虹を待つ彼女

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 352
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047521

作品紹介・あらすじ

二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。
晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。やがて彼女に“雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくが――。

感想・レビュー・書評

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  • 横溝正史ミステリ大賞受賞作っていうのと装丁で選んで読んでみた。
    ゲームやドローンや人工知能などなど、私にはなじみのないワードばかりで、読み進められるか心配だったが、
    自分の作ったゲームを利用して自殺した謎の女性「晴」を追求していく過程にどんどん惹かれていった。
    今という時代を象徴するような、未来を見透かすような不思議な話だった。
    そして恋物語だった。

  • ○極上の恋愛ミステリ、劇場型自殺事件の裏側、雨の正体は果たして
    人工知能研究者の工藤は、劇場型自殺事件を起こした女性・晴に興味を持ち、彼女の人工知能を作りたいと考え調査をはじめるが、何者からかの脅迫を受ける。工藤は、ゲーマーの田崎や晴の同級生である初音・紀子、元恋人の栗田から聞いた証言をもとに調べ続けるが、事態は思わぬ方向へ転がっていく。

    のっけから見せられるゲーム「リビングデッド・渋谷」による劇場型自殺事件は、手口がとても鮮やかだ。光景を想像しても綺麗な瞬間だったろうと思う。そのとき晴に湧き上がった「雨」という言葉には、どんな意味があるのか。工藤は証言から聞いて恋人だということが分かるが、雨の正体が誰なのか、奔走する。
    人工知能やゲームがテーマで、いかにも専門的な用語が出てきそうだったが、解説も自然、用語の使われ方も自然だ。人工知能の現状から将来の行く末を案じているような書かれ方は、それらに関心のない読者にも目を向けさせる。

    探しても探してもたどり着かない結論は、晴が作ったゲームの中にヒントが隠されていた。ゲームは、晴の分身と言っても過言ではない。では、晴はそこにどんな思いを込めたのか。ゲームの結論は衝撃的だ。待ち続けた虹は、いつかかるのだろうか。それはあのゲームの真の意味を解読できたものにしか見ることができない。虹がかかったとき、本当の晴をみることができた。その意味で、とてもよく練られたミステリで、ページを繰る手が止まらない。描写が丁寧で、場面を想像するに難くないので、はじめて読書をする人にもお勧めだ。

  • うん、面白かった。登場人物の誰にも共感できないけどちゃんと面白い。まあ読後暫くしてでも一人の人間がどんな人かなんて数人のその人物感と写真や動画集めて再現できるもんじゃないよなあ、増して当人が無くなってるんじゃAIは何を学習するんだ?って疑問は沸いたけど。

  • 冒頭、優秀なAI研究者が、「SNS の画面を印字して、スキャナで取り込む』ような質の悪い動きをする設定なのが、違和感大。先行きに不安。
    だけど、いくつかの伏線は、ちゃんと回収されて、細かいことを気にしなければ、たのしめます。

  • この作品も「このミス」16位にランクインしていた理由で読んでみた。自分で開発したゲームの中で自殺を遂げたプログラマー・晴。その死の6年後、人工知能の開発に限界を感じていた研究者・工藤は死後、なお根強いファンを持つ晴の人工知能の開発に乗り出し、生前の晴のことを調べ始める…人工知能を取り扱ったミステリーは、最近すごく増えていて、そんなに目新しさもないし、設定に大きな矛盾を感じることもない。ミステリーと言いつつも、根底には恋愛の要素もあり、結構いい作品だと思う。ここ最近の横溝正史ミステリー大賞の中では一番面白かった。でも…主人公・工藤の本当に最後の最後までの自己中さが目に余り、読後の感じは微妙…

  • 優し気でメルヘンチックなタイトルとのあまりの乖離に愕然。
    フリクトという人口知能との対話アプリが現実化した近未来。死者をよみがえらせるという新しい人口知能プロジェクトから掘り出される過去の劇場型自殺とその謎。
    なんだろう、この追いつめられ感と解き放たれ感の混在は。粘着と執着の決着がこんなに開放的で呆然とする。おもしろいおもしろい、おもしろいとしか言いようがない。

  • 主人公の性格には不快感がつきまとうが話は面白かった。恋愛小説にもなるのだろうか。
    科学と倫理観の狭間で、王道邪道問わず目標を達成するために奔放する主人公の行動力にはいっそ清々しさを感じた。

  • どこへ向かっていくのだろうと思いながら読む。
    「鮮烈なラストを目撃せよ。」
    まさに鮮烈なラストだった。
    主人公が人を愛する気持ちを理解(❔)できたようでよかった。

  • 目新しさを感じる設定とストーリー展開を楽しんで読みました。晴のキャラクターをうまく生かして、小説自体の凜と澄んだ感じを生み出していたように思う。

  • 晴の再生にこれほどまでに拘泥する工藤と紀子の心理が今ひとつピンとこなかったがそんなことはどうでもよかった。この物語には人工知能によって散々振り回される人間の姿がメッセージとして盛り込まれている。人工知能は人を幸せにするために生まれるはずなのに、その反対にトラブルが起こる。その構造はどんなものなのだろうか。倫理観の問題?イノベーションの弊害?その辺はよく分からないし、巷で散々論駁されてきた人間と機械についての二項対立も依然として進歩していないので上手く結論を出すことができないでいる。だが、少なくとも言えることは人工知能はもはや机上の空論ではないということだ。私はこの小説からその警鐘を感じずにはいられなかった。
    ただ、この小説にはその要素とは別に魅力を感じる部分もある。例えば晴の性格だ。ゲームの中の世界で生き通した彼女の性格は現実の日常とは斜め上をいくものだ。非日常から日常を眺められるのはやはり新鮮なものだった。そして、そこにこそ共感を憶える部分があった。

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