マツリカ・マハリタ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041046159

作品紹介・あらすじ

新学期を迎えなかなかクラスになじめない柴山の下に、一年生の時に自殺をした生徒が、時々霊になって現れるという怪談話が舞い込んだ。その真実を突き止めるため、マツリカと共に捜査を開始した柴山だったが…!?

感想・レビュー・書評

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  •  シリーズ第2弾。前作同様に連作短編集。最終話でいろいろ展開があるのも同様。柴山君は話のできる友人たち(?)もできたようだし、煩悩も健在(?)だ。ここんところの作者の執拗ともいえる描写も筆が冴えてます。今作では、マツリカさんの秘密も少しだけ明らかに。おおよその年齢も。3作目はシリーズ初の長編とのこと。

  • 相沢さんの青春ものは、今も昔も陰キャの自分にはグサグサ刺さります。特に学生時代の居場所や、人との関わり方については、本当に理解・共感するところが多すぎて……

    『ココロ・ファインダ』や『雨の降る日は学校に行かない』といった少女たちを描いた作品しかり『午前零時のサンドリヨン』『ロートケプシェン、こっちにおいで』の須川君、そしてこのマツリカシリーズの柴山君しかり。特にこの柴山君の感情というのは本当に共感できる。今風に書くと「わかりみが深すぎる」というか。

    誰かと話すときに「相手は自分なんかと話していて楽しいのか?」と思って、そのうちそう思うことに疲れて、口数が減ったり、
    「何の取り柄もないし、面白くもない自分がここにいていいのか?」となって、会話の輪から距離を取ったり。そんな柴山君はまるで自分の姿を見ているかのよう。

    朝井リョウさんの作品でも、自分の感情を掴まれたと思うことはあるのですが、朝井さんの場合は、遠くからイタさをクローズアップしているようで、自分も冷静にイタい描写を読めるのです(そう思ってると、とんでもないカウンターを喰らうこともあるのですが……)

    しかし相沢さんの作品は内側に潜り込んで、相沢さん自らも血を流しながら、そうした内面のイタい描写を描いているようで、だから心をグサグサ刺されながら読んでいるような気分になるのだと思います。

    連作短編のこの作品で印象的なのは、第一話目の『落英インフェリア』
    高校二年生に進級したものの相変わらず、内気で臆病な柴山君。そんな彼に訪れる新たな出会いと、消えた少女という不可思議な謎。

    謎としては、そこまで難しいものではないのですが、その少女がどんな思いで姿をくらましたのか。そして、どのような恐怖を抱えながら隠れていたのか。真実が分かるとともに、考えてしまいました。全てを理解できるとは言えませんが、それでも個人的には自分のことのように、彼女の切実な思いを感じてしまいます。

    そしてこの話が柴山君の転機ともなります。この話では新キャラの高梨君が登場。この高梨君がいいやつというか、男前すぎるというか……最後の場面は男の自分も彼に惚れそうになりました(笑)

    そこから起こる様々な日常の謎。それに対し柴山君は、謎の向こう側にある「人の思い」に、積極的に踏み込むようになっていきます。前作『マツリカ・マジョルカ』のラストで明らかになる、彼の後悔。相変わらず何も話してくれないマツリカさんへの思い。そして新たにできた人間関係。

    そうしたものが重なり合い、内気で臆病な彼は少しずつ、でも着実に変わっていくのです。前作からのここまでの、柴山君の成長具合が読んでいて本当に嬉しい。

    それはたぶん学生時代の自分と似ている柴山君が、性格は大きなところが変わっていないのに、かつての自分ができなかったことを真摯にやっている。そんな感動があるからのような気がします。

    そして、今作で少しだけ明かされるマツリカさんの過去。今回久々に読んで思ったのですが、マツリカさんの蠱惑的、あるいは淫靡な言動と女王様のようなキャラクターというのは、個人的にかなり作られたものを感じます。彼女自身がその言動やキャラクターといった鎧を固めることで、彼女の本質を見えなくしているというか……

    他のキャラや、各謎で明かされる人の思いは、わりかしリアルな感情が描かれているからか、余計に彼女のキャラには違和感を覚えるようになっています。

    自分の考えすぎなのかもしれませんが、いずれマツリカさんが女王様の鎧を脱ぐときがあるのか、そんな期待も抱きつつ、次巻の文庫化、そしてこのシリーズの次回作を待ちたいと思います。次は文庫化されたらすぐ読まないとなあ。

  • 自分的には読みやすいわけではなかったが、内容は面白かった。次で全て分かると思うと次が楽しみ。ミステリーと思っていたが、前作同様謎解き要素は少なめな感じがした。

  • 一作目の「マジョルカが」良かったので続けて読了。一作目と同じく四章からなる連作短編集だが、本作では「マジョルカ」以来引っ張っている「松本梨香子」の謎が見事に解き明かされる。

    一時は私も柴山君と同じで「マツリカ」さんの存在をかなり怪しんだ。「マツリカ」さんの謎はまだ分からないが、何はともあれこれでシリーズが続くので良かった。

    柴犬こと「柴山君」も一作目に比べると成長しているのが窺えて見事なビルドゥングスロマンス小説にもなっている。「マツリカ」さんがよりパワフルな女王様系お姉様になっているのもかなり嬉しい。

