虹を待つ彼女

  • KADOKAWA (2016年9月30日発売)
3.69
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本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784041047521

作品紹介・あらすじ

二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。
晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。やがて彼女に“雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくが――。

感想・レビュー・書評

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  • 人工知能という現代的なテーマを扱っているので、本筋のミステリ部分よりも、人工知能の発達によって人間の営みにどう影響を及ぼすのかという側面を描写した部分に興味がわいた。そりゃあ、自分をいつも肯定してくれる理想の存在がいれば、傾倒するのも分かるよなと。

  • 2021/01/13読了
    #このミス作品60冊目

    めちゃくちゃ良かった!
    これが著者デビュー作というのが驚き。
    古典的なミステリと異なり
    近未来的な要素がたくさん盛り込まれていて
    読んでいてもワクワクする。
    ストーリーもとにかく面白い。

  • 人工知能と会話する、付き合い恋愛するアプリ。この開発者が死者と会えるアプリを作るプロジェクトを立ち上げる。2015年頃にこの小説は書かれたようだが、それから10年も経たないうちに生成AIが世界を席巻し死者と会える人工知能は冒涜だと話題になっている。そんな時代の流れの中でもミステリ小説としての新鮮さは失われず、謎の答えを追い求める純粋な主人公と姿がなかなか見えない相手とのドラマ展開に引き込まれた。
    死者と会うためのツールとしての人工知能のストーリーに囲碁の対決を絡めるのはエンタメ要素も少しあって楽しめるところだったし、人工知能の育て方は幾らかの自分の知識も役だったのかリアリティがあってチームに参加したような気もした。
    横溝正史ミステリ賞受賞した当時に読んでいたらどうだったんだろう。多分もっと衝撃的な話に感じただろうが、今ほどの理解ではできなかったかもしれない。近未来小説の面白さもそんなところで感じた。

  • 現実離れしすぎず、しかし驚きのオープニングが印象的。水科晴(みずしなはる)が、渋谷のビルの屋上に立ち、ドローンに搭載された実銃に撃たれて亡くなった。ドローンは、晴が制作したオンラインゲームに接続されていて、プレーヤーは通常と違うステージに戸惑いなからもゾンビを攻撃、このゾンビが現実世界の晴だったと。

    一部のコアなファンがいる水科晴を、人工知能で音声とともに再現するプロジェクトを担当するのが、主人公で人工知能の開発エンジニア・工藤賢。囲碁ソフトでは、3年前に初めてプロ棋士に勝利し、現在も金星戦でプロ棋士と対戦している。他に人と会話する人工知能アプリのフリクトを開発し、運用している。

    晴を再現するために、関係者から情報を集め始めた工藤に、それを中止するよう脅迫が届く。同時期に、フリクトが離婚の原因だと訴えられ、さらにフリクトに悩みを相談した人が自殺する事件が発生。工藤は、晴なら自らの苦悩を理解してくれるのでは、そして恋愛ができるのではと、晴の人工知能開発にのめり込む。どこに話が帰着するのか混沌としたが、最後はきれいに帰結、驚いた。

    工藤は小学2年生の時に、勉強も運動も、人よりも圧倒的に優れていることに気づく。思春期に入り、恋愛も人間関係も簡単にコントロールできることも知り、仮面を被って嫉妬も反感も買わないように、「調節」することになった。大学で出会った榊原みどりは、工藤の「調節」を見破って、以来、みどりが結婚して母になった後も、本音を話せる間柄が続いている。

    工藤は、何をやっても結果が予想できるがゆえ、人生が退屈になり、情熱をかけるものも無い。最初は可哀相にも感じていたが、中盤は自分の目的のために人を操ったり、見下したりが目につき嫌な感じに。ラストでは、つらい発見を受け入れて、わがままを封印し、スッキリした感じ。

  • 人工知能やゲーム制作の話だったけど、平易な表現で分かりやすい。タイトルの「虹」がLGTBの色と同じ、主人公たちの名前とも連想できて、タイトルまでよく考えられているなー。ゲームの中で死にたいという彼女の気持ちは分かるようで分からないが、雨が救われて良かった。

  • 第36回横溝正史ミステリ大賞をとった本作。カルト的な人気をもつゲームクリエイターの水科晴は自作のゲームをドローンと連携させ現実の世界、渋谷で自らを標的とし自殺を図る。探偵みどりさんの大学時代の友人工藤が、いまは亡き水科晴を人工知能化しようとプロジェクト立ち上げ、晴の本質に触れていくうちに晴を愛するようになる。その中で雨と呼ばれる人物が鍵をにぎり工藤は殺されそうになる。晴の人工知能化は成功するのか。雨が登場したあたりから読むのが止まりませんでした。こんなミステリがあるんだという驚きの作品でした。

