- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041044957
作品紹介・あらすじ
女に愛され、ふざけながら、幕府に挑んだ男。
武士ながら戯作者として人気を博した後、謎の死を遂げた恋川春町。
六人の女を通して描く、その情けなくも愛おしい、不器用な生き様が胸に迫る――。
「妻は、くノ一」著者、全力の自信作!
駿河小島藩の年寄本役・倉橋寿平のもう一つの顔は、江戸で人気の戯作者・恋川春町であった。
戯作者としての矜持は、黄表紙を通じお上を批判しながら、人々を楽しませること。そして探し求めるのは、共に世の中を遊べる“菩薩のような女”――。
しかし、定信による娯楽の規制は厳しさを増してゆく。
女たちと関わりながら、定信からの呼び出しを無視し続ける春町だが、盟友の朋誠堂喜三二は筆を折り、さらに江戸一の人気戯作者の座は若き山東京伝に奪われつつあった。
悩みぬいた春町が辿り着く先は?
笑えて泣ける戯作者魂と恋模様を、洒脱な筆致で描ききった勝負作。
感想・レビュー・書評
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“耳袋秘帖シリーズ”でお馴染みの、風野真知雄さんが江戸の戯作者・恋川春町を描いた本作。
駿河小島藩の年寄本役でありながら、武士を揶揄するような黄表紙を出したことから、時の老中・松平定信からお呼び出しがかかってしまいます。
この呼び出しが無言の圧力となって、春町追い詰めていき、ついには・・・。
命がけでふざけた戯作者たちを、“一生懸命ふざけて書いた”という風野さん。現代の戯作者が描くこの物語は、ふざけつつも、哀愁が漂うものだと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
怪しそうな話です^^
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風野真知雄先生はシリーズ物も面白いですが,単行本もよいのです。それぞれに滑稽で哀しい。
文化文政の江戸の戯作者恋川春町こと小島潘年寄倉橋寿平,時代を笑いのめした黄表紙で一世風靡しますが,やがて松平定信の寛政の改革の波をかぶり…いや,定信はただ「いろいろ訊ねたいことがある」と言っただけなのですが(これが武士には怖い)。
このあと,蔦谷重三郎は身代半減,山東京伝も手鎖,歌麿も,と花開いた出版文化は一気に冷え込んでしまいます。定信の時代は,そう長くは続かなかったのですが,権力による圧政って恐ろしい。
著者によるあとがきで,現代の戯作者風野真知雄が吼えます。
「おれは本来、エロと悪意の作家なんだ」!
今後に期待したいです。