惑星カロン (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041051993

作品紹介・あらすじ

喧噪の文化祭が終わり三年生が引退、残った一、二年生の新体制を迎えた清水南高校吹奏楽部。上級生となった元気少女の穂村チカと残念美少年の上条ハルタに、またまた新たな難題が? チカが試奏する“呪いのフルート”の正体、あやしい人物からメールで届く音楽暗号、旧校舎で起きた密室の“鍵全開事件”、そして神秘の楽曲「惑星カロン」と人間消失の謎……。笑い、せつなさ、謎もますます増量の青春ミステリ、第5弾!

感想・レビュー・書評

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  • チカちゃんが明るくて元気いっぱいで、真っ直ぐな女の子だから、このシリーズわたしは読むことが出来てる。
    とても心に突き刺ささる終わり方の短編がシリーズ通して多々あるので、わたしはチカちゃんがいることで救われてる。
    それは謎が解けたあと「あーよかった」ってなることは稀でヒリヒリした傷跡が残ることの方が多いように思えるから。(わたしだけなのかもしれないけど…)
    ハルタをはじめとする吹奏楽部の部員や先生、彼女に関わってきた人たちもそうじゃないのかな。
    もしかしたらそれは。
    いろんなことを考え感じ、時に挫折したり。一生懸命に部活に向き合ったり。好きな人のことで悩んだり。そういう時間がかけがえのない宝物になる時代、高校生だからこその必要な痛みなのかもしれない。そういう感情に向き合うことが大切で、向き合うことが出来る最後の時間が高校生なのかな、なんて思ったりした。

  • 2021年現在、ハルチカシリーズの最新シリーズ。部活・推理・青春の自分にとってのストライクゾーンな作品であるが、今回はAIや亡くなった人の記憶の話など裾野の広い物語だと思った。そしてその回で、大人達がキャラクター達に大人達の話に介入させないようにするところがリアルだと思った。またこれからのストーリーも書籍化が楽しみである。

  • シリーズ5作目。
    盛りだくさん過ぎてちょっと消化不良。
    草壁先生が少しずつ過去と向き合いはじめた。

  • ハルチカシリーズ5作目。これもでも十二分に青春ミステリをしていたシリーズだけど、この『惑星カロン』でよりハルチカが、青春ミステリの“決定版”と言われるに足る作品になってきたと感じます。

    イントロダクションから始まり、短編4つが収録されています。このイントロダクションから、ちょっといつもと雰囲気が違う感じがする。ところどころの言い回しはチカらしい、ユーモアの含まれる話し言葉なのだけど、一方で過ぎ去っていく青春への郷愁と、伝えたい想いというものがあふれている。まあ、ここでしんみりしていると次に収録されている短編「チェリーニの祝宴」の冒頭でズッコケてしまうのだけど(笑)

    呪いのフルートの謎をめぐる「チェリーニの祝宴」
    音楽暗号の解読に挑む「ヴァルプルギスの夜」
    朝、学校に来てみると部室棟の部屋の扉がすべて開けられていた謎に挑む「理由(わけ)ありの旧校舎」
    ネット上で語られる人間消失の謎が描かれる表題作「惑星カロン」と今回も謎は様々。そして今回の謎はいずれも、青春の要素がより濃くなっているように思います。

    「チェリーニの祝宴」では自分のフルートの実力に限界を感じ始めたチカの心情が、物語中で描かれ「ヴァルプルギスの夜」では、部活における練習風景の今昔、そして部員間での部活に対する温度差が物語のキーワードとして作用する。
    「理由(わけ)ありの旧校舎」は学生だからこそのノリや楽しみみたいなものも感じられ、そして「惑星カロン」では、これまで突っ走ってきたチカが、知り合った中学生とのやり取りを通して部活の引退や、次の世代のことにも想いをめぐらせる。

    「惑星カロン」は特にシリーズとしても重要な短編になってきそう。チカの心情の変化ももちろんですが、これまで謎に包まれていた吹奏楽部の顧問、草壁先生の謎も少しずつ明らかになっていきます。そしてこの短編集を結ぶトリの短編としても良くできています。
    「惑星カロン」のテーマの一つが、会えない人への想いだと思うのですが、それが「惑星カロン」の前に収録されていた三つの短編のエピソードを拾い集めることで、テーマ対する感動をより深めていく。とにかく伏線の回収が、本当に鮮やかでそれを感動につなげる手腕は、本当にすごかった。

    ハルチカたちのコメディ的なやりとりと、感動や切なさ。読み終えてみると、毎回この二つを両立させるハルチカシリーズのすごさと特異さを感じます。ミステリとしてはもちろん、チカの心情の変化、そして草壁先生の過去とシリーズ全体の行方も気になってくる作品でした。

  • ハルチカシリーズ第5弾。

    ▼収録作品
    「イントロダクション」
    「チェリーニの祝宴」
    「ヴァルプルギスの夜」
    「理由ありの旧校舎」
    「惑星カロン」

    それぞれ独立したお話ではあるものの、リンクする部分もあって、見つけるとおおっ、と嬉しくなる。こういう仕掛け、大好き。

    “ずっと同じじゃいられない。高校生活の時間は着実に流れている。”

