虹を待つ彼女

著者 :
  • KADOKAWA
3.69
  • (49)
  • (84)
  • (82)
  • (14)
  • (4)
本棚登録 : 679
感想 : 99
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047521

作品紹介・あらすじ

二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。
晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。やがて彼女に“雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくが――。

感想・レビュー・書評

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  • 2021/01/13読了
    #このミス作品60冊目

    めちゃくちゃ良かった!
    これが著者デビュー作というのが驚き。
    古典的なミステリと異なり
    近未来的な要素がたくさん盛り込まれていて
    読んでいてもワクワクする。
    ストーリーもとにかく面白い。

  • 人工知能やゲーム制作の話だったけど、平易な表現で分かりやすい。タイトルの「虹」がLGTBの色と同じ、主人公たちの名前とも連想できて、タイトルまでよく考えられているなー。ゲームの中で死にたいという彼女の気持ちは分かるようで分からないが、雨が救われて良かった。

  • 帯に惹かれて購入。
    横溝正史ミステリ大賞ということで、人間の狂気や切なさ、絶望などが垣間見れた作品でした。頭の片隅では、これって、世にも奇妙な世界っぽい展開になるのでは?と思っていましたが、結末までテンポがよく、楽しめました。
    ただ、登場人物のキャラクター性があまりよくわかりませんでした。そこまで、ヒロインに執着できるのかなと思いましたし、主人公の狂気性もあまり感情移入が出来ませんでした。
    みんなどことなく癖が強くて、横溝正史っぽい世界観がありました。読後感は爽やかっぽいのですが、スッキリ感は否めませんでした。
    ストーリーは、AIやドローンなどほぼ現代に近い設定で、SFっぽいではあるものの、どう物語が転がっていくのか全くわからないところに面白さがありあした。
    殺人事件があって、それを推理して解決するというのではないですが、ミステリアスな雰囲気が漂っていました。
    読んだ後に題名を再確認すると、違った解釈で意味を噛みしめることができました。

  • 第36回横溝正史ミステリ大賞をとった本作。カルト的な人気をもつゲームクリエイターの水科晴は自作のゲームをドローンと連携させ現実の世界、渋谷で自らを標的とし自殺を図る。探偵みどりさんの大学時代の友人工藤が、いまは亡き水科晴を人工知能化しようとプロジェクト立ち上げ、晴の本質に触れていくうちに晴を愛するようになる。その中で雨と呼ばれる人物が鍵をにぎり工藤は殺されそうになる。晴の人工知能化は成功するのか。雨が登場したあたりから読むのが止まりませんでした。こんなミステリがあるんだという驚きの作品でした。

  • 主人公の性格は最後まで生理的に受けつけなかったものの、夜中に読みはじめたらおもしろくて読むのがとまらなくなったのが、この「虹を待つ彼女」でした。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    2014年12月、水科晴(みずしな はる)という女性が、ある風変わりな方法で、その生涯を閉じた。

    そして時は経ち、2020年11月。
    人工知能と恋愛ができるアプリ「フリクト」に携わっていた工藤賢(くどう けん)は、クレームが増え、行き詰まっていた「フリクト」の状況を打開するため、ある策を提案する。
    それは、謎のままの死を遂げたゲームクリエイター・水科晴を調べ上げ、人工知能におとしこむことだった。

    優秀さゆえに、物事の予測がついてしまうことに虚しさを抱えていた工藤は、水科晴について調べるうち、彼女に惹かれていく。
    しかしそんな工藤に対し、水科晴についての調査を止めるよう、脅迫が届くようになり…
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    本作は「虹になるのを待て」というタイトルで、第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞しています。
    その後、加筆修正し出版されたものが「虹を待つ彼女」です。

    正直な所、主人公の工藤賢は、生理的に本当に受けつけないタイプの人間で、それだけで☆1つマイナスに相当しました。
    実際、夜通し読んでしまうくらい話はおもしろく、はじめは☆4つにしようと思いましたが、やはり主人公に難ありなため、最終的に☆3つとしました。