    次の三作目で全てが解き明かされるのかな?楽しみである

  • いわゆるオチにあたる仕掛けに、あたりをつけられて嬉しい私です。飛び降り自殺をした女子生徒の幽霊にまつわる怪談が各話で少しずつ語られる。
    マツリカさんのイケないお姉さんぶりが堂に行っており、一方で新ヒロインを含む写真部の皆さんは主人公に優しい…というか甘やかしておりますね。

  • ● 感想
     シリーズ2作目。1作目同様、3つの短編の中に隠された伏線があり4つ目の短編につながる。今回の仕掛けはマツリカの秘密。マツリカは、自殺した松本梨香子の亡霊なのか?というもの
     1つ目から3つ目の短編の、ミステリとしてのデキは、それほどよくない。1つ目は、中から引き戸をあかないようにして隠れていたというトリックと、不登校の生徒がいたという点がトリック、2つ目に至ってはトリックらしいトリックはなく写真部の部長がすり替えていたというちょっとした意外性、3つ目は、リカコという教師の娘が小学生だったという点がトリックとなっている。どれも、たわいもないトリック
     小説としては、相沢沙呼の文章が肌に合い、登場人物の数や場面転換、説明等もくどくないので、入り込みやすい。しかし、キャラクターの魅力がイマイチ。マツリカと柴山との間の官能小説めいたやりとりの悪乗りが過ぎて、好きな人は好きかもしれないが引く人もいそう。個人的な感想としても、ちょっと引いた。さすがに柴山の考え方が気持ち悪く、マツリカの悪乗りが過ぎる。
     この二人以外のキャラクターは、写真部の小西、今回登場した不登校の1年生の松本まりか、写真部に入った高梨、写真屋でアルバイトをしている櫻井梨香子、今回知り合った村木翔子など、それなりに出そろっている。そこまで魅力的というほどではないが、多すぎず、少なすぎず、それなりにいい塩梅である。
     4章のデキはなかなか。マツリカ=松本梨香子の幽霊と思わせるだけの不思議さが、マツリカという存在自体にある。廃墟に住む謎の女。幽霊という設定もあり得そうと思わせて、それらが全て誤解だと論理的に解決していく展開は面白い。松本梨香子が各作品に少しずつ顔を出していた写真屋でバイトをしていた櫻井さんだったというオチもなかなかよい。
     1章から3章は、独立した短編でありながら、この4章のための伏線であり、キャラクターの紹介といった位置付け。となるとこの作品全体の評価は、個々の短編のデキで決めるのではなく、全体の仕上がりで決めた方がよさそう。マツリカと柴山の官能小説めいた悪乗りのせいで、とても人に勧めにくい作品になってしまっているのは減点。★4としておく。

    ● メモ
    主人公
     柴山祐希。高校2年生。学校の向井にある廃墟ビルに住み、望遠鏡で校舎を観察している謎の美少女、マツリカに命じられて、学校の怪談を調べている。

    ● 落英インフェリア
     写真部に体験入学していた松本まりかという1年生が、部室を飛び出し、追いかけられていた状態で聞ける。1年生にはそんな生徒はいないという。
     真相は、備品管理室に入っていた。中から押さえていたので、鍵が掛かっていると誤解した、
     不登校で、保健室登校をしている生徒だったので、集合写真にも写らず、一年生も知らなかった。

    ● 心霊ディテクティブ
     写真部の小西さんの写真が、全て感光していた。いったいなぜ?
     真相は、写真部の三ノ輪部長が、小西さんの写真の腕を知るために、感光したフィルムとすり替えていた。いわば誘拐事件

    ● 墜落インビジブル
     村木翔子と誰かが一緒にいたが、部屋から消えた。なぜ?
     真相。村木翔子と一緒にいたのは、妹、小学生の榎本リカコ。離婚して再婚をした関係で、たまに学校に来ていた。村木翔子は、友人に頼んで、リカコと会っていた。柴山は、ロッカーに入っていたので、身長が低い小学生が見えなかった。

    ● お別れソリチュード
     マツリカにまつわる話。マツリカは、自殺した松本梨香子の幽霊なのか?
     真相。梨香子の生徒手帳を持っていたのは、かつて梨香子がマツリカのもとに通っていたため。マツリカが映った写真を「松本さんの写真」といったのは、松本梨香子が取った写真だから。松本梨香子は、結婚して桜井梨香子となり、写真屋で働いてた。この小説の各短編に顔を出しており、その伏線があった。

     

  • マツリカシリーズの2作目。前作と同様に連作短編集の体裁を取りつつ一冊の本で大きなお話となっている。
    主人公柴山少年のメンタルか弱さは今回も炸裂。ちょっとづつではあるが高校生活も充実し始めるが、謎の美少女マツリカには、毎回色んな意味で翻弄される。二人の掛け合いは更にパワーアップ。アオハルですな。

  • シリーズ2冊目。
    孤独な柴山のまわりの話せる人が増えてきたが、まだ完全に心を開ききれない。前作より読みやすく面白かった。マツリカさんの謎も少しわかってきた。

  • 「聞いてくれるだけでいい。聞いてくれるだけで、じゅうぶんだよ」

    確かに辛いことは聞いてもらえるだけで救われることもありますね。
    特に大切な人には、一人で抱え込まず頼って欲しい。

    そして最終話。私も翻弄されました。

  • 青春ミステリ第二弾。今回「僕」は学校の怪談について調べているが、そこで驚きの事実が浮上してくる。
    日常の謎を描きつつ、思春期の悶々とした気持ちや感性の鮮やかさ、危うさを描かせたら相沢の筆は実に巧みだ。ライトながらも楽しめる作品だった。

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著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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