家と庭

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 175
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041051436

作品紹介・あらすじ

中山望は、桜やバラやひまわりなど四季折々の花が咲く庭のある家で、母と姉と妹と暮らしている。大学を卒業して2年以上が経つけれど、就職する気にならないまま、マンガ喫茶でアルバイトをする日々だ。ある日、上の姉が娘を連れて帰ってきて、女5人との生活が始まる。家族や幼なじみ、バイト仲間と過ごす時間は、“何も望まない”望を変えていく――。
海の底のようなバー、神出鬼没の烏天狗、工事がつづく駅。
抜け出せなくなる町で暮らす人々の、色鮮やかで愛すべき日常。

感想・レビュー・書評

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  • 下北沢に住む一家の話。
    家と庭? つまりは、家庭ですね。

    下北沢と言えば、駅前には小劇場や古着屋など、若者文化の世界があるところ。
    にぎやかな街を抜ければ閑静な住宅街。
    そういう羨ましい環境に家がある中山望は、24歳のフリーター。
    学生時代から続けているバイトをしているだけで、これでいいのか、迷いつつも行動には出ません。

    父は単身赴任、祖母は入院中、母が一家を支える存在。
    次姉の文乃はおとなしく、わけあって一人で電車やバスに乗れないのです。
    やや気ままな妹は、もうすぐ受験。
    そんなところへ、勝ち気な長姉の葉子が突然、娘を連れて戻ってきます。
    女ばかりに囲まれる長男・望は、さて?

    家族の仲は良く、出ていくのが難しい環境かも‥
    一人一人にじつは悩みもありますが、さほど深刻ではないかな。
    バイト先の店長や後輩、長姉の夫、姪の先生、幼馴染‥
    互いに少しずつ関わりながら、ゆるやかにゆるやかに変わっていく‥
    大したことが起こらない、でもある日ふっと物事が動くリアリティ。
    望くんも、じっとしてはいられませんよ?(笑)

    すべてが理想通りというわけじゃなくても‥
    これでいいのかもね。
    という穏やかな気分になりました。

  • 下北沢駅南口、小劇場があつまり、雑貨屋や古着屋、若者でにぎわう界隈を抜けると、閑静な住宅街になる。
    季節ごとの花が咲き乱れる庭と、赤い屋根の、屋根裏部屋がある中山家は、土地持ちの資産家で、アパートもいくつか持っている。
    中山望(なかやま のぞむ)24歳。
    大学時代から、マンガ喫茶のバイトを7年続けている。
    家も土地もいずれ自分のものになると思うと、真剣に就職活動する気になれないし、やりたいこともわからない。
    …という、いけ好かないヤツ(笑)である。
    上の姉・葉子(ようこ)29歳は、娘を連れて出戻ってきた。
    下の姉・文乃(ふみの)25歳、わけあって一人で電車やバスに乗れない。
    妹・弥生(やよい)もうすぐ受験。
    父、インドネシアに単身赴任、母は宝塚好き、祖母は入院中。
    他にも登場人物多く、なかなか覚えきれない。

    中山家の姉妹たちをはじめ、人との距離の取り方が、絶妙で微妙。
    それでうまく行っているのかもしれないが、心のうちはわからない。
    章ごとに入る、かわいいハリネズミのアイコンは、葉子の娘のメイが飼っている“ハリー”と思われるが、登場人物たちの抱える「ハリネズミのジレンマ」の象徴かもしれない。

    中山家の持つアパートの住人、林太郎は、望のバイトの同僚で、役者志望というのが下北沢らしい。
    この子が一番健全な精神の持ち主な気がするなあ~

    下北沢は、若者にとって居心地のいい場所、いつまでも夢を見ていられる場所、ダメな人間に優しい場所。
    それゆえに抜け出せない焦燥が募る。
    同じく、不自由のない家の中も、ゆるい檻である。

    登場人物がやたら多いのも、ああ、そうなるのね、という納得。
    結局、望は、大黒柱というある意味人柱の道を選ぶ。
    いろいろなことが“ナレ死”的な感じで知らないうちに進行しているのは、登場人物が多いせいなのか、主人公の望が、女たちの蚊帳の外に置かれているせいなのか。

    身勝手と思える行動をとる人物が多いのは、これが現実なのかもしれないが、姉・葉子の別居の動機が、個人的に納得できない。
    子供がいなければ、そういうお花畑な発想も構わないが、幼稚園児の娘を振り回すに足る理由なのだろうか?
    烏天狗は独りの子供を見かねた商店街のおっちゃんか何かじゃないの?