    冒頭は、水科晴がある事件を起こし、亡くなるところが書かれています。
    その死の謎、彼女の調査のなかであらわれた“雨”という人物、水科晴の残したゲームの内容、そこに様々な他の要素が絡み合い、ある地点からは急速に最後へ向かっていきます。
    水科晴という人物についての謎は、真相までとても練られていて、そこを知りたくてどんどん読み進めた感じでした。

    水科晴の謎を追う謎解きでもあり、主人公・工藤のねじれた恋愛観の話でもあり、しいていうなら「恋愛ミステリ」というジャンルかもしれません。
    人工知能については、作中でその都度、説明がされていますので、そうした知識かなくとも読み進められます。

    読み終わって「そういうことだったのか…」とタイトルの意味がやっとわかり、すっきりした反面、これで主人公・工藤の、有能さに酔いしれすぎ、ねじれた思考からの解放感でいっぱいでした。

  • この作品も「このミス」16位にランクインしていた理由で読んでみた。自分で開発したゲームの中で自殺を遂げたプログラマー・晴。その死の6年後、人工知能の開発に限界を感じていた研究者・工藤は死後、なお根強いファンを持つ晴の人工知能の開発に乗り出し、生前の晴のことを調べ始める…人工知能を取り扱ったミステリーは、最近すごく増えていて、そんなに目新しさもないし、設定に大きな矛盾を感じることもない。ミステリーと言いつつも、根底には恋愛の要素もあり、結構いい作品だと思う。ここ最近の横溝正史ミステリー大賞の中では一番面白かった。でも…主人公・工藤の本当に最後の最後までの自己中さが目に余り、読後の感じは微妙…

  • 横溝正史ミステリ大賞受賞作っていうのと装丁で選んで読んでみた。
    ゲームやドローンや人工知能などなど、私にはなじみのないワードばかりで、読み進められるか心配だったが、
    自分の作ったゲームを利用して自殺した謎の女性「晴」を追求していく過程にどんどん惹かれていった。
    今という時代を象徴するような、未来を見透かすような不思議な話だった。
    そして恋物語だった。

  • すごく良い本だった。今年上半期1位かな。
    徹夜読書してしまった。
    晴と雨のもの凄く切ない現代のラブストーリーミステリー。
    人工知能との恋愛やジェンダーレス
    私くらいの年齢以上の人には受け入れられない人もいるかもしれないけど、表紙の様に美しく切ない物語にグイグイ引き込まれます。
    綺麗なストーリーだけではなく、途中ドキドキ(悪い意味で)する所もあり、最後まで全く飽きない。
    息子に薦めたいけど、ちょっと刺激がありすぎかな

  • 人工知能と会話出来るアプリを開発した工藤は、死者を人工知能化するプロジェクトに参加することになった。
    試作品のモデルは謎の自殺を遂げたゲームクリエイターの晴。
    晴を調べるうちに、工藤は彼女に惹かれていく。

    プログラミングやアプリの開発など、門外漢の話で心配しましたが、問題なく読めました。
    工藤が晴に惹かれていく過程や、晴の謎めいた部分が明かされていく過程が面白く、最後の終わり方も良かったです。

    少し前のドラマ『あな番』でも、同じようなアプリが出てきましたが、作れてしまうのでしょうね。
    倫理的にどうかなとも思いますが、必要としている人はいるのかも?

  • 著者の、三作目の作品を先に読んでから本書を読んだので、共通で出てくる探偵のみどりには、意外な印象を持った。

    本書は、人工知能開発者の主人公が仕事で新しいプロジェクトを進めるにあたり、故人であるカリスマゲーム製作者の水科晴の生前を調査し始めることから展開していく。
    人の半生を辿ると色んな人が絡み合っていて面白い。雨という人物にようやく行き着くまでや、主人公がたどり着いた結論も意外だった。

    独特の世界観で、続きが気になって読み進めたくなる作者。もっと作品が増えてほしい。

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著者プロフィール

小説家。1980年、東京都生まれ。第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、2016年に『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)でデビュー。2022年には、のちに『五つの季節に探偵は』(KADOKAWA)に収録された「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した。このほか著作に、『少女は夜を綴らない』(KADOKAWA)、『電気じかけのクジラは歌う』(講談社)などがある。

「2023年 『世界の終わりのためのミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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