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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784041050774
作品紹介・あらすじ
2年前に結婚し、夫と死別した柚子は昼間はコールセンターで働く シフト制で働くフリーターだ。義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。柚子が味わった地獄は、別の形となって続いていた。それは何の前触れもなく突然やってくる異界のものたちとの闇の取引だ。いつ蹂躙されるともしれない危険と隣り合わせだが、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子なのであった……。(「やみ窓」)
月蝕の夜、「かみさん……」土の匂いのする風が吹き、野分の後のように割れた叢に一人の娘が立っていた。訛りがきつく何をしゃべっているか聞き取れないが、柚子を祈り、崇めていることが分かった。ある夜、娘は手織りの素朴な反物を持ってきた。その反物はネットオークションで高額な値が付き……。そんなとき団地で出会った老婦人の千代は、ネットオークションで売り出した布と同じ柄の着物を持っていた のだ。その織物にはある呪われた伝説があった……。(「やみ織」)
ほか、亡き夫の死因が徐々に明らかにされ、夢と現の境界があいまいになっていく眩暈を描いた「やみ児」、そして連作中、唯一異界の者の視点で描いた「祠の灯り」でついに物語は大団円に。新人とは思えない筆致で細部まで幻想と現実のあわいを描き、地獄という恐怖と快楽に迫った傑作。
感想・レビュー・書評
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未亡人の部屋には異界に続く窓がある。ペットボトルと物々交換,法も秩序もない闇窓の取引。平太の最後にとった行動に愛があり,救いを感じる。柚子には山姥伝説を変えて欲しい。
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夜な夜な異界に繋がる摩訶不思議な窓を持つ家に住む柚子
どこの誰かも分からない者たちとの夜の取り引きは訛が強いこともあって意思疎通が難しいことも多々ある
ファンタジーかと思いきやがっつりホラー
やみ窓は物語の入り口という感じで、全部で短編が四作入っています
祠の灯りはホラーなんだけど悲しみと切なさも感じた
どちらにとって闇なんだろうか
しかし忍びよってくる感じがひたひたと怖い
私なら1度目以降は絶対窓は開けないし、すぐに引っ越してしまいそうだ〜 -
冬の夜に読むのにとても良い本だった。
タイトルと、幽文学賞を受賞、ということだけ前情報に入れて読んでみたら、まったく予想していなかった物語が始まって一気に引き込まれてしまった。
そして文章、言葉選びがとても綺麗。
異界視点の最後の章でまた主人公の像が変わった。
もっとこの窓での物語が読みたいと、強く思います! -
気持ち悪い書き方、上手。
最後まで面白かった。
ファンタジーなのにリアリティ。
異界なのか過去なのか、いつか山姥になるのかなぁ。 -
はい、面白い!
腰高窓の網戸を叩く音がすれば、そこには畏敬の念を抱く異世界の住人がこちらを覗いているかもしれない。そしてその者たちとの闇取引にハマってしまう、現実世界を諦観し憂いを纏った柚子。この発想と雰囲気が良い。
飲み終わったら結構かさばるゴミになってしまうペットボトル。確かに昔にあれば重宝されるだろう。映画「コイサンマン」を思い出した。
今回で最後のとなった第10回『幽』文学賞、短編部門大賞受賞作を単行本化した本書。先に『人喰観音』で蠱惑的な魅力にハマってしまっていた篠たまきさん著。新作お待ちしてます! -
どうしても「幽」関連書籍は気になる作品多いんだよな~~。
窓の向こうから現れる奇怪な者ども・・・現実では冴えない傷付いたアラサーバツイチ独身女、ペットボトルに真夜中の来訪者・・・発想がいいなあ。
そしてラストの短編は・・・せ、切ない・・・ずるい・・・。 -
今もあの祠にあるのかもしれない。
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パートタイマーの柚子は夜闇の中、窓が異界につながるのを待っている。
表題作で第10回 幽文学賞短篇部門 大賞受賞。
窓の向こうが異世界に繋がっているというファンタジーのような設定でありながら、暗くてあまり他にない話だった。
