤爪は1番良かったと思います。

    弁護士の純子と榎本とのやり取りがしつこいというか、このやり取りはいるのか?と思ってしまい、ページを進める手が止まりました。

  • 「ゆるやかな自殺」と「鏡の国の殺人」はドラマで見た話だった。

    「コロッサスの鉤爪」が一番面白かったな。
    深海というシチュエーション、トリック、動機、殺人犯のキャラ。最高。

  • 話は面白い。
    しかし初っ端から時計を利用したトリックというのも犯人もバレバレな状態でどんな展開に持っていくのかと思ったら、無茶苦茶細かくて荒唐無稽とまではいかないが非現実過ぎる…正直図解されても分かりにくい。
    ヤクザの話はシンプルで良かった。

  • 12/29
    貴志さんの小説の中ではインパクト低めの読み応え
    ミステリークロックは映像化したらわかりやすそうだと感じた、時計を使ったトリックがいまいちイメージしづらかった
    ゆるやかな殺人は読んでて楽しかった、特に新しい手法などはなくありきたりっぽいトリックだったが主観で語られる文が楽しく感じられた

  • 久々の貴志祐介さんの本という事で期待が大きかったせいか、読後感は「う~ん・・・」というものだった。
    途中まではガマンして読んでいたけど、とうとう後半は斜め読み。
    榎本、青砥弁護士コンビが登場する密室トリックを用いた4話からなる本だけど、私はあまりトリックを用いた話に興味がないからだと思う。
    こういう話はくっきりと好き嫌いが分かれるように思う。

    「ゆるやかな自殺」
    暴力団事務所で組員の男性が拳銃を口に向けて発砲し死亡した。
    一見、自殺のように思われた事件だったがー。
    榎本が密室殺人の謎を解き明かす。

     4話の中では最初のこの話が一番面白かった。トリックよりも犯人の心理を主に描いていたからかもしれない。

    「鏡の国の殺人」
    美術館の館長が殺された。
    死体のあった執務室に行くには、防犯カメラを潜り抜け、鏡で作られた迷路を通らないといけない。

     結局の所、「嫌な奴」というのは自分にとって不都合な人間という事かもしれない。
    「嫌な奴」もその裏に別の顔があってーというのが、トリックに使われた鏡と響き合っている。

    「ミステリークロック」
    とある女流画家の山荘に集まった9人の男女。
    彼らがミステリークロックという値打ちものの時計を値踏みしている間にホストである作家は殺された。
    山荘の9人の中には、もちろん榎本、青砥もいて、鉄壁な犯人の犯行を解き明かす。

    「コロッサスの鉤爪」
    ダイバーの男性が海底で殺された。
    海底の密室とも言える場所での殺人を榎本が解き明かす。

    ここで用いられているトリックはマニアックともいえるもので、読んでいて途中から意味が分からん!
    分からないから読んでいてもつまらないとなってしまった。
    昔からある、こういう密室殺人のトリックを扱った本のように図で表していたりもするものの、それでも脳がツルッツルの私には理解不能。

    それにしても、今密室という状況を作り出すにはこれほど七面倒くさい条件が必要なのか・・・と思った。
    携帯電話やネットの普及で、密室やトリックを作るのは難しい。
    そして、そんな難しいトリックは私のような人間にはとっつきにくい。
    面白くない。
    また、専門的な部分はその分野で詳しい人間に矛盾点をつかれたり・・・それが、こんな風に難解でつまらなくしてる一因でもあると思う。
    ・・・なんて思いながら読んでいると、2話目の話で作者自身もその辺りの事は分かってますよ、と登場人物に語らせ、明言していた。

    この本は文章で楽しむには私程度の想像力では無理かもしれない。
    映像化されて初めて面白かった、と言える本なのかもな・・・と思う。

  • あの探偵のシリーズだったとは知らずに読み始め。この種のトリックはどうにも読むのが面倒くさくなってしまって表題作までたどり着けなかった。今はまだ読むべきタイミングではなかったということなのかも。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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