凶犬の眼

  • KADOKAWA (2018年3月30日発売)
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本 ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784041049556

作品紹介・あらすじ

捜査のためなら、俺は外道にでもなる。

所轄署から田舎の駐在所に異動となった日岡秀一は、穏やかな毎日に虚しさを感じていた。そんななか、懇意のヤクザから建設会社の社長だと紹介された男が、敵対する組長を暗殺して指名手配中の国光寛郎だと確信する。彼の身柄を拘束すれば、刑事として現場に戻れるかもしれない。日岡が目論むなか、国光は自分が手配犯であることを認め「もう少し時間がほしい」と直訴した。男気あふれる国光と接するにつれて、日岡のなかに思いもよらない考えが浮かんでいく……。

警察vsヤクザの意地と誇りを賭けた、狂熱の物語。

感想・レビュー・書評

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  • やっと手に取った 虎狼の血シリーズ第二作。
    ワクワクしながら、まず、じっくりプロローグを読む。
    ここには必ず重要な鍵が隠れている。
    刑務所の面会の場面のよう。
    左頬に傷のある面会人って?

    第一作目の13章で、日岡は上司に逆らって田舎に飛ばされ
    平和で退屈な業務に悶々とする日々。
    喫煙者になった日岡は、狼の絵柄のジッポーを出して火をつける。
    読者としては、ガミさん(大上)がいないのが何とも淋しい。

    ある時、そんな田舎でゴルフ場建設工事が始まる。
    工事責任者が駐在所に挨拶に来るのだが
    その人物は指名手配中の義誠連合会の会長、国光。
    ガミさん馴染みの店「志乃」で顔を見たことのある人物だ。
    店で、国光が日岡に言った言葉が蘇る。
    「やることが残っとる。めどがついたら、
    必ずあんたに手錠をはめてもらう。約束するわい」

    柚月さんの手にかかると、一瞬で、人物が魅力的に引き立つ。
    ヤクザの親分 国光には、底知れぬ力と人間としての優しさを感じる。
    年齢が気になってチェックすると、35歳!?
    いやいや、私の印象では58歳くらい。貫禄ありすぎです。
    一方、今や派出所の駐在さん、日岡は二十代後半。
    今作、私用時に限りYAMAHA SR500にまたがってアクセルをふかす。
    つい、このバイクをググってしまった。う~ん、クール!
    バイクにまたがる日岡は、文句なしに格好良い。

    この作品のハイライトは、何と言っても建設現場立てこもり事件。
    立てこもり現場で行われた国光と日岡のやり取りには、しびれる。
    そして、事件解決の際に国光が最後に放ったひと言で つい涙…。
    日岡は、今作で “凶犬” の素養を受け継ぐことになり
    また一回り大きくなる。
    (狂犬でなく、凶犬…。なぜかな?)

    プロローグの意味がすっかり明らかになったところで
    柚月さんお決まりの(?)、いやでも心に残ってしまう最後へ。
    今作もワクワクドキドキが止まらない時間を過ごした。
    完結編が楽しみ。

  • 著者の代表作『孤狼の血』シリーズの二作目です。

     日岡秀一は「小料理や志乃」に来た。
    「せっかく広島まで来たから、足を延ばして晶子さんの顔を見たい思うて寄りました」
     日岡は、呉原署捜査二課から、比場郡城山町の駐在所へ異動になった。階級は巡査のままだ。所謂左遷である
    「ほうね。じゃったら、いまから蛸飯作るね。秀ちゃん、好きじゃったろう。ちょうど、ええ蛸が入ったんよ」
     蛸飯が炊きあがると、晶子はどんぶりによそい日岡に差し出した。「おかわりはたくさんあるけん。もっと食べんさい」晶子が作った蛸飯は美味しかった。腹が満たされると、茶を啜り、革ジャンの内ポケットからショートピースを取り出した。口にくわえる。狼の柄があしらわれたジッポーで火をつけた。

     かつての上司❘大上省吾巡査部長から預かったままのライターだ。カウンターの隅にいた晶子が、怪訝そうに日岡を見た。
    「秀ちゃん。あんた、いつから煙草吸えようになったん」…。
     時間だけが、ただ、だらだらと流れていく。その虚しい時間を潰すために、煙草を吸いはじめた。だが、理由はそれだけではない。大上のジッポーを身近に置き、いつも触ってていたかったからだ。
     二年前、日岡は警察組織に牙を剥いた。上の命令に背いたのだ。後悔はなかった。むしろ、使命感にも似た想いがあった。
     ジッポーは、大上の忘れ形見ではない。
    日岡に、後は頼むと言い、事を託したのだ。店を出た後、男に声を掛けられた。
    「のう、日岡さん。ちいと時間をつかい」
    「わしゃァ、まだやることが残っとる身じゃ。じゃが、目処がついたら、必ずあんたに手錠を嵌めてもらう。約束するわい」~国光寛郎。

     日岡の胸に、かつてのヒリヒリとした感覚が蘇る。日本最大の暴力団組織、明石組の二次団体である北芝組の若頭だった男だ。殺人幇助の容疑で全国に指名手配されている。
     一方晶子は「秀ちゃん、国光さんのこと、あんたがどうするかわからん。例のもの、あんたに渡す準備は、いつでもできとるんよ」
     
     物語は始まったばかり、読書は楽しい!

