- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041050743
作品紹介・あらすじ
私のストーカーは、いつも言いたいことを言って電話を切る(「去勢」)。リサは、連続殺人鬼に襲われ生き残るというイメージから離れられなくなる(「ファイナルガール」)。戦慄の7作を収録した短篇集。
感想・レビュー・書評
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あのタイプの映画が本当に好きなのだなぁ。
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いつか見た、妙にリアルで奇妙な夢のよう。
そんな表現がよく似合う短編集です。
ほら、夢の中の自分って、目の前で起こるヘンテコな出来事を違和感なく受け入れてたりするじゃん?
各話の主人公の視点で物語を味わっていると、まさにそんな気持ちにさせられる。
冷静に考えれば狼や連続殺人鬼が襲ってくるなんて異常事態だしプファイフェンベルガーなんて俳優いないしストーカーが電話かけてきたら通報通報!!って感じなんだけど、主人公の淡々とした視点で見ると「あるかもしれない日常」に見えてしまう不思議。
足元がぐらつくような読後感でした。 -
この中の「プレゼント」という話で、家庭教師をしている大学生の男が教え子の16歳の女の子に、母親の誕生日のプレゼントを探すのに連れまわされる場面があるが、ほんとに全部そんな感じの話w
男だったら誰しもそんな経験あると思うけど、何だか妙にその時のことが思い出されて。
「あぁ~あ。せっかくの休日、家で寝てたかったなぁ~」なんて。
休日に家で寝っ転がって、この本読んでたっていうのにね(爆)
だからって、この本が面白くないわけじゃない。
とか言って、友人が読もうかどうしようか迷っていたら、「たぶん面白くないと思うよー」と言う気がするw
ところが、この本を読んでいて話の展開が気にならないかというと、全然そんなことはないのだ。
読みながら、「あぁ~あ。せっかくの休日、家で寝てたかったなぁ~」と(家で寝っ転がって)思いながら、「でー、この話、結局どうなるんだ?」とページをめくってしまう。
でもって、特にオチともいえない最後の行を読んで、また、「あぁ~あ。せっかくの休日、家で寝てたかったなぁ~」と、家で寝転がりながら思うと(爆)
読み終わった後に作家がどんな顔してるとか、普段興味を持つことないんだけど。なぜか、この著者については「どんな顔してんだろ?」と、ネットで見てみた。
そしたら、(ちょっと失礼な言い方かもしれないけどw)なんだか、本当に想像してた通りの顔で、「あー、やっぱり!」ってw
確か、映画館の話だったかの主人公(?)のイメージが、まるっきり知り合いの女性で。
あと、別の話(虫歯の子だったかな?)を読んでいたら、別の知り合いの女性が思い浮かんで。
ぶっちゃけ言っちゃうと、その2人を足して2で割ったような、そんな顔をしたのだ(失礼w)
とまぁ、それはそれとして、最初の「大自然」はなぜだかスゴく好き。最後の場面なんか、読んでいて本当に気持ちがいい。
あと、暴力というと男というイメージがあるけど、やっぱり女性も普通に暴力衝動があるんだなぁーっていうのを思った。
ていうか、3つ目の話のタイトル、「プッファイフェンベルガー」って、未だに覚えられない(爆) -
大人のおとぎ話のような不思議な短編集。
一つ目の話から、ん?????
となる。そして最後までずっと?で終わる。
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世にも奇妙な七つの短編集。一編を読み終わるたびに、何かの暗喩かと考えるけど、…あー…うん…?とちょっと意図を理解できなかった。
ただただ、ちょっと気持ち悪い世界を覗き見た気持ち。 -
非現実なのにずっと自然に受け入れられる、不思議な短編集
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世の中の人間は2つに大別される。藤野可織が好きな人とそうじゃない人である。理解できるとかできないとかじゃなくて、それはもう人間としての初期設定かもしれない。だんだん好きになるとかそういうことも無いかもしれない(あるかもしれないが)。でも読んだときに“好き!“と思う人とそうじゃない人は明確に分かれる気がする。描写における独特の表現や修飾の使い方、時間と空間の操り方、好きとしか言いようがない。小説家という人種は基本的にこれでいいと思う。平均⭐️は2.5から3.0くらいが大作家の条件だ。
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こういう、なんだか分かるような話を読んでいると、自分にだって書けるんじゃね?って気がしてくる。適当に文を連ねて、なんとなく。
でもまぁ適当にも思える文を書くのに適当にできるわけもなく、無礼講と言われて無礼講らしく振る舞うのがいかに難しいか、というレベルできっと大変なんだろう。しかもどこかの素人に適当にかけるんじゃね、とか思われるんだから、もうやってられんのかも。
まぁそんなこんなで、家に突然狼がやってきたり、ちょっと変な世界をふわりふわりと漂っているのは楽しいとか面白いとかちょっと違うけど、多分好きなんだな。 -
奇想小説とまではいかないまでも、ちょっぴり不思議な世界が描かれた7編が収録された短編集です。
短編集とはいえ1編1編がかなり短めで、1冊の合計が200ページ弱ぐらいしかありませんが、どれも繰り返し読みたくなるような密度の濃い作品ばかりが並んでいます。
いずれもいつの間にか非日常が日常を侵食する、といった趣ですが、著者は読者が「何となく納得できる」ところを突くのがとても上手いですね。村田沙耶香さんの解説にある通り、筋だけ聞くと荒唐無稽なように思えるのに、全体を読むと妙な納得感が残ります。
トップを飾るのはオフィス街の真ん中に造られた人工的なキャンプ場を舞台にした「大自然」。
本書中最小のページ数ながら、これが一番難解で、かつ読みごたえがありました。作中の「きもちわるいもの」の意味するところも興味深いですが、中盤で指導員が語った内容とラスト数行がリンクしている点が面白いです。
でも最初がこれだと挫折する人もいるだろうなあ・・・。
ストーカーを描いた2編目の「去勢」からは割と分かりやすくなるので、投げ出さずに読んでみて欲しいです。
収録作はどれも面白いですが、アクション俳優について語るうちにビルの屋上から戻れなくなった男女を描いた「プファイフェンベルガー」や、赤ずきんをモチーフにした「狼」、殺人鬼との生涯を通した戦いを描いた表題作「ファイナルガール」が特に印象に残りました。
デビュー作『いやしい鳥』の感想で「『世にも奇妙な物語』っぽい雰囲気」と書きましたが、本作もまさにそうでした。
もっと読みたい。 -
ふつうに小説を読む気持ちで読むと、はじめ物語の不思議さに???となる。笑
でも奇妙で現実的ではない話なのになぜか現実味はある。
特に印象に残っているのは「去勢」と「ファイナルガール」。
何年もストーカーに付きまとわれているのにさほど気に留めない女の子だったり、狼と戦ったり、一生のうちに何回も殺人鬼に出くわしてこれもまた戦ったり。
そんなことあるわけないんだけど、もしかしたらこういうこともあるかもしれないし、いるかもしれない人たち。
「爪と目」もそうだったけど、読み終わったあとのこのゾワっと感がクセになる。笑