ifの悲劇 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
2.95
  • (8)
  • (18)
  • (67)
  • (26)
  • (7)
本棚登録 : 507
感想 : 51
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041047750

作品紹介・あらすじ

北海道・網走に住む小説家の加納豪は、かわいい妹の彩を溺愛していたが、彩が商社に就職して夕張でひとり暮らしを始め、やがて同期の奥津と結婚することになり悲嘆に暮れる。しかし婚約者・奥津の浮気が発覚し、彩はショックで飛び降り自殺してしまう。奥津への復讐を誓った兄は、奥津を網走に誘い出し殺害する。奥津の遺体を車に隠しアリバイを構築するために夕張に向かう途中、加納は交通事故を起こしてしまう――。
ここから物語はふたつに分岐していく⇒
A:交通事故で人身事故を起こし、殺人が露呈した場合
B:交通事故を起こしたものの事なきを得て、殺人が露呈しない場合
……果たして加納の運命やいかに。
ふたつのパラレルワールドがひとつに結びつくとき、衝撃の事実が明らかになる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 言わんとすることはわかる。
    多分気分が乗らなかっただけなんだろうなぁ。。

    「パラレルワールドのお話でしたハッハッハ」の方が受け入れられた。パッと目覚めて、
    「てな感じでそんな上手くいくわけーか!ハッハッハ」な大ブーイング確定オチの方で良かった。

    多分、気分が乗らなかったんだ...2回言うくらいだもん...

  • 浦賀和宏のノンシリーズ。図書館を利用。

    20年ぶりくらいに浦賀和宏を読んだ。安藤直樹シリーズが大好きで(厨二心をくすぐられると言うか。。。)追っていたけど、段々とノンシリーズが増えてきていつの間にか遠ざかっていた。

    妹の婚約者を殺した帰りに、目撃者を殺すか、殺さないかでAルート、Bルートに別れる、というとんでもないストーリー。AとBが交互に展開され、どちらのルートもじわじわと追い詰められていく感じが良い。

    トリック自体は何となく目星がつくかも。このトリックをしたいがための舞台設定なので、その点が鼻に付く人は苦手かもしれない。。。
    冒頭から浦賀和宏らしい展開で、懐かしかった。

  • 「パラレルワールドがひとつに結びつくとき」…?
    なんやろ、メタ小説ってことか…?
    おおお、そう、そうきたか!!
    読み返してみると、本当に細やかに伏線が張られ、描写に工夫がされておりました。特に人物の名前の表記や呼び方、名乗ろうと思ったのを自然な感じで遮らせちゃったりして、憎いよ、この!
    でも、なんで星3かというと、真相が明らかになるまでがわりと退屈で、さらに長く、「今回外れかも…」と思っちゃったからです。だからこそそれがひっくり返った時の驚きが大きい、とも言えますが。

  • 「絶対に騙される!」と帯にありますが、
    まんまと騙されました。
    Aの場合とBの場合ですすんでいくミステリー。
    ネタバレはしたくないので、ぜひ読んでくださいとしか言えませんが、
    最後まで読むと、よく計算された出来た物語だなぁと。
    話がややこしいので、一気読みしたほうが内容がよく理解できます。

    ちなみに、この本を貸してくれた友人は、
    冒頭「プロローグ」を作者から読者へのメッセージだと思い、はやく本文を読みたいと「プロローグ」を飛ばしたら、全然意味わかんなかったと言ってました(笑)
    プロローグは大事な冒頭です。ここから物語始まってるし、騙しトリックも始まってるので、最初から丁寧に読んでください(笑)
    てか35ページもプロローグあるから、普通は気付きますが(笑)

  • パラレルワールドの話。
    しっかり読むと逆に楽しめないのかもしれないが、読みやすい文体なのですらすら読め、だからこそ、衝撃も大きかった。
    久々に面白かった。

  • 「もしあの時こうしていたらどうなっていたのだろうか」
    ――意味のないことだとはわかっていても、人は取らなかった選択の結末に想いを馳せてしまう。

    そこから着想を得て、本書はなんと「Aの場合」「Bの場合」の2つの物語を交互に書こうというのだ。それも「犯人が事件後に目撃者を殺していた場合」と「殺さなかった場合」だというのだから、物騒な話である。
    主人公は私怨から人を殺してしまう。用意周到に偽装工作を考え、計画的に殺人を実行したにもかかわらず、帰路の道中で目撃者を「ひき殺してしまう or ひき殺しそうになる」。物語はここからスタートする。
    犯人視点で物語が進み、最初の辺りは2つの世界で共通する部分も多いが、段々と違いが目立つようになり、気が付けばまさに「どうしてこんなことに」状態。しかも、そこに行くまでの流れが非常に自然。

