彼女の色に届くまで

  • KADOKAWA (2017年3月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (312ページ) / ISBN・EAN: 9784041052136

作品紹介・あらすじ

『彼女は、天才画家にして名探偵。』
  
  彼女に出会ったその日から、僕の人生は変わった。
  絵画で謎を解き明かしながら僕は知る、その喜びと苦しみを。


画廊の息子で幼い頃から画家を目指している緑川礼(僕)は、期待外れな高校生活を送っていた。友人は筋肉マニアの変わり者一人。美術展の公募にも落選続きで、画家としての一歩も踏み出せず、冴えない毎日だった。だが高校生活も半ばを過ぎた頃、僕は学校の絵画損壊事件の犯人にされそうになる。その窮地を救ってくれたのは、無口で謎めいた同学年の美少女、千坂桜だった。千坂は有名絵画をヒントに事件の真相を解き明かし、それから僕の日々は一変する。僕は高校・芸大・社会人と、天才的な美術センスを持つ千坂と共に、絵画にまつわる事件に巻き込まれていくことになり……。

ルネ・マグリット『光の帝国』、ジャクソン・ポロック『カット・アウト』、パウル・クレー『グラス・ファサード』など有名絵画が多数登場!(カラー口絵付き)
絵画をヒントに、美術にまつわる事件の謎を解け。「才能」をめぐる、ほろ苦く切ない青春×アートミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 天才少女と天才になれなかった画商の息子が絵画にまつわる謎を解き明かすお話。

    主人公が腐らずに生きてゆくのが良かった。絶対腐っちゃう…この状況…。でも相手が圧倒的だとその感覚も中々難しいのか。

  • 爽やかで微笑ましくってちょっと苦々しい青春ミステリ。さまざまな絵画に絡む謎の解明がミステリとしての読みどころなのはもちろんですが。画家を志す主人公が、圧倒的な才能を持つ彼女に抱く恋心と羨望と尊敬、そして嫉妬の念にどのような決着をつけるのか。その物語の部分も気になってぐいぐい読めました。
    夢を持つ者にとって、才能って残酷だなあとは思いますが。それよりもまず、自分が何をしたいのか、どうなりたいのか、が大事なのでしょうね。それを見失うと残念なことになりそうなので。彼らのこの選択は素晴らしいこと。千坂の申し出はたしかに魅力的だけれど、それに乗っかってたら二人とも幸せにはなれないよね。
    ミステリとしての部分も各話の謎がそれぞれで解かれて終わりかと思ったら。まだまだこんな仕掛けが! やられたなあ。

  • これは良かった。「謎解き+美術+青春」という三つの要素が実にうまく絡み合っていて、読みごたえがある。三要素それぞれが、皆きっちり構成されていて引きつけられた。

    四つの章で提示される謎は、どれも不可能犯罪。しかも終章でさらに…、いやいやこれはお見事。主人公は画廊の息子で画家を志しているという設定で、事件は皆絵画がらみだ。謎解きのポイントとなる絵画は実在の有名なもので、そこもよくできていると思った。結構数多く挟まれる、美術関連の注釈も楽しい。

    主人公は比較的普通だが(比較的、ね)、彼の友人とヒロインはかなり変わっている。あまり突飛な人物設定は苦手なんだけどなあと思いつつ読んでいったが、知らないうちに馴染んで違和感がなくなり、最後にはみんな好きだなあと思えた。イヤなヤツも出てくるけど(第1章がちょっとつらい)、読後感はとてもいい。この著者の長篇は初めて読んだが、他のも読みたくなった。

  • 似鳥さんの作品は初かも。 
    読みたい作品はあるんですが・・・

    ひとつひとつ謎を解き明かしていきながらも、違和感のある書き方をしていたのでモヤモヤしながら読んでいたけど、最終的にスッキリしました。

    それぞれに進み方を見つけられた終章よかった。

  • 芸術ってなんだろう。主人公の(作者の?)熱い想いに触れて、絵を見に行きたくなった。桜ちゃんかわいい

  • 似鳥は三冊目。『名探偵誕生』と構成は似ていた(ワトソン「僕」とホームズ美少女の話ごと年代ジャンプ)が、話の話の間の挿話、それに共通して登場する友人のおかげか、『名探偵誕生』ほど時間が飛び飛びには思われず、こちらの方が楽しく読めた。おなじみの傍注は専門的な部分を雑学的に説明してくれて相変わらず面白い。惜しむらくは最終話が急ぎ足に感じられた点。改めて見ると改行が少なめな作家なのかとも思われ、それで余計に詰め込まれた感が出たのかもしれない。ともあれ終わってしまうのがもったいない気がして即座にもう一周し始めてしまったくらいには好き。

  • 「努力は才能に勝てない」というありふれたテーマの話かと思ったけれど、最終的に自分の才能がより生きるものを見つけるというラストが気持ちよかった。
    本文で鍵となる絵画が実際にどんな絵なのかとても気になっていたので、巻末に絵の写真をつけてもらえたのが嬉しい!