異界がやってくる様子、闇の取引、雰囲気たっぷりの描写が好き。デビュー作なのにすごいですね。
元は長編だった一部を短編としたそうです。受賞がなければ、1冊の本として読めなかったので、最後の幽文学賞に感謝です。 -
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異界に繋がる窓から珍しいものを仕入れ、生計をたてている女の話
どうにもならない閉塞感が心地よい
読後感は切なめ
散々な状況にあるヒロインが、ようやく誰かに大切に扱われて良かったと思った
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人喰観音が面白かったので。
最後まで読んで、これがデビュー作だと知った。
本当にデビュー作?面白すぎる。言葉選び、書き方、世界観、ぐっと惹き込まれた。
人喰観音もだけど、ぜひシリーズ物として読みたい一作だった。この世界観で書かれている小説が、この一冊しかないのが辛い。いくらでもどのようにでも広げられると思う。 -
思ってた怖さと違うけど
不気味でなかなか無い小説内容でした。
個人的にはちょっと読みづらい文面でしたが
飽きずに読めました -
「幽」文学賞短篇部門大賞受賞作品。一人でひっそりと暮らす女性が、夜の窓辺で行う取引。日常と異界とのあわいの怪異を描いた、緩やかな不安と少しの穏やかさを感じさせられる作品です。
窓の外の異界からやってくる者たちに対する恐怖、というか警戒心にぴりぴりさせられる一方で、現実世界よりもむしろそちらの交流に寄りかかってしまう柚子の心情がわからないでもない、かも。もちろんそちらの収入の方が重要というのもあるけれど。勝手に恩恵だの祟りだのを与えられると思い込み、神として崇めたり物の怪として恐れたり、そんな者たちにとって自分の存在が良くも悪くも「特別」なのだということがある意味魅力的だったのではないのかな、などと思える部分があったり。その一方で自分がなにものなのかがわからない曖昧さもまた、心地よいことのような気もします。
現実に辟易していた彼女が魅入られた異界は、決して恐ろしいだけのものではなかったのだなあ、と心底思ったのは最終話の「祠の灯」。どちらにとっても安らぎであった繋がりが、実に優しく印象的でした。 -
フォローしている方の本棚にあって、気になったので借りてみました。
面白かったです!
一気に読んでしまいました。短編連作なんですが
続編が読みたいほどのお気に入りです。
夏休み、バタバタしている最中にサッと読んだきりなので
(あっという間に貸し出し期限になってしまった。(;´▽`A``
9月に入って落ち着いたら、また図書館で借りてきて読みたいです。
作家読みしてみたい、そんな作風でした。 -
結婚後数年で夫と死別し、寂れた団地で暮らす女性が、窓を通して異界とつながる連作短編集。
団地の窓が時おり異界に通じるという怪談的な怖さのなかにも、ペットボトルと物々交換するなどやけにリアルな部分もあり、そのちぐはぐさに独特の浮遊感のある表題作はよかった。その後は、嬰児の遺体などグロテスクなものが加わって、生理的に受け付けない。
暑くなってきたので涼しげなものをと思い図書館で借りてみたが、擬音の多用や直接的な気味の悪いものを突きつけられるより、雰囲気で怖がらせてくれる作品のほうが好き。 -
古く、くたびれた団地に隠れるように一人住む30代なかばの女性柚子。
彼女の部屋の窓は、夜な夜な異界との通り道となる。
異界の者との夜の取引が彼女の生業となっていく。
そこには、異界のものと柚子の悲しい物語があった。
4編の短編集。 静かな悲しい物語。 堪能しました。 -
派遣社員として週に何日かだけ働く36歳の柚子。2年前に結婚した夫と死別、現在一人暮らし。
古ぼけた団地でひっそりと、息をするだけのように暮らしているのは幾つかの理由があった。
転居しても追ってくる人物、悪夢のような思い出。そして夜には窓をほとほとと叩く音が…。
柚子の部屋の窓は、夜の一時だけ見知らぬ場所へと通じる。そして得体の知れない者達が品物を手に訪れるようになった。
不思議な取り引きを描いた表題作と、それに連なる物語が描かれた連作短編集です。
ホラーというほど怖くない、怪談というほど不気味でもない。幽玄という言葉がぴったり。
得体の知れない者達とのやりとりも面白いし、品物の行方や柚子の過去なども興味深い。
不条理すぎず、しつこくなく、丁度良い塩梅。不思議な話が好きな方におすすめの一冊です。
著者プロフィール
篠たまきの作品
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