山の霊異記 幻惑の尾根 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041044766

作品紹介・あらすじ

閉ざされた無人の山小屋で起きる怪異、使われていないリフトに乗っていたモノ、山道に落ちていた小さな赤い靴の不思議。登山者や山に関わる人々から訊き集めた、美しき自然とその影にある怪異を活写した恐怖譚。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか良いホラー短編集。
    市街地や田舎とは雰囲気の異なる、山・登山独特の異界感や孤独が合わさってじわじわ怖い話が多いが、優しい気持ちになるものもある。ホラーというより山の伝説という方があっているかも。
    話の最後にはある程度の種明かしのようなものが付いているので、理不尽すぎる(=意味が分からなさすぎる)話はない印象。はっきり言って作者の後書きが一番怖い。

    風景の描写が上手く、話の所々に出てくる実在の山小屋や目印、天候・気候、登山の際の心理も相まって山を登っている感じが味わえる。
    特に導入部では怪談の本体には影響しない細かな記述がなされていることが多いが、怪談に現実感や具体性を与えるフレーバーとしてや登山の爽やかさ・楽しさと気味の悪い怪異との対比として上手く機能しているように思う。
    膝が痛いから登るのが億劫や「最初の1時間半が一番辛い」は実感できることで、作者の登山経験が生きているなと感じる。

    序文からもこれが処女作なようで、作品をあらかじめ書き溜めていたようでもあるので、本当の評価は次回作を読んでからになるだろう。

    作品の途中から山岳の名前や所在地をイニシャルで記すようになったのは、本作(あるいは雑誌 幽)のための書き下ろしを始めたためなのだろうか。
    実名を出さなくなっても、実際にある山、県名をイニシャルに変えているだけなので、多少の知識があればすぐに具体的に思いつき、現実とリンクする描写の上手さは損なわれていない。

  • 実話怪談集。著者が語る動画をきっかけに読んでみたが、語りの方が怖かった。

  • 山の怖い話第三弾。夏になると無性に読みたくなる、海や山の自然の中での怪異譚。
    山の霊異記は、実際に起きた話を集めたものなので、事実を述べているということですよね。いや、怖い。結構関東の山多いですし。
    全体的に短編なので読みやすいし、山の怪異は良い意味で意外性がなくしっかり怖いのが良いです。人の形をしてても、現象だけの場合でもですが、畏怖すべきことが伝わってくるので、自然と山に入って無礼な振る舞いをすべきでないなと気持ちが引き締まると言うか。。
    山で何も起きない方がおかしいというか、本来いるべき場所だよなと思って読んでいます。
    でもドアの開く小屋の話は素で怖い。
    あと「息子」が良かったですね。
    最後でいきなりぶわっと泣かされるかと思った。
    単にホラーとして楽しむ読み物ではなく、山への敬意や畏怖も抱いた上で読みたい本です。

  • スノーシューのオチが好き。

  • とにかくこのシリーズは山の描写や雰囲気がありありと浮かんで来て登ったことも見たこともない山々の風景が見えるよう。しかしそのぶん、見たことも感じたこともない怪異がありありと、、、。
    怖い中にもほんわりするお話があるのはありがたい。

  • 山の怪談集は何度か読んだことがありますが、こんな風に登山の楽しさ、美しさ、大変さを描写した本はなかったと思います。不思議な話がいくつも掲載されていますが、はっきり理由がわからないまま終わっていたりするお話も多くて、だからと言ってぞっとするよりはなんだか不思議な話だなという感じで、一味違った怪談で楽しめました。いろいろな登山コースが登場し山を趣味にしていたならもっとリアルに感じられたのではと思います。知らない自分が残念なほど、読み終わった後は山登りをしてみたくなるふしぎな霊異記です。

  • 山にまつわる怪異の話。夏目友人帳とか蟲師的なものかと思いきやガチモンの怪談集。

    真夜中に読んだら怖くて震えたので途中からは日中に読んだ。それぞれの話は非常に短くてテンポ良くスラスラ読める。心温まる系から命の危険系まで幅広く楽しめる。よかった。

  • 面白いことは面白いし、山ならではの怪談として楽しめるのだが、前半の山行の描写がちと多過ぎて冗長になっていた気がしないでもない。純粋に「怖い話」の続く中に、「不思議だけれどいい話(泣かせる話)」が織り交ぜられて、いい塩梅になっている。

    前者は、理由も何も不明なままだが怖い「五号室」や「異臭」、「豹変の山」、ダメ押しがズルい「古の道」など。
    後者なら、山に消えた者の遺された家族への思いを描いた「呼ぶ声」「息子」、亡き先達への畏敬が起こした不思議な邂逅「終焉の山」などか。
    正直、実話怪談として読むならややフィクション色が強いようにも思えるが(例えば、幽霊がどれも実体感あり過ぎ!)、山という異界なら、あるいはそういうこともあるのかもしれないとも思えてくる……ってこともないか。著者自身「実話という骨子に、山の情景描写や登場人物の会話などを肉付けしており、書かれている内容の全てが実話ではない」と語っているわけだし。

  • 本当にあった山の怖い話を集めたもの。
    作者が体験したものやら、山仲間から聞き取ったものまでとにかくたくさん。続編も数冊あるらしい。読み放題じゃん!

    怖い話なんだけど、私は登山の経験がないので、やっぱり別世界の物語を読んでいるような感覚になる。山登りする人にとってはとても怖い、かもしれない。
    どこかで聞いたことがあるんだけど、山の怪談って桁違いに怖いらしい。怖さに単位はないので、桁違いって表現が正しいのかは知らない。
    ここで1つ選択を間違うと死んでしまってたな、ってエピソードが多すぎて、本当に山を登るってすなわち死にに行くようなものなのでは?って身震いする。なんでこんな恐ろしい思い(霊的にも、危険という意味でも)をして、人は山に登るのか!?そこに山があるから??1冊読んでも結局わからなかった。

  • 2018/3/23(金曜日)

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著者プロフィール

1958年、東京都生まれ。ウェブサイト「北アルプスの風」を主宰。山登りと酒と煙草を愛する。99年、くも膜下出血を発症するも奇跡的に回復する。その後、サイト内にて怪談作品を発表。2004年、『幽』第二号から連載の「山の霊異記」でデビューする。08年に怪談集『山の霊異記 赤いヤッケの男』を刊行。怪談語りにも長けており、さまざまなメディア(怪談TV番組、『R25』、『ほんとにあった怖い話』など)で山の怪談の第一人者として取り上げられるなど活動の場を広げている。

「2020年 『山の霊異記 ケルンは語らず』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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