政略結婚

著者 :
  • KADOKAWA
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レビュー : 75
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047682

作品紹介・あらすじ

金沢城で生まれた私の結婚相手はわずか生後半年で決まった。(中略)
早すぎると思うかも知れないが、当時ではごくごく当たり前のことで、
大名の子の結婚はすべて政略結婚、
祝言の日まで互いに顔を合わせず、文も交わさぬのが慣習である。
私の生まれた文化の世とはそういう時代であった。――第一章「てんさいの君」より

不思議な縁(えにし)でつながる、三つの時代を生き抜いた三人の女性たち。
聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らを三部構成でドラマチックに描き出した壮大な大河ロマン!
―――
加賀藩主前田斉広(なりなが)の三女・勇(いさ)は、生後半年で加賀大聖寺藩主前田利之(としこれ)の次男・利極(としなか)のもとに嫁ぐことが決まっていた。やがて生まれ育った金沢を離れ江戸へと嫁いだ勇は、広大な屋敷のなかの複雑な人間関係や新しいしきたりに戸惑いながらも順応し、大聖寺藩になくてはならない人物になっていく。だが、石高十万石を誇る大聖寺藩の内実は苦しかった。その財政を改善させるような産業が必要と考えた利極と勇が注目したのは――(「第一章 てんさいの君」)。
加賀藩の分家・小松藩の子孫である万里子。パリで生まれ、ロンドンで育った彼女は、明治41年帰国し、頑なな日本の伝統文化にカルチャーショックを受ける。やがて家とも深い縁のある九谷焼をアメリカで売る輸出業に携わることとなり、徐々に職業夫人への展望をいだくが、万里子の上に日本伝統のお家の問題が重くのしかかる。日本で始めてサンフランシスコ万博の華族出身コンパニオンガールになった女性は、文明開化をどう生きるのか――(「第二章 プリンセス・クタニ」)。
貴族院議員・深草也親を祖父に持つ花音子は、瀟洒豪壮な洋館に生まれ育ち、何不自由なく暮らした。だが、花音子が幼稚園に上がるちょうどその頃、昭和恐慌によって生活は激変。すべてを失った花音子と母・衣子は、新宿の劇場・ラヴィアンローズ武蔵野座に辿り着く。学習院に通いながら身分を隠して舞台に立つ花音子は一躍スターダムにのし上がるが――(「第三章 華族女優」)。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸、明治、大正、昭和の女たち。
    彼女たちの共通点は、「おひいさま」。
    つまり、姫君であること。
    時代に翻弄されながらも彼女たちは誇り高く生きていた。

    「てんさいの君」
    さとう大根のような夫(夭逝するが)が人生の伴侶。
    加賀大聖寺藩前だけの姫として生まれた勇は、この時代の常として次々と当主、子供達を亡くしていく。
    悲しみにくれながらも、「死なぬものは死なぬ」として、残されたものの務めと、強く気高く生きていく。
    穏やかな夫との短い幸せ。
    結婚だけが人生の幸せではないが、こんな優しい殿様だったからこそ、勇は強く生きられたように思う。

    「プリンセス・クタニ」
    小松藩藩主の娘として生まれた姫。
    外国に生まれ、洋風に憧れた身ではあるが、あることをきっかけに自分の「国」を学ぶようになる。
    黄色い猿と罵られもしたし、芸者がよく使う手口などと出自をばかにされることもあった。
    それをはねのける強さは、彼女が学ぶことをしたからだ。
    その強い姫の下にあったのは、さとう大根の絵柄の皿......。

    「華族女優」
    家族がなくなろうとする時代の物語。
    レビューに惹かれ、バラを踏みつける心地よさを知ったかの子。
    自らが生まれ育った屋敷を取られながらも、一から這い上がろうとした女。
    このタフネスに現代女性は何を見るだろう。

    強い女性が好きだ。
    鋼鉄の鎧を身に纏うのではなく、彼女たちのような、柳の枝のようなしなやかな生き方がしたい。

  • 表紙の絵のように三代続く(直にではないが)女性たちの物語。

    タイトルだけみたら嫌々結婚させられる感じだけど、1話の勇も、2話の万里子も相手に恵まれたと思う。万里子は許婚との結婚ではなかったけど。
    3つの話の中ではこの「プリンセス・クタニ」が好きかな。お似合いの2人が一緒になれたから。

