東京の子

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041052679

感想・レビュー・書評

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  • 東京オリンピック後の2023の東京と言っているが
    イメージとしては架空の町のアジア感みたいで

    時代設定や東京である必要性を感じない。
    むしろ今やこれからの日本に起こりうる
    移民、戸籍、労働(非正規、正規)をごちゃまぜにして
    間に合わせた感がぬぐえない

    元々やっていたパルクールが主になると思いきや
    労働ストライキが主で鈍重
    ストライキが面白くないわけではないが
    話の核に据えるか?と
    負けがわかったうえでの勝負の話だから

    だからこそ仮部ではなく船津を選ぶというのも唐突

  • 近未来の労働争議?
    現在の企業の人手不足、少子化による大学の定員割れ対策や奨学金返済の負担の問題を考えると、こういった人身売買的な施策は充分あり得る話だと思う。
    でもストーリーとしては私にとってはあまり面白くなかった。

  • 書評や、雑誌の紹介で名前を見かけることが多かったので読んでみた。ちょっと先の東京の未来を描いたもの。いま、現在進行形で動いてることから地続きにありそうで、その中で高揚感を感じさせるような、フィクションならではの空気感は良かった。

    主人公に備わった、パルクールの身体能力というチョイスも、この近未来感を手伝った。身体の動き、そのまわりの情景を事細かに描いててすごい、と思った。

    が、読む側の私がその描写を脳内で再構成する力がなかった…ので、あまりこのスピード感、アクロバティックさを味わうことができず残念。普段から体を動かしたり、空間把握能力に長けてる人には向いてるのかも。

    肝心のストーリーは、想定してたよりも明るかった。と、同時に、目の前で起こってることに必然性や重みがあまり感じにくい話だなと思った。ちょっと物足りなかった。
    主人公の出生の話や、アイデンティティの話がはじめに際立つので、その「逃れられない運命」と比べてしまった。物語の軸が、学校や、雇用といった枠組みの問題なので、やや他愛もないものに見えてしまったかなぁ…

    バイオレンスなものがなかったので、穏やかに読めたのはよかった。身体的に強い登場人物が、暴力ではない別の新しい力で、物語の方向性を変えていくという流れを観れたので、そういう作品に出会えたことは感謝。

  •  確か、日経新聞の夕刊書評で見かけたもの(恐らく)。著者の作品は初めて。2012年、ソフトウェア会社に勤務する傍ら執筆・・・日本SF大賞を受賞、日本SF作家クラブの会長。SF畑の人? 確かにITやネット社会のネタに通じてそうで、それなりに近未来のお話ではあるけど、現代と地続きの未来というか、今起こりつつある問題の、その先に思いを馳せさせてくれる内容。
     そもそも面白そうと思ったのは、次のオリンピックの直後の日本が舞台で、外国人労働者問題が絡んでいそうという点だった。最近の個人的懸念と絶妙にリンクしていたので。
     文章は特に巧いとも、人物造形が巧みとも思えなかったが、IT的な近未来への知見はお持ちのように拝察したので(しかも荒唐無稽な遠い未来の話としてではなく、割と今の社会との関わりあるサイエンスというかテクノロジー寄りな世界)、そちら方面への興味喚起にはなる。

     舞台は2023年の東京。戸籍を買い、過去を隠して新たな人生を歩んでいるかつてのユーチューバー、パルクールパフォーマー船津怜が主人公。食堂で働きつつ、失踪しそうな外国人留学生、労働者を現場に連れ戻す仕事をしている。
     そんな彼に東京オリンピック後の豊洲の跡地に生まれた東京デュアルという外国人受け入れと労働問題の解決を標榜する「理想の大学」で働くベトナム人失踪の捜索の依頼が入り、潜入することに。
     この東京デュアルでは学生たちは奨学金を受けスキルを学ぶ授業を受け、午後は生活費稼ぎと奨学金返済のため提携する企業(すべて大学の敷地内にある)で働くという画期的な形態を持つ。だが、理想は理想として、そこには奨学金で卒業生を縛り、職業選択の自由を奪う、一種の人身売買のリスクも孕むという問題提起をしていく。

