砂に泳ぐ彼女 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2017年6月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784041049563

作品紹介・あらすじ

どうして、こんなにがんばってるんだろう。

大学卒業後、地元で働いていた紗耶加は、やりがいを見つけられず息苦しい毎日を過ごすなか、思いきって東京に行くことを決心する。新しい職場で気の合う同僚に恵まれ、圭介という優しい男性にも出会うことができた。やがて圭介と半同棲をすることになった紗耶加だったが、彼の自分勝手な言動に次第に違和感を抱きはじめる。苦悩する紗耶加を救ってくれたのは、写真を撮ることだった。そして、思いがけない新たな出会いが紗耶加の運命を変えていく――。仕事や恋愛で揺れ動くひとりの女性の生き様を圧倒的リアリティで描いた、勇気と希望の物語。

感想・レビュー・書評

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  • リアルで良かった。最初の話からまさか最後にこうなるとは…と。単なる恋愛ストーリーでもヒューマンドラマでもなく、現実的な素敵な話でした。
    私も写真を撮ることが好きなので、紗耶加の写真を撮りたくなる気持ちに共感ができました。

  • 地方の携帯ショップに勤めるヒロインの紗耶加が、一念発起して上京し、自分らしい生き方を模索する十年間を綴った本作。
    タイトル通り、「砂に泳ぐ」かの如く、終始ざりざりした感触がある。特に始まりの紗耶加は、若さゆえ生真面目で不器用で、危なっかしくてハラハラする。何だかその危なっかしさに当時の自分がうっすら重なり、ますます危なっかしく感じたり。端々にじれったさを感じながらもページを捲る手は止まらず。新しい出会いにワクワクしたり。紆余曲折ありつつも、東京での暮らしを充実させていく過程がとてもいい。
    後半から色々軋みも出てきて、その都度紗耶加がしんどい状況と対峙しなければならなくなる。これまたハラハラさせられるし、読んでいてしんどいけど、乗り越える勇気をもらえる。どんな対応が正解なのかなんてわからないけど、どういう態度で、どういう言葉で相手と真摯に向き合い、自分の気持ちを伝えるか…すごく考えさせられた。ついなぁなぁでごまかそうとしてしまう自分を反省。
    「撮る」ことに目覚めた紗耶加が、心動いた瞬間を切り取るようにシャッターを切る描写がどれも美しくて、本作の好きなところだ。
    装画は、飛鳥井作品おなじみの渡辺ペコさん。単行本の装画がすごく好きなのだが、文庫版もまた違ったよさがある。まず色遣いが素敵!そして、ヒロインが手にしているカメラ。作品を読んで、そのカメラがどれだけ大切な存在かがよくわかる。
    恋に仕事に頑張る女子、と言うと陳腐で手垢のつきまくった表現に感じられてしまうけど…それでも、いくつになっても私はそれを描いた作品が大好きで、たとえヒロインとどれだけ年齢が離れようとも、好きなテーマなのだ。躓いて、泣いて、ボロボロになりながらもその先にあるものを掴みに行く。そんな女性たちにエールを送りたくなり、自分もパワーをもらえるのだ。

  • 「働く女性におすすめの本」で見つけた作品。
    主人公が、仕事や恋愛、自分の生き方について向き合う姿は、自分とも重なる部分が多くて、この世界に一気に引き込まれた。

    主人公の紗耶加が、転職や色んな人との出会いを通して、相手に自分の思いを伝えられるようになっていく姿が、カッコよくて勇気をもらえた。
    「自分の本音」って人に簡単には言えないし、怖いと思う部分もあるよなぁと共感。

  • 文庫本で再読。
    やっぱり苦しい、くるしい。

    ほんの少しだけ紗耶加と通ずるところがあって
    考えてしまう。
    わたしはこれからどうなるんだろう
    どうするんだろう

    「自分の力で起きあがれなければ、どのみち、
    また倒れてしまうだろう」
    人間も一緒だ。

  • 飛鳥井さんの書く女性はとても好きだ。
    この本に出てくるさやかは、だんだん強くなっていく。取捨選択をしながら強くなっていく。
    本当に大事なものは自分のもとに残る。
    なにやってるんだろう…っていう気持ちでもやもやする私に、残る言葉を与えてくれるような作品でした。

  • 飛鳥井千砂さんは、若い女性の日常の描き方がリアルで共感できて且つ、最後何となく勇気がそこはかとなく、日常の中で、出る、という作家だと思っていて。

    しかしこれは、なかなか主人公に共感できなくてー!
    という感情は、解説で見事に紐解いてもらえます。

    ラスト急に救われる、人の温かみを感じる、そこまで長い、、。

    #飛鳥井千砂 #砂に泳ぐ彼女 #読書記録

  • introduction───
    「はっくしょん!」
    大きなくしゃみが出た。鼻水がずるっと垂れてきそうになり、慌てて紗耶加は手で鼻と口を覆う。
    ─────────

    中盤、共依存寸前(というかもうそのもの)の恋人を断ち切ってからの解放感と躍動感が心地よくて一気に読み終えた。
    紗耶加をだめな恋愛から救いだしてくれるのが、恋人以外の男性ではなくて女友達の言葉であるところ、すぐに次の恋愛が始まって今度こそ恋も仕事もうまくいく…という展開にはならないところもいい。
    シンデレラストーリーではあるけれど、東京で自分の足で立とうと奮闘する女の子が女性に成長していく過程が丁寧に描かれている。

    2018年1冊目。
    紗耶加と圭介との関係性が変容していくあたりから、弟がどんな気持ちでこの本を貸してくれたのかを考えて申し訳ない気持ちになった。
    もしかしたら深い意味なんてなにもなく、ただ飛鳥井作品だから持ってきてくれただけなのかもしれないけれど。
    それでも、心当たりがありすぎて。