    でも1話も3話も、もちろん面白かった。お皿が時代を超えた。

  • 江戸から明治、昭和の三世代、それぞれの時代を自分らしく生き抜いた女性たちの物語。

    彼女たちの時代それぞれで、愛や情ではなくとも絆を築けた結婚もあれば、自身で縁をたぐりよせた結婚もある。そのかたちはさまざまだけれど、一つの屋根の下でともに生き続けることの尊さを感じさせてくれる、今の常識だけではとらえきれない時代時代の「人と人、家と家とのつながり方」が描かれていて、興味深く読めました。

    作者の女性たちはサバサバっとした人たちが多くて読んでいて小気味よいのですが、この作品でもそのとおりで、たくましくも女性らしさも失わない凛とした姿が素敵な人ばかりでした。

    私は第二章のプリンセス・クタニがとても好きでした。ポイントは終盤のあの告白場面ですね。かっこよすぎました。

  • 中編3編
    幕末,明治,昭和とそれぞれの時代に生きた華族のヒロイン.前田家の関係のあるややこしい系図は結婚問題などで重要であるが,そんなものを差し引いてもどの章の主人公も自分というものがあって魅力的だ.九谷焼のてんさいの大皿が最後にも登場して,作者の「てんさいの君」への思いが伝わってくる.私も大聖寺藩前田利極殿が好きだった.

  • 江戸、明治、昭和と3つの時代を強く生きた3人の女性。
    政略結婚の話という感じでもないですけど(笑)

    第一章 てんさいの君
    加賀藩主の側室の娘・勇(いさ)は、生後半年で分家に嫁ぐことが決まっていました。
    18歳になり、夫となる加賀大聖寺藩の前田利極のいる江戸藩邸へ。
    結婚までは会ったこともないのがごく普通の時代、親戚でもあり、素直に受け入れていた勇。
    幸い、夫は優しい人で、子供が出来なくとも側室を迎えようとしなかったため、妻に甘いと評判になるほど。
    跡取りになるはずの男子が夭折し、夫も早逝、勇はお家の存続を守るため、養子縁組や縁談に力を注ぐ日々がえんえん続く。
    そういうことが女性の、とくに御台所の大事な務めだったのですね。
    詳しい説明で実情がわかり興味深いですが~やや歴史書っぽいといいますか。

    第二章 プリンセス・クタニ
    明治末頃。
    前田万理子は華族だが、海外駐在の銀行員である父と海外で暮らしてきました。
    日本のことをろくに知らないのはけしからんと呼び戻され、祖母たちのしつけを受けることに。
    縁談もいくつか持ち上がりますが、アメリカに住む相手に会うという口実で渡米。
    加賀藩由来の九谷焼の魅力を改めて知り、事業に乗り出します。
    活発なお嬢様の明るい話で、縁談は旧来の感覚で起きるものの、結果は夢のあるラブストーリーに。

    第三章 華族女優
    深草花音子は、豪華な洋館で何不自由なく生まれ育ちました。
    昭和恐慌によって財産を失い、すべてが一変してしまいます。
    女子学習院に通いながら新宿の劇場で踊ることになり、のちには女優に。
    貧しさに苦しんだ母は、人が変わったようになっていきます。
    政略結婚の話は出ないですよね‥
    もうそんな時代ではない!ってこと?
    華やかなヒロインでいいですが。

    なぜこのタイトル、なぜこの構成なのか?微妙な疑問が残りました(笑)
    時代と環境は違っても、育ちの良さと、お付きの女性がいる暮らし、というのが3世代で共通しているところかしら。
    政略結婚あんがい良い、政略結婚みたいだけど違う、政略結婚は親の代まで、というお話3つ。

  • 江戸、明治、昭和と時代を生きた女性たちの話。

    「てんさいの君」
    加賀大聖寺藩前田家に輿入れした姫 勇 は、優しい夫と短いながらも穏やかな生活を送る。夫や子に先立たれた後も藩のため、力を尽くす。
    「死なむものは死なむ」という義母の言葉が印象的。

    「プリンセス・クタニ」
    江戸時代は終わり、女性たちの装いも変わり、祖父母の時代は遠くなった時代に生きる万里子は、お姫様といわれてもまったく実感はなかった。
    ある時、国元を訪れた時、そこに住む人たちの姿を見て、家を絶やすわけにはいかないと思うようになる。

    「華族女優」
    昭和の時代を生き抜いた没落華族の娘、花音子は昭和22年の華族制度廃止でやっと自由を手に入れたと感じる。
    家を絶やすことにおびえなくていい時代の到来。
    ずっとついててくれた「ひとりでないのがいいんです」という言葉があったかい。

