獄の棘 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041046203

作品紹介・あらすじ

「赤落ちを始める。みんなドンドン賭けてくれ」
有罪判決を受けた被告人が控訴するか否かを賭けの対象にするギャンブル“赤落ち”。腐敗した刑務官たちの姿に戸惑う新米刑務官の良太だったが、賭けに勝つために解き明かされた予想を裏切る真実に心動かされ――(「赤落ち」)。
受刑者との結婚を望む女性、刑務官を挑発するような脱獄計画。不可思議な出来事を解き明かすうち、良太は刑務所の闇に迫っていく。傑作社会派ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 有罪判決を受けた被告人が控訴するかどうかを賭けるギャンブル"赤落ち"。
    先輩刑務官たちの姿に新米刑務官の良太は戸惑うが、賭けに勝つため解き明かされた真実に心を動かされ……。


    新米刑務官を主人公とした、連作短篇社会派ミステリです。WOWOWでドラマ化もされた一冊。
    刑務所内という特殊な舞台設定の中、そこにある事情や人間描写・人間関係がリアル。先輩刑務官やキャリアの統括、収容者たちとの交流を通じながら刑務所の闇に迫り、刑務官として成長してゆく姿を描いています。
    テーマは重いですがどの話にも情があり、読後感はそれほど悪くありません。

    善も悪も、一概に断定することのできない難しさ。その難しさの中に人間の人間らしさがあるようで良いですね。

  • 面白かった
    刑務所内の闇に迫る短編連作ミステリー
    新米刑務官の武島良太が一人前の刑務官になる物語
    確かにドラマのワンクールにピッタリ!
    長岡弘樹さんの「教場」シリーズと似てるかも(笑)

    ■赤落ち
    キャリア刑務官の名久井から腐敗した刑務官たちの行いを報告するよう指示された良太。
    そこでは「赤落ち」という有罪判決を受けた被告人が控訴するかどうかを賭けていた刑務官たち
    それを告発するのか..
    刑務官たちは誰もが控訴する側に賭けるが、秋村だけは控訴しない側に賭ける
    秋村が明らかにしたその事件の真相..

    これ、一番面白いですね。

    ■脱獄の夜
    刑務所内からの脱獄を予告するメッセージ
    脱獄は成功するのか?
    刑務官たちは見つけることができるのか?

    ■プリズン・グルーピー
    受刑者と面談を繰り返す女
    ついには獄中結婚という形に
    しかし、その女の行動の真相は?

    ■幸せの天秤
    刑務所内での講和の後に書かれた感想文の殺人をほのめかすメッセージ
    誰が書いたのか?
    態度の悪い刑務官と受刑者の関係

    ■矯正展の暗号
    作られた家具に数字の暗号
    その暗号の意味は?
    その真相は?
    ちょっと楽しめます

    ■獄の棘(ひとやのとげ)
    ここで、腐敗した刑務官が明らかになります
    キャリア刑務官の名久井の真の想いが明らかに

    ■銀の桜
    良太に後輩ができます
    しかしその後輩が突然の辞意
    その真相を良太一人で解決

    名久井や秋村が謎の真相を解決していくところがちょっと面白い。
    そして、その二人の影響をうけて良太が成長するところがポイント

  • 大門剛明『獄の棘』角川文庫。このところ、自分にとって大門剛明は安心して読める作家の一人になった。

    青森県弘前刑務所を舞台にした連作短編小説である。主人公の新米刑務官、武島良太はキャリアの名久井惣一看守長から極秘の調査を依頼される…

    刑務所という特異な社会を舞台に、何とも見事なミステリーと人間ドラマを描いたものだ。短編の一つひとつに張り巡らされた数々の伏線。それが一つに交わった時、全ての謎が白日の下にさらされ、長編小説が完成する。

    長岡弘樹の『教場』にも似た雰囲気を持つ面白い作品である。

  • 新人刑務官の視点で刑務所内の様々な出来事、所内の実態や使用される隠語、プリズン・グルーピーなどを精緻に盛り込んだ短編連作の社会派ミステリー。キャリアの名久井、ベテランの秋村、川岸などとの関わりを通じて、刑務官として成長していく良太。理と情により事件の背景・動機に辿り着くそれぞれの話は、どれも味があり、受刑者、被害者家族、刑務官の心情が様々な角度から語られている。重いテーマだが、読んで良かったとおススメできる一冊。

  • 刑務所を舞台にした連作短編ミステリー。刑務所内でのリアルな実態とともに描かれる人間ドラマに引き込まれた。さらにミステリーサスペンスも堪能出来るエンタメ作品。WOWOWのドラマが楽しみ。キャスティングが見事。

  • 大門剛明作品は「正義の天秤」シリーズに3作読んでて、これが4作品目。
    正直「正義の天秤」はあまり自分の中で話としてのインパクトがなく、ポジション謎キャラの七条くんの存在意義が気になって仕方ないという…笑
    もう本来の楽しみ方とは別の楽しみ方をしてしまっているという……笑

    そんな、うーんなイメージではあったんです。
    いや、個人的好みで言えばこっちのが断然好き!!

    新人刑務官の成長物語✕刑務所ミステリーです。

    あらすじざっくり読む感じ、不正をする(モラルに欠ける違法賭博)刑務官に対して上官からスパイを頼まれる新人刑務官の話なんですが、不正を暴く!って方向より、刑務所で起こった謎をとき、かつ新人刑務官が尊敬する人に出会い成長していく、人情熱い話でもありました。
    てか勝手に正義を貫く新人刑務官+上官VS不正を働くベテラン刑務官だと思ってました。
    (私が勝手に勘違いして読むせいなんだろうけど、この人の作品はいつもなんか思ったのと違う方向にいくので若干肩透かし感がある)
    (しかし今回は透かされてからの盛り返しが大きく面白かった!)