  • 「それは仁義というものです。」国光がしたことは正義なのか?否、人の命を奪うことは正義ではなく、仁義である。今回、広島での明心戦争(暴力団抗争)、国光が親分の仇を打つため、清々しい程の仁義を尽くす。仇を討つためには警察の日岡であっても仁義を尽くす。一方、日岡は国光の仁義を目の当たりにし、亡き上司の大上への仁義を尽くす。日岡も桜の代紋の正義には拘らず、仁義を尽くす。この2人の凶犬の眼の双眸は仁義に向かうのである。2人の生き様は正義ではないにしても、彼らの生きる意義がそこにあり、納得はしないものの理解はした。

  • 柚月裕子『凶犬の眼』角川書店。

    『孤狼の血』シリーズ第2作。『慈雨』から『孤狼の血』と今や男性作家よりも男らしい傑作を上梓し続けている柚月裕子がまたも男の小説を描いてみせた。面白い。しかも、まだ続編の余地がありそうだ。

    主人公は『孤狼の血』で広島の所轄署の捜査二課に配属され、大上と共に暴力団系列の金融会社に関連した事件の捜査にあたった新人刑事の日岡秀一である。その後、所轄署から田舎の駐在所に左遷された日岡は、懇意のヤクザから得たきっかけを手掛かりに再び陽の当たる場所へと這い上がる決意を固める……

    作中の舞台は中国地方なのだが、横手の錦秋湖が登場し、違和感を覚えた。横手は秋田県の地名で、錦秋湖は岩手県の西部にあるダム湖である。柚月裕子が岩手県出身で山形県在住であることから、東北地方に対する思いなのかも知れない。

    滅多にハードカバーには手を出さないのだが、本好きの父親に『孤狼の血』を貸したところ、そのお礼なのか父親が読み終えた本書を付けて返された。

  • ガミさんがいない二作目は楽しめるのか不安だったが、国光がまたかっこいい。この人は人物を魅力的に描くのがやはり巧い。三作目の完結編も読もうとおもう。

  • 2021/06/25読了
    #柚月裕子作品

    「狐狼の血」の続編。
    前作から田舎の駐在所に左遷された日岡が
    日本最大の暴力抗争に絡んでいく。
    そして亡き大上と同じ道を辿ることに。
    しかし、この雄々しい作品を女性が書いて
    いることにただただ驚かされる。
    めちゃくちゃ面白い。
    完結編の「暴虎の牙」も早く読みたい。

  • 所轄署から田舎の駐在所に移動となった日岡秀一は、
    穏やかな毎日に虚しさを感じていた。
    そんななか、懇意のヤクザから建設会社の社長だと紹介された男が、
    敵対する組長を暗殺して指名手配中の国光寛郎だと確信する。
    彼の身柄を拘束すれば、刑事として現場に戻れるかもしれない。
    日岡が目論むなか、国光は自分が指名手配犯であことを認め
    「もう少し時間がほしい」と直訴した。
    男気あふれ国光と接するにつれて、日岡のなかに
    思いもよらない考えが浮かんでいく…。

    前作の「孤狼の血」が映画化されたようですね。
    私は「孤老の血」が未読の為、何が起きたのか
    どうして日岡は所轄の捜査四課から田舎の駐在所に左遷されたのか?
    先輩刑事のガンさんは亡くなったのか…?
    色んな謎が読みながら頭に浮かびましたが、
    この本はこの本だけでも十分楽しめました。

    しかし、前作を読んでいないためか、ヤクザの組の抗争…。
    組同士の相関関係も読んでも読んでも難しく頭に入らず

    • ひとしさん
      しのさんおはようございます!
      こちらも良かったですが、是非『孤狼の血』を読んでいただきたいと思います!できれば前作から読んでいただければ良...
      しのさんおはようございます!
      こちらも良かったですが、是非『孤狼の血』を読んでいただきたいと思います!できれば前作から読んでいただければ良かったかなσ(^_^;)
      今回のモヤモヤが全てスッキリしますよ!
      2018/07/17
    • しのさん
      ひとしさんはじめまして( *´艸`)
      コメントありがとうございます。
      とっても嬉しかったです。
      やはり前作の「孤狼の血」を読んでから読...
      ひとしさんはじめまして( *´艸`)
      コメントありがとうございます。
      とっても嬉しかったです。
      やはり前作の「孤狼の血」を読んでから読む方が良かったのですね。
      モヤモヤもスッキリしますよね♪
      共感も凄く出来そうな気がします。
      是非、前作を読みたいって思いました。
      本当にありがとうございました(*´ω`)
      2018/07/18
  • 「虎狼の血」の続編。今回も面白かった!
    前作のような謎解きの要素は少ないですが、ヤクザと警察官の立場を超えた「仁義」に熱いものを感じます。

    良い物語だったわ〜と余韻に浸りながら読んでいると思いもよらぬ結末に…。

    オススメです!