    何を書いても基本的にネタバレになりそうで怖いが、かなり手の込んだ仕掛けが用意されていることもあり、解答を見てもなかなかに頭が混乱してくる。最後に筆者の手によって時系列順にまとめられているのが唯一の救い。
    ただ、描写や表現に若干「ずるいな」と感じるところはあった。

  • 浦賀和宏『ifの悲劇』角川文庫。

    実験小説のようなパラレルワールドミステリー。そして、週刊標榜のライター・桑原銀次郎シリーズでもあった。奇をてらった感が強く、現実味が感じ取れなかった点で小説としては失敗だと思った。しかし、ミステリーとしてはそれなりの面白さはある。

    北海道に住む小説家の加納豪が溺愛する妹の彩は婚約者の奥津の浮気を知り、自殺する。妹を死へ向かわせた奥津への復讐を誓った加納は奥津を殺害するも、遺体を車で運ぶ途中に交通事故を起こす。交通事故をきっかけに殺人が露呈した場合としなかった場合の二つの場合が交互に描かれ、やがて二つのストーリーは交わり、衝撃に真実が明らかになる。

  • 斬新でした〜〜

    ifって、"もしも〜"って意味やけど、この本の特徴は、もしあの時あいつを殺していたら、殺していなかったら、という設定で話が進むところ。

    パラレルワールドで話が交互に進んでいく 感じかな
    自分自身、あの時こうしていたら っていう後悔は幾つもあるけど、さらにその先の未来まで考えたことはなかったから、考えてみるのも面白いのかも。
    読み終わった時に、恐らく読者は自分自身の人生を振り返って、仕事とか恋愛の判断が正しかったのか、間違っていたのか考えると思われ

    まぁ実生活に置き換えると、過去を考えたところで変えられないから、今と未来をみるしかないんやけどね笑笑

  • ライトノベル作家の加納は、花田欣也という筆名で網走在住。妹を愛してしまうが、その妹の突然の自殺に違和感を覚え、妹の婚約者だった奥津を疑い殺害する。その後、目撃者を殺害してしまった場合と、殺害しなかった場合という2つのストーリーの小説を書くことにするのだが。途中で訳が分からなくなってしまったのですが、エピローグで全てが解決され、伏線回収みたいな感じ。ただ、無理矢理感が否めず。桑原という週刊誌記者の説明が分かりにくくて、何回も読まないといけなかったのがしんどかった。