  • とても良かった。
    絵画をヒントに読み解く事件も面白かったし、緑くんと桜の関係性もよい。緑くんが、桜との才能の差に悶々としながらも成長していく姿が生々しいというか、ああーわかるわかる、と思いながら読む。
    自分が努力しても届かないものを最初から持っているひと。反発しながらも惹かれる。悔しいけど離れがたい。

    でも緑くんも「悪魔」らしいので、桜か風戸視点のはなしも読んでみたい。

    そして最後の最後に全部つながるのが爽快。

  • 面白かったー!ちょっと変な人物が出てきて、変な事件が起こって、色々と煙に巻かれていくこの感じ、この方の作品は独特な雰囲気があってすごく好きです。結論で言えば「そんなバカな。」って感じだけど、それがまた好き。

  • 見事に美術には、縁のない私だけど、お話は、とてもおもしろかったです。
    主人公は、市高シリーズと同じ様なタイプ。考えすぎて、後一歩を踏みとどまってしまってますが。

  • 自分を特別と思い画家志望だった緑川が高校、芸大、勤める画廊で遭遇する絵画絡みの謎たち。平凡な現実との差異が辛すぎず自然体で、片想い相手である天才の千坂桜の話し方や行動に現れた変わり者描写は淡い鮮烈さ。筋肉を見て貰いたがる風戸もユニークで可愛い。悪魔を抱えたふたりや、ペンキによる極彩色の床が印象的。

  • 読み進めていく途中、何か変だなぁ…と覚える違和感。
    もちろん文章が稚拙で説明が不足していたり条件が詰められていなかったりする場合もあるのですが、そうでなかった場合。意図的に違和感を覚えさせるよう仕組んでいる場合。そういうオープンな、読者に攻撃的(挑戦的?)な伏線。
    「そうか! あの時の違和感は!!」って気付かされるときの瞬間が大好き。
    これって作者の、それはもう強気なオモテナシだと思うのですよ。

    今作も、そんな攻撃的オモテナシが待ってました。

    ガジェット周りだとそんな次第で秀逸だと感嘆するのですが(名画を引き合いにしたミステリという舞台設計も含め)、人物周りのドラマの部分ではいたく残酷な話でしたね。
    強烈な光に照らされ、また影も濃くなる…みたいな。
    主人公は彼女の色に届いたんだろうか。
    届かない、あるいは届いてはいけない、そんな関係に思うのです。
    不幸せでは無い。でも倖せにはなれない。
    そういうのが、私にはつらかったなあ。

  • 絵画を中心に、作者や携わっている人の思いを浮かび上がらせる連作短編集。さらに本作は主人公と天才芸術家の二人の物語で、才能の残酷さを描いており、傑作だと思いました。 物語が進むにつれて真作と贋作という主題が描かれ始めますが、その二つが天才芸術家と主人公に重なり、なんとも情緒ある物語に仕上がっています。 ラストも安易な着地を見せず、その理性的というか偏屈なオチは作者さんの他の作品でもあり好みが分かれそうですが、本作は不思議と受け入れられました。

  • 絵の話だけど、脇役の筋肉が目立つ。

  • 05/20/2018 読了。

    図書館から。

    気になっていたので、手に取りました。
    一時期、ブランチで特集してなかったっけ?
    ダヴィンチかな。

    似鳥さん、作品によってはまったりそうでなかったり…なんですが、今回は好みだった!!

    千坂さんあまり動かないけど、
    緑君とのやりとりがいじましくて…‼

  • 米澤穂信っぽい。馴染めない。

  • 4つの事件とも、トリック部分は、そんなことわざわざする?って事が続いて、苦手な部類のミステリかなと思って流し読んでたけど、最後の大オチでなるほど!と感心しました。

    語り手の緑くんが、天才ではない自覚はあるけど、それでも決して腐らずに、状況を的確に踏まえて、するべき事をする強さが好感度が高かった。
    時々友人に悪魔のようだと言われるほど、冷静に怖い事を言うのもいい。それが最後に、千坂と自分の今後の話をいい感じにまとめる所がすごく楽しかったです。
    悲壮な感じにも出来たテーマで、終始楽しく、明るい希望の中で終われたのすごく良かった。

    話題になる絵画の写真や説明があるのはとても親切だし、勉強になりました。

  • ミステリーと恋愛もちょこっと。最後に彼女の謎が明らかになる。

  • 1月20日読了
    画廊の息子で美術部員(部員は一人のみ)の緑川礼、緑川が才能を見いだした千坂桜、美術部に無関係なのにやたら顔を出す風戸翔馬。緑川が巻き込まれる密室不可能犯罪を千坂桜が解決するミステリー連作短編集。何より、犯罪が起こるのが絵にまつわる場所で、いろいろな実在の作品が時に解決するヒントとなってくるのがとても興味深く面白かった。もう一つ、一貫しているのが才能を持たない者の持っている者に対する嫉妬、羨望。悩める主人公を書きたかったそうだ。しかし、そのテーマは重くドロドロすることなく、しかし共感できる描き方でとても良かった。

  • 好きなものを、好きなように書いていいと言われたあの瞬間、彼女の世界は一瞬にして変わったのだろう。
    誰かに定められた世界から、自分自身で自由に飛び回れる世界へ。
    そして、その扉を開けた彼は、彼女にとってとても輝いて見えたのだろう。

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著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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