感傷コンパス (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041046388

作品紹介・あらすじ

1955年三重県の伊賀。新任の教師・明子は過疎地帯の分校に赴任した。濃緑の山里の空気とともに子どもと先生の温かくひそやかな心の交流や村の人々の秘密を丁寧に描き出す。ミステリアスで愛おしい物語。

感想・レビュー・書評

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  • はじめは、新卒の明子が赴任した分校がある、昭和の田舎の村の生活が淡々と描かれる。
    早く家を出たかった明子は、自分がいなくなり、後妻の義母や義兄弟たちは、清々するのではないかと考えるが、思いがけず父は伊賀の山奥へ赴任する明子にコンパスをプレゼントしてくれた。ずっとそっけない態度だった父が私のことを気にかけてくれていたのか、と意外に感じる。
    明子は同僚の千津世先生と分校長と3人で1年から6年までの生徒を担当する。千津世先生は1〜3年生、明子が4〜5年生、分校長が6年生の担任になる。千津世先生は暗い顔でため息ばかり、何かワケがありそうに思う。
    4〜5年生はしっかりしていて、慣れない明子を助けてくれるが、朱根だけは、なかなか打ち解けられない。千津世先生がこの学年を嫌がったのは朱根とその父親のせいだった。
    村には営林署があり、遠足の時、居なくなった朱根を探して逆に迷子になった明子はそこの職員である空木に助けられる。
    空木は明子がカチンと来るようなことばかり言うが、それが後に、ある理由からだったとわかる。

    この作者はミステリ作家だからなのか、そういうさりげない伏線を張るのがうまい。読後、もっと読みたいと思ったが、そこで止めた事で、逆に強く印象に残る作品となったのかも。

  • 新人の先生による田舎の学校でのお話
    生徒数が少ない学校もいいなと
    また環境もいいな~
    先生と生徒との触れ合い、先生と村人との
    できごとなどボリュームは少な目だったので
    もっともっと書いてほしかった

  • 昭和30年,新卒の井上明子は故郷を離れ――その際,父からは方位磁針(コンパス)を贈られた――,伊賀の山里にある小学校分校に新任教師として赴任,小学4・5年の6人の担任になる。無邪気な生徒もいる反面,事情を抱えて屈折している生徒もいるが,徐々に心を通わせて行く。自然の描写も人々の会話や交流の様子も美しい。多島氏はスパイ小説・冒険小説・ホラー小説・ミステリで知られる(創元推理文庫の『黒百合』はお薦めです)が,こんな温かな物語も書いていたとは。

  • 初読みの作家さん。
    新米の若い教師が田舎の分校小学校へ赴任するという、
    割とあるあるな設定。
    しかしこのベタさが嫌いじゃない。

    教師として色々と迷いながらも真っ直ぐに生徒たちと向き合う主人公。
    最後の最後で自分の心を打ち明けた朱根に涙しました。

  • 復刊。
    多島斗志之、さほど真剣に読んでいたわけではなかったのだが、作風の広さに驚いた。他のも読んでみようかな……。

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著者プロフィール

1948年大阪生まれ。広告代理店に勤務。1982年、小説現代新人賞を受賞し作家デビュー。主な作品に、『海賊モア船長の遍歴』『クリスマス黙示録』『仏蘭西シネマ』『不思議島』『症例A』などがある。

「2021年 『多島斗志之裏ベスト1  クリスマス黙示録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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