    2章くらいまではなんかふわふわした感じで面白いけどよく掴みきれない感じだったんですが、最後まで読むとベテラン刑務官の秋村さんはじめ、川岸さんや田島さんなど懐の深さに大好きになる人ばかりでした。

    ミステリ部分もしっかりめミステリで面白かった!

    若干彼女エピソードが薄く、この彼女設定いる????って気はしたけど…笑
    最後の章は胸熱でした。




    @手持ち本

  • 変わった設定だったけどそれなりに面白かった

  • 塀の中の正義とは。
    ドラマ化を前に読んでみたのだけど、これが想像以上に面白くて一気読み。
    新人刑務官武島良太は窪田に脳内変換。なんとぴったりな。
    エリート名久井と、看守部長秋村のそれぞれの正義に揺られつつ読んでいくが、たどり着くその場所は…
    いや、これシリーズ化してほしいわ。

  • 武島良太  弘前刑務所の刑務官、26歳
    武島    良太の父、刑務官看守長
    川岸次道  刑務官看守部長、43歳、元自衛官
    志田幸樹  28歳、飲酒運転で死亡事故、ラーメン店主
    秋村繁晴  刑務官看守部長、禿頭太り体型
          赤落ちギャンブル首謀者
    奥崎潤也  志田の事故で死亡、会社員、ネットに酷評
          褒評を書いて志田の店を潰した
    名久井惣一 刑務所統括矯正処遇官、良太の1歳上
    丸山弘之  志田ラーメン店の常連客
    吉村美菜子 志田の別れた妻
    与田悦子  良太の彼女、元刑務官、北海道でケーキ店
    木原保雄  受刑者、名久井のS、出所し美代子を騙す
    浜崎正樹  受刑者、元ボクサー
    野間勇次  看守部長、白髪パンチパーマ
    沢村一徳  一等級受刑者、散髪係、脱走を企てた
    楠美明人  受刑者、33歳
    竹内美代子 楠美の面会者、楠美と獄中結婚した
    岡田祐作  楠美の弁護士
    河原和雄  受刑者、名久井のS
    子安正則  被害者遺族、12年前9歳の息子を殺された
    中村圭太  子安の息子を殺害、当時22歳
    奈良岡一翔 無期懲役囚、ソフトボールで暴行、24歳
    平沼秀直  刑務所長
    岩本康隆  主任看守、ソフトボールで審判、39歳
    野口元気  小太りの受刑者、22歳、知的障害あり
    石野公博  狐目の受刑者、38歳
    中島辰雄  看守部長。石野が感謝、40代後半で辞職
    小比類巻良行 長身の受刑者、60代、暗号を発信
    須郷悟志  受刑者、昨年弘前刑務所で死亡
    須郷和志  受刑者、悟志の兄、心臓が弱く入院中
    山北惣司  元刑務官、秋村の先輩、肝臓を壊し他界
    名久井景子 名久井の母、山北の妻、離婚、実家は八戸
    田中悠太郎 刑務官、須郷和志担当、平沼のS
    小田龍騎  新人刑務官、22歳
    長谷川義人 団子鼻の受刑者、自殺を計る
    三好初彦  受刑者、長谷川にコップを盗まれたと主張
    村林善之  副看守長

    主人公は武島良太。刑務官になってから3年間のエピソードの連作短編。弘前刑務所を舞台に、信念のある先輩刑務官の秋村と、キャリア刑務官の名久井に良太は影響を受けた。先輩刑務官キャラも魅力的な人物がいる。
    犯罪者が裁かれ、その後を過ごす刑務所が舞台。そこでも様々な事件が起こり、その背景にある人間感情を暴く、興味深いストーリー。

    以下ネタバレ
    名久井は秋村を告発せず。
    名久井は所長の悪事を暴き退職に追い込むも左遷。
    秋村は山形の刑務所に移動
    良太は名久井と秋村の影響受け、刑務官の道を進む

  • 雪冤に続く大門さん2作目。
    星3かな。連短だけど、全体的には良いかな。
    特に『銀の桜』とかは好物です。
    雪冤よりこっちの方が好きかなぁ。


  • お久しぶりです,大門剛明さん。
    社会派ミステリといえば大門剛明!
    好きな作家さんの1人です。

    刑務所を舞台にした小説。
    弁護士や警察官が主人公の小説は
    今までたくさん読んできたけど,
    刑務官が主人公は初めて。
    あー面白かった。
    看守業務の中で起きる不可思議な出来事を
    新米刑務官・良太が解き明かしていく。

    特に「矯正展の暗号」と「獄の棘」が
    感動あり考えさせられることありで
    面白かった。

    連作にはなっているけど短編集なので,
    なかなか長時間読書できない人にも
    読みやすいのではないかなと思う。
    ミステリーが好きな方,ぜひ☺️

  • 22青森県の刑務所を舞台にした連作短編集。新米刑務官を語り手にして、看守業務のなかで起きる謎を解いて行くという形でなかなか面白かったWOWOW連続テレビ化の表紙。

  • 『ヒトヤノトゲ~獄の棘~』
    WOWOW/毎週日曜放送
    2017年3月19日から

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著者プロフィール

1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞、及びテレビ東京賞をW受賞。ほかの著作に、『罪火』『確信犯』『共同正犯』『獄の棘』など。

「2023年 『正義の天秤 毒樹の果実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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