    倫世の言葉が胸に痛い。

  • 携帯ショップで働く女性が地元での生活に閉塞感を覚え東京に出てくる。女性が居場所を見つける物語だ。
    飛鳥井さんはやさしい表現だけど人間の嫌な部分をうまく描いてくる。本作でもいろんな人物の微妙に嫌な部分をいくつも見せられた。男としては締め付けられるような感覚も味わった。
    それでも、希望や救いのある結末にしてくれる。だからまた読みたくなる。

  • よくいるような普通の子が自分の人生を歩んでいくストーリー。主人公と年が比較的近いからかもしれないが、相変わらず飛鳥井さんは心情の動きを表現するのが上手い。途中、自分もモヤモヤとしてしまった。
    後書きを読んでスッとそのモヤモヤの正体が分かり、サーッとすっきりした。

  • やりたいこともなく流されるままの主人公が、心が動くきっかけとなったカメラで写真を撮る事を仕事にするまでの10年間。自分の意思で人生を生きていくことの素晴らしさを感じられた。

  • 時の流れの力と流れの残酷さ

    視点が彼女だから
    彼女の変化を感じられる
    彼女の舞台が変わっていく
    自分の意思で
    相手からの影響で
    活躍する舞台が
    生き方を選んだのか
    生き方を選ばせられたのか
    怒れるようになるって変わったよね

    では、
    彼女が出会った相手は
    どう変わっていくのだろうか
    変わっていかないのだろうか
    この視点で紡がれた物語
    何を視点にこの物語を紡いでいくのかで変わる世界

  • とても良かった。

    主人公は大学卒業後、地元の携帯ショップで働く紗耶加
    やりがいを見つける事が出来ず思い切って東京へ行き、そこで新しい職場、気の合う同僚、後に半同棲する彼との出会いがあります。
    そしてある出来事がきっかけでフォトグラファーの道に進みだします。

    秀逸だったのは紗耶加の人物描写
    仕事、恋愛、自分の将来に悩む女性の姿が丁寧にリアルに繊細に描かれています。
    全く同じではなくても紗耶加のエピソードと近い経験は誰もが通る道だと思います。
    ストレスからめまいを起こしたり、不安や寂しさ、焦りに悩む主人公が少しづつ成長し強くなって行く姿は本当に凛々しかった。

    幸せな余韻が残る作品です。

  • 言葉を大事に扱ってる感じがして好きでした。

  • まさにタイトル通り、砂という足場の悪い部分を足掻きながら進んでいく女性の10年間を描いています。

    はじめは砂に足を取られてすぐ身動きが取れなくなってしまう主人公ですが、次第に足腰がしっかりして進んでいくようになる姿を見ていると応援したくなります。

  • 最後ぐだったけど、面白く読みやすい作品だった。好きなことを見つけて、それを仕事にできるっていいな。仕事には、ならないまでも好きなことを見つけたい。

  • 紗耶加の25歳~35歳までの10年間の物語。
    派遣社員で働いている頃は、なんとなく弱弱しい(体力的にも精神的にも)感じがして、でもなんか付き合ってる人がいつもいて、なんかあんまり好きではなかった。
    社員となってからはたくましくなったけど、その一方でプライベートなことがあまり描かれなくなってしまい、もっと明るくハツラツとした面も見たかったというのが本音。
    でも明るい光がさしてる終わり方は好き。

  • 私自身がカメラを扱う仕事に就いており、テーマが身近なので興味を持ち手に取った一冊。

    最近はスマホの普及によって写真を撮ることが当たり前のように生活の一部になっているが
    カメラを構える人は減っているかと。
    カメラはいいぞ。
    なんてことの無い瞬間が少しだけ特別な意味を持ってくれる気がする。

    私にとって身近な題材でもあり、ひたすら主人公の女性にエールを送りながら読了。
    仕事に関してのヒキは持っていそうだが、恋人選びに難あり。

  • 主人公が、田舎から抜け出して、都会で生きていく。頑張って苦労して、それでも生きていくことってなんて辛いんだろうという感想。

  • 初めは、なんとも弱々しいサヤカに対し、同じ女として何故か苛立ちを感じてしまい、
    これ面白くなるの??という疑念をぶつけながら読み進め、
    ケイスケとの出会いに、何て幸せな女なんだ と、嫉妬すらしてしまった。

    しかし、読み進めていくにつれ、
    サヤカが様々な人と出会い、影響され、変わっていく姿に触れ、人との関わりの大切さを感じた。

    作中でサヤカが「運がいい」と言われているが、運がいいのではなく、自分の力(人との関わり方や、自分らしい生き方)によって、その時必要なものを引き寄せてるのではないかと思った。
    実際、私も必要なものを欲し、無意識のうちに自分の力を発揮している時には引きが良い気がしているため、考え方、生き様で人生は大きく変わるな、、としみじみ思った。

    20代後半〜30代の女性におすすめしたい小説でした。

  • 非常に読みやすい作品でした。

    主人公の女性が、色んな人との出会いと別れを経験しながら、葛藤し、必死に日々奮闘していく姿が綺麗に読み取れました。

    ちょっと異性との出会いが多くて羨ましいなと思いました(笑)。

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著者プロフィール

1979年生まれ、愛知県出身。2005年 『はるがいったら』 で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。11年に上梓した 『タイニー・タイニー・ハッピー』 がベストセラーとなり注目を集めた。他の著書に 『君は素知らぬ顔で』(祥伝社文庫) 『女の子は、明日も。』 『砂に泳ぐ彼女』 など多数。

「2021年 『そのバケツでは水がくめない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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