おやすみ人面瘡

著者 :
  • KADOKAWA
3.32
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本棚登録 : 209
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041046289

作品紹介・あらすじ

全身に“脳瘤”と呼ばれる“顔”が発症する奇病“人瘤病”が蔓延した日本。人瘤病患者は「間引かれる人」を意味する「人間」という蔑称で呼ばれ、その処遇は日本全土で大きな問題となっていた。そんな中、かつて人瘤病の感染爆発があった海晴市で殺人事件が起きる。墓地の管理施設で人瘤病患者の顔が潰され、地下室では少女が全身を殴打され殺されていたのだ。容疑者は4人の中学生。さらに、事件の真相を見抜いた男は、逆上した容疑者のひとりに突き飛ばされ、机の角で頭を打って死亡してしまった……かと思いきや、死んだはずの探偵の身体に発症した、いくつもの“顔”が喋り始め――。

感想・レビュー・書評

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  • 人面瘡が蔓延する日本。
    仙台,人面瘡風俗店の火災で女性死亡。
    地獄のような海晴市第1中学校。
    カブや人面瘡の2転3転する推理。
    死者の生存,悪魔教師があの人だったり。
    残酷グロだが現実離れした世界観で飽きない。

  • 人瘤病という身体に脳を持った顔が映える奇病に侵された日本が舞台のホラーミステリ。平山夢明の実話怪談ばりに描写がグロく、それがまた風俗店や治安の悪い地方都市という底辺世界の、おどろおどろしい舞台設定と噛み合っている。異質な世界観ではあるが、感情のベースは常識的であるため、ギリギリついていけたものの、それでもこの倫理観の無さは少し受け入れられない部分があった。それはモラルとしてどうという話ではなく、作中のリアリティラインがどこにあるのか見失ってしまうような感覚とでもいうのだろうか。例えば中学校の不祥事にしても、異常があまりにも当たり前としてサラリと描かれすぎていたせいで、読み手として感覚麻痺を起こしてしまった部分がある。しかしミステリとしての出来は素晴らしく、人瘤病という設定を縦横無尽に活かした奇想天外なミステリである。半分過ぎてもいまいち全体像が見えなかったが、後半の畳み掛けるような怒涛の展開は素晴らしく、推理の多重構造も最高である。また序盤の異形の女イモコの伏線がちゃんと回収されたり、途中で絡んできたチンピラがトリックのネタを暗に指し示していたりと、全体を通して一切の無駄がなかったのには息を呑んでしまった。一見するとありえないことが、正当なものとしてまかり通ってしまうグロテスクさに加えて、ここまで謎を多重構造に描いた作品にはちょっとお目にかかったことがない。とある仕掛けを複数回に渡って使ったことで足場があやふやになり、悪夢の迷宮に迷い込むような錯覚を覚えた。咳嗽反応と脳瘤の位置がキーというわかりやすさも良い。それ故に、帯の部分で若干のネタバラシをしているのには非常に興ざめをしてしまった。トリックのネタは素晴らしく、非常に気に入っただけに、動機がつまらなかったのは残念である。それもギャップなのだろうが、響いてくるものは感じず。ただオチの後味の悪さは最高で、こういう話を締めくくるのに相応しいオチであった。

  • 開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。傑作。
    前作では結合人間という設定とミステリ部分が些か乖離していた感があったけど、本作ではきっちりと一つの物語になっている。
    事件が起こるのは後半になってからだけど、退屈ということは全然なく、むしろページをめくる手が止まらなかったくらい。
    説得力を持ったロジックによって披露されるいくつもの推理が、ひとつの事象から崩されていく快感。特殊設定をこれでもかと活かしたトリック。そして全てが腑に落ちる、それでも気づくことが出来なかった仕掛け。ああ愉しい!

  • うげうげと頭を抱えながら読みました。なんなんだ、これは…
    白井さん、ってほんと、なんでこんなキモチワルイ設定ばかり思いつくんでしょうか。
    けれど、白井さんのキモチワルイ小説たちをいつも読んでしまうのは、このキモチワルイ設定の裏側に本格ミステリがきちんと鎮座しているからで。
    だからうげうげと言いながらも読んでしまうんですよ。キモチワルイの好きな人にも、本格ミステリ好きにも楽しめるうげうげミステリ!

  • 2016年。思うに井坂さんも千葉県出身→東北大学だったなぁ。
    結合人間の次は人面瘡ですか。江戸川乱歩先生!
    身体に人面ができる。脳死しても人面は生き続けるらしい。ただし知能はない。人瘤病。
    仙台のヘルスこぶとり姉ちゃん、海晴市(宮城県)の中学校での出来事が交互に語られる。このふたつの関連性が明らかになる時。。。別にへーそうかぁ、くらいな感じw
    おやすみ、パルコ。好きな女のために頑張ったってことかな。パルコちゃん化け物になっちゃってたけど。
    グロさが増していくのであるが、白井さん文章がうまいから大丈夫。この方の文章は読みたい。

  • 異様な世界観だが、どうしてこうも異様な世界にしたがったのか、そもそもこれならミステリでなくても良かったのではないかと感じた。いっそ振り切ってホラーに走った方が面白かったのではないか。自分とは合わなかった一冊。

  • 著者の長編第3作。本当にどこからこんな発想が出てくるのだろう。全2作よりもさらにグロテスクさはパワーアップしている。緻密に貼られた伏線には全く気が抜けない。この様子ならまだまだ進化の余地がありそうなので楽しみだ。

  • 全身に“脳瘤”と呼ばれる“顔”が発症する奇病“人瘤病”が蔓延。うへぇとグロさに顔をしかめていると、人瘤病にも二種類あるなど大事な設定を読み飛ばしかねません。二つの視点の別ストーリーがこの異常な世界で展開されるのを追われるように読み進めました。殺人が起き、二つの物語が一つに重なった時、これが本格ミステリであることを思い出させられ、論理の積み重ねから明らかにされる後半の怒涛の展開に圧倒されました。嫌悪する人も多いでしょうが、白井さんの作る世界は本当に計算されていて見事だと思います。今後の作品も期待しています。

  • 面白かったー!
    変わった設定で直ぐに話に引き込まれる。

  • 東京結合人間を読んだときも思ったが、序盤からグロ描写のオンパレードで、話もあまり進まない。
    ただ中盤からの推理合戦や大仕掛けのどんでん返しはマジで興奮します。超面白い。
    さすが変態パズラー。
    序盤なんとかならないものでしょうか、あとカタルシスは全然ありません。

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著者プロフィール

1990年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作となり、同作で2014年にデビュー。『東京結合人間』が第69回日本推理作家協会賞候補、『おやすみ人面瘡』が第17回本格ミステリ大賞候補となる。『名探偵のはらわた』は「2021本格ミステリ・ベスト10」で第3位。他の著作に『少女を殺す100の方法』『お前の彼女は二階で茹で死に』『そして誰も死ななかった』『ミステリー・オーバードーズ』『死体の汁を啜れ』がある。衝撃的な作品で読者の度肝を抜く、気鋭の本格ミステリ作家。

「2022年 『お前の彼女は二階で茹で死に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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