いまさら翼といわれても (1)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047613

作品紹介・あらすじ

累計230万部突破の〈古典部〉シリーズ最新作!
誰もが「大人」になるため、挑まなければいけない謎がある――『満願』『王とサーカス』の著者による、不動のベスト青春ミステリ!

神山市が主催する合唱祭の本番前、ソロパートを任されている千反田えるが行方不明になってしまった。
夏休み前のえるの様子、伊原摩耶花と福部里志の調査と証言、課題曲、ある人物がついた嘘――折木奉太郎が導き出し、ひとりで向かったえるの居場所は。そして、彼女の真意とは?(表題作)

時間は進む、わかっているはずなのに。
奉太郎、える、里志、摩耶花――〈古典部〉4人の過去と未来が明らかになる、瑞々しくもビターな全6篇。

感想・レビュー・書評

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  • 2021/04/01読了
    #このミス作品66冊目

    古典部シリーズ第6弾。短編集。
    シリーズものと知らず間すっ飛ばして
    手に取ってしまったが面白かった。
    当たり障りなく生きる主人公が
    時に仲間のために自分の型を破る姿が
    微笑ましい。

  • 古典部シリーズ第6弾、というか最新作。といっても2016年なので、次はあるのかどうか。

    6つの短編からなっているけど、今までの謎を解き明かす話だったり、これからの方向性を示唆するものだったり、高校生活の中での成長を感じさせるものが多くて、とてもよかった。

    特に「長い休日」でのストーリーは自分の時代にも感じた、都合よく人に任せる人と、任せられてしまう人のことが書かれていて自分の中での思い出も蘇ってきた。
    これからの4人の未来を想像しながら、ある種の完結に至って満足でした。

  •  古典部シリーズ既刊最新の六冊目。
     登場人物みんなそれぞれ好きなのだが、強いて言えばホータロー推し、どちらかというとホータロー&千反田えるカップルの方の展開を楽しみにしているかな、という立場である。でも今回思いがけず刺さったのは摩耶花が中心の「わたしたちの伝説の一冊」だった。
     高校二年生。人生が動き出す気配。濃厚な一冊でした。続き待ってます……!


    ■箱の中の欠落
    男子かわいー。仕事人生まれるか。
    ■鏡には映らない
    ヒーローなふたり。シリーズのはじめの頃、摩耶花がホータローを「毛虫の方がまし」くらいの蔑み方をしており、何もそこまでと驚いたが、そこにつながる中学時代の出来事が明かされた。
    ■連峰は晴れているか
    「折木さん、それって、とっても…」ともごもごする千反田える。
    ■わたしたちの伝説の一冊
    古典部があまりに平和なので忘れていたが、組織には派閥争いがつきもので、それは高校の部活であっても、あるところにはあるのだった。離れたほうがいい場所もある。足を引っ張る存在になってしまうこともある。そしてふくちゃんかっこいい。「でも、できれば僕は、巻き込んでほしいんだ」
    ■長い休日
    お姉さーん!
    ■いまさら翼といわれても
    ホータロー完全に“休日”明けてますよね。

    • akikobbさん
      たださん、コメントありがとうございます。

      いま『米澤穂信と古典部』も読んでいますが、やはり『遠まわりする雛』あたりから、「時計の針を進める...
      たださん、コメントありがとうございます。

      いま『米澤穂信と古典部』も読んでいますが、やはり『遠まわりする雛』あたりから、「時計の針を進める」ことを意識されたようで、彼らの変化(そして変化しないところも)がどう描かれるのか楽しみです。…続きも、きっと待ってて良いはず!
      表題作は、今まで一番常人離れしていた千反田えるの思わぬ変化が最も衝撃的ではありますが、彼女を探し出して迎えにいって寄り添ったホータローの姿にもグッときてしまいました。株も上がりますよ!
      「匣の中の失楽」は私は知らなくて気づかなかったのですが、他の方のレビューか何かでも言及されているのを見た記憶があります。「連峰は」も「パリは燃えているか」っぽいですし、古典を意識した遊びは、私が気づかないものも含めてたくさんやられてそうですね。
      2024/11/09
    • たださん
      変化しない部分、確かにそうですね。
      それがあるから大切な個性ともいえますし、変化する部分がより感動的に映りますよね。

      そうした関連性として...
      変化しない部分、確かにそうですね。
      それがあるから大切な個性ともいえますし、変化する部分がより感動的に映りますよね。

      そうした関連性として、摩耶花の凄絶な話の裏での『目の保養』などには、高校生ならではの可愛い一面もあって良かったなと感じましたし、他の作品では中々見られなかった、ふくちゃんとのやり取りも印象的でした。

      そう思うと、千反田主観の物語も読みたいような・・・でも、それで知るのは野暮かなとか思ったりして、そもそも主観にしても千反田は奥ゆかしいでしょうし、表題作の序盤と3作目に少しありましたけど、あれは今思うと千反田の普段着の姿を知る貴重な場面だったのかもしれませんよね。

