これからお祈りにいきます (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 119
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047514

作品紹介・あらすじ

人型のはりぼてに神様にとられたくない物をめいめいが工作して入れるという奇祭の風習がある町に生まれ育ったシゲル。祭嫌いの彼が、誰かのために祈る――。不器用な私たちのまっすぐな祈りの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 短篇2つが収録されており、どちらも主人公が何かに対して祈ってる。
    「サイガサマのウィッカーマン」
     『エヴリシング・フロウズ』でもあったが、主人公が自分の圧倒的な無力さに傷付くシーンが印象的だった。
     たとえどこかの大富豪であっても、自分ではどうにもならないことはあるだろう。ましてや、高校生の主人公が、家やお金の問題に苦しむ同級生の女性に何ができるというのか。
     そんな主人公は、この小説に出てくる神「サイガサマ」の特徴でもある、「物事をあんまりよくわかっていない様子なのだが、とにかくできる範囲でやってみよう、という意識のようなもの」(p.135)を纏うようになる。冒頭から延々ととげとげしい主人公がお供え物を入れるシーンには、非常に心を打たれた。

    「バイアブランカの地層と少女」
     「自分が幸せだと感じたのは、その夜で何年ぶりだっただろうか。いや、下宿で豚汁に好きなだけごまをふりかけている時などはだいたいそう思っているのだが、そういう自力で何とかできることではなく誰かから幸せだと思わせてもらえること。恩寵のようなこと。」
     恋愛の喜びを表現する素敵な文だなぁと思うけど、この小説の素敵なところは、そこではないことにすぐ気付くことになる。不器用で無礼な主人公の青春、そんなものに羨望なり美しさを見てしまうのは実際上よくないことかも知れないが、「恩寵のようなこと」以上に素敵なことが自分でない誰かに起こるように祈る美しさ。


     人には人の領分があるし、限界もある。人のためにできることなんて大したものはなく、やるだけやって最後に残るのは祈ることくらい。そして、これは先日旅行に行った際、神社にお参りした時感じたことだけど、誰かのために祈るということは、実は非常に難しいことでもある。
     人を思う気持ちから変わってゆくふたりの主人公が、忘れかけていたことを思い出させてくれた気がした。

  • 角川文庫版。
    津村記久子らしく、不思議な高揚感と、どっしり地に足のついた感が楽しめるように思う。


    少し冗長だが西崎氏の解説も良かった。

  • 読後感がすっきりだった気もした

  • 津村作品は難しい

    「祈り」にそこまで特化している感じはないが、でもどこか繋がっている2作品。

  • ーーー1回は作ろうと思って作った家族やろうがーーー

    津村さんの小説は集中力を要する。
    読みはじめ、買ったばかりのスポンジみたいに弾きまくるので脳に世界観が定着するまで時間がすこし必要。なのに確実にどこかで読み手のこちら側が切り替わる瞬間があって、そうするともうぐいぐい、使い古したスポンジよろしくぐいぐい設定や文章が脳みそに入り込んできて、あー、まだこの世界にいたい、帰りたくない、読み終わりたくなーいってなる。
    本作は、最初のスイッチがなかなか入らず、んー、とおもっていたのだけど、やはりすごい、いつのまにか引き込まれていた。
    「サイガサマのウィッカーマン」
    「バイアブランカの地層と少女」
    どっちもすごいタイトルだ。
    タイトルだけでまったく話が読めない。
    どちらも、「大切な誰かのために祈ることはこんなにも愛おしい」という内容なので「これからお祈りにいきます」という別タイトルが本自体のタイトルになっている。
    どちらの作品も男の子がちっちゃく恋愛していて微笑ましい。
    ちょっといいなって思っている相手からのメールの返信待っているときにメールが来て、開くまでの一瞬に違う人からだって頭の中で予防線を張る描写、すっごいわかるなあああとおもった。
    こういう文章をさらっと(きっと書いているときはさらっとではないのだろうけれど)書いてしまうところがとてもよい。

  • いずれも表題作ではない2作を収録した本作は、大事なひとのために祈る青年(高校生と大学生)を好意的に描いています。

    そう書くと、いかにも主人公らしい人物像を思い浮かべるかもしれませんが、そこは津村さんの作品ですから・・・独特の悩みを抱えてます。

    そう書くと、いかにも純文学らしい人物像を思い浮かべるかもしれませんが、そこは津村さんの作品ですから・・・独特の笑いを味わえます。

    村上春樹氏の言う「小確幸」(小さいけれども確かな幸せ)にも通ずる、細やかだけれども確かな幸せ(「細確幸」?)を感じれる2作でした。

    個人的に、それぞれの作品で感じ入った一節は以下のとおりです。

    「うっさいボケ帰れ」
    (「サイガサマのウィッカーマン」)

    「そして正座してちゃぶ台の上で書店の袋からガイドと参考書を出した今、凝視しているのは目のくらむような肉料理の写真ばかりだ。(中略)作朗の羨望を煽る。前にまやちゃんの部屋かどこかで見せてもらったフランス料理の本には、特に何の感慨も抱かなかったというのに」。
    (「バイアブランカの地層と少女」)

  • 珍しいタイトルの付け方ですが、収録作品のどちらも「祈り」に関するお話。
    主人公が男で、高校生と大学生で、何気ない学生ライフを繊細に描いてるなと思います。不幸でもないけれど、取り立てて幸せでもないという津村先生の独特の世界観が読んでいて見える様でした。

  • だれかのために祈ったり走ったりすることが幸せ、不安や願いがあってこそのもんなんやなと。生きにくいやろうなと思うところが、人間のおかしみ。

  • 不思議な話。読むのに時間がかかった。

  • 「サイガサマ―」は小さな町における奇妙な信仰にまつわる物語。
    点々と散らばっていた不気味な、あるいは不幸な出来事がなんだか線でつながりそうになっていくぞわぞわ感。そこに、神様である”サイガサマ”に対して「できない子」だの「いらんことしい」「情けない」だのと、祭りを嫌悪する主人公だけでなく、信仰している町の人々までも、なにか出来の悪い息子を仕方なく面倒みてやる親のような不思議な暖かさが加わり、おもしろい。

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著者プロフィール

津村 記久子(つむら きくこ)
1978年、大阪府大阪市生まれ。大阪府立今宮高等学校、大谷大学文学部国際文化学科卒業。
2005年「マンイーター」(改題『君は永遠にそいつらより若い』)で太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年『ポトスライムの舟』で芥川龍之介賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年「給水塔と亀」で川端康成賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、同年『アレグリアとは仕事はできない』で第13回酒飲み書店員大賞受賞をそれぞれ受賞。
近刊に、『ディス・イズ・ザ・デイ』がある。

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