    このチカのモノローグが切ない。
    自身の感情の変化を認めるチカ。普通、そういう負の感情には目を背けてしまいたくなるものだけど、ちゃんと向き合えるチカはやっぱりすごい。

    そして。謎めいていた草壁先生の過去が少しだけ垣間見えた。
    止まってしまった時計を進めるために、一歩踏み出すことを決意した草壁先生。

    ハルタの「あと何年、南高吹奏楽部の船長でいつづけてくれるか」というセリフがぐっと現実味を増してくる。さすがにハルチカの最後の夏まではいてほしい、と思うが……。

    重くなりがちなお話も、ハルチカのやりとりに救われる。この巻はチカママと成島さんのセリフにも笑えた。

    次回はやっぱり、片桐や日野原の卒業が描かれるのだろうか? (スルーだったら寂しいような……。) もし描かれるとしたら、ブラックリスト十傑も全員は明かされていないし、一筋縄ではいかないだろうなあ。というか、ハルタとチカが巻き込まれるのは必至。
    新メンバーも入るし、勝負の夏に向けてどんなことが起こるのかとても楽しみ。


    ブクログさんより献本でいただきました。感謝感謝! です。

  • 感想
    新しい組織。今までできていたことができない。だけど新しい力が芽吹くチャンスでもある。彼らも新たな謎に取り組む。次の結末に向かって。

  • 短編だけど1話目に4話目の伏線があるという、単話でも十分楽しめるけど、4話通してこその楽しみがこのハルチカシリーズのすごいところ。

  • 四つの短編が上手く伏線を張り、最後の「惑星カロン」へ集約されていく/ 一冊の本として読むととても良くできていると思った/ 総銀のフルート、吹奏楽部合奏部軽音楽部で解く音楽暗号、旧校舎鍵解放事件の携帯文章予測変換、これらのエッセンスをすべて入れて惑星カロンが完成している/ 吹奏楽とまったく関係ないような人工知能のご高説も分かりやすくよく書けている/ 良かった/ 内容と関係ないが「……」のあとに句点を打たないのはなぜなのか/

  • 穂村千夏
    清水南高校二年生。春太との複雑な三角関係に悩んでいる。

    上条春太
    清水南高校二年生。ホルン奏者。完璧な外見と明晰な頭脳を持ち主だが・・・

    草壁信二郎
    清水南高校の音楽教師。吹奏楽部顧問。謎多き二十七歳。

    マレン・セイ
    清水南高校二年生。中国系アメリカ人。サックス奏者。

    成島美代子
    清水南高校二年生。中学時代に普門館の経験を持つオーボエ奏者。

    芹澤直子
    清水南高校二年生。クラリネットのプロ奏者を目指す生徒。チカとかかわるうちに入部を決意。

    檜山界雄
    清水南高校一年生。芹澤の幼なじみ。あだ名はカイユ。

    後藤朱里
    清水南高校一年生。同級生の部員たちを牽引する元気娘。バストロンボーン奏者。

    山辺真琴
    高名な音楽家、故・山辺富士彦の孫娘。全国を放浪中、草壁信二郎に呼び出される。彼女も、また、謎多き二十七歳。

    上条南風
    上条春太の姉。上条家三姉妹の長女。

    岩崎浩二
    藤が咲高校二年生。全国レベルの吹奏楽部部長。

    名越俊也
    清水南高校二年生。演劇部の部長。過去、マレンを取り合って吹奏楽部と即興劇勝負をしたことがある。ブラックリスト十傑の一人。

    麻生美里
    清水南高校二年生。地学研究会の部長。ヘルメットを被る美少女。カイユの復学と吹奏楽部入部に関与。ブラックリスト十傑の一人

    日野原秀一
    清水南高校三年生。元生徒会長。生徒会執行部がマークしているブラックリスト十傑の監視役の引き継ぎをチカとハルタに行おうと画策中。

    マンボウ
    裏社会の住人。チカとハルタの前に立ち塞がる最大の敵、なんてことはない。かつての部下のことが夢に出て、ときどきうなされている。


  • 【再読】ハルチカシリーズ第5弾。”呪いのフルート”の正体や音楽暗号の解明。旧校舎での“鍵全開事件”を解いて、最後にフルート二重奏『惑星カロン』と人間消失の謎。エピソードが相互に絡み合うこれまでとはちょっと趣の異なる展開でしたが、いつものようにいずれも解き明かされた後に、切なかったり苦かったりそれぞれ違った読後感があるのが良かった。そして今回はハンドルネーム・チカママさんの存在感が大きくって笑ってしまった。"あばれはっちゃく"ネタなんて、今どき誰が分かるんだろう。

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著者プロフィール

1973年静岡県生まれ。法政大学卒業。2002年『水の時計』で第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。著書に『1/2の騎士』『退出ゲーム』がある。

「2017年 『ハルチカ 初恋ソムリエ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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