      『米澤穂信と古典部』も楽しみです(^^)
      2024/11/09
    • akikobbさん
      たださん

      わかります!摩耶花視点のふくちゃんとのやりとりやひそかな目の保養も微笑ましいですし、千反田視点の物語、読みたいような、何か違うよ...
      たださん

      わかります!摩耶花視点のふくちゃんとのやりとりやひそかな目の保養も微笑ましいですし、千反田視点の物語、読みたいような、何か違うような…という感じありますよね。えるのことは、ホータロー視点で見ていたい、、、のかもしれません。
      「連峰は晴れているか」で、なぜホータローがこのことをわざわざ調べたいと思ったのかの理由を知ったとき、えるがもごもごと何か言おうとして言えなかったシーン、「惚れたんでしょ!素敵って思ったんでしょ!」とヒューヒュー言いたくなりましたが、そう書いてほしかったかというとそれも違うんですよね(わがまま笑)。でも、こと恋愛に限らず、いまさら翼といわれてしまった千反田えるの今後がどんなふうに綴られるのか、楽しみでなりません。
      2024/11/09
  • 「いまさら翼といわれても」(米澤穂信)を読んだ。

    短編集。
    
表題作の「いまさら翼といわれても」が好きだな。
ホータローとちーちゃんの心の交流を思うとやっぱり妬けてくる。
    
高校二年生か。
『まったくあの頃の俺は何やってたんだよ!』
って怒りたくなるくらいに古典部の面々の日常が眩しいぞ。

  • 久しぶりの古典部シリーズ、安定の面白さ。
    連作短編なので、普通ならいくつかいまいちなものが混ざっているものだが、すべてでクオリティが高い。


    「箱の中の欠落」
    『匣の中の失楽』をもじっているのかとは気付いたが、読んだことはないので内容に関係があるのかはわからない。
    生徒会長選挙で起きた問題を解明する話。
    私は序盤で真相に気づいたものの犯人が分からずにいたが、なるほどそういう終わり方もありか。
    でも動機くらいは知りたかった。


    「鏡には映らない」
    中学の卒業制作で奉太郎はとんでもないことをやらかして、同級生から恨まれているらしい。
    読者視点からすれば、奉太郎がそんなひどいことをするはずがないと信じたいところ。
    里志と粋な仕返しがかっこいい。


    「連邦は晴れているか」
    アニメで見たことがあった。
    今思うとアニメの出来良かったなぁ。
    タイトルがかっこいい。
    どうして調べる気になったのか、奉太郎の気遣いが素敵。
    「ヘリコプター好きの先生がいたっけなあ」なんていう日常の何でもない会話から、1つの事件が見えてきて、それに対する主人公の内面も見えてくるとは。


    「わたしたちの伝説の一冊」
    私はくだらないことに時間を割かないで、実質的な事に力を入れることができているだろうか?


    「長い休日」
    「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」という奉太郎のモットーはどうして生まれたのか。
    優しい人なら共感できるはず。
    「ばかだって構わない。ただ、つけ込まれるのだけは嫌だ。」


    「いまさら翼といわれても」
    思春期独特の苦悩わかるなあ。
    わがままなんだけど、束縛も困るし、放り出されるのも困る。
    その後どうなるのか、続きを読みたい。
    タイトルかっこよすぎやしません?

  • めちゃくちゃ久しぶりの古典部シリーズ最新作。

    舞台は高校で、主人公も高校生だけど
    安定の世知辛さだったり切なさだったり、、、
    推理小説といっていいのかわからないけど、相変わらず
    爽快感とは皆無で。

    やらなくても良いことはやらない、ホータローに
    なったきっかけが明かされる、長い休日が1番好きかな。



    表題作は1番最後、そして1番心配になる
    終わり方だったけど、
    なんだかんだ優しくて千反田さんのことはほっとけない
    ホータローがいるから、きっとうまくまとめてくれると
    信じています。

  • 『箱の中の欠落』
    奉太郎は、総務委員副委員長として生徒会長選挙に立ち合った里志から、相談を受ける。
    明日の朝までに、不正票の謎を解きたい。

    『鏡には映らない』
    破れた呪いは術者にかかる。
    魔法使いや陰陽師なら心得ていますよね。

    『連峰は晴れているか』
    「ヘリが好きなんだ」
    授業中、ヘリコプターの飛行音を聞いて窓に駆け寄った教師の心の内とは…

    『わたしたちの伝説の一冊』
    伊原摩耶花が漫研をやめたいきさつ。
    若い時間は短い。
    今、何をやるべきなのか。

    『長い休日』
    これは、表題作への助走である。
    ここまでは、過去の出来事を手繰る話だ。
    いわば、前夜。
    改めての、古典部部員たちの、立ち位置の地固めと、特に奉太郎の今に至るまでの気持ちの変化と、または変化していないもの。
    えるの登場が少ないのも、そのせいなのだろう。

