犯罪小説集

著者 :
  • KADOKAWA
3.24
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本棚登録 : 544
レビュー : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047385

作品紹介・あらすじ

人間の深奥に潜む、弱く、歪んだ心。どうしようもなく罪を犯してしまった人間と、それを取り巻く人々の業と哀しみを描ききった珠玉の5篇。2007年『悪人』、14年『怒り』、そして……著者最高傑作の誕生

感想・レビュー・書評

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  • 短編5編。
    実話をベースにし、犯罪そのものよりも人物を描く。
    読んでいる最中に、そういえばそんな事件があったと思い出した。犯罪には共感できないが、なんとなく堕ちていってしまう様にはうなずいてしまう場面も。
    読了後に、ネットで事件を調べてみて、更に内容に重みが出た。

  • 吉田さんは、新刊が出たら内容にかかわらず手に取る作家さんの一人。今作も例外なく手に取った。
    事前にレビューをちらちら見てなんだか評価が低めであり、あまり期待を持たなかった。

    独立した5本の犯罪者が犯罪者になるまでの物語。
    どの作品も実話をもとにしているのとのことだが、元となっているニュースが分からなかったことがよかったのか、5本ともとても楽しく読むことができた。

    どの作品も風景として、物語が作られており、犯罪者となってしまった人の思いや動機が分からない。知りたい。

    ゆっくり味わって読むことができた。

  • 5つの犯罪の物語。
    読みながらこれはあの事件がモチーフなんだな、とか、これはあの人がモデルだな、とか思いながら読む。
    犯罪はそれがどんなものであっても、どんな理由があったとしても、許されるものじゃない。でもこの5つの物語を読むと一つの犯罪が行われるまでにはいくつかの分岐点といくつかの偶然と、そしていくつかの扉があったのにな、と思う。誰かがどこかの時点でその犯罪への道を変えることができたはずなのに、とそう思ってしまう。許されないことだし許してはいけないことだとは思うけれど。やりきれない思いで溺れそうだ。

  • あまり語られることのない犯罪の裏側、そこに至る過程を深く掘り下げる。
    どこでボタンを掛け違えたのか、どこで人間関係に綻びが生じたのか。
    まるで自分のことのように、後悔にも似た読後感が残る。

  • どこか身近で、どこか他人事の犯罪短編集。犯罪者がなぜ犯罪を犯してしまうのか。周囲が悪いのか、環境が悪いのか、あるいは自分自身が悪いのか。紙一重な部分を読み手に心理的に訴えかけてくる文章がスゴイなぁ、と。

  • 青田Y字路(あおたのわいじろ)
    娘が失踪。犯人わからず。捜索の時、怪しい行動の男。
    また、幼女が失踪。怪しい男の家に皆で押し込む。
    娘の遺体が押し入れにあった。男はラーメンで火をつけて自殺。幼女は無事に確保。

    ☆曼珠姫午睡(まんじゅひめごすい)
    弁護士の妻。中学時代の知り合いが殺人容疑で逮捕・
    スナックのママ。愛人に老人を殺させて保険金殺人。
    昔の友人をSNSを通じて調べる
    高校時代からかわっていた。

    ☆百家楽餓鬼(ばからがき)
    親族で経営する中堅企業の御曹司。高校は野球部。大学からはナンパ
    大企業の就職はせず、親の会社で修行。新事業で成功。NPOで活躍する美人と結婚
    息抜きに始めたカジノにはまる。月に一回が、毎週末マカオ、香港
    ファイナンス系グループ会社から100億円以上使いこむ。
    子会社にとばした社員が裏切り警察に密告。日本に帰れば逮捕
    一族の株を全て売却すれば着服した金はチャラ

    ☆万屋善次郎(よろずやぜんじろう)
    地元の工場で働いていた男が故郷に戻る。62才で最年少。蜂蜜作りを始めるが失敗。奇行が目立つようになる。
    注意をした老人家族を斬殺。自分も山に逃走し、自殺をはかるが重体で発見される

    ☆白球白蛇伝(はっきゅうはくじゃでん)
    貧しい家族の末っ子がプロ野球選手で一瞬だけスターになる。金使い荒くなり31才で引退。コーチ時代は借金。球団内で盗難、クビ。谷町の不動産会社の社長から1000万円。元ファンの運送会社社長の会社で給料前借り。7万円を借りられなくて社長を殺してしまう。息子がリトルリーグで注目。少年時代の父親に似ているが、人殺しの子となり、引っ越していく

  • 犯罪に手を染めてしまった人たちの物語。ジャンル的にはミステリと言えるかもしれないけれど。「あの人が犯人だったのか!」という驚きとは無縁。そして犯人は決して特殊な人というわけでもなく。いったい何があって、どのように犯行に走ってしまったか、の物語は、重くも悲しい雰囲気に満ち溢れています。もちろん本人に責任がないわけではないのだけれど。それでもやりきれない感がひしひしと襲い来る印象でした。
    お気に入りは「曼珠姫午睡」。この本の中でもっとも第三者目線から語られている物語なのですが、逆に犯罪そのものを身近に感じられた気もしました。犯罪者と言っても特別な人間ではなく、一歩踏み外せばそちらの境界を越えてしまうのかも、という危うさを感じさせられます。

  • 実際にあった事件を元に、犯罪に至る過程を描いた短編5つを集めた作品集。

    マカオのカジノにのめり込んでいく大手企業の御曹司、バブリーな生活から抜け出せずに落ちぶれていく元プロ野球界のスターなど、フィクションとわかってはいるものの、やはり活字を追いながら当事者の顔が浮かんできてしまう。
    『悪人』『怒り』もそうだったが、なぜあの人が犯罪を、という直接的な動機をあえて明らかにせず、巻き込まれていく周囲の人たちの視点から語っている。余白を残したこの距離感が絶妙だ。
    歌舞伎に影響されたというタイトルは、しっくり来るものとそうでないものとがある。

    どの事件にも共通するのは、破滅に向かう途中いくつも分岐点があったはず、ということだ。決定的な悪意はないのに、少しずつ何かがずれて転がり落ちていく。もしもあのとき本人が、もしくは周囲の人が……と思うとやりきれない気持ちになる。
    過疎の村で、ふとしたことから村八分ならぬ村十分にされた男が追い詰められていく「万屋善次郎」が、哀しく恐ろしかった。

    追記
    カジノ解禁法案が強行採決で可決されてしまった。この作品にもあったけれど、泥沼にはまる人は少なくないはず。利益を得るのは誰? 今さらだけど、カジノ反対!

  • 実際の事件をモデルにした短編小説集。

  • 「もしかして、あの犯罪…?」
    と、世間を騒がせたあの犯罪にどこか似た犯罪をモチーフに、加害者と被害者、そして取り巻く人々の深層心理を丹念に描いた作品。
    誰でも特別ではない、でもふとした拍子に非日常に入り込み、犯罪への道を進んでしまう。

    自分はこういう道を進まないようにしないと、という反面教師の部分もあれば、
    「曼珠姫午睡」の英里子のように、犯罪を犯した同級生のゆう子の人生をうらやましい、と思うところも自分の中にあるかも。
    そういう自分の内面とも向き合える小説集でした。

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