     折しも2019年4月、改正出入国管理及び難民認定法、いわゆる移民法が導入され、今後日本はますます外国労働者に頼る社会体制にシフトしていくことになる。これは止む無い話で、来年オリンピックイヤーである2020年には「女性の過半数が50歳以上」となり新たな労働力を旺盛に生み出す力はこの国には残されていない。さらに数年で団塊ジュニア世代が50代に突入、介護離職が増え始め労働力不足の懸念がさらに強まるらしい(『未来の年表』(河合雅司著))。頼るは外国からの労働者たちだ。
     そんな素人でも漠然と描く、数年後の移民に支えられた日本社会、あるいは東京の様子などが、非常に真実味を持って描かれているのが、本書の面白いところだ。

     お話としては、その東京デュアルという組織の巨悪を叩き、失踪したベトナム人(才媛で美女)を救出するヒーロー譚あたりの落ち着きを見せるのかと思えば、さにあらず。もう少し大きな労働問題を内包しつつ、一人の青年の再生の物語として着地させる。

     何かが解決し、明るい未来が開ける類の話ではないが、働き方改革、少子化、外国人労働者問題、そしてアフター五輪という現実を取り入れ、その先になにが起こるか、想像力を働かせておかなければという危機感を抱かせる。
     だが、けっして悲観的な近未来ではない。知恵と才覚で乗り越えていくべきもの。まさに東京デュアルが試みようとしているプラスとマイナスの両面ある実験のように。

     それらの障害物は、主人公の得意技パルクールでひょいひょいと乗り越えていけるものではないが、最後は体力さえあれば、なんとかなる???(←このあたりの発想がもう次世代には通用しない話なのかもしれない)

     未来を見据える、よい思考鍛錬になりました。

  • 近未来小説。東京オリンピック後の東京で、親の虐待から逃げ、名前を変えた仮部は、仕事に来なくなった外国人を探して戻るよう説得するような仕事をしている。2019年の移民法の改正によって外国人労働者は急増した。「東京デュアル」は働きながら学べる学校なのだが、ここには問題があり・・・

    うーむ。ハイテク近未来小説かと思っていたら、労働問題小説だった。

    同一労働同一賃金などの様々な問題がクリアーできている「東京デュアル」がどんな問題を引き起こしているのか、すぐそこにあ理想なリアリティを感じる。

    ただ、あまりストーリに耽溺するというほどではなかった。技巧に走り過ぎてる感あり。

    小説というより、労働について考えたい人のための本という感じだった。面白い小説を読んで、その結果ある社会的な問題について学べるのはとても良いことだけれど、社会的な問題について学んでいるおまけに小説がついている感じなものは、あまり自分の求めている娯楽ではないような気がする。

  • ”「2020」を生きる我々の、希望になる。”ってなオビの煽り文句には納得いかないなぁ

  • 何があっても生き延びられるよう、知恵と身軽さを手に入れたいと思った。

  • 東京オリンピックが終わって3年後の日本。働き方、移民、奨学金などの問題を描いています。登場人物の描き方が薄めなので一人一人の輪郭がぼやけてしまっている感じでした。

  • 物語の前半から中盤は、他人の戸籍を買って別人として生きる仮部の過去、パルクール、東京デュエルという新しい試みの学校の存在が、なかなか面白かったです。
    それだけに終盤の展開が、あっけなくて残念でした。

  • 49オリンピックは残念ながら無理やろうねえ。でもお話しはよく出来てる。こう言うヒーローはウエストゲートパークみたいでいいね。

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著者プロフィール

藤井大洋:1971年鹿児島県奄美大島生まれ。小説家、SF作家。国際基督教大学中退。第18代日本SF作家クラブ会長。同クラブの社団法人化を牽引、SF振興に役立つ事業の実現に燃える。処女作『Gene Mapper』をセルフパブリッシングし、注目を集める。その後、早川書房より代表作『Gene Mapper -full build-』『オービタル・クラウド』(日本SF大賞受賞)等を出版。

「2019年 『AIが書いた小説は面白い?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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