    『いまさら翼といわれても』
    重すぎる転機である。
    ここで終わるなんて、米澤さんひどい。

  • 『......折木さんはどうして、それを言うようになったんですか』
    この言葉、いいなぁと思った。
    人をその場だけで見つめるのではなくて、見えないところを見つめようとする姿勢、というか。
    言われた側も、ハッとしてしまいそう。

  • 古典部シリーズ6作目。いよいよキャラクター像が濃くなって、自分も古典部の一員になったんじゃないかぐらい一人ひとりの気持ちとか高校生だからこその葛藤とか胸に来るものがありました。ホータローがどんどんかわいくてかっこよく見えてくるし、みんなホントいいやつ(笑)
    千反田さんがこの先どう将来に向けて進みだすのか、とてもとても気になるので、米澤さん、早く次の作品よろしくお願いします(^人^)

  • 古典部シリーズの最新作。究極的なまでにホワイダニットな短篇集。甘えや感傷になりすぎないように、義理と馴れ合いを丁寧に選り分けながら綴った全六編の短篇は、いずれも胸を打つ珠玉の短篇ばかりである。特に今作は全体を通して人が人に関わる理由に執拗にこだわっており、それが顕著に伝わるのは、回りくどい建前を避け、事件に関わる動機は本音で語ることを求めながらも、犯人が事件を起こした動機は最後まで不明なままの「箱の中の欠落」だろう。犯人側の心情が描かれておらずばっさりと断ち切られていることによって、二人の友情が対比的に浮かび上がる上手い構図になっている。またホータローがそれなりに料理ができるというのも、ファンには嬉しいポイントだろう。

    「鏡には映らない」はシリーズのファンなら誰しもが一度は疑問に思ったことの一つである、摩耶花とホータローの微妙な関係に迫った一本である。ホータローの彼女(!)発覚というのもファン的には驚天動地のサプライズだが、過去話自体は仄かで薄暗く、読み終えた後に再度読むと初読の時との感想の違いに驚いてしまう。鏡は実像を映すが、人の見たいものが真実であり、それは決して鏡には映らない。また久しぶりとなる摩耶花の一人称は読みやすく、男二人の秘密を暴くという構図もまた素晴らしい。

    「連邦は腫れているか」はアニメで先取りしてはいたものの、あらためて読むとささやかな話ながらも内容は味わい深い。短いながらもヘリと先生の横顔の印象が強烈に焼き付いてしまう。

    「わたしたちの伝説の一冊」個人的にベストなのはこれだった。部活動の不和という学校生活の身近なネタを不穏さを交えつつ上手く描き出しており、摩耶花の抱える焦燥感が嫌というほど伝わってくる。義理堅さが人との関わりが足枷になることを痛烈に指摘しており、特に才能に仕えるくだりは読んでいて震えが走ってしまった。そこは居場所ではなかったことが端的に明らかになるフィニッシング・ストロークも鮮烈である。やめるきっかけをさがしていたことに気付くのは読み終わった後だった。余談だが、ホータローの読書感想文は傑作である。読書感想文は体験記に過ぎないと思っていたが考えを改めようと思った。また「走れメロス」がミステリだとも思わなかった。

    「長い休日」は全体のまとまりや短篇の出来としてはこれが一番であるように思う。ホータローの過去は俗に言うお世話係であるのだが、描かれているのは善意の搾取や、良かれと思ってしたことが蔑ろにされるという、気のいい人間が背負う普遍の苦しみである。非常に共感できる内容で、また全ての話の原点であるとも言える。これを読んだ後だと「愚者のエンドロール」での奉太郎の心情は察するに余りあるし、また単なる怠け者でないということがよく伝わるだろう。長い休日、と例えた姉の言葉には優しさがこもっていて涙が出てくるし、また休日を終わらせる人間がくる、という予感めいた先に希望を持つ言葉を言ってくれる人が側にいたことが、奉太郎が歪まなかった理由の一つであるのだろう。面倒なことを率先してやろうとする福部里志や、人を陥れる考えとは無縁の場所にいる千反田える、また義理堅く関わりを大事にする摩耶花のグループの中に落ち着いたというのはある意味では当然の帰結であるとも言えるし、非常に納得のいくものだった。とても人間味のある短篇である。

    最後の表題作「いまさら翼といわれても」は、タイトルの意味や内容はある程度予想できたものの、将来家を継ぐ予定の箱入りのお嬢様、から想像できる話とはまるで違っていたのが印象深い。普通は自由を求める話にするのだが、あえて自由を与えられてしまったことで、アイデンティティがゆらぎ、何者でもなくなってしまったというのはとてもきついものがある。蔵の中から聞こえる歌声は籠の鳥のようでいて、またリドル・ストーリーとして終わっているのも余韻があっていいと思う。

    六年ぶりに読む本作だが、変わらぬ魅力を感じるどころか、より深化した、満足感のある一冊でした。完結まで一生追いかけていこうと思います。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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