  • 下北沢に古いながらもアパートを持つ地主の女系家族の一人息子として育った望は、大学卒業後も定職に就かず、学生時代からのアルバイト先である漫画喫茶で受付をして日々を過ごしている。
    勝気な長姉、臆病な次姉、やや勝手気ままな妹に、入院中だが存在感のある祖母、家族を温かく支える母親(父親は海外赴任中)といった仲の良い家族に囲まれて、実家を出ず、居心地のいいぬるま湯につかっている望をはじめとする登場人物たちが自分の将来を模索する姿を描いている。

    どんなに好きで居心地がよくても、逆にどんなに問題があっても、時間というのは平等に移ろって変わっていくんだな、という当たり前のことをふと思った。

  • 下北沢が舞台という事で読んでみました。
    本当に、まんま下北の中の話。父親は海外に単身赴任中。
    母と3姉妹&幼稚園の姪っ子と暮らす主人公、望。
    幼馴染やバイト先のオーナー、バイト仲間(弟分的な)、憧れの英語の先生、よく行くバーのマスター。
    登場人物も様々で、中心はもちろん望の家で、家の中を四方からいろんな風が通り過ぎていく感じ。

    最後はみ~~んな良い方向へ旅立ってしまい望だけ家に残る。
    いつでも誰かが戻ってきてもいいように、彼が家主となって守っていく家。
    なんか面白かったな~

  • 大学を卒業しても定職に就かず漫画喫茶でバイトを続ける望は、姉と妹と母親と共に下北沢の閑静な住宅街にある庭付きの家で暮らしている(父親はインドネシアへ単身赴任中)。そこへ、結婚して品川で暮らしているはずの長女が娘と共に帰ってきた。圧倒的な女系家族の中で屋根裏部屋に追い立てられてもそれなりに快適な望だったが…。

    常に社会や自分と闘い疲れている女たちを、男たちが柔らかく受け止める。登場する男たちがどいつもこいつも優しくて受け身で頼りないのがいかにも今っぽい。

    主人公の望はとても人柄がいい。おっとりと育ちが良く、順応性があって思いやりに満ちている。でもこれでは彼氏にしたいとは思えない。相談や愚痴を聞いて貰うお友達止まりだ。

    望の家では、来客が帰る時には手の空いている人がみんな玄関に出てきて見送る。お母さんはエプロンで手を拭きながら、妹は食べかけのおやつで口をもぐもぐさせながら。暖かなこの家族の中にいたら、なかなか出ていけないだろう。でもそんな居心地のいい家を作っているのはお母さんだ。定期的に宝塚を見に行くのは、家という仕事場所からの逃避なのだろう。

    読みながらなんとなく『海街diary』の雰囲気に似ているなと思った。家族それぞれに葛藤があって、悩みを町の人たちも知っていて、噂はすぐに広まるけれど話してはいけない事は本人の耳には入れない思いやりもある。海街diaryならぬ下北diaryといったところか。

    冒頭で、望たち一家が暮らす家の場所が明かされている。
    “下北沢の駅の南口を出て左に行き、スーパーのオオゼキの前で右に曲がり、まっすぐに進んで茶沢通りを渡って、CDショップのディスクユニオンの手前で緩やかな坂道を上っていくと、桜や紫陽花やバラに隠れるように、一軒の家が建っている。”
    グーグルマップでこの通りに道を辿っていくことが出来るが、赤い屋根に白い壁で屋根裏部屋がある家は見つけられなかった。

  • 生まれも育ちも東京のわたしからしてみたらやたら親近感わく話だった。抜け出せなくなるってわかる。抜け出せなくても生きていける環境、生きやすい環境の中であえて抜けたいと言った弥生は強いなと思ったし、女に囲まれて生活する望はきっと優しいだろうなとか、本当に近い家族の話で面白かった

  • ちょっと前に吉本ばななさんの下北沢にてを読み、実際に下北沢で働く人にも聞きましたが、下北沢という地域にはまると抜けられなくなりそうとのことです。商店街、飲食店、映画に芝居に音楽、狭い範囲に全てが揃っている。そんな街シモキタを舞台にした家族の物語。

  • 畑野さんの作品は4作目ですが、いずれも楽しく読ませてもらっています。

    フリーターの望は、資産のある実家住まい、バイトの最古参になり、オーナーとバイトの掛け持ちをしている。そんな望の実家に一番上の姉が姪をつれて帰ってくるところから物語は始まります。

    入院中の祖母、家に安心を与える母、破天荒な上の姉、過保護に育てられた二番目の姉、受験を迎える多感な妹、姉の連れ来た姪、姪の通う英語教室の教師、そして、幼馴染の女性と、女性中心に育てられながら、成長していく姿が面白い。
    決して、波のあるストーリーではありませんでしたが、読んでよかったなって思える作品でした。

  • はじめての作家さんの本です。

    下北沢に住む、土地持ちの家のお坊ちゃんは、成人した後も二人の姉と妹一人に囲まれ、なんの苦労もなく、これでいいのかと思いつつもバイトしながら日々を過ごしています。

    里帰り中の長女、姪、幼なじみや、バイトの後輩。
    家族を中心に身近な人たちとの関係や状況も変化していき、大きな事件があるわけではないのに全く飽きず、楽しく読めました。

  • 相手との間合いというか接し方。慮りすぎてひきすぎる場合もあるけれど著者が描くこのあたりの感覚(間隔)はきらいではない。物語も必要以上にまとめようとせず流れるままに閉じられている。
    父親海外単身赴任中、母、三人姉妹一息子の5人家族と彼女彼らの周りの人たちが織りなす物語。
    向田邦子さんの小説を読み返したくなった。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年『国道沿いのファミレス』で第23回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。13年に『海の見える街』が、14年に『南部芸能事務所』がそれぞれ吉川英治文学新人賞候補となる。ほかの著書に『夏のバスプール』『感情8号線』『罪のあとさき』『タイムマシンでは、行けない明日』『家と庭』『消えない月』『シネマコンプレックス』『大人になったら、』などがある。

「2018年 『水槽の中』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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