  • <動>
    同じ登場人物達で始まる前巻『孤狼の血』を先月(2024.5月)読んだ。ところがこれが再読だったことに全く気付かないままに最後まで読んでしまったものであった。最初に読んだのは某読書SNSの記録によると2016年2月。先月の再読までには8年経っている。まあ納得する。8年前の読書内容を覚えている訳がない。でも本当に何も思い出さないまま最後まで面白く気分良く読み終えた事は嬉しい様な不安な様なちょっと複雑な気持ちだ。

    で本書『凶犬の眼』単行本。発行は2018年3月。前出の『孤狼の血』のたぶん3年後くらいに出ているつまり柚月は続けてシリーズものとして書いている事になる。 僕は元々と別の柚月作品を読んでかなり面白かったのと めちゃ美人作家さんだったので「お,これは彼女の代表作の『孤狼の血』シリーズを読まねばならない,どうせ読むなら順番にだな」と読み始めたのであった。

    さて,柚月のこの広島極道警察物語は随分と面白い。本と云うのは危険なもので,あまりに面白いとその日の予定が大幅に狂ったりする。たまたま有給休暇をとっていたその日 僕は午後は床屋へ行くつもりだったのにそんな事うっちゃっておいて本書を読み続けるハメになってしまった。 柚月の作品はなぜ面白いのだろう。文節が短く区切られていてテンポよく読める事。これは北方の大御所や大沢兄貴の作品と似ている。そういえば物語の展開も大沢兄貴の犯罪物と少し似ている節があるなぁ。

    しかも今の大沢作品みたく くどくど と説明しなくてもわかる明解なストーリー展開でさらに良い。物語が分かり易く情景が読者の頭に浮かびやすいのはとても大切な事だ。本を読んでいても他に気になる事が有るとなかなか本に集中できないのだが,それでも本の面白さが大きく勝ると他の事は気にならなくなって忘れてしまう。先に書いたがこれは危険な状態でもあって,こういう本を寝床に持ち込むと寝不足で次の日の仕事に差し支えが出たりする。それだけ面白い本を読めるのは幸せだとは思うのだが。

    しかしまあ登場人物達は警察官も含めてタバコをよく吸う連中だなぁ。何かというとタバコに火をつけて間を持たしている。ハイライトにセブンスター まあ僕らも一番馴染んだ銘柄だ。時代は平成二年:1990年。今から34年前。うーん確かに男は皆タバコ吸ってたなぁ。でも柚月がこの作品を書いたのは2016年。どうして25年も前の時代設定で物語を書いたのかしら(って,前作『孤狼の血』の続き作なのだからまあ他の時代は無いんだけどねw)。結果は大成功で凄く面白い作品になっている。さて次に行くか。

  • 大上章吾亡き後の日岡秀一は、広島の片田舎の駐在所に巡査として勤務し、穏やかな日々に物足りなさを感じながら、いつかは所轄署に戻ってやるという決意を秘めていた

    ある時、自分の管轄内のゴルフ場建設地に日本最大の暴力団組織のトップの命を奪い、全国指名手配中の国光寛郎が工事責任者として潜んでいることを知る

    まさしく、飛んで火にいる夏の虫、手柄を立てる大チャンス!

    姿を隠すこともなく堂々と国光は、日岡に言う
    「わしゃ、まだやることが残っとる身じゃ。めどがついたら、必ずあんたに手錠をはめてもらう。約束するわい」

    国光の言う『やりたいこと』とは何なのか

    『堅気の生き血を吸うヤクザも、堅気に迷惑をかけず筋を通すやくざも、暴力団であることには変わりない
    社会の汚物でしかない糞もあれば、堆肥になる糞もある
    はたして国光は、どちらの糞か』

    第一部「孤浪の血」で大上が、ヤクザにもいろいろある。日岡にも分かる時がくると言っていたことは、このことだったのか

    日岡は、国光の真剣な態度に堆肥になるヤクザかもと、国光を信じ、時間を与えることを約束する

    日岡と国光の職業を超えた信頼関係、警察官とヤクザが兄弟の盃を交わすなどということはあってはならないことではあろうが、男と男の硬い信頼に裏打ちされた友情に心を揺さぶられる

    天国で、大上はこんな日岡に対してどんな声をかけるのだろうかと思った

    女性が書いたとは思えない迫力ある描写に驚かされること度々であったが、男でも女でもおもしろいものはおもしろい!

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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