疫神 (角川文庫)

  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 92
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041044865

作品紹介・あらすじ

アフリカでオレンジカビを原因とする新型感染症が発生した。一方、長野県の山間にある小さな町では、不穏な気配が徐々に忍び寄ってきて――。ベストセラー『長い腕』の気鋭が放つ、戦慄の生物ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • コロナ禍にある今読むと、とてもリアリティのある小説でした。対抗策がない間に広がる疫病の怖さが伝わってきます。
    ケニアで発生したオレンジカビ、人間の免疫が一切反応しないその菌は瞬く間に身体全身に拡がり、死へと追いやる、、、。
    特定の免疫を持った人が吸い込むと発芽し、その人の呼吸から吐き出された菌は周りの人に瞬く間に感染を広げる。。まさしく、人類を滅ぼす菌。
    この本が出版されたのはコロナより全然前だけど、
    今読むと、コロナの見方が変わると言うか、、小説の内容に現実味が感じられます。
    実際にコロナ禍の今、全く別の類の病気が続けて蔓延したら、、そうでなくても大きな震災が先進国各所で連続したら、、世界が情報を共有してお互いを支え合う余裕が無くなったら、変異したウィルスに対応できなくて、人類が大幅に減るかもしれない。
    そうしたら抑えられてた他の病気も流行り出して、数十年をかけて人間が居なくなる地球も考えられる気がします。
    文明が疫病を蔓延させるっていうのも納得。今まさに、人の動きが止められなくて、コロナが広がり続けている状態ですから。
    今読むのが一番、小説の中に引き込まれるかもしれません。
    作者の方が医者なので、研究とか用語とか、わかりやすくも専門的で作った感がなく、緊迫感も伝わってどんどん読み進めたくなります。
    画策した向井博士の結末がかなりあっさりだった事が、終焉に向けて少し物足りなかったですが、中盤過ぎたあたりで夫婦の章が向井博士の両親の過去話だと気づいてから、向井博士の行動には納得がいきました。
    あと最終的にオレンジカビの蔓延を防いで10億人を救ったのが、片田舎の幼稚園児とおばあちゃまの家族愛から来るものだったのが、如何にも小説でしたが、結構感動的な結末になってるなと思います。学術特化した内容じゃなく、幻想的な部分があったのも面白く読めました。
    いずれにしても、読むなら今!な小説です。

  • ハザード系ファンタジー?もしそういうジャンルがあるとしたら、『鹿の王』とかと同じカテゴリってことか。それよりは微妙に現実寄り。でもやっぱファンタジー。ちょっとした謎も楽しめました。

  • 読み応えあり。
    作者がお医者さんだからか、コロナの状況だからか
    すごくリアルだった。場面がなんで分かれてるのか、いつ合流するのか、考えながら読むことができた

  • 2019.6.30読了

  • 2019.6.1-224

  • 赤い男とオレンジカビとの関係はなんとなくわかってくるのだが、あの人の存在に怯える夫婦とムカイとの関係、オレンジカビとムカイとの関係が中々見えてこない。終盤やっとわかる。

  • この作者定番の手法が使われていて…それなのに油断してしまい、途中やっぱり驚かされてしまった。目に見えないものも怖いし、目に見えないものが見えてしまうのも怖い。

  • 3つの話がどう繋がるのか気になって、あっという間に読んでしまった。

    ただ、二海の息子が元だと分かったことで話が繋がるが、その息子がどう育ったのか、何を思って生きてきたのか、なぜ周りに普通の人だと認識されるのか、気になった。
    と、書いたところで思い出したけど、渡辺医師に言われてたこと思い出した!
    元にも『あの人』を殺したい衝動があったはずで、それをどうしてきたのか分からないけど分かられまいと普通に、いやに普通に過ごしてきたから誰の印象にも普通にしか残らなかったのだろうか。
    元の話が少ないから、もう少し書いてほしかったな。

    それでも、おもしろい作品でした。

  • 山崎草志『疫神(やまいがみ)』(角川文庫、2016年8月)読了。

    読みやすくサクサク読めた。

    冒頭、長野県に住む幼稚園児(桂也)を中心とした話から始まる。
    その直後、ケニアの炭鉱で発生した、致死率100%のオレンジカビの現場で調査するエミリー(米国疾病予防センター)の話が続く。そして次に、奥多摩で翻訳の仕事をする二海(ふたみ)一家の話が始まる。
    つまり、3つの話が同時に展開していく。

    オレンジカビの話では『ジェノサイド』や『生存者ゼロ』などと同じく、いわゆるパンデミックものなのかと思った。そこに幼稚園児一家や二海一家がどのように絡んでいくのかと想像を巡らせてページをめくった。

    エミリーは日本でオレンジカビを研究する向井元博士を訊ねて来日する。しかし向井博士は行方不明であり、足取りを辿っていく。幼稚園児の桂也は、悪いものは赤く、良いものは青く光って見えるという特殊な能力を持っていることが明らかとなる。
    また一方で、二海一家は、妻が特殊な気性に起因する殺人を犯してしまったため、乳飲み子を抱えて逃亡し始める。

    結論からいえば、パンデミックものではないし、パニックものでもない。一部でホラーものに似た場面もあるが(これが結構コワイ)、ホラーものでもない。別のいい方をすれば、パンデミックの可能性があり、パニックに陥る可能性もある、しかも気持ち悪さも詰め込まれて『この先どうなるの?』と思わされる小説であった。

    一見無関係に見える3つのストーリーは最後の最後に「種明かし」されることになる。まさに小説だからできる叙述トリックであり、それはそれで面白い。

    ただ、3つのストーリーとも、そこで扱われている「謎」が中途半端で「どうして?」と思うことがそれぞれにあった。たとえば、オレンジカビの話は途中から向井博士を追跡する話になり、オレンジカビそれ自体がどうなったのかは触れられていない。こういったことが桂也にもあったし、二海一家にもあった。
    作者としては読者をあえてミスリードさせる意図があったかもしれない。
    ネタバレになるのでこれ以上は書かないが、この点が残念だった。

  • 『長い腕』の作中ずーっと漂う不気味さが好きで早く新刊でないかなって思っていた。今回もずーっと漂う不安感に嵌まった。疫神も人を殺したくなる衝動の描写も、おどろおどろしくて魅力的。

    実は、世界を救うとかそういうところに感動を感じなかった。それよりも、関一家のそれぞれの想いに胸を打たれた。幼いけいやの、大人を想う気持ちが苦しかったし、愛しかった。

    偶然にも、うちに祖父、祖母の遺影がやってきた。勝手に運命的なものを感じてしまった。

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著者プロフィール

1961年、愛媛県生まれ。京都大学理学部動物学科卒業。セガ・エンタープライゼスなどゲーム制作会社に勤務。2001年 『長い腕』 で第21回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。2012年、続編の『呪い唄』を刊行後、『弔い花』 『疫神』 『誘神』 『署長・田中健一の憂鬱』 と精力的に執筆活動を続ける。本書は、著者の郷土愛が詰まったお仕事ミステリー第3弾。

「2021年 『明日に架ける道 崖っぷち町役場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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