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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784041047347
作品紹介・あらすじ
人はなぜ、罪を犯すのか? 愛と欲。夢と挫折。堕ちていく男と女。犯罪によって炙り出される人間の真実。凄絶で哀しい5つの物語。著者の新たな代表作、函入り愛蔵版。
感想・レビュー・書評
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五篇、実際にあった犯罪をもとに書かれており、薄ら寒い思いで読み進めた。罪を犯す者の性質・境遇が決して他の人とかけ離れたものではなく、その数奇な運命が私の傍にもあるような気持ちがして、面白かった。
解説に中上健次の『千年の愉楽』との比較があり、その考察が興味深かった。中上のこの小説は未読なので読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実際に起きた事件をモチーフに書かれた小説集。どの事件も読み始めると、ああ、こんな事件があったなと当時の新聞やテレビニュースが頭に浮かぶ。小説の中に、当事者が点のように俯瞰され存在する。心理に分け入ったというのではなく、”小説家”の目で再存在された当事者がいる、という感覚。
「青田Y字路」これはニュースとしては一番記憶に残っている。下校途中で小学生の女の子が行方不明になった。何年かして外国人の青年が逮捕された。最後の場面が印象的。ずっと疎外の中で暮らしてきた青年、遊びの誘いを断られた小学生。その心情がY字路に漂う。
いずれも何かのきっかけがなければ何事もなく過ごしたのではないか、と思われる人たち。吉田氏は彼らを俯瞰する。けっこう冷めていると感じた。事件そのものが、う~ん、こんなこともあるのか、という様相ではあるのだが、読後はなんとも沈む。ルポだったらどうなのかな。
青田Y字路:小説野生時代2015.10,11月号
曼珠姫午睡:小説野生時代2016.5,6月号
百家楽餓鬼:小説野生時代2015.12,2016.1月号
万屋善次郎:小説野生時代2016.7,8月号
白球白蛇伝:2016.3,4月号
2016.10.15初版 図書館 -
映像化作品は、
小説から入ることが多いです。
こちらの短編集も
映画化されるということで、
手に取りました。
5つの短編がおさめられた
こちらの本。
犯罪を犯した人の内面はえがかず、
生いたちや暮らしぶりという
外側の事実か淡々と語られていきます。
現実のニュースでは
一部分が切り取られて
誇張されることも多いものですが、
そこから想像される
罪を犯した人の姿は
事実とかけ離れている場合が
多々あります。
しかし、この小説では
事実は過不足なく
読み手に提示されます。
その犯罪をどうとるか、
「模範解答」は最後まで
示されることはなく、
読み手にゆだねられており、
人によって読後感は
まるでちがうのではないでしょうか。
まわりが良かれと思ってしたことが
だんだん歪められ、
本人をねじまげていくさまは
やりきれない閉塞感を
わたしのなかに残しました。
小説としては秀逸!ですが、
人の歪みを受けとめるだけの
余裕がないときや
気持ちが落ちこんでいるときはさけて、
読まれるといいと思います。 -
実際に発生した事件をモチーフに描かれた作品
短篇の5篇は、いずれも哀しい結末に……
最初の作品は、映画化されたものですが、この短篇から、ここまで膨らませ、奥行きがでるんだなぁ〜っと感嘆しました。
最後の作品は、何となく頭の片隅に、ぼんやりと朧げな記憶だけがある事件、名誉と名声、欲深さとの矛盾が人間っぽさが滲み出たましたね。 -
短編。どの話も、途中まではおもしろいんだけど、どんどん悪い方へ悪い方へ、、、
多分、日本のどこかで実際に起こってるんだろうなあ。後味の悪さが残る。 -
5文字のタイトルがついた5篇の短編集。どれもが実際に起こった事件をもとにしていると思われ引き込まれる。罪を犯す人は富や名声があっても、あるいは社会の底辺にいる者も皆、かつては真っ当に生きてきた人々。その真っ当な人々の歯車が狂ってくる過程を描いている。明日は我が身、である。この短編集をもとに綾野剛主演で映画化された。
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タイトル通り「犯罪」の短編「小説集」。
人はなぜ、罪を犯すのか?ということがテーマの5つのお話。
・少女失踪事件で、罪悪感を抱える人々と、社会的には弱者の親子の話。
・多情のために殺人を起こした女が、かつての同級生だったことを知った主婦。その同級生の人生を調べていく話。
・ギャンブルにハマった御曹司の話。
・村八分にされて殺人を犯す男と飼い犬たちの話。
・昔の栄光を捨てられず借金にはまり殺人まで犯してしまう元プロ野球選手の話。
どれも、やりきれない結末で、悲しい。
それでも、どうしてこんな犯罪を犯したのかわからないパターンはなくて、現実もこんな感じなのかしらと思った。
リアルというわけでもないけど、どこにでもありそうな不安感満載の小説。 -
過激な犯罪が多い嫌な世の中じゃね。
ってな事で、吉田修一の『犯罪小説集』
青田Y地路
曼珠姫午睡
百家楽餓鬼
万屋善次郎
白球白蛇伝
の5つの短編小説集。
誘拐、保険金殺人、不正金策、村八分、過去の栄光。
どれも実際にあった犯罪の話を思い浮かべる内容で、こんな感じで犯罪が起こるのかなぁと考えてしまう。
犯罪って、ちょっとした歯車のズレから、ちょっとしたスレ違いから起こるのかなぁと。
2019年27冊目 -
実際の犯罪をモチーフにした作品集。どれも読みながら引き込まれる内容。この手の吉田修一作品は大抵そうで、途中で止められなくなるものが多い。ずいぶん前に読んだ『怒り』はまさにそうだったと思う。
最後の一編、元プロ野球選手の話は途中から既視感があった。以前テレビで見た再現ドラマを覚えていたからかな。
読み切りが5作、全てちょうど良い長さ。犯人に取材したのか⁈と思うくらい現実味を帯びた内容で読み応えのある作品集。 -
吉田修一さん原作の映画が好きだ。
横道世之介がきっかけで邦画も悪くないと思えるようになり、悪人では妻夫木聡の演技に釘付けになり、怒りでは苦しさと気持ち悪さが強烈に込み上げてきた。
だけどその実、原作はそれほど読めていない。
「犯罪小説集」だなんて、物騒な名前のタイトルを手に取ったのは、著者が吉田さんだったから。(ブックオフで推されていたからというのも)
タイトルの通り、罪にまつわる物語が短編で綴られているのだけれど、ミステリーのように犯人やトリックが明らかになるわけではない。
ジャンル的にはサスペンスなんだろうけど、ハラハラ感を楽しめるかといわれればそこまででもなく、いっそミステリーとして書いてほしかったというべきか、良いところで犯人がわからず…という、モヤモヤ感が全体的にあった。
どの物語も、あまり記憶に残らず中途半端に感じてしまった。
著者プロフィール
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