  • 帯に惹かれて購入。
    横溝正史ミステリ大賞ということで、人間の狂気や切なさ、絶望などが垣間見れた作品でした。頭の片隅では、これって、世にも奇妙な世界っぽい展開になるのでは?と思っていましたが、結末までテンポがよく、楽しめました。
    ただ、登場人物のキャラクター性があまりよくわかりませんでした。そこまで、ヒロインに執着できるのかなと思いましたし、主人公の狂気性もあまり感情移入が出来ませんでした。
    みんなどことなく癖が強くて、横溝正史っぽい世界観がありました。読後感は爽やかっぽいのですが、スッキリ感は否めませんでした。
    ストーリーは、AIやドローンなどほぼ現代に近い設定で、SFっぽいではあるものの、どう物語が転がっていくのか全くわからないところに面白さがありあした。
    殺人事件があって、それを推理して解決するというのではないですが、ミステリアスな雰囲気が漂っていました。
    読んだ後に題名を再確認すると、違った解釈で意味を噛みしめることができました。

  • すごく良い本だった。今年上半期1位かな。
    徹夜読書してしまった。
    晴と雨のもの凄く切ない現代のラブストーリーミステリー。
    人工知能との恋愛やジェンダーレス
    私くらいの年齢以上の人には受け入れられない人もいるかもしれないけど、表紙の様に美しく切ない物語にグイグイ引き込まれます。
    綺麗なストーリーだけではなく、途中ドキドキ(悪い意味で)する所もあり、最後まで全く飽きない。
    息子に薦めたいけど、ちょっと刺激がありすぎかな

  • 主人公の性格は最後まで生理的に受けつけなかったものの、夜中に読みはじめたらおもしろくて読むのがとまらなくなったのが、この「虹を待つ彼女」でした。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    2014年12月、水科晴(みずしな はる)という女性が、ある風変わりな方法で、その生涯を閉じた。

    そして時は経ち、2020年11月。
    人工知能と恋愛ができるアプリ「フリクト」に携わっていた工藤賢(くどう けん)は、クレームが増え、行き詰まっていた「フリクト」の状況を打開するため、ある策を提案する。
    それは、謎のままの死を遂げたゲームクリエイター・水科晴を調べ上げ、人工知能におとしこむことだった。

    優秀さゆえに、物事の予測がついてしまうことに虚しさを抱えていた工藤は、水科晴について調べるうち、彼女に惹かれていく。
    しかしそんな工藤に対し、水科晴についての調査を止めるよう、脅迫が届くようになり…
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    本作は「虹になるのを待て」というタイトルで、第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞しています。
    その後、加筆修正し出版されたものが「虹を待つ彼女」です。

    正直な所、主人公の工藤賢は、生理的に本当に受けつけないタイプの人間で、それだけで☆1つマイナスに相当しました。
    実際、夜通し読んでしまうくらい話はおもしろく、はじめは☆4つにしようと思いましたが、やはり主人公に難ありなため、最終的に☆3つとしました。

    冒頭は、水科晴がある事件を起こし、亡くなるところが書かれています。
    その死の謎、彼女の調査のなかであらわれた“雨”という人物、水科晴の残したゲームの内容、そこに様々な他の要素が絡み合い、ある地点からは急速に最後へ向かっていきます。
    水科晴という人物についての謎は、真相までとても練られていて、そこを知りたくてどんどん読み進めた感じでした。

    水科晴の謎を追う謎解きでもあり、主人公・工藤のねじれた恋愛観の話でもあり、しいていうなら「恋愛ミステリ」というジャンルかもしれません。
    人工知能については、作中でその都度、説明がされていますので、そうした知識かなくとも読み進められます。

    読み終わって「そういうことだったのか…」とタイトルの意味がやっとわかり、すっきりした反面、これで主人公・工藤の、有能さに酔いしれすぎ、ねじれた思考からの解放感でいっぱいでした。

  • この作品も「このミス」16位にランクインしていた理由で読んでみた。自分で開発したゲームの中で自殺を遂げたプログラマー・晴。その死の6年後、人工知能の開発に限界を感じていた研究者・工藤は死後、なお根強いファンを持つ晴の人工知能の開発に乗り出し、生前の晴のことを調べ始める…人工知能を取り扱ったミステリーは、最近すごく増えていて、そんなに目新しさもないし、設定に大きな矛盾を感じることもない。ミステリーと言いつつも、根底には恋愛の要素もあり、結構いい作品だと思う。ここ最近の横溝正史ミステリー大賞の中では一番面白かった。でも…主人公・工藤の本当に最後の最後までの自己中さが目に余り、読後の感じは微妙…

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著者プロフィール

小説家。1980年、東京都生まれ。第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、2016年に『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)でデビュー。2022年には、のちに『五つの季節に探偵は』(KADOKAWA)に収録された「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した。このほか著作に、『少女は夜を綴らない』(KADOKAWA)、『電気じかけのクジラは歌う』(講談社)などがある。

「2023年 『世界の終わりのためのミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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