    3人のお姫様はそれぞれの生き方を貫いてて、潔かった。それぞれ側についててくれているお付の女性たちが居ましたがその人たちもカッコ良かったですね。

    1枚の大皿と共に時代の流れを感じる本でした。

  •  装丁がとても素敵です。

     幕末から昭和、平成まで。それぞれの時代を強く生きた3人の「おひいさま」の物語。
     少女小説から時代小説まで、幅広いジャンルを書かれる作家さんらしい楽しい一冊でした。
     最初のほうは、ほとんど説明ばかりのような文章が続いて味気ない部分もありますが、構成上、章を追うごとにだんだんと面白くなっていきます。

     主人公は大名家の娘や華族の令嬢。「家」に縛られることに反発しながらも、やがて「家」のために生きることを己の道と定めるようになる...と言うと、悲観的に語っているようですが、そこには、「家」のために自分にしかできない役目を、自分なりのやり方でまっとうしようと全力で挑む強い女性像があります。
     「個」よりも「家」が優先された時代の結婚観というのはこれまでも何度か出会ったことのある題材ですが、江戸から明治に至り、大名家や公家から華族へ姿を変えた「家」が、さらに昭和まで続く激動のなかでどのように長らえてきたかというのは、これまで小説では読んだことがなく、その点で「プリンセス・クタニ」「華族女優」の各章はとても興味深く面白かったです。自由を選ぶこともできる時代になったからこそ、それまでの不自由な時代にひたすら「家」を存続させてきた人々の生きざまが重く響きます。
     何百年と続く伝統であっても、そこに生きる人々にとってはたった一度の人生。その一人ひとりに苦悩や葛藤があったのだろうと考えさせられます。「自分の代で家を潰すわけにはいかない」という言葉が印象に残りました。

     「政略結婚」というタイトルは、彼女たちの運命を指すのではなく、男も女も、物語のなかでたびたび交わされる婚姻や養子縁組、或いは、そのための過程やそこに関わる人々すべてのことを言っているのだろうなと思います。「政略結婚」は「家」、引いては長らく続いた時代を象徴する言葉だとしみじみ感じます。

  • 金沢ではなく、大聖寺藩ときましたか。
    これまた渋いわー。
    大聖寺は今でも渋い街並みを残しておりますが、
    こんなに苦労してお家をつないでいたとは初耳。
    いつの時代も女性は強い。

    プリンセス・クタニの話がなんだかんだで好き。
    フィクションだからこそのラストの甘さ。
    多分こうなるんだろうなーと思いつつ、
    そのとおりになった快感。
    やっぱりこれぐらいベタな甘さが必要だ。

    ラストが最も激動の時代を生き抜いた話なのかな。
    江戸と現代は地続きで、
    単に年表だけの話ではなく、
    そこにはいろいろな人の思いが生きている。
    評論の授業でよく言うのですが、
    それが一冊の小説となって具現化した印象でした。

  • 加賀百万石前田家縁の3人のお姫様たちが、一枚の皿を通して江戸末期・明治・昭和と時代を超えて繋がる歴史ロマンもの。
    ストーリーは面白かったが、説明的な文章が多くてイマイチ頭に入ってこず、何度も章のはじめにある家系図に目をやったり、前の頁を繰ったりしながら読み進めた。

    3人の関係性が微妙に遠く、頭の中で家系図を書き直すもピースが足りず。
    こういう時代を超えた連作短編物は好きなのだが、各主人公たちの関連性がもう少し密な方が、登場人物に感情移入しやすかったように思う。
    第一章に登場する奥女中の「蕗野」が、第二章で主人公のお相手(侍女)の「曾祖母」として登場するが、一部表記が「祖母」になっているのは誤植ではないのか?

    登場人物はどこまで歴史上の人物なのか、読みながら色々ググってみたがちっともヒットせず、架空の人物設定が多い模様。
    少なくとも最終章の「白樺かの子」は、戦中・戦後の様々な女優像をミックスして作り上げた人物で、終盤の“お昼の30分トーク番組”を20年以上……というくだりは黒柳徹子がモデルのようだ。
    第一章の前田勇は、前田家の家系図に「女」と書かれている程度の存在だった人物を、作者の想像で膨らませたのではないか?
    第二章の前田万里子には、誰だかは分からなかったが実在の人物のモデルがいそうである。

    一章・二章は、歴史ロマン的なファンタジーにほっこりしたのに、最終章で“家に縛られる母”、“娘と自分を同化し、自分の夢を託す母”と一気に現代的な「母から娘への呪い」がテーマの1つとなる。
    昭和は遠くなりにけり……といっても、今の平成と地続きの世界なのだ、と実感。

  • 3篇が収められていて それぞれ時代が違うのですが
    すこしずつ内容がかぶっています、こういうスタイル、なんて言うんだっけ…?^^;

