- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041048283
作品紹介・あらすじ
静かなる野、モーヌップの大地。バンドー(坂東)から移り住んできた豪族による、「米一石借りたら返す時は二石」という掟に、エミシの民は苦しめられていた。エミシを騙して得た毛皮や海産物を売り大儲けしていたウェイサンペの連中に、青年マサリキンは怒りを覚える。さらに美女・チキランケが女奴隷として召し出されると訊き、憤慨したマサリキンは、一目で恋に落ちたチキランケと共に馬で逃亡を試みる。追っ手に囲まれたマサリキンが「邪悪な心、恥を知れ!」と怒りを放つと、彼の馬トーロロハンロクが、襲いかかる相手を噛み殺してしまう。逃げ切ったマサキリンだったが、訪れた集落で出会った長老から、「不正を見て怒らないのは怠けの罪」だが、マルコ党への敵対は帝への反乱者と見なされると諫められる。愛馬が殺したのは、敵将の愛息だった。運命はマサリキンに反乱軍への参入を促すが、マサリキンとはぐれたチキランケは再び囚われ、鎮所で按察使の愛人になることを命じられるが――。
感想・レビュー・書評
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キリスト教色強いイメージの作者だったので、少し身構えて読み始めてしまったが、途中から気にせずに読めた。主役が美形で、素朴な人柄の人物が多く好感がもてる。ただし、チキランケの辿る道がどうしてもいただけない。嫌な予感しかしないのがストレス。下巻に期待
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エミシの視点から見る古代東北史。
まつろわぬ人と言われ、結局討伐されて歴史の中に消えていったエミシ。
そんな彼らがどうやって暮らし、どう大和朝廷に滅ぼされていったのか。
扉の後の地図は、北はケセ(気仙沼)から南はミヤンキ(宮城)平野まで。
ウォーシカは(牡鹿)、トヨマナイは(登米)、クリパルは(栗原)ピタカムイは(日高見。
アイヌ語由来の地名も散見する東北の地だから、この辺は実にスムーズに読める。
エミシの話す言葉や風俗も、アイヌの影響が大きい。
だから、最初は読みやすかったのだけど、途中からエミシとアイヌの類似が著者の恣意的なものだとして、エミシ=アイヌなのか、たまたま近いものを借りてきたのかが気になって、少し読書の勢いが削がれてしまった。
これは下巻を読めば納得がいくのだろうか。
初めて生まれ故郷のケセから出て、諸国遍歴の旅に出たばかりの若者マサリキンと、ひょんなことから知り合った美少女チキランケの恋。
すれ違いばかりの恋。
そして物語の骨子であるエミシの反乱。
これについては結末を知っているだけに、この結果が二人の恋にどのような影響を与えるのか。
神の前には誰もが平等で、必要なものは必要な分だけ神様から頂く。
困った人がいれば当然手を貸し、人を出し抜くことを知らないエミシ。
帝のもと、誰もが身分を決められ、下のものを搾り取って上の身分を手に入れなければならないウェイサンペの世界は文明社会と言われる。
人は嘘をつき、隣人を出し抜き、心の余裕を失っていく。
ストーリーとは関係ないが、ウェイサンペの人々は、今の人が「はひふへほ」と発音するところを「ぱぴぷぺぽ」と発音する。
これは歴史的に正しくて、知識としては知っていたけど、大国が「オポクニ」と呼ばれ、オホタラシヒコは「オポタラシピコ」と呼ばれているのを読むと、ああそうだったのか…とわかる。
ストーリーは単純なんだけど、それだけに終わらない面白さがあって、ぐいぐい読める。