- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041046159
作品紹介・あらすじ
新学期を迎えなかなかクラスになじめない柴山の下に、一年生の時に自殺をした生徒が、時々霊になって現れるという怪談話が舞い込んだ。その真実を突き止めるため、マツリカと共に捜査を開始した柴山だったが…!?
感想・レビュー・書評
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シリーズ第2弾。前作同様に連作短編集。最終話でいろいろ展開があるのも同様。柴山君は話のできる友人たち(?)もできたようだし、煩悩も健在(?)だ。ここんところの作者の執拗ともいえる描写も筆が冴えてます。今作では、マツリカさんの秘密も少しだけ明らかに。おおよその年齢も。3作目はシリーズ初の長編とのこと。
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相沢さんの青春ものは、今も昔も陰キャの自分にはグサグサ刺さります。特に学生時代の居場所や、人との関わり方については、本当に理解・共感するところが多すぎて……
『ココロ・ファインダ』や『雨の降る日は学校に行かない』といった少女たちを描いた作品しかり『午前零時のサンドリヨン』『ロートケプシェン、こっちにおいで』の須川君、そしてこのマツリカシリーズの柴山君しかり。特にこの柴山君の感情というのは本当に共感できる。今風に書くと「わかりみが深すぎる」というか。
誰かと話すときに「相手は自分なんかと話していて楽しいのか?」と思って、そのうちそう思うことに疲れて、口数が減ったり、
「何の取り柄もないし、面白くもない自分がここにいていいのか?」となって、会話の輪から距離を取ったり。そんな柴山君はまるで自分の姿を見ているかのよう。
朝井リョウさんの作品でも、自分の感情を掴まれたと思うことはあるのですが、朝井さんの場合は、遠くからイタさをクローズアップしているようで、自分も冷静にイタい描写を読めるのです(そう思ってると、とんでもないカウンターを喰らうこともあるのですが……)
しかし相沢さんの作品は内側に潜り込んで、相沢さん自らも血を流しながら、そうした内面のイタい描写を描いているようで、だから心をグサグサ刺されながら読んでいるような気分になるのだと思います。
連作短編のこの作品で印象的なのは、第一話目の『落英インフェリア』
高校二年生に進級したものの相変わらず、内気で臆病な柴山君。そんな彼に訪れる新たな出会いと、消えた少女という不可思議な謎。
謎としては、そこまで難しいものではないのですが、その少女がどんな思いで姿をくらましたのか。そして、どのような恐怖を抱えながら隠れていたのか。真実が分かるとともに、考えてしまいました。全てを理解できるとは言えませんが、それでも個人的には自分のことのように、彼女の切実な思いを感じてしまいます。
そしてこの話が柴山君の転機ともなります。この話では新キャラの高梨君が登場。この高梨君がいいやつというか、男前すぎるというか……最後の場面は男の自分も彼に惚れそうになりました(笑)
そこから起こる様々な日常の謎。それに対し柴山君は、謎の向こう側にある「人の思い」に、積極的に踏み込むようになっていきます。前作『マツリカ・マジョルカ』のラストで明らかになる、彼の後悔。相変わらず何も話してくれないマツリカさんへの思い。そして新たにできた人間関係。
そうしたものが重なり合い、内気で臆病な彼は少しずつ、でも着実に変わっていくのです。前作からのここまでの、柴山君の成長具合が読んでいて本当に嬉しい。
それはたぶん学生時代の自分と似ている柴山君が、性格は大きなところが変わっていないのに、かつての自分ができなかったことを真摯にやっている。そんな感動があるからのような気がします。
そして、今作で少しだけ明かされるマツリカさんの過去。今回久々に読んで思ったのですが、マツリカさんの蠱惑的、あるいは淫靡な言動と女王様のようなキャラクターというのは、個人的にかなり作られたものを感じます。彼女自身がその言動やキャラクターといった鎧を固めることで、彼女の本質を見えなくしているというか……
他のキャラや、各謎で明かされる人の思いは、わりかしリアルな感情が描かれているからか、余計に彼女のキャラには違和感を覚えるようになっています。
自分の考えすぎなのかもしれませんが、いずれマツリカさんが女王様の鎧を脱ぐときがあるのか、そんな期待も抱きつつ、次巻の文庫化、そしてこのシリーズの次回作を待ちたいと思います。次は文庫化されたらすぐ読まないとなあ。 -
自分的には読みやすいわけではなかったが、内容は面白かった。次で全て分かると思うと次が楽しみ。ミステリーと思っていたが、前作同様謎解き要素は少なめな感じがした。
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いわゆるオチにあたる仕掛けに、あたりをつけられて嬉しい私です。飛び降り自殺をした女子生徒の幽霊にまつわる怪談が各話で少しずつ語られる。
マツリカさんのイケないお姉さんぶりが堂に行っており、一方で新ヒロインを含む写真部の皆さんは主人公に優しい…というか甘やかしておりますね。 -
マツリカシリーズの2作目。前作と同様に連作短編集の体裁を取りつつ一冊の本で大きなお話となっている。
主人公柴山少年のメンタルか弱さは今回も炸裂。ちょっとづつではあるが高校生活も充実し始めるが、謎の美少女マツリカには、毎回色んな意味で翻弄される。二人の掛け合いは更にパワーアップ。アオハルですな。 -
シリーズ2冊目。
孤独な柴山のまわりの話せる人が増えてきたが、まだ完全に心を開ききれない。前作より読みやすく面白かった。マツリカさんの謎も少しわかってきた。 -
「聞いてくれるだけでいい。聞いてくれるだけで、じゅうぶんだよ」
確かに辛いことは聞いてもらえるだけで救われることもありますね。
特に大切な人には、一人で抱え込まず頼って欲しい。
そして最終話。私も翻弄されました。 -
青春ミステリ第二弾。今回「僕」は学校の怪談について調べているが、そこで驚きの事実が浮上してくる。
日常の謎を描きつつ、思春期の悶々とした気持ちや感性の鮮やかさ、危うさを描かせたら相沢の筆は実に巧みだ。ライトながらも楽しめる作品だった。