    やはり 舞台でもドラマでも小説でも 短いとその分感動が薄いです。

    人物の描き込みができないから 説明文が多くなってしまい
    感動が薄くなってしまう。

    この作品は 表紙のイラストでもわかるように 
    江戸末期・明治大正・昭和の それぞれの時代に生きた3人の女性の物語。

    第一章 てんさいの君
    第二章 プリンセス・クタニ
    第三章 華族女優

    すごく忙しかったので 全部読めないかもしれないから 読めるところだけ読んで
    返却しよう、と思って 一番興味深いタイトルの
    「華族女優」から読み始め 結局 全部読んでしまいました。

    私が政略結婚、と聞いて思い浮かべるのは
    まず、ハプスブルク家。
    政略結婚を繰り返し ヨーロッパに領土を広げていきました。

    マリーアントワネットは フランスのルイ16世に嫁ぎましたね。

    それと 大河ドラマを欠かさず観て 小説も読んだ 篤姫
    薩摩藩から江戸に上り 将軍家定との政略結婚。
    後ろで糸を引いていたのは 島津公。

    昔は結婚は当事者の意思など関係なく決められたので
    大変な思いをされたでしょうね…

    家から 個へと時代が下るに連れて 生き方の自由度が高まっていくのがわかり面白いです。


    第一章 てんさいの君の てんさいとは 野菜の甜菜です。

    加賀大聖寺藩前田家の藩主の娘の勇(いさ)は18歳で分家の前田利極(としなが)に嫁ぎます。
    故郷を離れ 江戸にある前田藩の屋敷での日々が描かれています。
    跡取りが結婚の前に若くして亡くなる、ということが続き
    養子をさがしたり 側室を選んだり…お家存続のために奔走する勇。

    それでも 利極は 側室を取らず 勇に心を寄せてくれて
    甘い殿様 それで てんさいの君と。

    勇が持ってきた 九谷焼の青手の大皿に 
    甜菜の絵が描かれていたからでもありました。

    あまりにも今の常識とは違う 江戸の結婚、お家事情が描かれていて
    興味深く読みました。

    第二章 プリンセス・クタニ

    加賀藩の分家 小松藩の末裔の万里子は明治時代にして
    海外で生まれ育ったために 両親と帰国してみて
    激しいカルチャーショックを受けます。
    厳格な祖母に行動を制約されて、息苦しい日々を過ごしていました。
    いいなづけが アメリカで働いていると知り これ幸いと渡米、
    サンフランシスコ万博で ロンドン在住時に身に着けた英語力で活躍します。
    その万博で 九谷焼を紹介し ビジネスウーマンとしての才能を開花させました。

    いいなづけとの結婚を反故にして 
    アメリカで九谷焼の輸入をしている 友人の兄と結婚。
    帰国して 九谷焼の窯を二人で訪れた時に
    プリンセスクタニ!と故郷の人たちから 迎えられるシーンは胸熱でした♪

    それにしても ちょっと出来過ぎな感じはしましたが…
    そんなに ポンポンと調子よく運ぶかな?という 胡散臭さは感じましたけど
    読まされました。

    第三章 華族女優

    これ、政略結婚と何の関係もない気がするのですが…

    華族とか伯爵とか ヅカファンが喜びそうな言葉がいっぱいでてきまして
    丁度 はいからさんが通るも読んでて どっちがどっちの華族ネタだったか…笑

    これは 深草伯爵家の誇り高き母と娘の物語。

    かつては 優遇されていた伯爵家にも 経済恐慌後生活が厳しくなり
    花音子が住んでいた 瀟洒な洋館(白樺の館と呼んでいた)を手放すことに。

    花音子は 学習院に通う傍ら 母とともに新宿のラヴィアンローズという
    劇場の舞台で歌い、時には 脚上げ(ラインダンスのような)もしていました。

    花音子には もう母のように 伯爵家の誇りなどなく
    自由に自分の好きなように生きる姿が描かれています。

    3つの時代 それぞれを生きた女性像を読んで
    時代の流れとともに 女性の生き方の変化も分かって面白かったです。

    すごくオススメ、という本ではないですが サラッと楽しめます。

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著者プロフィール

『トッカン -特別国税徴収官-』『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』『政略結婚』等の一般文芸、『銃姫』シリーズ、『カーリー』シリーズのライトノベル、『魔界王子 devils and realist』等の漫画原作、舞台『メサイア』の原作・シリーズ構成等々、多方面で活躍し、今一番注目の小説家。

「2018年 『インフェルノ(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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