やみ窓

著者 :
  • KADOKAWA
3.93
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本棚登録 : 38
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041050774

作品紹介・あらすじ

2年前に結婚し、夫と死別した柚子は昼間はコールセンターで働く シフト制で働くフリーターだ。義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。柚子が味わった地獄は、別の形となって続いていた。それは何の前触れもなく突然やってくる異界のものたちとの闇の取引だ。いつ蹂躙されるともしれない危険と隣り合わせだが、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子なのであった……。(「やみ窓」)
 月蝕の夜、「かみさん……」土の匂いのする風が吹き、野分の後のように割れた叢に一人の娘が立っていた。訛りがきつく何をしゃべっているか聞き取れないが、柚子を祈り、崇めていることが分かった。ある夜、娘は手織りの素朴な反物を持ってきた。その反物はネットオークションで高額な値が付き……。そんなとき団地で出会った老婦人の千代は、ネットオークションで売り出した布と同じ柄の着物を持っていた のだ。その織物にはある呪われた伝説があった……。(「やみ織」)
 ほか、亡き夫の死因が徐々に明らかにされ、夢と現の境界があいまいになっていく眩暈を描いた「やみ児」、そして連作中、唯一異界の者の視点で描いた「祠の灯り」でついに物語は大団円に。新人とは思えない筆致で細部まで幻想と現実のあわいを描き、地獄という恐怖と快楽に迫った傑作。

感想・レビュー・書評

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  • ★3.5

    くたびれた団地の窓の向こうから、かさり…かさり…と何かがやって来る。
    今夜も一瞬も気を抜けない闇の取引が始まる――。

    主人公の柚子は不幸な結婚の末に夫と死別し、今は昼間はコールセンターで
    働くフリーターだ。生活はとっても不安定。
    義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。
    そんな義母から逃げる為に、くたびれた団地に引っ越してきた柚子。
    三階に暮らす柚子だが、その窓は異界に繋がっていた…。
    何の前触れもなく突然やってくる異界の者たちとの闇の取引。
    危険と隣り合わせだか、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子だった。

    普通の団地の窓がどことも知れない異世界に繋がる不思議なシチュエーションの物語。
    読み進むにつれ、やがて訪れる彼らもまた人間であり、
    過去に住む人々らしいという事がわかっていく。
    しかし、貧しい生活を送る人々にとっては柚子の容姿や部屋の内部は異世界で、
    それゆえに柚子を神とみなし、あがめ始める。
    普通の女性に感じる柚子のしたたかさや強さにも驚いた。
    昔話や伝説や怪談ってこんな風に始まったのかもって思った。
    最後の章で異世界の人の視点での物語は切なかったなぁ。
    もっと物語が膨らむんじゃないかって感じた事が少し残念でした。

    怖さよりも幻想的で不思議さと切なさを感じる物語でした。

  • どうしても「幽」関連書籍は気になる作品多いんだよな~~。
    窓の向こうから現れる奇怪な者ども・・・現実では冴えない傷付いたアラサーバツイチ独身女、ペットボトルに真夜中の来訪者・・・発想がいいなあ。
    そしてラストの短編は・・・せ、切ない・・・ずるい・・・。

  • 派遣社員として週に何日かだけ働く36歳の柚子。2年前に結婚した夫と死別、現在一人暮らし。
    古ぼけた団地でひっそりと、息をするだけのように暮らしているのは幾つかの理由があった。
    転居しても追ってくる人物、悪夢のような思い出。そして夜には窓をほとほとと叩く音が…。

    柚子の部屋の窓は、夜の一時だけ見知らぬ場所へと通じる。そして得体の知れない者達が品物を手に訪れるようになった。
    不思議な取り引きを描いた表題作と、それに連なる物語が描かれた連作短編集です。
    ホラーというほど怖くない、怪談というほど不気味でもない。幽玄という言葉がぴったり。
    得体の知れない者達とのやりとりも面白いし、品物の行方や柚子の過去なども興味深い。
    不条理すぎず、しつこくなく、丁度良い塩梅。不思議な話が好きな方におすすめの一冊です。

  • 淡々とした中から異世界への交流の緊迫感が伝わってくる。終盤に向けて現実と窓の向こうに細い糸のような繋がりが見えてきてからは圧巻。最後に収録された話は少し切なく読後感も少しの余韻を残して気持ちよかった。

  • 夜になると古アパートの窓を訪れる異界のものたちと物々交換をすることで生計を立てる柚子。柚子の側からすると怪しく危険な異界の人々だが、異界の人たちから見た柚子は神様にも山姥や鬼にも見えて崇めたり恐れたりするという関係が面白い。昼の柚子の停滞した日常も丁寧に描かれ、窓の外と関わることで、柚子がどう変わっていくのかが気になる。
    上品で丁寧な描写、ものがなしい雰囲気は好み。

  • 苦手な分野の本。元夫との回想のシーン、義母の罵り。窓の外の者達との会話。もぞもぞ、ボワボワする感じ。でも、読むのもやめられない。

  • 幽文学なので怪異、面妖な短編集
    こちら側とあちら側では、比べられないしどちらも辛いということなのか、もやもやする感じ

  • ベランダの向こうに繋がる別の世界。すごく好みの話し。

  • 冬の夜に読むのにとても良い本だった。

    タイトルと、幽文学賞を受賞、ということだけ前情報に入れて読んでみたら、まったく予想していなかった物語が始まって一気に引き込まれてしまった。
    そして文章、言葉選びがとても綺麗。

    異界視点の最後の章でまた主人公の像が変わった。
    もっとこの窓での物語が読みたいと、強く思います!

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プロフィール

しの・たまき●秋田県出身。東京都在住。エディトリアルデザイナー、イラストレーターを経て、実用書作家、取材ライターとして活動中。執筆した実用書には海外にて翻訳出版されたものもある。試みに執筆した携帯小説に手応えを感じて「幽」文学新人賞に応募。第10回「幽」文学賞短篇部門にて「やみ窓」で大賞受賞。本書が小説の単行本デビュー作となる。

「2016年 『やみ窓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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