- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041052136
作品紹介・あらすじ
『彼女は、天才画家にして名探偵。』
彼女に出会ったその日から、僕の人生は変わった。
絵画で謎を解き明かしながら僕は知る、その喜びと苦しみを。
画廊の息子で幼い頃から画家を目指している緑川礼(僕)は、期待外れな高校生活を送っていた。友人は筋肉マニアの変わり者一人。美術展の公募にも落選続きで、画家としての一歩も踏み出せず、冴えない毎日だった。だが高校生活も半ばを過ぎた頃、僕は学校の絵画損壊事件の犯人にされそうになる。その窮地を救ってくれたのは、無口で謎めいた同学年の美少女、千坂桜だった。千坂は有名絵画をヒントに事件の真相を解き明かし、それから僕の日々は一変する。僕は高校・芸大・社会人と、天才的な美術センスを持つ千坂と共に、絵画にまつわる事件に巻き込まれていくことになり……。
ルネ・マグリット『光の帝国』、ジャクソン・ポロック『カット・アウト』、パウル・クレー『グラス・ファサード』など有名絵画が多数登場!(カラー口絵付き)
絵画をヒントに、美術にまつわる事件の謎を解け。「才能」をめぐる、ほろ苦く切ない青春×アートミステリ!
感想・レビュー・書評
-
天才少女と天才になれなかった画商の息子が絵画にまつわる謎を解き明かすお話。
主人公が腐らずに生きてゆくのが良かった。絶対腐っちゃう…この状況…。でも相手が圧倒的だとその感覚も中々難しいのか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
爽やかで微笑ましくってちょっと苦々しい青春ミステリ。さまざまな絵画に絡む謎の解明がミステリとしての読みどころなのはもちろんですが。画家を志す主人公が、圧倒的な才能を持つ彼女に抱く恋心と羨望と尊敬、そして嫉妬の念にどのような決着をつけるのか。その物語の部分も気になってぐいぐい読めました。
夢を持つ者にとって、才能って残酷だなあとは思いますが。それよりもまず、自分が何をしたいのか、どうなりたいのか、が大事なのでしょうね。それを見失うと残念なことになりそうなので。彼らのこの選択は素晴らしいこと。千坂の申し出はたしかに魅力的だけれど、それに乗っかってたら二人とも幸せにはなれないよね。
ミステリとしての部分も各話の謎がそれぞれで解かれて終わりかと思ったら。まだまだこんな仕掛けが! やられたなあ。 -
これは良かった。「謎解き+美術+青春」という三つの要素が実にうまく絡み合っていて、読みごたえがある。三要素それぞれが、皆きっちり構成されていて引きつけられた。
四つの章で提示される謎は、どれも不可能犯罪。しかも終章でさらに…、いやいやこれはお見事。主人公は画廊の息子で画家を志しているという設定で、事件は皆絵画がらみだ。謎解きのポイントとなる絵画は実在の有名なもので、そこもよくできていると思った。結構数多く挟まれる、美術関連の注釈も楽しい。
主人公は比較的普通だが(比較的、ね)、彼の友人とヒロインはかなり変わっている。あまり突飛な人物設定は苦手なんだけどなあと思いつつ読んでいったが、知らないうちに馴染んで違和感がなくなり、最後にはみんな好きだなあと思えた。イヤなヤツも出てくるけど(第1章がちょっとつらい)、読後感はとてもいい。この著者の長篇は初めて読んだが、他のも読みたくなった。 -
芸術ってなんだろう。主人公の(作者の?)熱い想いに触れて、絵を見に行きたくなった。桜ちゃんかわいい
-
似鳥は三冊目。『名探偵誕生』と構成は似ていた(ワトソン「僕」とホームズ美少女の話ごと年代ジャンプ)が、話の話の間の挿話、それに共通して登場する友人のおかげか、『名探偵誕生』ほど時間が飛び飛びには思われず、こちらの方が楽しく読めた。おなじみの傍注は専門的な部分を雑学的に説明してくれて相変わらず面白い。惜しむらくは最終話が急ぎ足に感じられた点。改めて見ると改行が少なめな作家なのかとも思われ、それで余計に詰め込まれた感が出たのかもしれない。ともあれ終わってしまうのがもったいない気がして即座にもう一周し始めてしまったくらいには好き。
-
面白かったー!ちょっと変な人物が出てきて、変な事件が起こって、色々と煙に巻かれていくこの感じ、この方の作品は独特な雰囲気があってすごく好きです。結論で言えば「そんなバカな。」って感じだけど、それがまた好き。
-
見事に美術には、縁のない私だけど、お話は、とてもおもしろかったです。
主人公は、市高シリーズと同じ様なタイプ。考えすぎて、後一歩を踏みとどまってしまってますが。 -
自分を特別と思い画家志望だった緑川が高校、芸大、勤める画廊で遭遇する絵画絡みの謎たち。平凡な現実との差異が辛すぎず自然体で、片想い相手である天才の千坂桜の話し方や行動に現れた変わり者描写は淡い鮮烈さ。筋肉を見て貰いたがる風戸もユニークで可愛い。悪魔を抱えたふたりや、ペンキによる極彩色の床が印象的。