  • ○ 総合評価  ★★★☆☆
    〇 サプライズ ★★★☆☆
    〇 熱中度   ★★★☆☆
    〇 インパクト ★★★☆☆
    〇 キャラクター★★☆☆☆
    〇 読後感   ★★★☆☆
    〇 希少価値  ★☆☆☆☆
     「犯行直後に目撃者を殺した場合」と「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」の二つの設定に分けて書かれたパラレルワールドを描いた作品だと思わせることがミスディレクションになっている作品。プロローグで,「犯行直後に目撃者を殺した場合」の視点人物である花田欣也(加納豪)と編集者の会話で,「パラレルワールドをテーマにした小説を書きたいんです。」という会話をさせることで,この作品がパラレルワールドを書いた小説だと自然に思わせようとしている。
     実際は,パラレルワールドを描いているわけではなく,「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」は「犯行直後に目撃者を殺した場合」の30年後を描いている。そして,読者にパラレルワールドを描いていると誤信させるような仕掛けが随所に仕掛けられている。まず,プロローグの花田欣也(加納豪)と編集者の会話で「会話が重複する部分は省略するんです。」と言わせているところがポイント。これにより重複した会話が省略されていると思わせている。実際は,時代の違いが分かってしまうような読者を誤信させるために不都合な会話を省略している。登場人物の名前も誤解を生じさせるように設定。視点人物は「犯行直後に目撃者を殺した場合」では「花田欣也(加納豪)」。「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」では「加納卓也」。いずれも「加納さん」と呼ばせることで読者を誤解させる。また,加納卓也が花田欣也のマネージャーをしているという設定なので,「花田欣也の印税で生活している」など,「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」も「花田欣也(加納豪)」が視点人物だと誤信させようとしている。加納彩という名前も花田欣也(加納豪)の妹と娘の二人の名前として登場している。
     こういった仕掛けでパラレルワールドを描いていると思わせるが,話が進むにつれて違和感が出てくる。少しずつ,「犯行直後に目撃者を殺して場合」と「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」の視点人物や登場人物の描写にズレが出てくる。これをパラレルワールド特有のズレと読者に誤解させようとしているのだろう。実際,読んでいるときはそのような読み方をし,「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」のラストで混乱してしまった。
     それでは,この作品を読んで大きなサプライズを感じたかというと…それほどでもないのである。「混乱した」というのが素直な感情。何が起こっているのか分からなかったのである。この作品を読んでサプライズを感じようとすると,かなり注意深く読む必要がある。あまり注意深く読むと真相を見抜いてしまうので,適度に注意深く読まなければならない。そうすれば驚けるだろう。多くの人はさらっと読んで最後に混乱するのではないか。そういう作品である。
     混乱する原因は「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」4のラストで一気に聞いたことがない人物が登場する点にあると思う。エピローグでいろいろと明かされるがエピローグで初めて分かる情報もある。短い作品だから仕方がないのだが,短い描写で多数の情報を与えられると混乱する。「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」のラストは「加納卓也」の名前を出す程度にしておき,エピローグでもっと丁寧に説明すれば印象が変わったかもしれない。この場合は,冒頭で,さりげなく,奥津行彦と加納彩などの会話で,子どもができたら,「卓也」という名前にしたい…とか奥津行彦の子どもが「卓也」であるという伏線があれば,「あっ」と思って驚ける作品になっていたと思う。
     泡坂妻夫的というか,折原一的というか,その手の作者のような技巧の限りを尽くした作品。このような作風は好みなのだが,やや不満があるのは見せ方。一流のマジシャンは手品を知らない人でも驚けるような現象を起こすと思う。この作品は手品に詳しい人を驚かすような分かりにくい現象を起こしている手品のような作品。手品に詳しいマニアの評価が高くなりそうな作品だ。泡坂妻夫はこのような作品は書かなかったと思う。そういった意味では折原一の方に近い。★3かな。
    ○ 仕掛け
     パラレルワールドを描いた作品。パラレルワールドの描写において「会話が重複する部分は省略する」という点が叙述トリックに使われている。プロローグの花田欣也のセリフにより,パラレルワールドが描かれているように誤信させている。しかし,実際は時代が異なる。
    〇 「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」
     視点人物:花田欣也(加納豪)
     被害者1:加納彩(花田欣也(加納豪)の妹)
     被害者2:奥津行彦
     被害者3:猪澤五郎
     被害者1を殺害した犯人:羽賀琴菜
     被害者2を殺害した犯人:花田欣也(加納豪)
     被害者3を殺害した犯人:花田欣也(加納豪)
     時代:1986年
     奥津と書かれている人物→奥津行彦
    〇 「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」
     視点人物:加納卓也
     被害者1:奥津進也
     被害者2:鈴木太郎
     被害者3:花田欣也(加納豪)
     被害者1を殺害した人物:奥津卓也
     被害者2を殺害した人物:自殺
     被害者3を殺害した人物:奥津卓也
     時代:2016年
     奥津と書かれている人物→奥津新進也
    ○ 登場人物
    花田欽也(加納豪)
     ライトノベル作家。奥津行彦を殺害
    加納彩
     主人公の妹。主人公と近親相関をしていた。投身により死亡。警察は自殺として処理
    奥津行彦
     近親相関で生まれた子であり,奥津家に養子に出された。
    春子
     加納彩(妹)の会社の同僚
    羽賀琴菜
     奥津行彦の元恋人。羽賀琴菜の両親が興信所を使って奥津行彦を調べ,近親相関であることを知り,結婚を反対される。加納彩を殺害した犯人。琴菜は獄中で双子を出産する。この双子が「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」の主人公と殺害された奥津
    牧村
     興信所の調査員
    リン
     奥津育彦の母。近親相関を憎み奥津卓也と奥津進也に花田欣也(加納豪)殺害を進める。花田欣也(加納豪)殺害の事件の黒幕的存在
    西岡
     刑事。「犯行直後に目撃者を殺した場合」では中年
    和泉
     刑事。「犯行直後に目撃者を殺した場合」では若い方。「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」ではベテラン刑事として登場
    猪澤五郎
     「犯行直後に目撃者を殺した場合」で主人公が車でひき殺した人物。恐喝をしており,恐喝をするときは「鈴木某」と名乗る。
    蒼井
     Mというバーのバーテンダー。
    秋津桃子
     Mというバーの常連。花田欣也(加納豪)と結婚する。
    加納卓也
     「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」の視点人物。最後に名前が明かされる。奥津行彦の子ども。双子の弟である奥津達也と花田欣也(加納豪)を殺害する。
    桑原銀次郎
     「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」に出てくるフリーランスのライター
    猪澤光蔵
     「犯行直後に目撃者を殺さなかった場合」に出てくる。週刊標榜にネタを持って行った人物
    ○ 犯行直後に目撃者を殺さなかった場合の仕掛け
    ○ 「ベテランと若手」の刑事が来ており,「和泉」という名前が出てくる。しかしベテランの方が「和泉」と分かるように描いていない。若手の方が「和泉」と誤信するように描いている。
    ○ 一人称は花田欣也(加納)ではなく,。「奥津」として描かれている人物は奥津行彦の子ども。

全51件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1978年、神奈川県生まれ。1998年、『記憶の果て』で第5回メフィスト賞を受賞しデビュー。『時の鳥籠』『頭蓋骨の中の楽園』など、著書多数。2020年、急逝。

「2020年 『こわれもの 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

浦賀和宏の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×